空き家のミカタ

相続アパートの維持費シミュレーション|固定資産税・修繕費・管理費の10年間コスト

宅建業者|宅地建物取引業者(大阪府知事(1)第65646号)
築古アパートの外観 相続アパート維持費シミュレーションのイメージ

「相続したアパートをとりあえず持っておこう」と考えていませんか。築古アパートの維持費は、想像以上にかかります。

この記事では、築30年・8室・大阪市内という具体的なモデルケースを使い、固定資産税・修繕費・管理費・空室損失を含めた維持費を10年分シミュレーションします。あわせて、売却した場合の手取り額と比較し、「持ち続けるか・手放すか」を判断するための材料をお伝えします。

モデルケースの設定

シミュレーションに使うモデルケースは以下のとおりです。

項目 内容
所在地 大阪市内(住居系エリア)
構造 木造2階建て
築年数 30年(旧耐震ではないが、設備の老朽化が進行中)
部屋数 8室(1K・各25㎡)
家賃設定 月4.5万円/戸
現在の入居率 75%(6室入居・2室空室)
土地面積 約150㎡
固定資産税評価額 土地2,000万円・建物400万円

このモデルケースは、当社がこれまで査定してきた大阪市内の相続アパートの中でも、よくあるパターンです。

年間維持費の内訳

電卓と書類 アパート維持費の計算イメージ

まず、1年間にかかる維持費の内訳を整理します。

① 固定資産税・都市計画税

固定資産税と都市計画税は、不動産を所有している限り毎年かかる税金です。

項目 計算方法 年間金額
土地の固定資産税 2,000万円 × 1/6(住宅用地特例)× 1.4% 約4.7万円
建物の固定資産税 400万円 × 1.4% 約5.6万円
土地の都市計画税 2,000万円 × 1/3(住宅用地特例)× 0.3% 約2.0万円
建物の都市計画税 400万円 × 0.3% 約1.2万円
合計 約13.5万円

住宅用地の特例(小規模住宅用地は固定資産税が1/6、都市計画税が1/3に軽減)が適用されている前提です。建物を解体して更地にすると、この特例が外れ、土地の固定資産税は最大6倍になります。「解体すれば楽になる」とは限らない理由がここにあります。

出典:地方税法第349条の3の2、第702条の3(住宅用地の課税標準の特例)

② 修繕費

築30年のアパートでは、大規模修繕と日常的な修繕の両方が必要になります。国土交通省の「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」によると、木造アパートの修繕費は築30年前後で急増する傾向があります。

修繕項目 想定時期 費用目安
外壁塗装 築30〜35年で2回目 150〜250万円
屋根防水 築25〜30年で2回目 80〜150万円
給排水管の更新 築30年前後 150〜300万円
給湯器交換(8室分) 10〜15年ごと 80〜120万円
エアコン交換(8室分) 10〜15年ごと 56〜80万円
退去時の原状回復 退去のたび 1室あたり10〜20万円

10年間の修繕費合計は、少なく見積もっても500〜900万円が見込まれます。ここでは年間平均70万円で試算します。

出典:国土交通省「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」(令和3年3月改訂版)

③ 管理費(管理会社への委託費)

管理会社に管理を委託する場合の費用は以下のとおりです。

項目 計算方法 年間金額
管理委託費 月額家賃の5%(入居6室分) 約16.2万円
入居者募集費(広告料) 家賃1〜2ヶ月分(年1室退去と仮定) 約4.5〜9万円
合計 約21〜25万円

遠方に住んでいる場合、管理会社への委託は必須です。自主管理を選ぶと管理費は抑えられますが、入居者対応・家賃督促・設備トラブル対応をすべて自分で行う必要があります。

④ 空室による家賃損失

空室は「目に見えにくいコスト」ですが、経営を大きく圧迫します。

入居率 年間家賃収入 空室損失額
100%(満室) 432万円 0円
75%(6/8室) 324万円 108万円
62.5%(5/8室) 270万円 162万円
50%(4/8室) 216万円 216万円

築古アパートの入居率は、年数が経つほど下がる傾向があります。大阪市の賃貸住宅の平均空室率は約18%(総務省「住宅・土地統計調査」2023年)ですが、築30年超の木造アパートでは空室率30〜40%になることも珍しくありません

