空き家のミカタ

【体験談・事例10】農地付き実家を相続。農地法で3年間動けなかった末に解決した全記録

空き家のミカタ編集部|宅地建物取引業者(大阪府知事(1)第65646号)

※本記事で紹介する事例・お客様の声は、実際によくあるご相談内容をもとに構成した参考例です。プライバシー保護等の観点から、地域・金額・状況等は特定できないよう変更しています。

この記事の結論

  1. 農地付きの実家相続で「農地法で売れない」「農振除外が必要」と言われた場合でも、手放せないわけではありません。宅地・建物部分の先行買取+農地の後行決済という2段階の方法で解決できる場合があります。
  2. Fさん(57歳・男性)は農振除外申請を2回失敗し3年間動けなかった農地付き実家を、訳あり専門業者のサポートで宅地+古家120万円・農地60万円・合計180万円で現金化しました。
  3. 「農地は売れない」と諦める前に、まずご相談ください。農地法・農振法に詳しい行政書士と連携して対応します。

Fさんの物件概要

項目内容
所在地兵庫県丹波地方(JR最寄り駅より車20分)
物件種別(宅地部分)木造平屋建て一戸建て
延床面積約55㎡
築年数65年(1961年建築)
宅地面積約200㎡
農地面積農地(田)約650㎡
農地の区分農業振興地域内農用地区域(青地)
空き家期間約3年
建物状態外壁劣化・屋根一部損傷・内部の雨染み・庭と農地の荒廃
相続登記相談時点で完了済み(農業委員会届出も完了済み)
農地(田)に囲まれた古い木造平屋の実家 — 農振地域内農用地区域(青地)の農地付き相続物件のイメージ

農地法とは — なぜ農地付き実家は売りにくいのか

この事例を理解するために、まず「農地法」の基本を押さえておく必要があります。

日本の農地は農業の生産基盤を守るため、農地法によって厳しく保護されています。農地をお持ちの方が「なぜ自分の土地なのに自由に売れないのか」と疑問を持つのは当然ですが、法律上の縛りがあるのが現実です。

農地売買に関する主な農地法の規定

  • 第3条(農地のまま売買する場合):農業委員会の許可が必要。購入できるのは農業従事者のみ。一般の個人・会社は原則として買えない
  • 第5条(農地を転用目的で売買する場合):都道府県知事(一定規模は農業委員会)の許可が必要。農地を宅地等に転用してから売る場合に使う
  • 第3条の2(相続で農地を取得した場合):農業委員会への届出が必要(相続を知った日から10ヶ月以内)。許可ではなく届出なので、農業経験がなくても農地を相続できる

さらに難しいのが、Fさんのケースでした。

農業振興地域内農用地区域(青地)とは:農業振興地域の整備に関する法律(農振法)により、優良農地として保護すべきエリアとして指定された区域です。通称「青地」と呼ばれ、このエリアに指定された農地は農地転用(第5条)自体が原則として認められません。転用許可を申請する前段として、まず「農振除外」(農用地区域からの除外)という手続きが必要になります。

農地の区分転用の扱い
市街化区域内の農地農業委員会への届出のみで転用可(手続きは比較的簡単)
農振白地(農振区域内・農用地区域外)農地転用許可(第4条・第5条)を申請できる
農振青地(農業振興地域内農用地区域)まず農振除外が必要。除外後に転用許可を申請できる
農業振興地域外の農地農地転用許可を申請できる

Fさんが相続した農地は農振青地であり、最も手続きが複雑なケースにあたります。


実家が空き家になるまでの経緯

Fさんの父親は2020年秋から体調を崩し、2021年3月に他界しました。Fさんは現在、神奈川県横浜市でサラリーマンとして勤務しており、農業の経験はまったくありません。父から単独相続した兵庫県丹波地方の実家と農地をどうするか、相続直後から悩んでいました。

