海外在住・非居住者が日本の相続不動産を売る方法|委任状・源泉徴収・手続き全解説【2026年版】
海外在住・非居住者でも、日本の相続不動産は売却できます。必要なのは「委任状の準備(アポスティーユまたは領事公証)」「相続登記の完了」「非居住者への源泉徴収ルールの理解」の3点です。手続きを正しく踏めば、帰国せずに売却を完結できるケースもあります。
「親が亡くなって、大阪の実家が相続財産に含まれていた。でも自分は海外に住んでいて、すぐには帰れない」——そんなご相談が増えています。
2024年4月1日から相続登記が義務化され、相続を知った日から3年以内に名義変更をしないと、10万円以下の過料が科される可能性があります。この義務は海外在住者にも適用されます。距離や言語の壁で後回しにしがちですが、早めに動き始めることが余計なコストと手間を防ぐ一番の方法です。
海外在住者が日本の相続不動産を売るための3つのポイント
ポイント①:相続登記の義務化に対応する(3年以内)
2024年4月1日施行の相続登記義務化により、相続開始を知った日から3年以内に相続登記(名義変更)が必要です。2024年4月以前の相続も対象となっており、2027年3月31日までの猶予期限が設けられています。
海外在住の場合、国内の司法書士を代理人として委任することで、手続きを進めることができます。委任状を作成し、必要書類(戸籍謄本・在外公館発行の在外公館証明書等)を揃えれば、本人が帰国しなくても相続登記を申請できます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 義務化施行日 | 2024年4月1日 |
| 対応期限 | 相続を知った日から3年以内 |
| 過去の相続への適用 | あり(猶予期限:2027年3月31日まで) |
| 違反した場合 | 10万円以下の過料(正当な理由がある場合は免除の可能性あり) |
相続登記の手続き全般については相続登記義務化 完全対応ガイド2026もあわせてご覧ください。
ポイント②:委任状の準備(アポスティーユまたは領事公証)
海外在住者が国内の代理人(家族・司法書士・弁護士)に売却手続きを委任するには、法的に有効な委任状が必要です。日本国外で作成した委任状を日本国内で使うには、以下のいずれかの手続きが必要になります。
アポスティーユ(ハーグ条約加盟国の場合)
ハーグ条約(外国公文書の認証を不要とする条約)に加盟している国では、公証人が認証した書類にアポスティーユ(Apostille)という証明を付けることで、日本でも効力が認められます。米国・英国・オーストラリア・カナダ・フランス・ドイツ・シンガポールなど、主要国の多くが加盟しています。
在外公館での公証(領事公証)
居住国が条約未加盟の場合、または書類の性質によっては、在外日本大使館・領事館での公証(領事公証)が必要です。領事公証は日本の公証と同等の効力を持ちます。予約が必要な公館が多いため、早めに管轄の在外公館へ問い合わせることをおすすめします。
宅建業者の視点:委任状には「売買契約の締結」「決済(残代金の受領)」「司法書士への再委任」など、権限の範囲を明確に記載する必要があります。記載が不十分だと追加書類が必要になり、手続きが遅れることがあります。専門家と内容を確認してから作成することを強くおすすめします。
ポイント③:非居住者への源泉徴収ルール(売買代金の10.21%)
日本の税制上、非居住者が日本の不動産を売却した場合、一定の条件のもとで買主に源泉徴収の義務が発生します。
源泉徴収税率:売買代金の10.21%(所得税10%+復興特別所得税0.21%)
ただし、買主が個人で自己または家族の居住用として取得し、かつ売買価格が2億円以下の場合は源泉徴収が不要です。
| 買主の条件 | 源泉徴収 |
|---|---|
| 買主が法人(会社・買取業者等) | 必要(売買代金の10.21%) |
| 買主が個人・非居住用または2億円超 | 必要(売買代金の10.21%) |
| 買主が個人・居住用・2億円以下 | 不要 |
源泉徴収は「前払いの税金」のようなものです。翌年の確定申告(または還付申告)で実際の税負担と精算されます。申告には国内の税理士を税務代理人として選任することで、海外からでも手続きを進めることができます。
海外在住者が日本の相続不動産を売る手順(ステップ別)
手続きの全体像は以下の通りです。並行して進められる部分もありますので、まず現状を整理することから始めてください。
STEP 1:相続の状況を整理する
まず以下の点を確認します。
- 相続人は何人いるか(全員が売却に合意しているか)
- 物件の登記名義は誰になっているか(亡くなった方の名義のまま?)
