空き家のミカタ

農地を相続したら売れない?農地法の壁と宅地転用なしで手放す方法

空き家のミカタ編集部|宅地建物取引業者(大阪府知事(1)第65646号)
相続した農地(田んぼ・棚田)の航空写真。農地法の制約で「転用なしでは売れない」と悩む方が多い

TL;DR — 農地を転用なしで手放す方法まとめ 農地を宅地や駐車場に転用(地目変更)しなくても手放せる方法は4つあります。①農業委員会の許可で農家へ売る(農地法3条)、②農地バンクに貸す、③相続土地国庫帰属制度で国に引き取ってもらう、④訳あり専門買取業者に相談する。農振農地や市街化調整区域の農地でも、必ず手放せる方法はあります。

「農地を相続したけれど、農業をするつもりはない。転用するには費用も時間もかかると聞いた。転用しなくても手放せないだろうか」——そんなご相談が増えています。

農地は一般の土地と異なり、農地法という特別な規制があるため、自由に売ったり人に渡したりすることができません。しかし「転用(宅地・駐車場への地目変更)が難しい農地」でも、転用なしで手放す方法は複数あります

この記事では、宅地転用をせずに農地を手放せる4つの方法を、手続きの流れ・費用・期間とあわせてご説明します。


農地が「転用なし」でしか手放せないケースとは

農地を宅地に転用できれば、一般市場で売りやすくなります。しかし、転用そのものが難しい農地があります。

農業振興地域内農用地区域(農振農地)は転用が原則できない

農振農地(農業振興地域整備計画で農用地区域に指定された農地)は、農業保全のために国が指定している土地です。転用するには「農振除外」の申請が先に必要で、市区町村の審査・農林水産省への協議・公告縦覧などを経るため、最短でも6ヶ月〜1年以上かかります。申請しても除外されないケースも珍しくありません。

市街化調整区域内の農地は転用の見通しが立ちにくい

市街化を抑制するエリア(市街化調整区域)にある農地を転用するには、農業委員会・都道府県知事の許可が必要です。農業目的以外への転用は許可されないケースが多く、住宅用地や駐車場にしたくても許可が下りないことがあります。

このような農地では、転用を前提とした売却を諦め、「農地のままで手放す」方法を選ぶことが現実的です。


農地を転用せずに手放す4つの方法

農地の処分方法について農業委員会や専門業者に相談している様子

方法①:農業委員会の許可を得て農家に売る(農地法3条)

農地を農地のまま売却する場合、農地法第3条に基づく農業委員会の許可が必要です。買い手は農業従事者(農家・農業法人・農地所有適格法人)に限られます。

手続きの流れ

  1. 農業委員会に許可申請(売主・買主が共同で申請、または委任)
  2. 農業委員会で審査・許可(通常、月1回の総会で審議。申請〜許可まで1〜2ヶ月)
  3. 許可後に売買契約・決済・所有権移転登記

費用の目安

  • 農業委員会への申請費用:無料〜数千円(市区町村による)
  • 司法書士報酬(所有権移転登記):5〜10万円程度

注意点

農地法3条では、買い手が「取得後の農業経営面積が下限面積(通常50アール)以上になること」などの要件があります。近隣の農家や農業法人に売却を打診するか、JAや農業委員会に買い手候補の紹介を依頼する方法があります。


方法②:農地バンク(農地中間管理機構)に貸す

農地中間管理機構(農地バンク)は、農地を借りたい農家と貸したいオーナーをつなぐ公的機関です(各都道府県に1機関)。農地バンクを通じて農地を貸し出すと、農地法3条の許可申請が不要で、利用権設定の届出のみで手続きが完了します。

メリット

  • 賃料収入が毎年入る(金額は農地の立地・面積による)
  • 農業委員会の許可申請が不要
  • 農地の管理(草刈り・耕作)を借り手の農家が行う

デメリット

  • 売却ではないため、まとまった現金はすぐに得られない
  • 最低貸出期間が通常5〜10年あり、途中解約が難しい
  • 農地バンクが借り手を見つけられない場合は利用できない

農地バンクへの申し込みは、各都道府県の農地中間管理機構(名称は都道府県により異なる)の窓口またはウェブサイトから行えます。


方法③:相続土地国庫帰属制度で国に引き取ってもらう

2023年4月27日に施行された相続土地国庫帰属制度(所管:法務省)を使えば、相続した農地を一定の負担金を払って国庫に帰属させることができます。「売れない農地を最終的に手放す手段」として注目されています。

主な要件(農地の場合)

  • 相続(遺産分割・相続放棄以外)または遺贈(相続人への遺贈)で取得した土地であること
  • 工作物・有体物・有害物質がないこと
  • 境界が明確であること(隣地との境界標が確認できること)
  • 担保権・使用収益権が設定されていないこと

