土砂災害警戒区域の不動産を売りたい|告知義務・建築制限・現況買取の方法【2026年版】

「土砂災害警戒区域に指定されていると言われた。この家、売れるのだろうか…」
こうしたご相談を、私たちはよくお受けします。相続で家を引き継いだら役所から指定の通知が来た、あるいは売却査定を依頼したら「この物件は警戒区域内なので売りにくい」と言われた——そんな状況に困っている方が多くいらっしゃいます。
結論から申し上げると、土砂災害警戒区域の不動産でも売ることはできます。ただし告知義務があること、住宅ローンが通りにくいこと、建築制限があること(特別警戒区域の場合)——これらの事情から、一般的な仲介では売りにくい「訳あり物件」に分類されます。
このガイドでは、土砂災害警戒区域・特別警戒区域に指定された不動産の売却について、宅建業者の立場から正確な情報をお伝えします。
土砂災害警戒区域と特別警戒区域の違い
まず、土砂災害のリスクに関する区域指定を整理します。混乱しやすい部分なので、しっかり確認しておきましょう。
土砂災害防止法による区域指定
土砂災害警戒区域の指定は、「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」(土砂災害防止法)に基づいています。2001年に施行され、2014年の改正(広島市の土砂災害を受けた改正)により区域指定が大幅に強化されました。
土砂災害防止法では、2種類の区域が指定されます。
| 区域の種類 | 通称 | ハザードマップの色 | 内容 |
|---|---|---|---|
| 土砂災害警戒区域 | イエローゾーン | 黄色 | 土砂災害が発生した場合に住民の生命・身体に危害が生ずるおそれがある区域 |
| 土砂災害特別警戒区域 | レッドゾーン | 赤 | 建築物に損壊が生じ住民の生命・身体に著しい危害が生ずるおそれがある区域 |
イエローゾーン(警戒区域)では、開発行為の許可・建築物の建築には都道府県知事への届出が必要になる場合があります。また、宅建業者による重要事項説明での告知が義務付けられています。
レッドゾーン(特別警戒区域)では、さらに厳しい規制があります。住宅や要配慮者利用施設(老人ホーム・保育所等)の新築・増改築には都道府県知事の許可が必要です。許可を得るには、建物の構造を土砂災害に耐えられるものにする(RC造や補強工事)か、建物を高台側に設置するなどの対応が求められます。
全国の指定件数
国土交通省の資料によると、2023年3月末時点で全国の土砂災害警戒区域の指定件数は約70万3,000か所(警戒区域と特別警戒区域の合計)に上ります。山間部・丘陵地を抱える都道府県を中心に、毎年指定区域が拡大しています。

土砂災害警戒区域の不動産が「売れない」と言われる3つの理由
「土砂災害警戒区域 売れない」「土砂災害特別警戒区域 売れない」——こうした不安を抱えて検索される方が多くいらっしゃいます。正確には「売れない」のではなく「一般仲介では売れにくい」のが実情です。その理由は大きく3つあります。
理由①:住宅ローンが通りにくい
一般的な買主が住宅ローンを使って不動産を購入する場合、金融機関は担保評価を行います。土砂災害警戒区域内の物件、特にレッドゾーン内の物件は担保評価が低くなりやすく、融資が否決されるケースがあります。
住宅ローンが使えないと、現金で購入できる買主に限られてしまいます。一般の仲介市場では現金購入できる個人買主は少なく、売れ残りやすくなります。
理由②:告知義務があり買主が敬遠しやすい
重要事項説明で土砂災害警戒区域の指定を告知されると、多くの一般買主は「リスクのある物件」と受け取り、購入を見送ります。同等の立地・築年数でリスクがない物件と比べると、どうしても選ばれにくい状況です。
告知を怠れば、後で売主が損害賠償責任を問われる可能性があります。隠すことは絶対にできません。
理由③:建築制限で資産価値が下がる(特別警戒区域)
レッドゾーンの場合、建替えや増改築に都道府県知事の許可が必要です。許可取得には構造補強工事などのコストがかかるため、投資家・業者にとっても取得しにくい物件になります。
これらの理由が重なり、「仲介業者に断られた」「内覧には来てもらえるが成約しない」という状況が生まれます。
売却時の告知義務について正確に理解する

土砂災害警戒区域の物件を売却する際の告知義務について、正しく理解しておくことが大切です。
宅建業法第35条に基づく重要事項説明
宅建業者(不動産会社)が仲介する売買では、宅地建物取引業法第35条に定める重要事項説明の中で、土砂災害警戒区域・特別警戒区域の指定の有無を必ず説明しなければなりません。
