遺言書がある相続不動産の売却手順|公正証書・自筆証書で何が違う?
親が遺言書を残していた——。こうしたケースで「遺言書があれば話し合いなしに不動産を売れるのか」「公正証書と手書きの遺言では手続きが違うのか」と疑問を持つ方は多くいらっしゃいます。
遺言書がある場合、受遺者(遺言で財産を受け取る人)が明確であれば、原則として遺産分割協議なしに不動産の相続登記・売却を進めることができます。ただし、遺言書の種類によって「検認」の要否が変わり、遺言執行者がいるかどうかで手続きのスムーズさも大きく変わります。
この記事では、遺言書がある場合の相続不動産売却の手順を、遺言書の種類別・ステップ別に説明します。
目次
- 遺言書がある場合と「遺産分割協議」の関係
- 遺言書の3種類と不動産売却への影響
- 遺言執行者がいる場合の注意点
- 遺言書がある場合の相続登記と売却の流れ
- 遺留分侵害額請求に注意
- 訳あり物件は買取業者の活用も選択肢に
- よくあるご質問
遺言書がある場合と「遺産分割協議」の関係
通常の相続では、相続人全員が集まって「誰が何を相続するか」を話し合う遺産分割協議が必要です。全員の同意がまとまらなければ、不動産の名義変更も売却もできません。
しかし、有効な遺言書がある場合、その内容が相続財産のすべてをカバーしていれば、遺産分割協議は原則不要です。遺言書に「〇〇不動産は長男〇〇に相続させる」と明記されていれば、他の相続人の同意がなくても相続登記を進めることができます。
ただし、以下の場合は注意が必要です。
- 遺言書が特定の財産だけをカバーしている場合: 記載のない財産については遺産分割協議が必要
- 遺言書の有効性に疑義がある場合: 遺言書の形式不備・署名なし・日付誤記などがあると遺言が無効になることも
- 相続人が遺留分を主張する場合: 後述しますが、遺留分侵害額請求が来ると売却後にトラブルになるケースがあります
遺言書の3種類と不動産売却への影響
遺言書には主に3種類あり、種類によって「検認」が必要かどうかが変わります。
1. 公正証書遺言(最もスムーズ)
公証役場で作成し、家庭裁判所の検認が不要です。原本が公証役場に保管されているため紛失のリスクもなく、遺言の形式不備による無効リスクも低い遺言書です。
不動産売却の観点では、検認という時間のかかる手続きが省略できる点が最大のメリットです。相続登記の申請に公正証書遺言書の謄本を使えるため、手続きをスムーズに進めることができます。
2. 自筆証書遺言(検認が原則必要)
自分で全文・日付・署名を手書きし、押印した遺言書です。家庭裁判所での検認手続きが必要です(後述の「法務局保管制度」利用の場合を除く)。
検認は遺言書の存在を確認する手続きであり、遺言の有効性を判断するものではありません。費用は収入印紙800円+連絡用郵便切手が必要で、申立から1〜2か月程度かかることが多いです。
宅建業者の視点
「検認前に遺言書を開封・執行した」という相談をいただくことがあります。これは5万円以下の過料の対象になる行為です(民法1004条2項)。自筆証書遺言が出てきたら、まず封を切らずに家庭裁判所に検認申立を行ってください。
3. 自筆証書遺言書保管制度(法務局保管・検認不要)
2020年7月10日から始まった制度です。法務局に自筆証書遺言を保管してもらうことで、相続開始後の家庭裁判所での検認が不要になります(遺言書情報証明書の交付申請で対応)。
| 種類 | 検認 | 作成費用の目安 | 紛失リスク |
|---|---|---|---|
| 公正証書遺言 | 不要 | 財産額による(最低1.1万円〜) | なし(公証役場保管) |
| 自筆証書遺言(自宅保管) | 必要 | なし(自作) | あり |
| 自筆証書遺言(法務局保管) | 不要 | 1件3,900円 | なし |
遺言執行者がいる場合の注意点
遺言書に遺言執行者(いごんしっこうしゃ)が指定されている場合、手続きが大きく変わります。
遺言執行者とは、遺言の内容を実現するための権限を持つ人のことです。遺言書で指定することも、家庭裁判所に選任してもらうこともできます。
遺言執行者がいると何ができるか
- 相続人全員の同意なしに、遺言内容の実行が可能
- 相続登記(名義変更)を単独で申請できる場合がある
- 不動産の売却を遺言の執行として進めることができる
遺言執行者の報酬
遺言書に報酬額の定めがある場合はそれに従います。定めがない場合は、家庭裁判所が財産額や業務量に応じて決定します。目安としては相続財産全体の1〜3%程度が一般的です。
利益相反に注意
遺言執行者が相続人の一人である場合、利益相反の問題が生じることがあります。専門家(弁護士・司法書士)を遺言執行者に指定しておくと、手続きがよりスムーズです。
遺言書がある場合の相続登記と売却の流れ
ステップ1:遺言書の確認と検認(必要な場合)
まず遺言書の種類を確認し、自筆証書遺言(自宅保管)であれば家庭裁判所に検認申立を行います(目安:申立から1〜2か月)。
ステップ2:遺言書の内容を相続人全員に共有