負担金の目安

農地1筆あたり約20万円が標準負担金の目安です(面積・状況により変わります)。

手続きの流れ

  1. 管轄の法務局に事前相談
  2. 申請書・添付書類を準備して申請(申請手数料:土地1筆あたり14,000円)
  3. 法務局による審査(承認まで2〜3ヶ月程度)
  4. 承認通知を受けて負担金を納付→国庫帰属

手続きには専門知識が必要なため、司法書士や行政書士に依頼するケースが多くなっています(専門家報酬の目安:5〜20万円程度)。


方法④:訳あり不動産専門の買取業者に相談する

農振農地・市街化調整区域の農地・耕作放棄地など、通常の不動産会社では「扱えない」と断られた農地でも、訳あり不動産を専門とする買取業者であれば対応できる場合があります。

買取業者は農地の活用方法(農家への転売・農地バンク連携・長期保有)を自社で判断するため、転用許可の見通しに関係なく査定・買取提案が可能です。

メリット

  • 手続きや許可取得のサポートを業者が主導
  • 最短数週間〜数ヶ月で現金化できる可能性がある
  • 遠方在住でも手続きを進めやすい

注意点

買取価格は市場価格より低くなる傾向があります。ただし、転用が困難で通常市場では売れない農地の場合、「確実に早く手放せる」という点で専門買取が最も現実的な選択肢となるケースも多くあります。


4つの方法を比較する

日本の棚田(田んぼ)の風景。農地相続後にどの手放し方を選ぶか比較するイメージ
方法現金化期間の目安費用の目安農振農地対応
①農地法3条(農家へ売却)1〜3ヶ月数千円〜十数万円
②農地バンク(貸出し)△(賃料収入のみ)1〜3ヶ月ほぼ無料
③相続土地国庫帰属×(負担金を払う)4〜6ヶ月約20万円〜△(条件次第)
④訳あり専門買取業者数週間〜仲介手数料なし△(要相談)

農地を手放す前に確認すべき3つのこと

1. 相続登記は完了しているか?

農地を処分するには、まず相続登記(名義変更)が必要です。2024年4月施行の不動産登記法改正で、相続を知った日から3年以内の登記が義務化されました(違反時は10万円以下の過料)。未登記のまま放置すると手放す手続きが進められません。

2. 農業委員会への届出は済んでいるか?

農地を相続した場合、農地法第3条の2に基づき、取得を知った日から10ヶ月以内に農業委員会に届出する義務があります。農地を相続したことに気づいていても届出を忘れているケースが多くあります。手続きは無料で、必要書類も比較的少ないため、早めに済ませておくことをお勧めします。

3. 農地の種別(農振農地かどうか)を確認したか?

農振農地かどうかは、市区町村の農業委員会または農林水産担当窓口で確認できます。種別によって使える手放し方が異なるため、最初に確認しておくことで無駄な手続きを避けられます。


よくある質問

Q. 農地法3条で売れる買い手が見つからない場合はどうすればいいですか?

JAや農業委員会に買い手候補の紹介を依頼する方法があります。また農地バンクに貸し出すことで管理負担を手放すことも選択肢です。長期的に買い手が見つからない場合は、相続土地国庫帰属制度や専門買取業者への相談も検討してみてください。

Q. 耕作放棄地になっていても農地バンクに預けられますか?

耕作放棄地は農地バンクへの貸し出しが難しいケースがあります。借り手となる農家が耕作再開できると判断した農地が対象になるためです。まず農地バンクに相談し、受け入れが難しい場合は専門買取業者に相談することをお勧めします。

Q. 農地を相続放棄することはできますか?

相続放棄自体は可能です(家庭裁判所への申述、相続開始を知った日から3ヶ月以内)。ただし2023年4月施行の改正民法により、相続放棄後も次の管理者が決まるまで相続財産の管理義務が続きます。農地の場合は耕作管理も含まれるため、「放棄すれば完全に手を離せる」わけではありません。


まとめ:農地は転用しなくても手放せる方法がある

農地の相続は「農地法の壁があって転用しないと売れない」と思われがちですが、宅地転用をしなくても手放す方法は4つあります。

  • 農業委員会の許可で農家に売る(農地法3条)
  • 農地バンクに貸して管理負担を手放す
  • 相続土地国庫帰属制度で国に引き取ってもらう
  • 訳あり専門買取業者に買い取ってもらう

農振農地や市街化調整区域の農地でも、最初から「転用できないから手放せない」と諦める必要はありません。まず農業委員会や専門業者に相談することで、どの方法が使えるかが明確になります。


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