空き家のミカタ

相続した賃貸物件に入居者がいる場合の売却方法|立ち退き・オーナーチェンジ・買取を徹底比較【2026年版】

空き家のミカタ編集部|宅地建物取引業者(大阪府知事(1)第65646号)

TL;DR — 相続 アパート 入居者付き 売却 入居者がいる相続アパート・賃貸物件を売るなら①立ち退き交渉(借地借家法第28条で困難・半年〜1年以上)②オーナーチェンジ売却(入居者継続・投資家向け)③専門買取業者への直接売却(最短1〜2週間・現況のまま)の3択。急いで手放したい場合は③が最短。立ち退き料の相場は家賃の6ヶ月〜2年分。空き家のミカタ(宅建業者・大阪府知事(1)第65646号)が全国対応。

Q: 相続した賃貸物件に入居者がいます。売却するにはどうすればいいですか? A: 入居者がいても売却はできます。選択肢は3つ。①立ち退き交渉を成立させてから売る(借地借家法の壁あり)②入居者がいたままオーナーチェンジで売る③専門買取業者に現況のまま売却する。急いで手放したい場合は③が最も早く確実です。

結論:入居者がいる相続賃貸物件を売るなら、「オーナーチェンジ」か「専門買取業者への直接売却」が現実的です。「売りたいから出てください」は法律上通りません。立ち退き交渉には平均で6ヶ月〜1年以上かかり、立ち退き料も発生します。まず相続登記を完了させ、売却方法を決めることが先決です。

「親が亡くなって賃貸物件を相続したが、入居者がいてどうすればいいかわからない」というご相談をよくいただきます。

賃貸物件の相続で多くの方が直面するのが、「入居者がいる状態で売れるのか?」「退去してもらうことはできるのか?」という問題です。

この記事では、入居者がいる相続賃貸物件の売却方法を3パターン比較し、それぞれのメリット・デメリット・かかる時間と費用をお伝えします。

相続したアパートに入居者がいますが、入居者がいるまま売れますか?

結論から言うと、売れます。入居者がいる相続アパートを手放す方法は「入居者がいたまま(オーナーチェンジ)で売る」か「立ち退き交渉をしてから売る」の2択です。

急いで手放したい場合、オーナーチェンジ方式が最短です。専門の買取業者なら入居者が住んでいる状態のまま査定・買取を行うため、立ち退き料ゼロ・最短2週間で売却が完了します。「入居者に退去してもらわないと売れない」というのは誤解です。

相続しても入居者をすぐに退去させられない理由

借地借家法という「入居者保護の壁」

相続した賃貸物件に入居者がいる場合、多くの方が「自分の物件なのだから、退去してほしいと言えば出ていってもらえるはず」と考えます。

ところが、日本の法律ではそうはなりません。

借地借家法第28条では、賃貸人(オーナー側)からの更新拒絶・解約申し入れには「正当事由」が必要と定められています。

正当事由として認められやすいのは:

  • 建物の老朽化による解体・建替えの必要性(著しい損傷など)
  • 自己または親族が居住する必要性(一戸建てで実際に住む場合など)
  • 立退料の提供(多額の金銭的補償で補完)

「物件を売りたいから」「自分で使いたいから」という理由だけでは正当事由として認められないのが現実です。

普通借家契約と定期借家契約の違い

まず、相続した物件の賃貸借契約が「普通借家契約」か「定期借家契約」かを確認してください。

契約の種類更新オーナーからの解約
普通借家契約自動更新(借主が拒否しない限り更新)正当事由が必要。更新拒絶も容易ではない
定期借家契約更新なし(期間満了で終了)期間満了時に終了。ただし再契約可能

日本の賃貸物件の大多数は普通借家契約です。定期借家契約の場合は契約期間満了で終了しますが、入居者側が再契約を求めるケースも多く、交渉が必要になる場合があります。

相続しても賃貸借契約はそのまま引き継ぐ

相続は包括承継です。被相続人(亡くなった方)が結んでいた賃貸借契約の賃貸人(貸主)の地位も、相続人が引き継ぎます。

入居者から見れば「大家が変わっただけ」です。相続を理由に入居者を退去させることはできません。

賃貸借契約書の確認 相続した賃貸物件の契約内容を把握することが最初のステップ

入居者がいる状態で売却する3つの方法

入居者がいる相続賃貸物件を売却する方法は主に3つあります。

①立ち退き交渉を成立させてから売る

入居者に退去してもらい、空き家にしてから売却する方法です。空き家になると購入層が広がり、価格交渉もしやすくなります。

ただし、実際には次のようなハードルがあります。

立ち退き料の負担:入居者が任意で退去してくれる場合でも、立ち退き料の支払いが事実上必要になります。相場は家賃の6ヶ月〜2年分です。家賃8万円の場合、立ち退き料は48万円〜192万円が目安です。