相続直後のFさんの状況:「農地があることは知っていましたが、農地に縛りがあるとは思っていませんでした。早く手放して、毎年の管理から解放されたかった」

Fさんはまず、農地法第3条の2に基づく農業委員会への届出と相続登記を2021年4月に完了させました。しかしそこから先が、茨の道でした。


3年間動けなかった経緯 — 農振除外の壁

相談した不動産業者3社、全員「手に負えない」

2021年5月から9月にかけて、Fさんは地元の不動産業者3社に相談しました。

相談した業者回答の内容
A社(丹波地方の地元業者)「農振青地は転用できないので、農振除外が先。2〜3年はかかる」
B社(中古住宅専門)「農地部分は手が出せない。宅地+古家だけなら査定できるが、農地が切り離せないと難しい」
C社(大手フランチャイズ)「農振除外が完了してからでないと動けない。手続きが終わったらまたご連絡ください」

3社とも「農振除外が先決」と言うだけで、具体的なサポートはしてもらえませんでした。

農振除外の申請、2回の失敗

Fさんは市役所農林課に相談しながら、自力で農振除外の申請に挑みました。

1回目の申請(2021年秋)→ 却下(2022年2月)

農振除外申請に必要な「農地の農業利用上の支障が生じていること」「代替農地がないこと」等の要件が十分に立証できていなかったとして、農業委員会の意見照会で否定的意見が付き、申請が認められませんでした。

「申請書類の書き方が悪かったのか、何が足りなかったのかが正直よくわかりませんでした。市役所の担当者に聞いても、要件が整理できていないと言われるだけで…」

2回目の申請(2023年秋)→ 認められず(2024年1月)

2回目は農業委員会の窓口で事前に相談しながら書類を準備しました。しかし審査の過程で近隣農家からの意見照会(農地として活用継続できる者がいるかどうかの確認)が出され、近くに農地を引き継ぎたい農業法人が存在することが判明。「優良農地として継続利用できる可能性がある」として、農振除外が認められませんでした。


農振除外申請書と農地転用許可申請書の書類 — 農地法・農振法の手続きには複数の申請書類が必要

3年間で積み重なったコスト

農振除外が認められない間も、固定資産税や管理費は容赦なくかかり続けました。

費用の種類年間金額(概算)3年間累計
固定資産税(宅地+建物)約7万円約21万円
固定資産税(農地)約1万円約3万円
農地の管理費(草刈り委託等)約4万円約12万円
帰省・現地確認の交通費約0.5万円約1.5万円
累計約12.5万円/年約37.5万円

「農地の草刈りは自分ではできないので、地元の業者さんに頼んでいました。年に2回、春と秋に草刈りをしてもらうだけで4万円近くかかります。農地の固定資産税自体は安くても、管理費が意外にばかにならなかった」


空き家のミカタへの相談から解決まで

2024年3月、Fさんは「農地 売れない 相続 買取」「農振除外 失敗」と検索し、空き家のミカタのサイトにたどり着きました。

「農振除外の壁で3年近く動けなかった話を聞いてもらえるところを探していました。また門前払いされるかもしれないと思いながら、とりあえずLINEでメッセージを送ってみました」

STEP 1:LINEで相談(2024年3月)

「農振青地の農地付き実家を相続したが、農振除外申請を2回失敗した。3年で約38万円のコストがかかっており、もうどうすればいいかわからない」という内容で相談。農業委員会の通知書・固定資産税通知書・登記簿謄本の写真を送付しました。

当日中に確認の返信:「農地法・農振法絡みの案件は対応実績があります。一度詳しい状況を確認させてください」

STEP 2:状況の詳細確認と方針の決定(2024年3月下旬)

登記事項証明書・農業委員会の農振除外不認定通知・固定資産評価証明書・農業委員会の農地台帳(地目確認)を提出。

確認の結果わかったこと:

  • 宅地(200㎡)と古家(築65年)部分:農地法の縛りがないため、通常の訳あり買取が可能
  • 農地(650㎡)部分:農振除外→農地法第5条転用許可という流れで売買が可能だが、農振除外の確実な取得にはサポートが必要

提案された方針:

