借地権付き建物を相続したら?地主通知・名義変更・売却の全手順【2026年版】
借地権付き建物を相続した場合、地主の承諾は不要です。ただし、相続後には「地主への通知」「相続登記(名義変更)」「地代の引き継ぎ」「今後の方針決定」という4つの手順が必要になります。
「親が亡くなり、実家が借地の上に建っていることが初めてわかった」——こうしたご相談が増えています。借地権付きの不動産は通常の土地付き建物と異なり、地主との関係・地代・更新の仕組みなど、相続後に整理すべきことが複数あります。
この記事では、借地権付き建物を相続した直後にすべきことを、ステップ形式でわかりやすくまとめています。
借地権付き建物の相続で「まず知っておく」3つのポイント
相続の手続きを進める前に、借地権に関する基本的な事実を把握しておくと混乱しません。
① 相続は地主の承諾が不要
借地権の「譲渡」(第三者への売却など)には地主の承諾が必要ですが、相続による借地権の引き継ぎは「譲渡」には当たりません。そのため、地主の同意なしに借地権を相続することができます。
これは判例・通説ともに確立した解釈であり、多くの借地人が誤解している点でもあります。「地主に許可をもらわないといけないの?」と心配される方も多いのですが、法律上は不要です。
② 相続登記(名義変更)は義務化されている
2024年4月1日に施行された改正不動産登記法により、相続で取得した不動産は、相続を知った日から3年以内に相続登記(名義変更)をすることが義務化されました(不動産登記法第76条の2)。
正当な理由なく期限を過ぎると、10万円以下の過料が科される可能性があります。借地権付き建物も例外ではありません。早めに司法書士に相談しておくことをおすすめします。
③ 地代・更新料の支払い義務はそのまま引き継ぐ
地主との借地契約は相続によって自動的に継続されます。地代の支払い義務は被相続人(亡くなった方)から相続人にそのまま引き継がれます。
相続後に地代を滞納すると、地主から契約解除を求められるリスクがあります。相続が発生したら、まず地代の支払い状況と振込先を確認してください。
相続発生後にすべき全手順(ステップ形式)
STEP 1:借地契約書を探す
最初に、被相続人が保管していた借地契約書(土地賃貸借契約書)を探すことから始めます。
| 確認すべき内容 | なぜ重要か |
|---|---|
| 借地権の種類(旧借地権/普通借地権/定期借地権) | 売却時の条件・更新の有無が変わる |
| 契約期間と次回更新時期 | 更新料の発生タイミングを把握 |
| 地代の金額・支払方法 | 滞納防止のために必須 |
| 借地面積と地番 | 相続登記の申請に必要 |
| 譲渡・転貸に関する条項 | 将来売却する際に承諾料の根拠になる |
契約書が見当たらない場合は、固定資産税の課税明細書や法務局の登記簿謄本から土地の情報を確認できます。地主に問い合わせて再交付してもらうことも可能です。
STEP 2:地主へ相続の通知をする
法律上は義務ではありませんが、相続人が変わったことを地主に通知するのが実務上の常識です。連絡しないまま放置すると、地主が被相続人への連絡を続け、地代の支払い先や契約の管理がずれてしまいます。
通知の方法は、内容証明郵便か、署名付きの書面の郵送が確実です。以下の内容を伝えます。
- 被相続人が亡くなったこと(死亡年月日)
- 相続人の氏名・住所・連絡先
- 今後の地代の支払い方法(振込先等を確認)
- 借地契約を継続する意思がある旨
地主との関係を良好に保つことが、将来の売却交渉や更新交渉を円滑にします。
STEP 3:相続登記(名義変更)をする
借地権付き建物の相続登記は司法書士に依頼します。建物の登記名義を被相続人から相続人に変更する手続きです(土地は借地なので土地の登記は変更不要)。
必要書類と費用については、次のセクションで詳しく解説します。
STEP 4:地代支払いの引き継ぎを確定させる
相続登記が完了したら、地主に対して相続人名義での地代支払いを開始する旨を書面で伝え、振込先や支払方法を改めて確認します。
口座振替で支払っていた場合は金融機関への届出変更も必要です。地代の領収書や振込記録は将来の売却時にも参考資料になりますので、保管しておくことをおすすめします。
STEP 5:今後の方針を決める