2020年8月の宅建業法施行規則の改正により、水害リスク情報(洪水・雨水出水・高潮)も重要事項説明の対象に加わりました。土砂災害警戒区域については改正以前から告知義務がありましたが、この改正でさらに告知すべき内容が明確化・拡大されています。
個人間売買でも告知義務あり
宅建業者を通じない個人間売買でも、民法上の契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)の観点から告知義務があります。土砂災害警戒区域の指定を知りながら隠して売却した場合、買主から損害賠償請求や契約解除を求められるリスクがあります。
宅建業者の視点: 土砂災害警戒区域の告知を怠った場合のトラブルは実際に起こっています。当社では買取の際にも必ず重要事項説明を行い、告知義務を適切に果たした上で取引を進めます。売主様に後でトラブルが及ばないよう、透明性のある手続きを徹底しています。
告知義務の記載例(重要事項説明書の文例)
実際の重要事項説明書では、土砂災害警戒区域の告知はどのように記載されるのでしょうか。一般的な記載例をご紹介します。
本物件は、土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(平成12年法律第57号)第7条第1項に基づき、○○県知事が指定した土砂災害警戒区域(イエローゾーン)内に所在します。当該区域は、急傾斜地の崩壊等が発生した場合に住民の生命又は身体に危害が生ずるおそれがある区域として指定されています。
特別警戒区域(レッドゾーン)の場合は、以下のような記載が加わります。
本物件の敷地の一部(別添図面の着色部分)は、同法第9条第1項に基づく土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)に指定されています。当該区域内では、特定の開発行為の制限及び居室を有する建築物の構造規制(同法第24条)が適用されます。
この告知を受けた買主が購入を見送るケースが多いため、仲介では売れにくくなります。逆に言えば、訳あり買取専門業者はこのリスクを織り込んだ上で買い取るため、告知義務がネックにはなりません。
ハザードマップで事前確認する方法
売却を検討する前に、まず自分の物件が土砂災害警戒区域内かどうかを確認しましょう。
- 国土交通省「重ねるハザードマップ」(disaportal.gsi.go.jp):住所や地図で土砂災害・洪水・津波などのリスクを一度に確認できます
- 各都道府県のハザードマップ:都道府県の砂防・治山担当部署が公開しています
- 市区町村窓口:防災課・建築指導課に問い合わせると、指定の有無と区域の種別を教えてもらえます
土砂災害警戒区域の不動産を売る4つの方法
土砂災害警戒区域の不動産を売却する方法は、主に4つあります。それぞれのメリット・デメリットを整理します。
方法①:仲介業者を通じた売却
一般的な不動産仲介(仲介業者が買主を探す方法)です。成約した場合、売却価格の約3〜4%を仲介手数料として支払います。
メリット:成約価格が高くなる可能性がある デメリット:住宅ローンが通りにくいため買主が見つかりにくい。売れ残ると価格を下げ続ける状況になりやすい。売却完了まで数か月〜1年以上かかることも
方法②:訳あり物件の買取専門業者に依頼する
訳あり買取専門業者が自社で物件を直接購入します。仲介を通さないため仲介手数料は不要です。
メリット:住宅ローンを使わないため土砂災害警戒区域でも購入できる。現況のまま(解体・撤去不要)買取可能。最短数週間で現金化できる デメリット:仲介売却と比べると買取価格は低くなる(市場価格の60〜80%程度が目安)
方法③:更地にして売却する
建物を解体・撤去して更地の状態にしてから売却する方法です。
メリット:更地の方が用途の幅が広がるため、駐車場・資材置場などの用途で買い手が付く可能性がある デメリット:解体費用が100〜300万円かかる。特別警戒区域では更地にしても用途制限が残る
方法④:空き家バンク・自治体への寄付を検討する
一部の自治体では土砂災害警戒区域内の物件でも空き家バンクに登録できます。また、一定条件を満たせば相続土地国庫帰属制度(2023年4月施行)を利用して国に引き渡す方法も検討できます。ただし国庫帰属は承認要件が厳しく、土砂災害リスクのある土地は却下されるケースが多いです。
メリット:売却益は期待できないが保有リスクから解放される場合がある デメリット:条件が厳しく、活用できないケースが多い
直接買取という選択肢を真剣に検討してください

「仲介で断られた」「売れる気がしない」という場合は、訳あり買取専門業者への依頼が現実的な選択肢です。
なぜ買取専門業者なら買えるのか
買取専門業者が土砂災害警戒区域の物件でも購入できる理由は、住宅ローンを使わずに自社資金で購入するためです。銀行の担保評価や融資審査に左右されません。
