空き家のミカタ

相続した不動産の固定資産税は誰が払う?相続人間トラブル解決法【2026年版】

宅建業者|宅建業者
相続した不動産の固定資産税について相続人家族が専門家を交えて話し合っている様子

毎年5〜6月に届く固定資産税の納付書。「親が亡くなって不動産を相続したが、固定資産税は誰が払うのか」「兄弟間で揉めていて誰も払っていない」という相談が、5月に入ると一気に増えます。

この記事では、相続した不動産の固定資産税の法的な納税義務の仕組みから、相続人間に生じやすいトラブル3パターンとその解決策まで、大阪市の具体的な試算例を交えて宅建業者が解説します。


固定資産税の「納税義務者」は誰か

法律上の原則|1月1日現在の登記上の所有者

固定資産税は、毎年1月1日時点における「登記上の所有者」に対して課税されます(地方税法第343条)。

つまり、親が12月に亡くなっていた場合でも、翌年1月1日時点でまだ相続登記が完了していなければ、その年度の固定資産税は亡くなった方の名義のまま課税されます。市区町村は登記情報をもとに納税通知書を発送するため、被相続人(亡くなった方)宛てに届くことがほとんどです。

相続登記が未了の場合|相続人全員が連帯して納税義務を負う

相続登記を完了するまでの間、相続財産は相続人全員の共有状態になります。この場合、固定資産税は相続人全員が連帯して納税義務を負います(地方税法第10条の2)。

連帯納税義務とは、相続人の誰か一人に全額を請求できるという意味です。市区町村は「払える人」に納税を求めます。払った相続人は他の相続人に対して、法定相続分に応じた額を請求できますが、相手が応じなければ法的手段をとるしかありません。

2021年の改正で「現所有者申告」が義務化されました。相続登記が未了の場合、市区町村から「現所有者申告書」の提出を求められ、正当な理由なく申告しない場合は10万円以下の過料が科されることがあります。


大阪市での固定資産税試算例

固定資産税の計算書類と電卓。大阪市の税率1.4%を用いた相続不動産の試算例

大阪市の固定資産税率は1.4%(標準税率)、都市計画税は0.3%です。

試算前提

  • 土地:固定資産税評価額1,500万円(200㎡以下の小規模住宅用地)
  • 建物:固定資産税評価額500万円
  • 相続登記は未了(住宅用地の特例は適用中)

年間税額の試算

項目計算式年間税額
土地・固定資産税(小規模住宅用地特例適用)1,500万円 × 1/6 × 1.4%約35,000円
建物・固定資産税500万円 × 1.4%約70,000円
土地・都市計画税(小規模住宅用地特例適用)1,500万円 × 1/3 × 0.3%約15,000円
建物・都市計画税500万円 × 0.3%約15,000円
合計約135,000円/年

相続人が3名(法定相続分各1/3)の場合、一人あたり年間約45,000円の負担です。

ただし、物件が特定空き家に指定・勧告を受けると住宅用地の特例が解除され、土地の固定資産税と都市計画税が大幅に増額されます(最大6倍)。長期放置は税額を膨らませるリスクがあります。


相続人間に生じやすい固定資産税トラブル3パターン

トラブル1|代表者が全額立替え払い、他の相続人が応じない

最も多いケースです。「とりあえず自分が払った」という相続人が、他の相続人に請求しても「話を聞いていない」「相続分の主張が違う」と言われて回収できないパターンです。

なぜ起きるか

  • 遺産分割協議がまとまっていない
  • 相続人の間で不動産の扱いについて意見が割れている
  • 「固定資産税を払った=相続分が増える」という誤解

対処法

① 「立替金の返還請求書」を内容証明郵便で送る(不払いの記録を作る)
② 遺産分割調停を申し立て、固定資産税の立替分を調停内で精算する
③ 全員の合意が取れるなら売却して清算するのが最速


トラブル2|連絡が取れない相続人(疎遠・行方不明)がいる

相続人の中に疎遠な親族や、住所不明の人物がいると、協議そのものが進められません。固定資産税の連帯納税義務は続き、代表者だけが永遠に払い続ける状況になります。

対処法

① 戸籍の附票で現住所を追跡する(行方不明でなければ見つかることが多い)
② 行方不明の場合は不在者財産管理人の選任を家庭裁判所に申し立てる(費用:弁護士費用+予納金)
③ 長期的に解決できない場合は、共有物分割請求訴訟(令和5年民法改正で要件が緩和)を検討する


