借地権付き建物を相続したら?地主交渉・売却・買取の3択比較【2026年版】
借地権付き建物を相続したとき、手放す方法は「①地主に交渉して買い取ってもらう・返還する」「②仲介で第三者に売却する」「③買取業者に直接売却する」の3択です。どれを選ぶかによって、手取り額・手続きの手間・完了までの期間が大きく異なります。
「地主とどう話せばいいかわからない」「仲介に出したが買い手がつかない」「地代の負担を早く終わりにしたい」——借地権付き建物の相続後によく聞かれる悩みです。この記事では、3つの選択肢を費用・期間・手取り額・手間の4軸で徹底比較し、あなたの状況に合った方法を選ぶための判断材料をまとめています。
なお、相続発生直後にすべき手続き(地主への通知・相続登記・地代の引き継ぎ)については借地権付き建物を相続したら?地主通知・名義変更・売却の全手順で詳しく解説しています。
借地権付き建物の売却がなぜ難しいのか
借地権付き建物が通常の不動産より売却しにくい主な理由は2つあります。
理由1: 第三者への売却に地主の承諾が必要
借地借家法第19条により、借地権を第三者に譲渡(売却)する場合は地主の承諾が必要です。地主が承諾を渋ったり、高額の承諾料を要求してきたりするケースがあります。承諾料の相場は借地権価格の10%程度とされています。
理由2: 購入者が地代を引き継ぐ必要がある
借地権付き建物を購入した人は、毎月(または毎年)地代を地主に払い続ける必要があります。土地を完全に所有できないという点から、住宅ローンを組める金融機関が限られ、購入希望者の裾野が狭くなります。
この2つの障壁が、借地権付き建物の流通性を下げている主因です。だからこそ、選択肢ごとの違いをきちんと理解したうえで方法を選ぶことが重要です。
選択肢① 地主に交渉して買い取ってもらう・返還する
地主への売却・返還交渉は、もっともシンプルな出口戦略です。地主が借地権を買い取ると、土地と建物の所有権が一本化され(完全所有権化)、地主にとっても土地の資産価値が上がるメリットがあります。
流れと費用
- 地主に相続の連絡をしたうえで、売却の意思を伝える
- 借地権の価格について協議(路線価×借地権割合を根拠として提示する)
- 売買契約を締結→決済
地主への売却であれば、承諾料は不要です。司法書士への抹消登記費用(2〜5万円程度)と登録免許税がかかる程度です。
価格の目安
借地権価格の目安となる計算式は以下のとおりです。
借地権価格の目安 = 路線価(円/㎡)× 土地面積(㎡)× 借地権割合
例: 路線価30万円/㎡、土地100㎡、借地権割合60%(D地区)の場合 → 借地権価格は約1,800万円が目安
借地権割合はAからGまであり、国税庁の路線価図で確認できます(都市部ではD〜B地区=60〜80%が多い)。
ただし実際の交渉では地主が低めの金額を提示してくることが多く、交渉力が手取り額を左右します。事前に不動産業者に査定を依頼しておくと、適正価格の根拠を持って話し合えます。
注意点
- 地主が買い取りに消極的な場合は交渉が長期化する(1〜6ヶ月以上)
- 「更地にして返す」と安易に約束すると、解体費用(30坪の木造で90〜150万円程度)が発生するうえ、借地権の価値をもらえないまま終わる可能性がある
- 地主と良好な関係を保つことが交渉成功の鍵
選択肢② 仲介で第三者に売却する
仲介業者(不動産会社)を通じて市場で購入者を探す方法です。適正な市場価格に近い価格で売却できる可能性が高い一方、地主の承諾取得が必須であり、時間と費用がかかります。
流れと費用
- 仲介業者を選んで媒介契約を締結
- 仲介業者が購入候補者を探す
- 購入候補者が決まったら、地主に承諾を求める
- 地主が承諾→承諾料の支払い→売買契約→決済
主なコストは以下のとおりです。
| 費用項目 | 目安 |
|---|---|
| 仲介手数料 | 売却価格の3%+6万円+消費税(速算式) |
| 地主への承諾料 | 借地権価格の10%程度(相場) |
地主が承諾を拒否した場合
正当な理由なく地主が承諾を拒否する場合、借地借家法第19条第2項に基づき、裁判所に代諾許可を申し立てることができます。裁判所が「地主の承諾に代わる許可」を出せば、売却が可能になります。ただし手続きに6ヶ月〜1年以上かかることがあり、弁護士費用も別途発生します。