また、訳あり物件の専門業者は土砂災害リスクのある物件をどう活用するかのノウハウを持っています。ハザードマップ上のリスクを織り込んだ上で買取価格を算出するため、無理な価格交渉ではなく、双方が納得した上で取引できます。
買取価格の目安
土砂災害警戒区域(イエローゾーン)の場合、区域外の同等物件と比べて10〜30%程度の価格ダウンが目安です。
特別警戒区域(レッドゾーン)の場合は、建築制限の影響で20〜40%程度の価格ダウンになるケースが多いです。
以下は、区域外の同等物件を基準にした買取価格のイメージです。
| 区域指定 | 物件例 | 区域外の相場目安 | 買取価格の目安 | 減額率 |
|---|---|---|---|---|
| イエローゾーン | 郊外の築30年木造戸建(土地80坪) | 800万円 | 560〜720万円 | 10〜30% |
| イエローゾーン | 地方都市の築40年アパート(4室) | 1,200万円 | 840〜1,080万円 | 10〜30% |
| レッドゾーン | 山間部の築35年木造戸建(土地100坪) | 500万円 | 300〜400万円 | 20〜40% |
| レッドゾーン | 急傾斜地の築45年鉄骨造住宅 | 600万円 | 360〜480万円 | 20〜40% |
減額幅に差が出る要因は、主に以下の3点です。
- 接道状況:前面道路の幅員が4m以上あり車両進入が容易な物件ほど減額幅は小さくなります
- 傾斜地からの距離:区域の端に位置する物件よりも、崩壊想定範囲の中心に近い物件のほうが評価は厳しくなります
- 建物の状態:RC造や補強済みの物件は減額幅が小さく、老朽化した木造は大きくなります
ただしこれはあくまで目安です。物件の立地・建物の状態・周辺環境によって変わります。まず査定を受けて、正確な金額を確認することをおすすめします。
固定資産税・維持費との比較
買取価格が低くなることを「損」と感じるかもしれません。しかし、保有し続けるコストと比較することが重要です。
- 毎年の固定資産税:物件の評価額によりますが、年間数万円〜数十万円
- 建物の維持管理費:修繕・清掃・除草など年間数万円〜
- 管理不全になった場合のリスク:特定空き家に指定されると固定資産税の住宅用地特例が解除され、税額が最大6倍になる
10年・20年保有し続けた場合の累積コストを計算すると、早期に買取で現金化した方が経済的に合理的なケースが少なくありません。
よくある質問
Q: 土砂災害警戒区域の物件ですが、建物が老朽化しています。現況のまま買取してもらえますか?
はい。当社は現況買取を基本としており、建物の老朽化・残置物の有無に関わらず査定します。解体や片付けをしてから売る必要はありません。まず査定をご依頼ください。
Q: 土砂災害警戒区域かどうか知らないまま相続した物件です。どうすれば確認できますか?
国土交通省の「重ねるハザードマップ」サイトで住所を検索するか、市区町村の窓口に問い合わせて確認できます。当社でも確認のサポートができますので、ご相談いただければ一緒に調べます。
Q: 相続登記がまだ終わっていない状態でも相談できますか?
相談・査定は可能です。売買契約・決済には相続登記の完了が必要ですが、2024年4月から相続登記が義務化されており、相続を知った日から3年以内の手続きが必要です。提携司法書士をご紹介することもできます。
Q: 都市部の住宅街ですが、崖に接している部分があります。土砂災害警戒区域に指定される可能性はありますか?
可能性はあります。急傾斜地(傾斜角が30度以上で高さ5m以上の傾斜地)の下端から水平距離10m以内のエリアが警戒区域に指定されるケースがあります。ハザードマップで確認するか、当社にご相談いただければ確認をサポートします。
Q: 土砂災害警戒区域の物件を相続したが、他の相続人が売却に反対しています。どうすればいいですか?
不動産を売却するには相続人全員の同意が原則必要です。一方で、ご自身の共有持分のみを売却することは法的に可能です。相続人間の合意形成が難しい場合は、弁護士・司法書士のご紹介もできます。お気軽にご相談ください。
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まとめ
土砂災害警戒区域・特別警戒区域の不動産は、「売れない」のではなく「通常の仲介方法では難しい」というのが正確な状況です。
告知義務があること、住宅ローンが通りにくいこと、建築制限があること——これらの理由から一般仲介では買い手が見つかりにくいのは事実です。しかし、訳あり買取専門業者に直接依頼すれば、現況のまま・最短数週間で現金化する道があります。
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