洪水浸水想定区域の不動産を売りたい|告知義務・売却方法・現況買取【2026年版】

「ハザードマップを見たら、自分の家が洪水浸水想定区域に入っていた。この不動産、売れるのだろうか…」
相続した実家を処分しようとして、はじめてハザードマップを確認したら浸水想定区域に指定されていた——そういったご相談を、私たちはよくお受けします。あるいは売却査定を依頼した不動産会社から「水害リスクがあるので売りにくい」と言われた、という方もいらっしゃいます。
結論から申し上げると、洪水浸水想定区域の不動産でも売ることはできます。ただし2020年の宅建業法改正により水害リスクの告知が義務化されたこと、住宅ローン審査への影響があることから、一般的な仲介では売れ残りやすい「訳あり物件」に分類されます。
このガイドでは、洪水浸水想定区域に指定された不動産の売却について、宅建業者の立場から正確な情報をお伝えします。
洪水浸水想定区域とは何か
洪水浸水想定区域は、水防法(水害防止法)第14条に基づき、国土交通省・都道府県の河川管理者が指定する区域です。大規模な洪水が発生した場合に浸水が想定されるエリアを示します。
2種類の浸水想定区域
2015年の水防法改正により、浸水想定区域は2つの基準で指定されるようになりました。
| 区分 | 通称 | 基準となる降雨 | 概要 |
|---|---|---|---|
| 計画規模浸水想定区域 | L1 | 100年に1度程度の確率 | これまでのハザードマップの主な基準。河川整備の目標規模。 |
| 想定最大規模浸水想定区域 | L2 | 1000年に1度程度の確率 | 2015年改正で追加。過去最大級の降雨を想定した最大リスク。 |
現在のハザードマップでは、L2(想定最大規模)の浸水域が主に表示されています。L2は従来のL1より広い範囲・深い浸水深を示すため、「以前のハザードマップでは入っていなかったのに、更新後は入ってしまった」というケースが増えています。
浸水深の区分
洪水浸水想定区域は、予想される浸水の深さ(浸水深)によって以下のように色分けされています。
| 浸水深 | 想定される被害の目安 |
|---|---|
| 0.5m未満 | 床下浸水の可能性。成人なら移動可能だが建物への影響あり |
| 0.5〜3m未満 | 床上浸水。1〜2階が浸水するレベル。住めなくなる可能性 |
| 3〜5m未満 | 2階まで完全に浸水。木造家屋は流失・倒壊のリスク |
| 5〜10m未満 | 3階建て以上でなければ屋根まで水没するレベル |
| 10m以上 | 大規模洪水での最大リスク域 |
ハザードマップで0.5〜3m未満(床上浸水レベル)以上の区域に入っていると、不動産売却への影響が顕著に出やすいです。
全国での指定状況
国土交通省の資料によると、全国約3,000河川が洪水浸水想定区域の指定対象です。日本の国土は約3分の2が山地であり、河川の上流から下流にかけての沖積低地・氾濫原には多くの住宅地が広がっています。都市部でも、かつて田んぼや湿地だった場所を埋め立てて開発した地域では、浸水リスクが高い場合があります。
洪水浸水想定区域の不動産が売れにくい3つの理由

洪水浸水想定区域の物件が一般仲介では売れにくい理由は、主に3つあります。
理由①:住宅ローン審査で担保評価が下がる
一般的な不動産購入では、買主が住宅ローンを利用します。金融機関は融資の際に物件の担保評価を行いますが、洪水浸水想定区域の物件——特に浸水深が大きいエリアの物件——は担保評価が低くなる傾向があります。
担保評価が低いと融資可能額が下がり、「希望する金額でローンが組めない」「ローン審査が通らない」という事態が起きます。現金購入できる個人買主は少なく、一般仲介市場での成約率が下がります。
理由②:2020年の法改正で告知義務が明確化され買主が敬遠しやすくなった
2020年8月28日、宅地建物取引業法施行規則の改正が施行されました。この改正により、不動産取引の重要事項説明において水害リスク(洪水・雨水出水・高潮)に関するハザードマップの情報を説明することが義務付けられました。
改正以前は告知が任意だったため「知らなかった」という買主も多かったのですが、改正後は買主が購入前に必ずハザードマップ情報を受け取ります。水害リスクを知った上で購入を判断するため、リスクのある物件を避ける傾向が強まっています。
理由③:気候変動により水害リスクへの関心が高まっている
近年の集中豪雨や台風の大型化により、日本各地で水害被害が増加しています。「浸水想定区域には住みたくない」という意識が高まり、リスクのある物件の価格が下落・売れ残りやすくなっています。
