相続した土地を国に返す方法【国庫帰属制度2026年版】条件・費用・申請手順を宅建業者が解説
国庫帰属制度 — 宅建業者による要点まとめ
- 制度開始: 2023年4月27日施行(相続土地国庫帰属法)
- 対象: 相続(遺贈・相続人への贈与を含む)で取得した土地のみ。購入した土地は対象外
- 申請費用: 審査手数料14,000円/筆 + 承認後の負担金(最低20万円〜)
- 審査期間: 申請後3〜6ヶ月(書類不備があればさらに延長)
- 条件が厳しい: 建物がある・境界不明・崖地・汚染など多くの土地が却下・不承認
「相続した土地が要らない。国に返せないか?」——こうしたご相談が、2023年以降に急増しています。
結論からお伝えすると、法律上は国に返すことができます。しかし条件が非常に厳しく、実際に国庫帰属が承認される土地はかなり限られています。
この記事では、相続土地国庫帰属制度の仕組み・条件・費用・手順を、実務ベースで解説します。また、条件に合わなかった場合の現実的な選択肢もあわせてご案内します。
相続土地国庫帰属制度とは?
「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」(通称:相続土地国庫帰属法)は、2021年4月に成立し、2023年4月27日から施行されました。
制度の背景には、全国で急増する所有者不明土地の問題があります。国土交通省の調査によると、所有者不明土地は国土の約24%にのぼり、九州の面積を超える規模です。これを解消するため、「相続した土地を国に返す」という選択肢が初めて法的に整備されました。
誰が申請できるか
申請できるのは、相続または遺贈によって土地を取得した相続人です。購入して取得した土地や、生前贈与(相続人以外への贈与)で取得した土地は対象外です。
土地が共有になっている場合は、共有者全員が共同で申請する必要があります。一人だけでは申請できない点に注意が必要です。
申請先
土地の所在地を管轄する法務局(地方法務局)に申請します。複数の土地をまとめて申請することも可能ですが、法務局の管轄が異なる土地は別々の法務局に申請が必要です。
国に返せる土地の基本条件
まず、申請の対象となるために満たす必要がある基本条件を確認しましょう。
| 項目 | 条件 |
|---|---|
| 取得方法 | 相続・遺贈・相続人への贈与による取得 |
| 土地の種別 | 宅地・農地・森林・雑種地等(建物なし) |
| 申請者 | 相続人(共有の場合は全員) |
| 申請先 | 土地所在地の法務局 |
重要なのは、この表はあくまで「申請できる前提条件」である点です。申請後の審査で、次に説明する却下・不承認事由に該当すると判断されると、申請は通りません。
【重要】国に返せない土地7つの事由
国庫帰属の申請が却下または不承認になる事由は、法律で明確に定められています。実務上、多くの申請がここで弾かれます。
申請が却下される5つの事由
申請を受け付けてもらえない「却下事由」に該当する土地は以下のとおりです。
① 建物が建っている土地 家・倉庫・車庫など、建物がある土地は対象外です。建物を先に解体すれば申請可能になりますが、解体費用(木造30坪で100〜200万円程度)がかかります。
② 担保権や使用収益権が設定されている土地 抵当権・根抵当権・地上権・地役権などが設定されたままでは申請できません。
③ 通路などとして他人が利用している土地 隣地住民が通路として使っている私道の一部など、他人の利用が予定されている土地は対象外です。
④ 特定有害物質で汚染されている土地 土壌汚染対策法の特定有害物質による汚染が確認された土地は申請できません。
⑤ 境界が不明確な土地・所有権の争いがある土地 境界確定測量がなされていない土地や、所有権について争いがある土地は対象外です。境界確定には費用(20〜80万円程度)と時間がかかります。
審査で不承認になる主な事由
上記を通過しても、審査の段階で不承認になるケースがあります。
⑥ 崖がある土地 傾斜角度30度以上かつ高さ5メートル以上の崖がある部分の合計面積が、土地全体の30%以上を占める場合は不承認になります。
⑦ 通常の管理・処分が困難な土地 廃棄物・工作物・大量の樹木等がある土地、隣地との争訟が必要な土地、その他「通常の管理・処分を困難にする事情」があると判断された土地が該当します。
宅建業者の視点: 当社が相談を受けた案件では、境界確定ができていない土地や山林・農地でこの制度を検討される方が多くいらっしゃいます。ただし、境界確定費用や申請手数料・負担金を合算すると、結果的に買取業者への売却のほうがコストを抑えられるケースが少なくありません。