借地権付き建物をどうするかを相続人間で話し合います。選択肢は大きく3つです。
| 選択肢 | 内容 |
|---|---|
| そのまま住む | 地代を払いながら居住を継続。建替え時は地主の承諾が必要 |
| 賃貸として活用 | 転貸には地主の承諾が必要(借地借家法) |
| 売却・手放す | 地主への売却または第三者・買取業者への売却(後述) |
相続登記(名義変更)の具体的な手続きと費用
手続きを担うのは司法書士
借地権付き建物の相続登記は司法書士が担当します。土地家屋調査士(建物の表題登記を担う)とは別の専門家です。
主な必要書類
| 書類 | 入手先 |
|---|---|
| 被相続人の戸籍謄本(出生〜死亡まで) | 市区町村 |
| 相続人全員の現在の戸籍謄本 | 市区町村 |
| 被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票) | 市区町村 |
| 相続人の住民票 | 市区町村 |
| 固定資産税評価証明書(建物分) | 市区町村 |
| 遺産分割協議書(相続人が複数の場合) | 司法書士が作成補助 |
| 相続人全員の印鑑証明書(遺産分割協議書がある場合) | 市区町村 |
借地権付きの場合、土地の登記名義変更は不要です(土地は地主のもの)。建物の登記のみを被相続人から相続人へ変更します。
費用の目安
| 費用の種類 | 目安 |
|---|---|
| 司法書士への報酬 | 5〜12万円 |
| 登録免許税 | 固定資産税評価額 × 0.4%(相続の場合) |
| 戸籍等の書類取得費用 | 1〜3万円 |
| 合計 | 7〜17万円程度 |
相続人が複数で遺産分割協議書の作成が必要な場合は、やや費用が増えることがあります。不動産の評価額が100万円以下の場合、登録免許税が免税になるケースがあります(2027年3月31日まで)。
期限:相続を知った日から3年以内
相続登記の期限は「相続を知った日から3年以内」です。期限を過ぎると正当な理由がない限り10万円以下の過料が科される可能性があります。「相続が発生してから3年」ではなく「相続したことを知ったときから3年」である点に注意してください。
過去の相続(2024年4月以前に発生したもの)にも義務化は適用されますが、経過措置があります(2027年3月31日まで)。
地主との関係を整理する(地代・承諾・更新)
地代の増減をめぐるトラブルに備える
相続後、地主から「地代を上げたい」と申し出られることがあります。地代の増減請求は借地借家法第11条に基づき認められていますが、一方的に増額できるわけではありません。
交渉がまとまらない場合は、調停・裁判に移行するケースもあります。いきなり拒否したり、支払いを止めたりすると契約解除のリスクがあるため、不服があっても一旦は従前の地代を供託しながら交渉を続けるのが実務上の対処法です。
建て替え・リフォームには地主の承諾が必要
借地上の建物を建て替えるには、地主の承諾が必要です。承諾を得ずに建て替えた場合、地主から借地契約の解除を求められる可能性があります。
リフォーム(増築を伴わない修繕)については承諾が不要なケースが多いですが、増築・改築を伴う場合は事前に地主と相談することをおすすめします。
更新料の取り扱い
更新料については法律に明確な規定はなく、契約書の定めに従います。旧借地権(1992年以前の契約)では、更新料を支払うことが慣行として定着しているケースが多く、金額は地域や契約によって異なります。更新時期が近い場合は、契約書を確認して準備を始めてください。
相続した借地権付き建物を手放したい場合の選択肢
「相続はしたが、住む予定はないし地代を払い続けるのも負担」——こうした場合は、借地権付き建物を売却・手放すことを検討します。
選択肢1:地主に買い取ってもらう
地主に借地権と建物をまとめて買い取ってもらう方法です。地主にとっては自分の土地に設定されている借地権を解消できるため、交渉がまとまりやすい場合があります。承諾料の問題も生じません。
目安価格:更地価格の60〜70%程度(立地・建物の状態による)
選択肢2:第三者に売却する
地主の承諾を得たうえで、第三者に売却する方法です。承諾料は借地権価格の約10%が目安で、売主が負担するのが一般的です。