トラブル3|「自分は相続していないから払わない」という相続人

「私はもらっていないから払う必要はない」と主張する相続人は少なくありません。しかし、遺産分割協議が成立していない限り、この主張は税務上通りません

法定相続分に応じた連帯納税義務は、遺産分割協議の有無に関係なく発生します。「払わない」相続人がいても、市区町村は他の相続人に全額請求できます。

対処法

① 遺産分割協議を早期にまとめる(不動産を誰が取得するか決める)
② 相続人全員が合意できれば買取業者への売却で清算
③ 合意が取れない場合は遺産分割調停・審判へ


根本的な解決策|3つの選択肢

① 遺産分割協議で不動産の帰属を決める

全員が合意できる場合、誰が不動産を相続するかを遺産分割協議書にまとめ、相続登記を完了させます。登記後は、取得した相続人のみが固定資産税の納税義務者となります。

  • 全員の実印と印鑑証明書が必要
  • 協議書がまとまれば、相続登記申請は司法書士に依頼可能
  • 相続登記は2024年4月から義務化(相続から3年以内、違反で10万円以下の過料)

② 代表者申告をして立替払いの合意を作る

全員が一致して「代表者Aが払い、他は法定相続分を後で支払う」と合意できる場合は、市区町村への現所有者申告(代表者の届出)を行います。書面で合意内容を残すことが重要です。

③ 全員の合意のうえで売却(買取)する

最も根本的な解決策です。相続人全員が同意して物件を売却・現金化すれば、固定資産税の問題は解消し、取得した売却代金を法定相続分または協議で分配できます。

  • 訳あり物件・空き家でも現況のまま買取が可能
  • 相続登記が未了でも査定・相談を受け付ける業者が増えています
  • 売却後は翌年度から固定資産税の負担がゼロになります

よくある質問(FAQ)

Q. 遺産分割協議書がない場合でも、固定資産税は払わなくていいのですか?

いいえ。遺産分割協議が未成立でも、相続人全員は法定相続分に応じて連帯納税義務を負います。「協議書がないから払わない」という理由は税務上認められません。未払いが続くと延滞金が加算され、最終的には差し押さえに至る可能性があります。

Q. 固定資産税の滞納があっても売却できますか?

差し押さえが入っていなければ、売却は可能です。売却代金から滞納税を精算し、残額を受け取る形になります。差し押さえが入ってしまうと売却が難しくなるため、督促状が届いた段階で早めに動くことが重要です。

Q. 相続登記が未了のまま相続人が亡くなった(数次相続)場合は?

相続人が亡くなると、その相続人の持分がさらに次の相続人に移ります。これを「数次相続」と呼び、登記・協議の関係者が増えて複雑化します。固定資産税の連帯納税義務者も増えることになります。早期の登記・協議が重要です。

Q. 相続した物件が遠方にあり管理も難しい場合、買取は対応できますか?

はい。遠方の物件や空き家・老朽化した建物でも現況のまま査定・買取が可能です。相続人間で「早く手放したい」という合意があれば、連絡から最短数週間で手続きが完了します。


相続した不動産の固定資産税について宅建業者に無料相談している様子

まとめ

相続した不動産の固定資産税は、相続登記が完了するまで相続人全員が連帯して納税義務を負います。放置すると代表者への一方的な負担、延滞金の増大、最終的な差し押さえへと悪化します。

解決策は3つです。

選択肢こんな場合に有効
① 遺産分割協議+相続登記相続人間で合意が取れ、一人が不動産を取得する場合
② 代表者申告+立替払い合意協議は難しいが税務処理だけ先に進めたい場合
全員合意のうえで売却(買取)誰も管理できない・意見が割れている・早急に解決したい場合

「相続したけど誰も住んでいない」「兄弟間でもめている」「固定資産税の納付書が届いたが手続きがわからない」――そうした状況は、一人で抱え込まずにまずご相談ください。


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