申請の手順と実費(審査手数料・負担金)
ステップ1: 事前確認
法務局の窓口または電話で、申請を検討している土地について相談できます。事前に却下・不承認事由に該当していないか確認しておくと、無駄な申請費用を防げます。
ステップ2: 必要書類の準備
申請に必要な主な書類は以下のとおりです。
- 相続土地国庫帰属申請書
- 申請する土地の位置・範囲を確認できる図面(公図等)
- 土地の現状を確認できる写真
- 境界確定の確認書類(必要な場合)
- 相続を証明する書類(相続関係図、遺言書等)
書類の種類・内容は土地の状況によって異なります。詳細は管轄の法務局にご確認ください。
ステップ3: 法務局への申請と審査手数料
必要書類を揃えて法務局に申請します。申請時に審査手数料(土地1筆につき14,000円)を納付します。この手数料は、審査結果(却下・不承認を含む)にかかわらず返還されません。
ステップ4: 法務局による現地調査・審査
申請後、法務局の職員が現地調査を行います。審査期間は通常3〜6ヶ月が目安ですが、書類の補正が必要な場合はさらに時間がかかります。
ステップ5: 承認後の負担金納付
審査を通過して承認が得られたら、負担金を納付して手続き完了です。
| 土地の種別 | 負担金の目安 |
|---|---|
| 宅地(市街地) | 面積×算定係数(最低20万円) |
| 宅地(その他) | 20万円 |
| 農地(田・畑) | 20万円 |
| 森林 | 面積×算定係数(地域により数十〜数百万円) |
注意: 面積が大きい土地や市街地の宅地では、負担金が数百万円を超えるケースもあります。承認される前に、負担金の概算を法務局に確認しておくことをおすすめします。
国庫帰属を断念したら→買取という選択肢
「条件に合わない」「費用が高すぎる」「時間がかかりすぎる」——このような理由で国庫帰属を断念された方からのご相談が、当社には多く寄せられます。
そうした場合、買取専門業者への売却が現実的な選択肢になります。
買取が国庫帰属より優れている点
| 比較項目 | 国庫帰属制度 | 買取専門業者 |
|---|---|---|
| 費用 | 審査手数料14,000円 + 負担金(最低20万円〜) | 仲介手数料なし・費用負担なし |
| 期間 | 3〜6ヶ月(書類準備含めると1年超も) | 最短2週間〜1ヶ月 |
| 建物がある場合 | 申請不可(要解体) | 現況のまま買取可能 |
| 境界不明の場合 | 申請不可(要確定測量) | 相談可能なケースあり |
| 手元に残るお金 | マイナス(費用のみ発生) | プラス(買取代金を受取) |
国庫帰属制度は「土地の処分費用を支払ってゼロ円で国に返す」制度です。一方、買取は「お金をもらって土地を手放す」方法です。条件さえ合えば、買取のほうが金銭的にも時間的にも有利になることが多いです。
再建築不可・市街化調整区域・共有持分・山林・農地など、一般の不動産会社では「売れない」と言われた土地でも、専門の買取業者に相談する価値はあります。相続登記(名義変更)がまだの場合も、買取と並行して手続きを進めることができます(相続登記の義務化について詳しくはこちら)。
また、相続放棄を検討中の方は、放棄した後でも管理義務が残るケースがあります。放棄前に買取という選択肢も含めてご検討ください(相続放棄と不動産の関係はこちら)。
空き家が建っている土地の処分方法については、空き家処分の5大選択肢を徹底比較した記事もあわせてご覧ください。
まとめ
- 相続土地国庫帰属制度は2023年4月施行。相続・遺贈で取得した土地を国に返すことができる
- 条件が厳しい: 建物がある・境界不明・崖地・汚染土地などは申請自体が却下される
- 費用がかかる: 審査手数料14,000円 + 承認後の負担金(最低20万円〜)
- 時間がかかる: 申請から完了まで3〜6ヶ月以上
- 条件に合わない場合は、買取専門業者への売却が費用・期間ともに有利なことが多い
「この土地、条件に合うか確認したい」「国庫帰属は難しそうなので買取を検討したい」——どちらの相談でも、まずは当社にお気軽にお問い合わせください。
相続した土地の処分方法でお悩みでしたら、当社(空き家のミカタ)にご相談ください。国庫帰属の条件に合うかの確認から、買取査定まで、無料でお答えします。
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