遺言書の内容を相続人全員に知らせます。この段階で遺留分の問題が発生する可能性があるため、確認しておきましょう(後述)。
ステップ3:相続登記(名義変更)
2024年4月1日から相続登記が義務化されており、相続を知った日から3年以内に登記申請が必要です(10万円以下の過料)。
遺言書がある場合、必要書類は以下の通りです。
- 遺言書(公正証書遺言の場合は謄本)または遺言書情報証明書
- 被相続人の死亡が確認できる戸籍謄本
- 受遺者の住民票
- 不動産の固定資産税評価証明書
- 登録免許税(固定資産税評価額の0.4%)
通常の相続(遺産分割協議)と異なり、相続人全員の書類や印鑑証明書は不要なため、手続きがシンプルになります。
ステップ4:売却活動
相続登記が完了したら売却に進めます。仲介業者に依頼する場合は媒介契約を締結し、一般市場で売却します。時間をかけずに現金化したい場合や、訳あり物件の場合は買取業者への相談も選択肢です。
遺留分侵害額請求に注意
遺言書があっても、遺留分(いりゅうぶん)を侵害している場合はトラブルになることがあります。
遺留分とは、兄弟姉妹を除く法定相続人が最低限取得できる相続財産の割合です。たとえば「財産はすべて長男に」という遺言があっても、次男は遺留分(本来受け取れる相続分の1/2)を侵害されれば、長男に対して金銭での請求(遺留分侵害額請求)ができます。
請求期限
遺留分侵害額請求は、遺留分を侵害していると知った日から1年、または相続開始から10年で時効消滅します(民法1048条)。
売却後に請求が来るリスク
不動産を売却した後に遺留分侵害額請求が来ることがあります。その場合、受遺者(不動産を受け取った人)は金銭で支払うことになります。
不安な場合は、売却前に他の相続人に「遺留分侵害額請求をしない」旨の書面(相続分不存在証明書等)を取り付けるか、弁護士に相談することをお勧めします。
訳あり物件は買取業者の活用も選択肢に
遺言書があっても、不動産が以下のような状態では仲介市場では売れにくい場合があります。
- 再建築不可の古家・空き家
- 老朽化したアパート(相続後もほとんど管理されていなかった等)
- 事故物件(孤独死・自殺等)
- 遺留分トラブルが継続中で早期に手放したい
訳あり物件の買取専門業者であれば、現況のまま・最短数日〜数週間で現金化できる場合があります。仲介手数料もかかりません。
相続登記が完了していることが前提になりますので、まず登記を進めてからご相談ください。相続登記の手続きについては相続登記義務化の対応ガイドもご参照ください。
よくあるご質問
Q. 遺言書がある場合、遺産分割協議は必要ですか?
A. 遺言書の内容が相続財産全体をカバーしており、受遺者が明確な場合は、遺産分割協議なしに不動産の名義変更・売却を進められます。ただし遺言書で指定されていない財産が残っている場合は、その部分について遺産分割協議が必要です。
Q. 自筆証書遺言がある場合、すぐに不動産を売れますか?
A. 自筆証書遺言の場合、まず家庭裁判所で「検認(けんにん)」という手続きが必要です(法務局保管の場合は不要)。検認前に遺言書を開封・執行すると5万円以下の過料の対象になります。検認には申立から1〜2か月程度かかるため、早めに申立てることをお勧めします。
Q. 遺言執行者がいると売却はどう変わりますか?
A. 遺言執行者がいる場合、相続人全員の同意を得なくても遺言の内容を実行できます。不動産売却を「遺言の執行」として進める場合、遺言執行者が単独で相続登記や売却手続きを行えるケースがあります。ただし相続人に不利益が生じる場合は利益相反の問題が生じることがあるため、専門家への確認を推奨します。
Q. 遺言書があっても訳あり物件は売れますか?
A. 遺言書がある場合でも、再建築不可・事故物件・共有持分・老朽化した空き家などの訳あり物件は、通常の不動産仲介では売れにくい傾向があります。訳あり物件の買取専門業者であれば、現況のまま・短期間で買取ができる場合があります。遺言書の内容確認と相続登記を済ませてからご相談ください。
→ 60秒で概算査定(無料・匿名OK) 物件種別・築年数・エリアを選ぶだけで市場価格と概算買取価格を即時表示。
まとめ
- 遺言書があれば原則、遺産分割協議なしに相続登記・売却を進められる
- 公正証書遺言は検認不要。自筆証書遺言(自宅保管)は家庭裁判所の検認が必要(法務局保管は不要)
- 遺言執行者がいると手続きがスムーズに。利益相反には注意
- 相続登記は2024年4月義務化・3年以内。登録免許税は評価額の0.4%
- 遺留分侵害がある場合は売却前に専門家に確認を。請求期限は知った日から1年
- 訳あり物件は買取業者を活用すると短期現金化が可能
「遺言書を見つけたが、次に何をすればいいかわからない」という方のご相談も受け付けています。どんな状況でもまずお気軽にご連絡ください。
このカテゴリの全ガイド一覧: → 相続不動産 完全ハブ【2026年版】
無料査定・ご相談はこちら
遺言書がある相続不動産の売却について、ご状況をお聞かせください。相続登記前のご相談でも構いません。査定・相談は無料で、しつこい営業は行いません。