親が老人ホームに入居後、実家を売却できる?3,000万円控除の条件と手続きを解説
TL;DR — 老人ホーム入所後でも実家売却は可能。3,000万円控除は4要件を満たせば適用あり。認知症なら成年後見人の選任が必要。急ぐなら買取が最速。
Q: 親が老人ホームに入居した後、空いた実家を売るにはどうすればいいですか? A: 親ご本人が判断能力を持っている場合は通常の売却手続きが可能です。老人ホーム入所後でも要件を満たせば居住用財産の3,000万円特別控除(租税特別措置法35条)が使えます。親が認知症などで判断能力がない場合は、家庭裁判所を通じた成年後見人の選任が必要です。いずれも、維持費がかさむ前に早めに動くことが重要です。
親が老人ホームや介護施設に入居した後の実家売却は、「本人が判断能力を持っている」か「認知症等で成年後見が必要」かによって手続きが大きく変わります。また、売却益にかかる税金の特例(3,000万円特別控除)を使えるかどうかも、タイミングと要件によって決まります。この記事では、施設入所後の実家売却に特有の論点を整理し、税制・法律・売却方法の3つの観点からわかりやすく解説します。
施設入居後の実家が「負動産」になる3つの理由
親が施設に移った後、実家を「とりあえず放置」するご家庭は少なくありません。しかし時間が経つほど、実家は解決しにくい問題を積み重ねていきます。
固定資産税は容赦なく請求され続ける
建物が建っている土地には「住宅用地特例」があり、固定資産税が最大1/6に軽減されています。しかし空き家状態が長引いて市区町村から「管理不全空き家」や「特定空き家」に認定されると、この特例が外れ、固定資産税が一気に最大6倍に跳ね上がる可能性があります(空家等対策特別措置法・2023年改正)。
建物は人が住まないほど傷む
人が住まない建物は湿気・害虫・設備劣化が進みやすく、数年で大規模な修繕が必要になることがあります。修繕を先送りにするほど費用は大きくなり、買い手もつきにくくなります。特に夏場は高温多湿で劣化が速く、カビや木材腐朽、シロアリの被害が出るリスクが高まります。
相続登記の義務化(2024年4月〜)で後回しにできない
2024年4月より相続登記が義務化されました。親が亡くなった後、相続を知った日から3年以内に相続登記を行わないと、10万円以下の過料(罰金)の対象になります。施設に入居した段階で「将来どうするか」を考えておくことで、相続後の手続きをスムーズに進められます。
3,000万円特別控除は老人ホーム入所後でも使えるか
居住用財産(自宅)を売却した場合、譲渡益から最大3,000万円を控除できる「居住用財産の3,000万円特別控除」(租税特別措置法第35条第1項)があります。この制度は「売った年に住んでいた、または以前住んでいた自宅を売る場合」に適用されますが、老人ホームに入居した後の自宅については特別な扱いがあります。
老人ホーム特例の4つの要件(措置法35条)
2016年(平成28年)4月1日以後の譲渡から、老人ホーム等に入所した場合の特例が設けられました。以下の4つの要件をすべて満たす場合、入所後の自宅も居住用財産として扱われ、3,000万円特別控除の対象になります。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| ① 認定を受けていること | 要介護認定または要支援認定(介護保険法)を受けている |
| ② 入所前に居住していた | 老人ホーム入所直前まで、当該家屋が生活の本拠であった |
| ③ 入所後も空き家状態 | 入所後、自宅を事業用・賃貸用に使っていない。親族等も居住していない |
| ④ 3年以内に売却 | 居住の用に供されなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却 |
4つの要件をすべて満たす必要があります。「要件②」の「3年以内」のカウントは入所日からではなく「居住の用に供されなくなった日」から始まります。入所直後に実家を親族に貸してしまったり、事業所として使い始めると「③の要件」を満たせず特例が使えなくなるため注意が必要です。
特例が使えないケース
- 実家を入所後に賃貸に出していた場合
- 要介護・要支援認定を受けていない段階での入所(予防的に入所しているケースなど)
- 同居親族(子など)が引き続き居住している場合
- 既に親が亡くなって相続した後に売る場合(→ 別の「空き家特例」が対象)
宅建業者の視点: 「入所前に3年以上空き家にしてから売った」というケースを見たことがあります。要件④の「3年以内」を過ぎてしまうと特例が使えなくなります。施設入所が決まった段階で、早めに税理士か不動産会社に相談されることをおすすめします。
相続後の売却は「空き家特例」が対象になる
親が亡くなった後にお子様が相続して売却する場合は、上記の老人ホーム特例ではなく、「相続空き家の3,000万円特別控除」(空き家特例)が適用の対象になります。空き家特例は耐震基準への適合(または解体して更地にする)などの要件があり、適用できるかどうかは物件の状況によって異なります。詳しくは相続した空き家の3,000万円特別控除を徹底解説をご覧ください。
親が認知症の場合 — 成年後見人が必要になる
