未登記建物を相続したら?表題登記の手順・費用と買取での解決策
未登記建物を相続した場合、売却には「表題登記 → 所有権保存登記 → 相続登記」の順に手続きを完了させる必要があります。ただし、買取業者に依頼すれば、土地家屋調査士・司法書士と連携しながら登記と売却を同時並行で進めることができます。
「親が亡くなって、実家の建物が法務局に登記されていないことがわかった」——こうしたご相談が増えています。特に昭和30〜50年代に建てられた建物は、当時の慣行から登記されていないケースが少なくありません。国土交通省の調査でも、未登記建物は全国に200〜300万棟以上存在すると推計されています。
この記事では、未登記建物を相続した場合にどんな問題が起きるか、表題登記の手順と費用、そして売却・買取につなげる方法を、宅建業者の立場からわかりやすくお伝えします。
未登記建物とは?相続登記との違いを整理する
「未登記建物」と「相続登記をしていない建物」は、よく混同されます。この2つの違いを最初に整理しておきます。
表題登記(建物の存在そのものを登録)
建物を新たに建てたとき、法務局に「この建物が存在します」と登録する手続きが表題登記です。建物の所在・構造・床面積などが記録されます。
表題登記は建物の新築から1ヶ月以内の申請が法律上の義務です(不動産登記法第47条)。申請しない場合は10万円以下の過料が科される可能性があります。ただし、この義務が徹底されておらず、昭和時代に建てられた建物では登記が存在しないケースが広く残っています。
相続登記(名義を亡くなった方から変更)
表題登記はされているが、亡くなった方の名義のままになっている——これが相続登記未了の状態です。2024年4月1日に相続登記の義務化が施行され、相続を知った日から3年以内に名義変更しない場合は10万円以下の過料が科される可能性があります。
| 表題登記 | 相続登記 | |
|---|---|---|
| 何をするか | 建物の存在を初めて法務局に登録 | 亡くなった方から相続人へ名義変更 |
| 誰に依頼するか | 土地家屋調査士 | 司法書士 |
| 費用目安 | 8〜15万円(報酬) | 5〜15万円(報酬) |
| 義務期限 | 新築から1ヶ月以内 | 相続を知った日から3年以内 |
未登記建物を相続した場合は、表題登記と相続登記の両方が必要になります。
未登記建物を相続したときに起きる問題
未登記のまま放置すると、以下のような問題が発生します。
問題①:売却・担保設定ができない
不動産を仲介で売却するには、法務局の登記簿に「この建物の所有者は〇〇」と記録されている必要があります。未登記建物は登記簿に存在しないため、仲介での売却ができません。買主が銀行ローンを使う場合も、担保となる建物の登記がなければ融資審査を通過できません。
問題②:相続登記義務化と二重の義務
未登記建物の場合、相続登記を行う前に表題登記が必要です。つまり2024年4月施行の相続登記義務化により「3年以内に登記を」と言われても、未登記建物はその前段階の手続きから始めなければなりません。
問題③:固定資産税は払い続けるのに処分できない
固定資産税は登記の有無にかかわらず、市区町村が「現地調査」で把握している建物にかかります。つまり登記がなくても固定資産税の請求は届き続けます。税金だけ払い続けて処分できない状態が何年も続くケースが少なくありません。
問題④:空き家の管理責任が発生する
相続放棄しない限り、空き家の管理責任は相続人に生じます。管理が行き届かず「管理不全空き家」に認定されると、固定資産税の住宅用地特例が解除され、税額が最大6倍になる可能性があります(2023年改正空家法)。
表題登記の手順と費用(ステップ形式)
表題登記は土地家屋調査士という資格者に依頼します。司法書士とは別の専門家で、建物の測量・図面作成・申請書作成を担います。
STEP 1:土地家屋調査士に相談・依頼する
まず地元の土地家屋調査士に相談します。土地家屋調査士会のWebサイトから近くの調査士を探すことができます。相談は多くの場合無料です。