仲介売却が難しいケース
次のような事情があると、市場に出しても買い手がつかないことが少なくありません。
- 地主が高齢・認知症・行方不明で承諾を得られない
- 建物が老朽化しており住宅ローンを組める金融機関が限られる
- 旧法借地権で地代が相場より安すぎる(購入後の地代増額リスクを買い手が嫌がる)
- 相続人が複数いて売却の合意がまとまらない
選択肢③ 買取業者に直接売却する
訳あり不動産の買取専門業者に直接売却する方法です。地主の承諾取得・仲介手数料・解体の手配がいずれも不要で、スピードと手間の少なさが最大の特徴です。
流れと費用
- 買取業者に問い合わせ・査定依頼(無料)
- 査定結果をもとに条件を確認
- 売買契約を締結→決済(最短2〜4週間)
- 地主への通知・承諾交渉は業者が行う
費用について:
- 仲介手数料: なし(買取業者への直接売却のため)
- 承諾料: 業者側が負担するか、交渉内容によって取り決める
- 解体費用: なし(現況のまま引き渡し)
価格と速度のトレードオフ
買取業者の提示価格は、一般的に市場価格の60〜80%程度になることが多いです。その分、最短2〜4週間での現金化・仲介手数料ゼロ・地主交渉を業者に任せられるという三つのメリットがあります。
「相続した借地権付き建物を1日でも早く手放したい」「老朽化した建物を現況のままで売りたい」「地主との交渉が進められない」という方には、最も現実的な選択肢です。
担当事例から: 実際に当社が受けたご相談では、地主と10年以上連絡が取れていないまま地代だけ払い続けていたケースがありました。このような状況でも、当社が地主側を調査して連絡を取り、売却を完了できた事例があります。
3択の比較表
| 比較項目 | ①地主への売却 | ②仲介(第三者) | ③買取業者 |
|---|---|---|---|
| 地主の承諾 | 不要 | 必要 | 業者が交渉 |
| 手続きの手間 | 中(交渉が必要) | 大(承諾+仲介) | 小 |
| 完了までの期間 | 1〜6ヶ月 | 3〜12ヶ月以上 | 2〜4週間 |
| 手取り額の目安 | 中(交渉次第) | 大(市場価格) | 中(市場の60〜80%) |
| 仲介手数料 | なし | 売却価格の3%+6万円+税 | なし |
| 承諾料 | なし | 借地権価格の10%程度 | 業者が負担することが多い |
| 建物解体の必要性 | 場合による | 場合による | 不要 |
どれを選ぶべきか?判断フロー
地主との関係が良好で、相場価格で話し合える自信がある → ①地主への売却
最もコストが少なく、スムーズな解決が期待できます。「地主も早く土地を完全所有したいはず」という状況であれば最優先に検討する価値があります。
少しでも高く売りたい・時間に余裕がある → ②仲介売却
ただし地主の承諾が取れないと長期化するリスクがあります。地主との関係が良好かどうかを事前に確認してから媒介契約を締結してください。
地主との交渉が難しい・早く手放したい・建物が老朽化している → ③買取業者
手続きの煩雑さが最も少なく、現況のまま最短で現金化できます。相続登記が完了していない段階でも相談できます。
まずは複数の業者に査定を依頼して比較することをおすすめします。仲介業者と買取業者の両方に当たり、それぞれの条件を見てから判断する方法が現実的です。
まとめ
- 借地権付き建物を手放す方法は「①地主へ売却・返還」「②仲介売却」「③買取業者」の3択
- 地主の承諾が必要なのは②仲介売却のみ(地主への売却・買取業者はいずれも承諾不要または業者対応)
- 手取り額は②仲介が最も高い可能性があるが、承諾料・仲介手数料・期間のコストもかかる
- スピード重視・手間なし・老朽化物件なら③買取業者が現実的
- 更地にして地主に返還すると解体費用(90〜150万円程度)+借地権価値の喪失になるため、安易に選ばない
- 相続登記は2024年4月施行の義務化により、相続を知った日から3年以内に必要(違反すると10万円以下の過料)
相続した借地権付き建物の売却方法の詳細については借地権付き建物の売却方法もあわせてご覧ください。相続登記の手続きについては相続登記義務化 完全対応ガイド2026をご参照ください。
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