⑤ その他の費用

項目 年間金額
火災保険・地震保険 約8〜12万円
税理士・確定申告費用 約5〜10万円
共用部の電気・水道代 約3〜5万円
合計 約16〜27万円

10年間の累計コスト試算

上記をまとめ、10年間の累計維持費をシミュレーションします。

集合住宅の外壁 築古アパートの修繕イメージ

前提条件

  • 入居率は初年度75%から、毎年1.5%ずつ低下と仮定(築古アパートの一般的な傾向)
  • 修繕費は年間平均70万円(10年間で大規模修繕1回を含む)
  • 家賃は5年目に5%値下げ(競争力維持のため)

シミュレーション結果

年数 入居率 家賃収入 維持費合計 年間収支 累計収支
1年目 75.0% 324万円 191万円 +133万円 +133万円
2年目 73.5% 317万円 191万円 +126万円 +259万円
3年目 72.0% 311万円 191万円 +120万円 +379万円
4年目 70.5% 304万円 191万円 +113万円 +492万円
5年目 69.0% 283万円 191万円 +92万円 +584万円
6年目 67.5% 277万円 241万円 +36万円 +620万円
7年目 66.0% 270万円 191万円 +79万円 +699万円
8年目 64.5% 264万円 191万円 +73万円 +772万円
9年目 63.0% 258万円 191万円 +67万円 +839万円
10年目 61.5% 252万円 241万円 +11万円 +850万円

※ 維持費の内訳(通常年):固定資産税13.5万円+修繕費70万円+管理費23万円+保険等20万円+空室損失分は家賃収入から控除済み=約191万円(6年目・10年目は大規模修繕で+50万円)

ここが重要:10年で手残りは850万円

一見すると10年間で850万円のプラスですが、ここから所得税・住民税が差し引かれます。不動産所得にかかる税率は、他の所得と合算した総合課税です。

課税所得に応じた税率 税額目安(年間手残り100万円の場合)
所得税+住民税:約30%(課税所得330万円超の場合) 約30万円/年

税引後の10年間の手残りは、約600万円前後になります。

さらに、このシミュレーションには以下のリスクが含まれていません。

  • 突発的な大規模修繕(給排水管の破裂、雨漏り等):100〜300万円
  • 入居者トラブル(家賃滞納、孤独死、騒音問題等):対応費用+空室期間の長期化
  • 災害リスク(地震・台風による損壊):保険でカバーしきれない場合あり
  • 金利上昇リスク:ローンが残っている場合、返済額が増加

売却した場合との比較

では、今すぐ売却した場合と、10年間保有して売却した場合を比較してみます。

今すぐ売却した場合

項目 金額
買取価格(想定) 1,500〜1,800万円
譲渡所得税・住民税 約60〜100万円(取得費・保有期間による)
仲介手数料 なし(買取の場合)
手取り額 約1,400〜1,700万円

買取価格は、土地値(路線価ベースで約1,200〜1,500万円)に建物の残存価値と収益性を加味した金額です。築30年の木造アパートは建物価値がほぼゼロに近いため、土地値が価格の大部分を占めます。

10年後に売却した場合

項目 金額
10年間の手残り(税引後) 約600万円
10年後の買取価格(想定) 800〜1,200万円
譲渡所得税・住民税 約30〜60万円
手取り額 約770〜1,140万円
10年間の収入+売却額の合計 約1,370〜1,740万円

比較まとめ

シナリオ 合計手取り額
今すぐ売却 約1,400〜1,700万円
10年保有後に売却 約1,370〜1,740万円

金額だけを見ると、大きな差はありません。しかし、10年間保有する場合には以下のコストが加わります。

  • 時間と手間:管理会社とのやりとり、入居者対応、修繕の判断、確定申告
  • 精神的な負担:空室が増えていく不安、突発的なトラブルへの対応
  • 突発リスク:上記のシミュレーションに含まれていない大規模修繕や災害
  • 機会損失:売却で得たお金を他の資産運用に回せた可能性

「持ち続けても大きく得をするわけではない」ということが、この試算から見えてきます。

どんな場合に早期売却を検討すべきか

以下に当てはまる方は、早めの売却を検討する価値があります。

  • 築35年以上で大規模修繕が迫っている:修繕費を払う前に売却した方がトータルでプラスになるケースが多い
  • 空室率が30%を超えている:今後さらに悪化する可能性が高い
  • 遠方に住んでいて管理が難しい:管理の手間と交通費を考えると保有のメリットが薄い
  • 相続人が複数いて意見がまとまらない:共有名義のまま放置すると、将来さらに問題が複雑になる
  • 他に相続税の支払い原資がない:不動産を売却して現金化する必要がある