宅建業者の視点:「書類が何も揃っていないので相談しにくい」という方が多いのですが、土地家屋調査士はそうした状況に慣れています。現地を見てから「何が必要で何が揃っているか」を整理してくれますので、まず連絡してみることをおすすめします。
STEP 2:必要書類を準備する
標準的に必要な書類は以下の通りです。
| 書類 | 入手先 |
|---|---|
| 建築確認通知書(確認済証) | 建築当時の施工業者 or 市区町村 |
| 検査済証 | 建築当時の施工業者 or 市区町村 |
| 工事完了引渡証明書 | 施工業者(社印・印鑑証明書も必要) |
| 施工業者の印鑑証明書 | 施工業者(廃業している場合は不要なことも) |
| 所有者(相続人)の住民票 | 市区町村 |
| 戸籍謄本(被相続人との関係証明) | 市区町村 |
| 固定資産税の課税明細書 | 市区町村・届出書類 |
昭和の建物や農村部の建物は、書類が一切残っていないケースも多いです。その場合は、固定資産課税台帳の記録、国土地理院の航空写真、近隣住民の証言などを補完資料として活用できます。土地家屋調査士が具体的な方法を案内してくれます。
STEP 3:現地調査・図面作成
土地家屋調査士が現地で建物の測量を行い、建物図面と各階平面図を作成します。この作業に1〜2週間程度かかるのが一般的です。
STEP 4:法務局へ申請
作成された図面と申請書類を法務局に提出します。申請は土地家屋調査士が代行するのが通常です。
STEP 5:登記完了(通常2〜3週間)
法務局での審査が完了すると、登記識別情報通知(登記済証の代わりとなる書類)が発行されます。標準的な処理期間は申請から2〜3週間です。
費用の目安
| 費用の種類 | 目安 |
|---|---|
| 土地家屋調査士への報酬 | 8〜15万円 |
| 登録免許税(表題登記) | 0円(表題登記自体は登録免許税が不要) |
| 書類取得費用 | 1〜2万円 |
| 合計 | 9〜17万円程度 |
書類が揃っていないケースや建物の規模が大きい場合は、費用が上振れすることがあります。事前に見積もりを取ることをおすすめします。
表題登記後に必要な登記手続き
表題登記が完了しても、建物に「誰の所有か」という情報はまだ入っていません。所有者を登記するには、さらに以下の手続きが必要です。
所有権保存登記(司法書士が担当)
表題登記が完了した後、初めて所有者を登録するのが所有権保存登記です。この登記を行ってはじめて「誰の建物か」が公的に確定します。
| 費用の種類 | 目安 |
|---|---|
| 司法書士への報酬 | 3〜7万円 |
| 登録免許税 | 固定資産税評価額 × 0.4% |
| 合計 | 4〜10万円程度 |
※登録免許税には、一定要件を満たす住宅について2027年3月31日まで軽減措置があります。
相続登記(司法書士が担当)
所有権保存登記で被相続人(亡くなった方)名義にした後、相続人名義への変更(相続登記)が必要です。または、省略して相続人名義で直接所有権保存登記できる場合もあります。どちらが適切かは司法書士と相談してください。
| 費用の種類 | 目安 |
|---|---|
| 司法書士への報酬 | 5〜15万円 |
| 登録免許税 | 固定資産税評価額 × 0.4%(相続の場合) |
| 戸籍書類取得費用 | 1〜3万円 |
| 合計 | 7〜20万円程度 |
※不動産価額が100万円以下の場合は、相続による所有権移転の登録免許税が免税(2027年3月31日まで)。
未登記建物を「買取」で解決する方法
表題登記・所有権保存登記・相続登記をすべて自分で手配すると、費用は合計で25〜50万円程度になることもあります。さらに、手続きが完了するまでに3〜6か月かかることも珍しくありません。
買取業者(直接買取)に依頼することで、こうした負担を大幅に軽減できます。
| 仲介売却 | 買取 | |
|---|---|---|
| 登記が必要なタイミング | 売却前に全登記完了が必要 | 登記と並行して進めることができる |
| 登記費用のサポート | なし | 買取条件に組み込めるケースあり |
| 買主のローン審査 | あり | なし(現金買取) |