時間がかかる:交渉開始から退去完了まで、スムーズにいっても6ヶ月〜1年以上かかるのが一般的です。入居者が交渉に応じない場合、裁判手続きに発展するケースもあります。

弁護士費用:立ち退き交渉は専門的な法的知識が必要なため、弁護士に依頼するのが安全です。費用は着手金10〜30万円+報酬で合計30〜100万円程度が目安です。

費用項目目安金額
立ち退き料(家賃8万円の場合)48万〜192万円
弁護士費用(着手金+報酬)30万〜100万円
合計78万〜290万円以上

立ち退きを選ぶ方は、「退去後の売却価格上昇分」が「立ち退き料+弁護士費用+待機期間中のコスト」を上回るかどうかを試算することが重要です。

②オーナーチェンジ物件として市場で売る

入居者がいたまま物件を売却する方法を「オーナーチェンジ」といいます。

買主は現在の賃貸借契約(入居者・家賃・契約条件)をそのまま引き継ぎ、以降の賃料収入を得る形で購入します。

オーナーチェンジのメリット:

  • 立ち退き料・弁護士費用が不要
  • 入居者がいるため賃料収入が確保された「収益物件」として評価される
  • 空室リスクがない状態で売却できる

オーナーチェンジのデメリット:

  • 購入層が限られる:収益物件として購入できる投資家が主な対象となり、一般の個人購入者には売りにくい
  • 価格が下がりやすい:現在の賃料が市場相場より低い場合、利回り計算で売却価格が下がる
  • 内覧ができない:入居者がいるため内部の状態確認が制限され、買主が慎重になりやすい

一般の不動産仲介会社でもオーナーチェンジ物件は取り扱いますが、投資物件専門の不動産会社に依頼する方が買主候補が多く見つかります。

不動産専門家との相談風景 入居者がいる相続物件の売却方法を検討する

③訳あり専門の買取業者に現況で直接売却する

入居者がいる状態のままで、専門の不動産買取業者が直接買い取る方法です。

一般の不動産会社(仲介)は「買主を探す」のが仕事ですが、買取業者は自社で買い取ります。入居者がいること・物件の状態・権利関係の複雑さを前提に査定してくれるため、立ち退き交渉も仲介探しも必要ありません。

この方法のメリット:

  • 最短2〜4週間で現金化できる
  • 立ち退き料・弁護士費用がかからない
  • 入居者への対応を買取業者が引き受ける
  • 相続登記の費用(司法書士費用)だけで手続きが完了できる場合がある

デメリット:

  • 市場価格より売却価格がやや低くなる(一般的に市場価格の70〜80%程度)
  • 業者によって査定価格に差があるため、複数業者への相談が望ましい

「立ち退き料や弁護士費用を差し引いた手取り額」と「買取業者への直接売却で得られる金額」を比較すると、後者が上回るケースは少なくありません。

3つの方法の比較

①立ち退き→仲介売却②オーナーチェンジ(仲介)③専門買取業者に直接売却
売却期間1年〜2年以上3〜6ヶ月最短2〜4週間
立ち退き費用50万〜300万円以上不要不要
売却価格市場価格に近い入居状況により変動市場価格の70〜80%程度
手間大(交渉・法的手続き)中(買主探し)
向いている方時間がある・価格重視収益物件として評価したい早く・確実に手放したい

立ち退き料の相場と交渉のポイント

立ち退き交渉を選ぶ場合、立ち退き料の設定は非常に重要です。

立ち退き料の目安

一般的な立ち退き料の相場は家賃の6ヶ月〜2年分です。ただし、以下の要素で金額は大きく変わります。

  • 入居年数:長年住んでいる入居者ほど生活への影響が大きく、高額になりやすい
  • 代替物件の確保難易度:高齢者・障害者・家族構成によっては移転先が見つかりにくく、高額の補償が必要になる
  • 賃料と市場相場のギャップ:現在の賃料が市場相場より低い(入居者に有利な状態)場合、差額補填が求められる

過去の裁判例では、立ち退き料の認定額が200万〜1,000万円以上になるケースも報告されています(物件の立地・入居者の状況による)。

交渉を進めるときの注意点

  • 口頭での約束は避ける:金額・支払い時期・退去日を書面で合意する
  • 「退去後に支払う」は厳禁:退去と代金支払いは同時履行を原則とする
  • 弁護士を同席させる:入居者が弁護士を立てた場合、こちらも弁護士なしの交渉は不利になる

実際の取引では、立ち退き交渉が長期化して当初の計画が大幅にずれ込むケースを多く見てきました。「半年以内に解決できるだろう」と見込んでいたが2年かかった、という事例も珍しくありません。時間的余裕がない場合や遠方に住んでいる場合は、特に慎重に検討することをお勧めします。