判断に迷う場合は、まず査定を取って「今いくらで売れるのか」を把握することが第一歩です。査定は無料で、売却の義務はありません。

まとめ

相続アパートの維持費は、固定資産税・修繕費・管理費・空室損失を合わせると年間190万円以上になることがあります。10年間の累計では、税引後の手残りは約600万円。一方、今すぐ売却すれば1,400〜1,700万円の手取りが見込めます。

重要なのは、「なんとなく持ち続ける」のではなく、数字を見て冷静に判断することです。

維持費のシミュレーションをしたうえで、「それでも持ち続ける価値がある」と判断できるなら保有を続ける選択もあります。しかし、「よくわからないからとりあえず持っておく」という判断は、毎年190万円以上のコストを払い続けることと同じです。


関連するガイド記事


相続アパートの維持費・売却のご相談はこちら

空き家のミカタは、相続アパート・築古物件の買取に対応している宅建業者です。「持ち続けるべきか、売るべきか」の判断からご相談いただけます。

お客様の物件情報をもとに、維持費の概算と買取価格の両方をお伝えしますので、比較検討の材料としてご活用ください。査定は無料です。

LINEで無料相談する

お問い合わせフォームはこちら

無料査定の相談準備メモを作る →

相続不動産の出口戦略 — 完全ガイド

相続登記を放置した実家、まだ売れる?罰則が始まった今、3つの選択肢を宅建業者が解説【2026年版】

関連する売却ガイド

相続登記を放置した実家、まだ売れる?罰則が始まった今、3つの選択肢を宅建業者が解説【2026年版】

2024年4月から相続登記が義務化、10万円以下の過料が現実に。放置してきた実家でも今すぐ売れる方法があります。①今すぐ登記②登記と売却を同時並行(費用先出し不要)③相続人申告登記でつなぐ——3つの選択肢のメリット・費用・スケジュールを宅建業者が比較解説します。

鍵がない・立会いできない場合の相談準備|相続不動産

相続した不動産の鍵が見つからない、現地で立ち会える人がいない。そんな状態でも相談は始められます。鍵と立会いの状況を6通りに分けた伝え方と、相談の前に確かめておくことをまとめました。

解体費用は確定申告でどう扱う|相続した家の取壊し費用を取得費と譲渡費用に振り分ける【2026年版】

相続した家の解体費用を確定申告でどう計上するかを、国税庁の条文どおりに整理しました。売るために壊したなら譲渡費用(No.3255)、土地を使うために買って壊したなら取得費(No.3252)。賃貸物件の必要経費、相続税の債務控除との違い、3,000万円特別控除と取壊しの期限、大阪市の実家を解体して1,800万円で売った場合の税額シミュレーションまで、宅地建物取引業者が整理しています。

ご相談はこちら

相続・空き家・訳あり不動産のお悩み、
状況だけでもお聞かせください

相談だけで大丈夫です。売るかどうか決まっていなくても構いません。しつこい勧誘や営業電話は一切いたしません。

1

友だち追加

下のボタンを押すだけ。登録情報の入力は不要です

2

状況を送る

大阪・近畿の物件の場所と状況を、わかる範囲で送ってください。写真があればより正確です

3

代表が返信

買取できるか・いくらくらいかを、代表の八木が原則24時間以内にお答えします

\ いま友だち追加すると、5つの実用資料をプレゼント /

  • ① 空き家の維持費・放置コスト計算シート(書き込み式)
  • ② 相続した家の売却 期限つき段取りチェックシート
  • ③ 相続登記・売却の必要書類チェックリスト(取得先つき)
  • ④ 悪質な買取業者を見抜く10のチェックリスト
  • ⑤ 大阪市24区 空き家補助金・窓口 早見表 2026

友だち追加後、トークに「特典」と送るとその場で5枚まとめて届きます(無料)

LINEで無料相談する

友だち追加後、トークで話しかけてください(24時間受付)

代表の八木 宏樹が直接対応します

合同会社アルシェ(宅建業免許: 大阪府知事(1)第65646号)

メール: info.arshe@arshe-corp.com

相談・査定 無料秘密厳守大阪・近畿対応しつこい勧誘なし

\ 友だち追加で5大特典 / 維持費計算シートなど実用PDF進呈中

LINEで無料相談査定の相談準備入力任意・無料