国土交通省の調査でも、水害リスクが高いエリアの地価は他のエリアと比べて数%〜十数%程度低い傾向にあることが示されています。
2020年の宅建業法改正:水害リスク告知義務化の全容
何が義務化されたのか
2020年8月28日の宅建業法施行規則改正(国土交通省令第97号)により、不動産取引の重要事項説明において以下の3種類の水害リスク情報の告知が義務付けられました。
| 水害の種類 | 根拠となるハザードマップ |
|---|---|
| 洪水 | 洪水浸水想定区域(水防法第14条) |
| 雨水出水(内水氾濫) | 雨水出水浸水想定区域(下水道法) |
| 高潮 | 高潮浸水想定区域(水防法第14条の2) |
対象となるのは「市区町村が作成するハザードマップ(国土交通省ハザードマップポータルサイトへの掲載を依頼したもの)に記載された内容」です。
改正前後の違い
2020年8月改正以前も、土砂災害警戒区域については重要事項説明での告知義務がありました。しかし洪水・内水・高潮については任意だったため、「ハザードマップを見せなかった」「リスクの説明がなかった」というトラブルが起きていました。
改正後は、これらの水害リスクについても告知が法律上の義務となりました。告知を怠った宅建業者は宅建業法違反として行政処分の対象になります。
売主として覚えておくべきこと
売主の立場から見ると、以下の点を理解しておくことが重要です。
- 仲介業者を通じた売却: 業者が重要事項説明で必ず告知するため、買主は浸水リスクを承知した上で購入することになります
- 個人間売買: 宅建業者を通じない場合も、民法上の契約不適合責任から告知義務があります。知っていながら隠した場合、後で損害賠償・契約解除を求められるリスクがあります
- 過去の浸水履歴: 過去に床上・床下浸水の被害があった場合も、これは物件の状態に関わる情報として告知が必要です(心理的瑕疵ではなく物理的状態の告知)
洪水浸水想定区域の不動産を売る4つの方法
方法①:一般仲介で売却する
通常の不動産仲介(仲介業者が買主を探す)方法です。成約した場合、売却価格の約3〜4%を仲介手数料として支払います。
メリット: 成約価格が高くなる可能性がある
デメリット: 住宅ローンが通りにくく買主が見つかりにくい。売れ残ると価格を下げ続ける状況になりやすい。売却完了まで数か月〜1年以上かかることも。水害リスクを承知した買主を探す必要があるため、時間がかかる
方法②:訳あり物件の買取専門業者に依頼する
訳あり買取専門業者が自社で物件を直接購入します。仲介を通さないため仲介手数料は不要です。
メリット: 住宅ローンを使わないため担保評価に左右されない。現況のまま(修繕・解体・片付け不要)買取可能。最短数週間で現金化できる。浸水想定区域の物件でも対応可能
デメリット: 仲介売却と比べると買取価格は低くなる(市場価格の60〜80%程度が目安)
方法③:嵩上げ・止水工事を実施してから売却する
建物の床を嵩上げする工事や、防水板・止水工事を施してから売却する方法です。
メリット: 物理的なリスク低減により一般買主への訴求力が上がる可能性がある
デメリット: 嵩上げ工事は数十万〜数百万円の費用がかかる。工事後も浸水想定区域の指定は変わらないため告知義務は残る。費用対効果が低いケースが多い
方法④:空き家バンク・相続土地国庫帰属制度を検討する
一部の自治体では洪水浸水想定区域内の物件でも空き家バンクに登録できます。また、2023年4月施行の相続土地国庫帰属制度を利用して国に引き渡す方法も検討できます。ただし国庫帰属は承認要件が非常に厳しく(建物がある場合は原則不可)、水害リスクの高い土地は却下されるケースも多いです。
メリット: 売却益は期待できないが保有リスクから解放される場合がある
デメリット: 条件が厳しく活用できないケースが多い。建物がある場合は国庫帰属の対象外となることが多い
直接買取という選択肢を真剣に考えてください

「仲介で売れなかった」「査定額が想定より低かった」という場合は、訳あり買取専門業者への直接依頼が現実的な選択肢です。
なぜ買取専門業者なら買えるのか
訳あり買取専門業者が洪水浸水想定区域の物件でも購入できる理由は、住宅ローンを使わず自社資金で購入するためです。銀行の担保評価や融資審査に左右されません。
また、水害リスクがある物件のその後の活用方法(リノベーション・用途変更・更地化など)についてノウハウを持っているため、リスクを織り込んだ上で査定価格を算出します。隠された瑕疵を後で発見してトラブルになるリスクも低く、透明性の高い取引ができます。
買取価格の目安
洪水浸水想定区域内の物件の買取価格は、以下の要因で変わります。
- 浸水深の区分: 0.5m未満(床下)と0.5〜3m(床上)以上では大きく異なる