| 売却完了まで | 5〜8か月 | 2〜3か月 |
| 仲介手数料 | 売却価格の3%+6万円+税 | 不要 |
買取の場合、現金での決済のため買主側のローン審査がありません。また、多くの買取業者は土地家屋調査士・司法書士と連携しており、表題登記から相続登記まで一括してサポートできる体制を持っています。
登記費用を買取価格の中に組み込む(売主負担を減らす)交渉も可能なケースがあります。具体的な条件は業者によって異なりますので、早めに相談して確認することをおすすめします。
買取を使った解決の流れ
1. 無料相談(登記状況・物件の状況をお聞きします)
未登記であっても相談可能です。表題登記の見通し、相続人の状況、物件の概況をヒアリングします。
2. 土地家屋調査士・司法書士のご紹介
連携する専門家をご紹介します。表題登記・相続登記を進めながら、買取査定を同時に行います。
3. 登記手続きの進行と査定額の提示
登記が進む段階に合わせて、買取価格の条件を詰めていきます。
4. 登記完了と同時に売買契約・決済
表題登記・相続登記が完了したタイミングで売買契約を締結し、現金で決済します。
よくある質問
Q. 表題登記と相続登記の両方が必要な場合、費用の合計はいくらくらいになりますか?
A. 標準的なケースで、土地家屋調査士報酬(表題登記)8〜15万円+司法書士報酬(所有権保存+相続登記)8〜22万円+登録免許税・書類費用3〜5万円で、合計20〜40万円程度になることが多いです。物件の規模、相続人の数、書類の状況によって変動します。事前に複数の専門家から見積もりを取ることをおすすめします。
Q. 建物が古すぎて、施工業者がもう存在しないかもしれません。
A. 施工業者が廃業している場合でも、固定資産税の課税台帳、航空写真、近隣住民の証言を代替書類として活用する方法があります。土地家屋調査士がケースに応じた対応策を提案してくれますので、まず相談してみてください。
Q. 増築部分だけが未登記になっているケースも同じ手続きが必要ですか?
A. 増築部分の未登記の場合は「建物表題部変更登記」が必要です。こちらも土地家屋調査士の業務です。費用は5〜10万円程度が目安です。元の建物が登記されている場合は、表題登記(新規)とは手続きが異なりますのでご注意ください。
Q. 相続税の申告はどのタイミングで必要になりますか?
A. 相続税の申告期限は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内です。相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。相続財産が基礎控除を超える場合は税理士への相談をおすすめします。未登記建物でも、固定資産税評価額などを基に相続財産として計上する必要があります。
Q. 未登記建物の場合、買取相談はいつ(どの段階で)すればいいですか?
A. 早ければ早いほど選択肢が広がります。「まだ表題登記が終わっていない」「相続人同士の話し合いが始まったばかり」という段階でも相談いただけます。むしろ早めにご連絡いただくことで、登記の段取りと査定を同時並行で進めやすくなります。
まとめ
- 未登記建物は法務局の登記簿に存在しないため、仲介での売却ができない
- 売却には「表題登記 → 所有権保存登記 → 相続登記」の3ステップが必要
- 表題登記は土地家屋調査士に依頼。費用の目安は8〜15万円
- 書類が揃わない古い建物でも、固定資産台帳・航空写真などで対応できるケースがある
- 買取業者に相談すれば、登記と売却を同時並行で進められる。登記費用の負担を交渉できる場合もある
登記が完了していない状態のままご相談いただいても問題ありません。まず現状をお聞きして、次のステップをご提案します。
相続登記義務化の詳細については相続登記義務化 完全対応ガイド2026もあわせてご覧ください。未登記の不動産の売却全般については未登記の空き家・相続アパートは売れる?登記前に売る方法を宅建業者が解説もご参考ください。
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