- 遺産分割協議書の作成は完了しているか
- 相続放棄の期限(相続開始から3か月)は過ぎているか
STEP 2:国内の代理人(司法書士等)を選任する
海外から国内の手続きを進めるため、信頼できる司法書士または弁護士を代理人として選びます。買取業者に相談すると、連携している司法書士を紹介してもらえるケースが多く、手続きの窓口を一本化できます。
STEP 3:委任状を作成・公証する
代理人と打ち合わせのうえ、委任状の内容(権限の範囲・代理人の氏名・物件情報等)を確定します。その後、居住国でアポスティーユまたは領事公証を取得します。公証機関の予約状況によっては、1〜2か月かかることもあります。
STEP 4:相続登記を完了させる
司法書士が戸籍謄本・遺産分割協議書等の書類を揃え、相続登記を申請します。相続登記が完了しないと売買契約を締結できないため、この手続きを優先して進めることが重要です。法務局での審査・登記完了まで通常2〜4週間かかります。
STEP 5:売却(査定・契約・決済)
登記完了後、買取業者との売買契約を締結します。買取業者(法人)への売却では、売買代金の10.21%が源泉徴収され、買主側が納付します。手元に残る代金は「売買代金 − 源泉徴収額」となり、確定申告後に過不足を精算します。
STEP 6:確定申告(翌年3月15日まで)
売却した翌年の確定申告期限(3月15日)までに、日本の税務署へ申告が必要です。国内の税理士に税務代理人を依頼することで、海外からでも申告手続きを進めることができます。
買取を使えば、帰国なしで売却できるケースも
仲介(一般的な不動産会社)で売却する場合、内覧の立会い・重要事項説明・引渡しなど、国内での対応が複数回必要になります。
買取業者(直接買取)であれば、委任状による代理人対応で手続きを一括して進めやすく、売却完了まで本人が帰国しない形での対応が可能なケースもあります。
| 仲介 | 買取 | |
|---|---|---|
| 内覧対応 | 原則必要(代理人も可) | 不要(業者が現地確認) |
| 重要事項説明 | 代理人出席可(事前要確認) | 代理人対応可能 |
| 売却完了まで | 3〜12か月 | 1〜3か月 |
| 仲介手数料 | 売却価格の3%+6万円+税 | 不要 |
| 現況買取(片付け不要) | 通常不可 | 可能 |
当社の場合、LINEやメールで物件の状況をお聞きし、現地確認(現地への訪問は当社が対応)のうえで査定額をご提示します。委任状が整った段階で、代理人を通して売買契約・決済を進めることができます。
よくある質問
Q. 海外在住で戸籍謄本が取れないのですが、相続手続きは進められますか?
A. 戸籍謄本は、委任状で家族や司法書士に代理取得を依頼できます。また、一部の市区町村ではマイナンバーカードを使ったオンライン申請や郵便申請にも対応しています。具体的な方法は司法書士にご相談いただくとスムーズです。
Q. 相続登記が終わる前に買取の相談はできますか?
A. ご相談いただけます。登記が完了していない段階からご連絡いただくことで、登記の手配と査定を同時並行で進められます。登記が整ってから準備を始めると時間がかかりますので、早めのご相談をおすすめします。
Q. 日本と居住国の両方で課税されてしまいますか?
A. 日本での売却益には日本の所得税が課されます。居住国でも課税される場合がありますが、多くの国では日本との租税条約があり、外国税額控除で二重課税を防ぐ仕組みがあります。居住国での申告については、現地の税理士・会計士にご確認ください。
Q. 売却代金を海外に送金することはできますか?
A. 可能です。ただし、取引を行う金融機関の規定や、居住国の外為規制(一定金額以上の送金に届出が必要な場合など)に従う必要があります。送金の手続きや注意点は、代金を受け取る口座を管理する金融機関にご確認ください。
Q. 相続人が複数いて、一部が海外在住の場合はどうなりますか?
A. 相続人の全員が売却に同意していることが必要です。海外在住の相続人も含め、各自が委任状を用意することで、代理人を通じた手続きが可能です。相続人の数が多い場合や意見がまとまっていない場合は、早めに司法書士に相談されることをおすすめします。
まとめ
- 海外在住・非居住者でも日本の相続不動産は売却できる
- 委任状(アポスティーユまたは領事公証)で代理人に手続きを委任する
- 法人への売却では売買代金の10.21%が源泉徴収される。翌年の確定申告で精算
- 相続登記義務化(2024年4月施行)は海外在住者も対象。3年以内の対応が必要
- 買取業者を使えば、帰国なしで売却を完結できるケースがある
登記が完了していない段階からのご相談も歓迎します。現在の状況をお聞きして、次のステップをご一緒に整理します。
相続した空き家の税制優遇については相続した空き家を売るときの3,000万円特別控除もあわせてご覧ください。
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