  1. 第1フェーズ:宅地+古家を先行売買(農地の問題を待たずに現金化できる)
  2. 第2フェーズ:農振除外申請を行政書士サポートで進め、承認後に農地を売買

Fさん:「農地と宅地を分けて進められるとは思っていなかった。その方法があるなら、宅地分は早く現金化できる。それだけでも助かる」

STEP 3:宅地+古家の買取価格提示(2024年4月)

現地調査(提携業者が実施。Fさんは立ち会い不要)の結果:

買取価格:宅地+古家 120万円

価格の根拠(参考)内容
宅地(200㎡)の土地評価約180万円(路線価ベース・農村エリア)
建物の残存価値ほぼゼロ(築65年木造平屋)
解体費用見込み▲約50万円
利益・リスク費用▲残り
買取価格120万円

Fさん:「宅地の土地評価が180万円と聞いて、解体費を差し引いたらこんな値段になるんだなと理解しました。それでも、3年以上固定資産税と管理費を払い続けた状況から解放されるのがまずありがたかった」

STEP 4:第1回決済 — 宅地+古家の売買完了(2024年6月)

売買契約締結から約3週間後に第1回決済。Fさんが宅地と古家を空き家のミカタへ譲渡しました。

費用金額
宅地+古家の売買代金120万円
印紙税▲1,000円
相続登記(分筆分)▲約2万円
第1回手取り約118万円

残置物の処分も業者負担:古い農機具や家財道具がかなりの量残っていましたが、現況買取として買取価格に反映済み。Fさんは一切持ち出す必要がありませんでした。

STEP 5:農振除外の第3回申請と承認(2024年秋〜2025年2月)

農地部分については、提携する行政書士のサポートのもとで3回目の農振除外申請を行いました。

2回の失敗の原因が判明していた点がポイント

  • 1回目の失敗:申請書類の要件立証が不十分
  • 2回目の失敗:近隣農業法人が「農地を継続活用したい」と意見申告

今回は事前に農業法人側に確認。農業法人は「その農地の引き受けは困難」として意見書を取得。農振除外の要件のひとつである「代替農地なし」の立証につながりました。

「農業法人の方が意見書を出してくれたのが大きかったようです。行政書士の先生が事前交渉をきちんとしてくれたおかげです」

2025年2月:農振除外承認

STEP 6:農地転用許可と第2回決済(2025年3月〜4月)

農振除外承認後、農地法第5条の転用許可申請(農業委員会経由で都道府県知事へ)を行いました。

  • 2025年3月:農地転用許可取得
  • 2025年4月:農地の売買契約締結・決済完了
費用金額
農地の売買代金60万円
印紙税▲200円
登記費用(農地分)▲約5万円
第2回手取り約55万円
不動産売買契約書にサインする様子 — 農地の転用許可取得後に第2回の決済が完了

Fさんの最終的な合計手取り額:約173万円

項目金額
第1回決済(宅地+古家)手取り約118万円
第2回決済(農地)手取り約55万円
合計手取り約173万円

「手放さなかった場合」との比較試算

Fさんは第1回決済後、農地の手続き期間中に「あのまま放置し続けていたら」という試算をしてみたといいます。

比較項目売却した場合売らなかった場合(5年追加)
固定資産税(宅地+農地・5年)0円約40万円
農地管理費(5年)0円約20万円
農振除外の申請費用(行政書士等)業者負担約15万円〜20万円(自力の場合)
建物の老朽化・損害リスク0円解体費用約100万円以上
コスト合計(5年)0円約175万円〜180万円以上
手取り約173万円▲維持コストのみ

「5年放置したら維持コストだけで180万円近くかかる計算になりました。今回の手取り173万円と比べると、実質的には350万円以上の差になります。もっと早く動けばよかったと思います」


Fさんの感想

「農振除外が2回失敗したとき、もうこの農地は一生売れないんじゃないかと思っていました。行政書士さんに頼めばよかったとも思いましたが、どこに頼めばいいのかもわからなかった。空き家のミカタに連絡したら、農地と宅地を分けて進められる方法を提案してもらえて、まず宅地から現金化できた。その間も農地の農振除外を並行して進めてくれたので、合計1年ちょっとで全部終わりました。3年間で約38万円使って、ゼロ件しか前進しなかった自分と比べると、早めに専門家に頼るべきだったと思います。農地の60万円は少ないかもしれませんが、これ以上管理費を払い続けることの方が辛かった。解放されたことが一番の安心です」