借地権付き物件は銀行ローンが通りにくいため、一般の個人に売るのは難しいケースがあります。借地権を専門に扱う不動産会社に相談することをおすすめします。
選択肢3:買取業者に直接売却する
借地権付き不動産の買取に対応した業者(当社のような訳あり物件の買取専門業者)に直接売却する方法です。
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 地主との交渉を代行してもらえる | 市場価格よりやや低くなる |
| 仲介手数料がかからない | ― |
| 最短1〜2か月で現金化できる | ― |
| 相続登記と並行して進められる | ― |
地主との関係が複雑で売却の話を進めにくい場合や、「早く手放したい」「相続人同士で合意できない」という場合は、まず買取業者に相談するのが近道です。
宅建業者の視点:借地権付き建物の相続ご相談で多いのが「地主が高齢で誰と話せばいいかわからない」「地主が法人(昔の不動産会社)で連絡先が不明」というケースです。こうした場合でも、法務局の登記簿から地主側の情報を確認し、交渉を進めることができます。まずご連絡ください。
相続人が複数いる場合の注意点
相続人が複数いる場合、借地権付き建物の売却には相続人全員の合意が必要です。1人でも反対すると売却が進みません。
遺産分割協議が難しい場合は、以下の方法を検討します。
- 調停:家庭裁判所の遺産分割調停を利用する
- 持分買取:自分の持分だけを買取業者に売却する(共有状態のままでも一部の持分は売却可能)
よくある質問
Q. 借地権付き建物を相続したが、建物が老朽化していて使える状態ではない。どうすればいい?
A. 建物が使えない状態でも借地権には価値があります。建物を解体して更地で地主に返すと、借地権は消滅し地代も払わなくていいですが、借地権価格分の金銭補償なしに返してしまうことになります。売却する場合は、建物が老朽化していても買取業者が対応できるケースが多いです。まず査定を受けてみることをおすすめします。
Q. 地主が行方不明または高齢で対話できない場合、どうしたらいいですか?
A. 地主が行方不明の場合、法務局の登記簿で地主側の権利者を確認し、法定代理人・相続人・成年後見人と交渉することになります。地主側の相続も発生している場合は、弁護士や司法書士に相談のうえ、不在者財産管理人の選任申立てなど法的手段を検討します。買取業者はこうした複雑な案件にも対応していますので、まず相談してみてください。
Q. 相続登記が済んでいない借地権付き建物でも、買取の相談はできますか?
A. はい、できます。相続登記が未完了の状態でも相談可能です。登記と売却を同時並行で進める段取りを一緒に組み立てられます。
Q. 定期借地権(50年契約など)を相続した場合、期間満了後はどうなりますか?
A. 定期借地権の場合、契約期間満了で借地権は消滅し、土地を地主に返還する義務があります(建物の取壊しが必要になる場合も)。残存期間が短くなるほど借地権の価値が下がるため、売却を検討するなら早めに動くことをおすすめします。
Q. 相続した借地権付き建物に住んでいない場合、地代を払い続ける必要がありますか?
A. 借地契約が継続している限り、居住・未使用にかかわらず地代の支払い義務は続きます。地代を滞納すると契約解除のリスクがあります。「使わないなら早く手放したい」という場合は、売却か地主への返還(ただし価値ゼロに近くなる可能性あり)を検討してください。
まとめ
- 借地権の相続に地主の承諾は不要だが、通知は実務上必要
- 相続登記(名義変更)は3年以内の義務。違反すると10万円以下の過料
- 地代・更新料の支払い義務はそのまま引き継ぐ。滞納は契約解除のリスク
- 売却する場合は地主への売却・第三者売却・買取業者の3択
- 相続人が複数いる場合は全員の合意が必要。まとまらない場合は持分売却も選択肢
借地権付き建物の相続は、手続きが複雑に感じられますが、順番に対処すれば解決できます。
借地権付き建物の売却方法の全体像については借地権付き建物の売却方法もあわせてご覧ください。相続登記の義務化については相続登記義務化 完全対応ガイド2026で詳しく解説しています。相続不動産の処分全般については相続不動産の処分 完全ガイド2026もご参考ください。
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