- 過去の浸水被害の有無: 実際に被害を受けた物件は修繕状況によって評価が変わる
- 建物の構造・築年数: RC造・鉄骨造は木造より水害への耐性が高い
- エリアの需要: 都市部・交通利便性の高いエリアは評価が下がりにくい
目安として、同等エリアの区域外物件と比べて浸水深0.5m未満:5〜15%程度の価格ダウン、0.5〜3m:15〜30%程度の価格ダウンとなるケースが多いです。ただしこれはあくまで目安で、個別の物件状況によって大きく変わります。
保有コストとの比較を必ずしてください

買取価格が低くなることを「損」と感じるかもしれません。しかし、保有し続けるコスト・リスクと比較することが重要です。
- 毎年の固定資産税: 評価額によりますが年間数万円〜数十万円
- 建物維持管理費: 修繕・清掃・庭木管理など年間数万円〜
- 水害リスク: 実際に浸水被害を受けると修繕費が数十万〜数百万円
- 特定空き家に指定されるリスク: 管理が行き届かなくなると固定資産税が最大6倍になる可能性
10年間保有した場合の累積コストを計算すると、早期に買取で現金化した方が経済的に合理的なケースが少なくありません。
ハザードマップで自分の物件を確認する方法
売却を検討する前に、まず自分の物件の浸水リスクを正確に把握しましょう。
国土交通省「重ねるハザードマップ」
国土交通省のハザードマップポータルサイト(disaportal.gsi.go.jp)では、「重ねるハザードマップ」機能を使って、住所を入力するだけで以下の情報を一度に確認できます。
- 洪水浸水想定区域(計画規模・想定最大規模)
- 土砂災害警戒区域・特別警戒区域
- 津波浸水想定区域
- 高潮浸水想定区域
- 液状化の危険度
市区町村のハザードマップ
各市区町村が発行するハザードマップ(防災マップ)でも、洪水・内水・土砂災害のリスクを地図上で確認できます。自治体によっては、より詳細な地域情報が掲載されています。
確認時の注意点
ハザードマップは定期的に更新されます。以前確認したときは区域外だったものが、最新版では区域内になっていることもあります。売却を検討する際は最新版のハザードマップで必ず再確認してください。
よくある質問
Q: 洪水浸水想定区域の物件ですが、建物が古く傷んでいます。現況のまま買取してもらえますか?
はい。当社は現況買取を基本としており、建物の老朽化・雨漏り・シロアリ被害・残置物の有無に関わらず査定します。解体や片付けをしてから売る必要はありません。まず査定をご依頼ください。
Q: ハザードマップでは浸水想定区域に入っているが、周辺には堤防があります。それでも影響しますか?
堤防の存在は浸水リスクを下げる要素ですが、洪水浸水想定区域の指定解除には至りません。想定最大規模(1000年確率)のハザードマップは、堤防が決壊した場合を想定して作成されているためです。不動産取引上はハザードマップに基づいて告知義務が生じます。
Q: 洪水浸水想定区域に加えて、再建築不可物件でもあります。二重の訳あり物件でも買取できますか?
対応できます。洪水浸水想定区域と再建築不可が重なると確かに一般仲介では難しくなりますが、当社は複合的な訳あり問題に対応した買取を行っています。まず査定をご依頼ください。
Q: 隣の家が長年空き家で、洪水時の流れ込みが心配です。それも告知が必要ですか?
隣地の状況は「告知義務の対象」というより、買主が確認すべき周辺環境情報に当たります。ただし、境界トラブルや雨水の流れ込みが問題になっている場合は、それ自体の告知が必要なケースがあります。不安な場合は当社にご相談いただければ、告知内容について一緒に整理します。
Q: 大阪府内の物件ですが、全国対応と書いてあります。大阪以外でも相談できますか?
はい、全国対応しています。訪問査定の場合は現地確認が必要ですが、まずはLINEやお問い合わせフォームでご相談いただければ、エリアを問わず対応します。
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まとめ
洪水浸水想定区域の不動産は、「売れない」のではなく「一般仲介では難しい」というのが正確な状況です。
2020年の宅建業法改正により水害リスクの告知が義務化され、買主が浸水リスクを承知した上で判断するようになりました。住宅ローンが通りにくく担保評価が下がるため、一般仲介市場では売れ残りやすいのが現実です。
しかし、訳あり買取専門業者に直接依頼すれば、現況のまま・住宅ローン審査なし・最短数週間で現金化できる道があります。
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