親ご本人が認知症などで判断能力を失っている場合、本人に代わって不動産の売却を行うことはできません。たとえ子どもであっても、勝手に親の不動産を売却することは法律上認められていません。この場合、家庭裁判所に申立てをして「成年後見人」を選任してもらう必要があります。
成年後見制度と不動産売却の流れ
- 家庭裁判所への申立て — 親族が申立人となり、必要書類(診断書・申立書など)を提出します
- 後見人の選任 — 家庭裁判所が後見人(弁護士・司法書士・親族など)を選任します。期間は申立てから2〜4ヶ月が目安です
- 家庭裁判所の許可を得て売却 — 後見人が不動産を売却する場合は、事前に家庭裁判所の許可が必要です。居住用不動産の売却は特に審査が慎重に行われます
- 売却益は親の財産として管理 — 売却で得た資金は親の介護費用として管理されます。後見人は定期的に家庭裁判所に財産管理の報告義務があります
注意点
成年後見制度を利用した場合、原則として親が亡くなるまで後見が続きます。後見人への報酬(月1〜5万円程度が目安)も継続してかかるため、制度の利用は早めに専門家(弁護士・司法書士)に相談のうえ判断されることをおすすめします。
認知症の方の不動産売却については認知症の親の家を売るには?成年後見制度と家族信託を比較も参考にしてください。
仲介・賃貸・買取 — 3つの選択肢を比較する
施設に入居した親の実家をどう処分するかは、「急ぎ度」「物件の状態」「売却益の使途」によって最適な選択肢が変わります。
| 仲介売却 | 賃貸に出す | 買取(直接) | |
|---|---|---|---|
| 価格 | 市場価格に近い | 家賃収入(月次) | 市場価格より低め |
| 期間 | 3〜12ヶ月以上 | 入居者が決まるまで1〜3ヶ月 | 最短2〜4週間 |
| 維持管理 | 売却まで自己管理 | 管理会社委託(管理費5〜10%) | 売却後は不要 |
| 向いているケース | 立地が良く急がない場合 | 収益を継続したい場合 | 急いでいる・老朽化・遠方の場合 |
介護費用に充てるために現金が必要な場合や、遠方で管理が難しい場合は、買取による早期現金化が選ばれることが多いです。
買取専門業者への相談が向いているケース
以下のような状況では、仲介より買取専門業者への相談が向いています。
- 急いで現金化したい — 介護費用や施設入居費用の工面が必要な場合、3〜12ヶ月かかる仲介では間に合わないことがあります
- 老朽化が進んでいる — 築年数が古い・雨漏りがある・設備が壊れているなど、仲介業者に「売れない」と断られた物件でも、買取業者は現況のまま引き受けます
- 遠方で管理が難しい — 親の施設が実家から遠く、定期的な管理に通えない場合、早期に手放すことで維持費と往復の手間を止められます
- 境界や相続登記が未了 — 測量がない・相続登記が完了していないなど、仲介では敬遠される状態でも、買取業者が対応できる場合があります
- 複数の相続人がいて意見をまとめたい — 親が存命のうちに売却しておくことで、将来の相続トラブルを予防できます
宅建業者の視点: 施設入居後に実家の維持費を毎月払い続けているうちに、3,000万円控除の適用期限(3年)が過ぎてしまったというご相談を受けることがあります。税制上の特例は時間的な制約があるため、入所が決まった段階で早めに動くことが重要です。
よくある質問
施設入所中の親が直接、買取業者に売却の依頼を出せますか?
判断能力がある場合は可能です。ただし高齢者を対象とした不当な勧誘(不当な価格での売買・強引な契約)は消費者契約法の取消対象となる場合があります。信頼できる不動産会社に複数社から査定を取ることをおすすめします。
施設入居と同時に売却を進めるのは早すぎますか?
早すぎるということはありません。むしろ入所直後は「3年以内売却」の要件を満たしやすく、税制上の特例を活用しやすいタイミングです。急ぎでなくても査定だけなら無料で行えますので、早めの相談が選択肢を広げます。
実家の残置物(家具・荷物)が大量にある場合はどうしたらいいですか?
買取の場合、現況のまま引き渡すことが多いため、片付けは不要な場合がほとんどです。仲介の場合は内覧に備えて片付けが必要になりますが、遺品整理業者や不用品回収業者に依頼することもできます。費用の目安は1LDKで5〜15万円程度です。
まとめ
親が老人ホームに入居した後の実家売却では、次の3つのポイントを押さえておくことが重要です。
- 3,000万円特別控除の老人ホーム特例(措置法35条)は4要件を満たせば適用可能。入所後3年以内に売却することが条件
- 認知症など判断能力がない場合は成年後見人の選任が必要。家庭裁判所の許可を得て売却
- 急ぎ・老朽化・遠方管理が難しい場合は、買取専門業者への相談が最短の解決策
実家の処分は、時間をかけるほど維持費と税負担が積み上がります。まずは現状を把握するためだけでも、無料査定を活用してみてください。
空き家のミカタ(宅地建物取引業者・大阪府知事(1)第65646号)では、施設入居後の実家売却のご相談を無料でお受けしています。老朽化・遠方・相続登記未了・認知症家族の対応など、状況が複雑な物件でも丁寧にご説明します。