空き家のミカタ

相続登記義務化から2年の実態:申請件数・認知度・過料運用の現状を宅建業者が解説

宅建業者|宅建業者
書類に署名する手元 相続登記の手続きイメージ

2024年4月に始まった相続登記の義務化から、2年が経過しました。

「義務化されたのは知っているけど、実際にどうなっているの?」「罰則は本当に適用されるの?」——こうした疑問をお持ちの方は多いのではないでしょうか。

この記事では、施行から2年間の統計データ・法務局の運用実態・過料の適用状況を整理し、2027年3月31日の経過措置期限に向けて今からやるべきことを解説します。

義務化2年間の数字で見る実態

相続登記の申請件数は増加傾向

法務省の発表によると、相続を理由とする所有権移転登記の件数は年々増加しています。

年度件数前年度比
2021年度123.7万件+8.8%
2022年度136.2万件+10.1%
2023年度150.3万件+10.4%
2024年度(12月速報値)約120万件+8.8%
電卓と書類 相続登記件数の増加を示すデータイメージ

2024年度は12月時点の速報値ですでに120万件を超えており、年度末に向けてさらに増える見込みです。43都道府県で件数が増加し、そのうち19都道府県では20%以上の増加が確認されています。

義務化が始まった2024年4月以降、「駆け込み申請」が進んでいることがわかります。

認知度は上がったが、理解は不十分

法務省が2024年12月に発表した調査結果によると、相続登記義務化の認知度は72.9%に上昇しました。前年度の53%から大幅に伸びています。

しかし、内訳を見ると課題が見えてきます。

項目認知率
義務化されたことを知っている72.9%
「知った日から3年以内」という期限を認識している42.8%
義務化前の相続も対象と知っている40.4%

つまり、義務化を知っている人のうち約4割は、具体的な期限や対象範囲を正しく理解していないということです。

「義務化されたらしい」と聞いたことがあっても、「自分の親の不動産も対象なの?」「いつまでにやればいいの?」という具体的なところが曖昧なまま放置している方が少なくありません。

相続人申告登記の利用状況

2024年4月に新設された「相続人申告登記」の初月の申請件数は、全国で約1,100件でした。

相続人申告登記は、遺産分割がまとまらないときに「自分は相続人の一人です」と法務局に届け出ることで、暫定的に義務を果たしたとみなされる制度です。登録免許税がかからず、相続人1人で申請できるため、手続きのハードルが低く設計されています。

しかし、初月1,100件という数字は控えめなスタートです。制度の存在自体が十分に知られていない可能性があります。

過料はまだ科されていない——しかし油断は禁物

2026年4月時点の過料適用状況

結論から言えば、2026年4月時点で過料が科された事例は公表されていません

これにはいくつかの理由があります。

1. 施行後の相続は期限が到来していない

2024年4月以降に発生した相続については、「知った日から3年以内」が期限です。最速でも2027年4月以降にならないと期限は到来しません。

2. 法務局は催告→裁判所通知の段階的プロセスを経る

仮に義務違反が発覚しても、以下のステップを踏みます。

  1. 法務局が未登記を発見
  2. 相続人に催告(登記するよう通知)
  3. 催告に応じなければ、法務局が裁判所に通知
  4. 裁判所が過料を決定

いきなり罰則が適用されるわけではなく、まず「やってください」という通知が届くプロセスになっています。

3. 過去の相続は2027年3月31日が期限

施行前(2024年4月1日より前)に発生した相続は、経過措置として2027年3月31日が期限です。この期限を過ぎた後、催告プロセスが始まる可能性があります。

「まだ過料がない=安全」ではない理由

過料がまだ科されていないのは、制度設計上まだ期限が到来していないからです。制度が機能していないわけではありません

法務局は固定資産税の課税情報や死亡届の情報をもとに、未登記不動産を把握する仕組みをすでに稼働させています。経過措置期限(2027年3月31日)を過ぎれば、催告が届く可能性は十分にあります。

2026年に始まった新制度:所有不動産記録証明制度

制度の概要

2026年2月2日から、「所有不動産記録証明制度」が始まりました。

これは、法務局に請求すると特定の人が所有する全国の不動産を一覧でリスト化してもらえる制度です。

項目内容
開始日2026年2月2日
請求できる人所有権の登記名義人本人または相続人等
手数料1通1,600円(窓口請求の場合)
請求方法窓口・郵送・オンライン

相続手続きでの活用方法

親が亡くなったとき、「他にも不動産を持っていたかもしれない」と不安に思うことがあります。以前は自治体ごとに固定資産税の課税証明を取得する必要があり、漏れが生じるリスクがありました。

この制度を使えば、全国の不動産を一括で確認できます。相続登記の漏れを防ぐために有効な制度です。

注意点

登記簿上の氏名・住所と請求時の検索条件が一致しない不動産は抽出されません。たとえば、引っ越し後に住所変更の登記をしていなかった場合、旧住所で登記されている不動産は検索結果に出ない可能性があります。