相続後の手続きの流れ

入居者がいる相続賃貸物件の処理は、以下の流れで進めるのが一般的です。

  1. 書類の確認:賃貸借契約書・建物登記簿謄本・固定資産税通知書を収集する
  2. 相続登記:司法書士に依頼して名義変更を完了させる(相続を知った日から3年以内が義務、費用5〜15万円)
  3. 入居者への通知:新しい賃貸人(相続人)の氏名・連絡先・家賃振込先を書面で通知する
  4. 賃料の受け取り開始:家賃振込口座を相続人名義に変更する
  5. 売却方針の決定:①立ち退き交渉 ②オーナーチェンジ ③専門買取のいずれかを選択する
  6. 専門家への相談・売却実行:選んだ方針に応じた専門家(弁護士・買取業者等)に相談する

なお、相続登記が未了のまま売却契約を締結することはできません。相続登記は売却活動を始める前に必ず完了させてください。

よくある失敗パターン

失敗①:「すぐ退去してもらえる」と思って相続登記を後回しにした

相続登記を完了しないと売却手続きが進められません。また、相続登記の義務化(2024年4月から)により、放置すれば過料の対象になります。「入居者との交渉が終わってから登記しよう」と後回しにすると、手続きが重なって時間がかかります。

失敗②:立ち退き料の見積もりが甘く、費用がかさんだ

「少し払えば出てくれるだろう」と軽く見て交渉を始めたが、入居者が弁護士を立てて高額の立ち退き料を要求してきた、というケースは実際に起きています。交渉前に弁護士に「この物件・この入居者ならいくら程度が相場か」を確認することをお勧めします。

失敗③:入居者に「売却する予定」と伝えてしまい、関係が悪化した

退去交渉をする前に「この家を売るつもりです」と伝えてしまい、入居者が警戒して家賃を払わなくなったり、弁護士を立てたりするケースがあります。売却方針が固まる前は、入居者に余計な情報を伝えないことが賢明です。

よくある質問

Q: 入居者が家賃を滞納しているまま相続しました。どうすればいいですか?

A: 賃料滞納の解決は、まず内容証明郵便で支払いを催告することから始まります。3ヶ月以上の滞納が継続している場合、「信頼関係の破壊」として解除事由になり得ます(借地借家法の正当事由とは別のルートです)。ただし法的手続きには時間と費用がかかるため、弁護士への早期相談をお勧めします。滞納物件のまま買取業者に相談できる場合もあります。

Q: 共有名義(兄弟3人)で相続した賃貸物件を売りたい。全員の同意が必要ですか?

A: 賃貸物件の売却には原則として共有者全員の同意が必要です。共有持分の過半数(議決権ベース)があれば賃貸借契約の継続・管理の決定はできますが、売却(処分行為)は全員同意が必要です。意見が合わない場合は「共有物分割請求訴訟」という法的手続きを取ることができます。詳しくは「共有名義不動産の売却方法」もご覧ください。

Q: 相続した物件に亡くなった親族の知人が住んでいます。契約書がない場合は?

A: 契約書がなくても事実上の賃貸借関係(使用貸借を含む)が認定される場合があります。家賃の受渡しがあったかどうか・居住の経緯・口頭での合意内容などが重要な判断材料になります。無断で鍵を変えたり立ち入ったりすることは不法行為になる可能性があります。まず弁護士に状況を整理してもらうことを強くお勧めします。

Q: 一戸建てを相続したが入居者が高齢者で移転が難しそうです。どうすればいいですか?

A: 高齢入居者の場合、立ち退き料の金額が高くなる傾向があります(移転困難性が正当事由の評価に影響するため)。合意退去が難しい場合、オーナーチェンジ(入居者ごと売却)か、専門の買取業者に依頼して入居者対応ごと引き受けてもらう方法が現実的です。

まとめ

相続した賃貸物件に入居者がいる場合の売却方法は3つです。

  1. 立ち退き交渉→仲介売却:時間と費用がかかるが、空き家にしてから高値で売れる可能性がある
  2. オーナーチェンジ売却:入居者はそのまま。投資家向けに売却できるが、購入層が限られる
  3. 専門買取業者への直接売却:最短で現金化できる。立ち退き費用・弁護士費用が不要

「遠方に住んでいて管理できない」「早く手放してスッキリしたい」「入居者とのトラブルに巻き込まれたくない」という方には、専門買取業者への相談が最もストレスの少ない選択肢です。

まず相続登記を完了させ、売却方針を専門家に相談することから始めることをお勧めします。


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執筆監修: 八木宏樹(合同会社アルシェ代表・宅建業免許: 大阪府知事(1)第65646号)|空き家のミカタ代表。専門分野: 相続アパート・入居者付き賃貸物件の買取・オーナーチェンジ支援・立ち退き交渉。相続不動産の売却支援実績多数。

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