この事例から学べること

1. 農地付き実家は「農地と宅地を分けて考える」ことができる

農地と宅地を同時に売れない場合でも、宅地・古家を先行売却→農地を後行売却という2段階の進め方が可能です。農地の手続きが長引く間も、宅地部分を先に現金化することで毎年の固定資産税・管理費の負担を減らすことができます。

2. 農振除外は「行政書士サポートで成功率が変わる」

農振除外申請は要件立証・事前調整が重要で、自力での申請は難しいケースが多くあります。特に「近隣に農地を引き継ぎたい農業従事者がいる」「代替農地の有無の立証」などは、事前交渉が必要になることがあります。農地法・農振法に詳しい行政書士への相談が解決への近道です。

3. 農振除外にかかる時間は「申請のタイミング次第」で大きく変わる

農振除外の申請受付は自治体によって年1〜2回しかないため、申請を逃すと半年〜1年待ちになります。「次の受付期間に備えて今から準備する」という段取りが重要で、早めに専門家に相談して受付時期に合わせた準備を進めることが時間の節約につながります。

4. 農地の固定資産税より「管理費」の方が負担になることもある

農地の固定資産税は宅地に比べて低いですが、草刈り・農道整備などの管理費が毎年かかります。遠方に住んでいる場合は管理を業者に委託するしかなく、農地部分の維持コストが累積します。「固定資産税が安いから放置」という選択はコスト計算を誤りやすい落とし穴です。


よくある質問

Q. 農振除外が認められない農地は、全く売れないのですか?

農振除外が認められないまま「農地のままで売る」場合、農業委員会の第3条許可が必要で、購入できるのは農業従事者のみです。農業を継続してくれる方が近隣にいれば売買できる可能性はあります。ただし価格は非常に低くなりがちです。一方で、農振除外のサポートができる専門家と連携して手続きを進めることが、実際には最も有効な手段です。農振除外が絶対に認められないケースは少なく、申請の仕方・要件の整理次第で解決できることが多くあります。

Q. 農振除外にかかる費用はどのくらいですか?

行政書士に依頼する場合、農振除外申請の報酬は10万円〜30万円程度が目安です(自治体・案件の複雑さによります)。その後の農地転用許可申請と合わせると、合計15万円〜40万円程度になるケースが多いです。当社でサポートする場合は、買取費用と合わせてトータルで判断しますので、まずはご相談ください。

Q. 農地を相続したとき、農業委員会へはいつまでに届出が必要ですか?

農地法第3条の2に基づき、相続を知った日から10ヶ月以内に農業委員会への届出が必要です。届出を怠った場合、10万円以下の過料の対象になる可能性があります。なお、相続登記(法務局)については2024年4月から義務化されており、こちらは相続を知った日から3年以内に完了させる必要があります。両方の手続きを忘れずに行うことが大切です。

Q. 農地付き物件の場合、査定から売買完了まで何年かかりますか?

農地の区分によって大きく異なります。市街化区域内の農地であれば農業委員会への届出だけで転用できるため、通常の買取と変わらず数週間〜2ヶ月程度で完了します。農振白地であれば農地転用許可申請で3〜6ヶ月程度。農振青地(Fさんのケース)は農振除外から始まるため、1〜2年かかることがあります。宅地部分がある場合は先行買取で部分的に現金化が可能です。


あなたの農地付き物件も、まずは相談から

Fさんのように「農振除外が必要と言われた」「農振除外を自力で申請して失敗した」「農地法で3年間動けなかった」という方でも、対応できるケースが多くあります。

こんな方はお気軽にご連絡ください

  • 農地付きの実家を相続した
  • 農振除外が必要と言われ、売るのを諦めていた
  • 農振除外申請に失敗したことがある
  • 農地の草刈り・管理が毎年の負担になっている
  • 農業経験がなく、農地をどうすればいいかわからない
  • 遠方にあって管理ができない

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