完全な網羅性が保証されるものではないため、固定資産税の課税証明や遺品整理で見つかった書類も合わせて確認することをおすすめします。

2027年3月31日まで残り1年——今やるべきこと

経過措置の期限が迫っている

2024年4月1日より前に発生した相続で、まだ相続登記をしていない方は2027年3月31日が期限です。

この期限は、10年前でも20年前でも、いつ発生した相続であっても適用されます。

期限が近づくと起こること

期限直前には以下のような状況が予想されます。

  • 司法書士への依頼が集中し、手続きに数か月かかる可能性
  • 戸籍の取得に通常より時間がかかる可能性
  • 同じような状況の人が一斉に売却に動き、買取価格に影響が出る可能性

早めに動くほど、スムーズに手続きが進みます

状況別の対応フロー

ケース1:相続人間で合意がとれている場合

→ すぐに相続登記を完了させてください。司法書士に依頼した場合の費用は7〜10万円程度(登録免許税別)が相場です。

ケース2:遺産分割がまとまらない場合

→ まず相続人申告登記を行い、暫定的に義務を果たしてください。費用は実質無料(登録免許税なし)で、相続人1人で申請できます。遺産分割が成立した後、改めて3年以内に正式な相続登記を行います。

ケース3:不動産を手放したい場合

売却が最も効率的な解決策です。売却にあたって相続登記を行うため義務を果たしたことになり、固定資産税の負担や管理責任からも同時に解放されます。

売却で相続登記の義務と維持コストをまとめて解消

専門家との相談風景 不動産売却の打ち合わせイメージ

相続した不動産を使う予定がないなら、早期の売却を検討する価値があります。

売却で解消できること

項目売却前売却後
相続登記の義務期限内に登記が必要売却時に完了
固定資産税毎年負担が続く翌年度から不要
空き家の管理責任管理不全で過料リスク管理責任から解放
建物の劣化放置するほど価値が下がる価値があるうちに現金化

相続登記が済んでいなくても相談できる

「まだ相続登記をしていないから売れない」と思い込んでいる方がいますが、相続登記が未了でも買取業者には相談できます

登記手続きの段取り(司法書士の手配含む)から売買契約まで、一括でサポートできるケースが一般的です。相続登記の費用も売却代金から充当できるため、持ち出しなしで手続きを進められます。

放置するほど損をする理由

不動産は人が住まなくなると急速に劣化します。さらに、時間が経つほど相続人が増え(数次相続)、全員の同意を得るのが難しくなります。

放置期間起こりうる問題
1〜2年建物の軽微な劣化、庭の雑草繁茂
3〜5年管理不全空き家に指定されるリスク、固定資産税の増額
5〜10年数次相続の発生、特定空き家の指定、大幅な価値下落
10年以上関係者が多数になり売却が極めて困難

物件の価値が保たれているうちに動くことが、結果的に最も有利な選択です。

よくある質問

Q. 相続登記義務化から2年経って、実際に過料を科された人はいますか?

2026年4月時点で、過料が科された事例は公表されていません。施行後に相続した不動産の期限は最速でも2027年4月以降であるため、制度上まだ期限が到来していない段階です。ただし、経過措置期限(2027年3月31日)を過ぎた後は、法務局からの催告が届く可能性があります。

Q. 「知らなかった」で過料は免除されますか?

「知らなかった」という理由だけでは、正当な理由として認められにくいと考えられています。法務省が認める正当な理由は、相続人が極めて多数で書類収集に時間がかかる場合、遺産の範囲について争いがある場合、本人が重病の場合などに限られます。

Q. 2026年4月から住所変更登記も義務化されたと聞きましたが?

はい、2026年4月1日から不動産の所有者が住所や氏名を変更した場合、2年以内にその登記をすることが義務化されました。正当な理由なく怠った場合、5万円以下の過料の対象となります。相続登記の義務化とは別の制度ですが、不動産の登記を正確に保つための改正として同時に進められています。

Q. 相続登記にかかる費用はいくらですか?

司法書士に依頼した場合の報酬は7〜10万円程度が相場です(日本司法書士連合会の2024年調査による平均値は約7.5万円)。これに加えて登録免許税(固定資産税評価額の0.4%)と戸籍等の書類取得費用がかかります。合計で10〜15万円程度が目安です。ただし、相続関係が複雑な場合は30〜50万円程度になることもあります。

まとめ:義務化2年の現状と残り1年の行動指針

相続登記義務化から2年が経過し、現状は以下のとおりです。

  • 申請件数は増加中:年間120万件超(前年比8.8%増)
  • 認知度は72.9%に上昇:ただし期限の正確な理解は42.8%にとどまる
  • 過料の適用事例はまだない:制度上の期限未到来が理由であり、安全という意味ではない
  • 新制度が始まっている:所有不動産記録証明制度(2026年2月〜)、住所変更登記の義務化(2026年4月〜)
  • 経過措置の期限は2027年3月31日:過去の相続すべてが対象

過去に相続した不動産の名義変更がまだの方は、残り1年を切っています。司法書士への依頼集中が予想される中、早めに行動することが最もリスクの低い選択です。

不動産を使う予定がなければ、売却で登記義務・固定資産税・管理責任をまとめて解消できます。


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