【体験談・事例06】認知症の父の家を成年後見人として売却。家裁許可取得から決済まで60日の全記録
この記事の結論
- 認知症で意思確認が取れない親の不動産は、成年後見人を選任し家庭裁判所の許可を得ることで売却できます。「売れない」ではなく「手続きが必要」です。
- Eさん(福岡市・55歳男性)は父(82歳・認知症)の自宅を成年後見人として、相談から60日で手取り730万円の現金化に成功しました。
- 司法書士と訳あり専門業者が並行して手続きを進めることで、最短60日での決済が実現します。諦める前にまずご相談ください。
「父が認知症になってから、家のことが何も動かせなくなってしまった」——そう話すEさん(55歳・大阪市在住)が空き家のミカタに相談したのは、父が施設に入居して14か月が経ったころでした。
認知症の親の不動産は「売れない」のではなく、「手続きが必要」なのです。この記事では、その手続きをどう乗り越えたか、Eさんの60日間の記録を公開します。
相談に至るまでの背景
Eさんの父(82歳)は3年前にアルツハイマー型認知症と診断され、現在は要介護2の認定を受け福岡市内の介護付き有料老人ホームに入居しています。
父が入居している施設の月額費用は約18万円。年金収入は月11万円ほどで、毎月7万円の不足分をEさんが補填していましたが、1年以上続いたことで家計に大きな負担がかかっていました。
「父の家(福岡市博多区・築43年の一戸建て)を売って施設費用に充てたい。でも父は自分で署名・判断ができない状態。どうすればいいのか、まったくわからなかった。」
複数の不動産会社に相談したものの、「ご本人の意思確認が取れないので対応できません」と断られ続けました。また、父の銀行口座も金融機関が実質的に凍結状態にしており、父の預金から施設費用を引き出すことも困難になっていました。
認知症の親の不動産が「動かせない」理由
なぜ認知症になると不動産が売れなくなるのか。これには法律上の理由があります。
理由①:意思能力がなければ契約は無効
不動産の売買契約は、売主に「意思能力」が必要です。意思能力とは、契約の内容を理解し、自分の意思で判断する能力のことです。認知症が進行して意思能力を失った状態で結んだ契約は、民法上「無効」とされます(民法第3条の2)。
そのため、不動産業者・銀行・法務局のいずれも「認知症が疑われる方の単独の意思表示」では手続きを進めることができません。
理由②:代理権がなければ「家族でも」売却できない
「私は子どもなので、親の代わりに手続きできる」と思われる方も多いのですが、これは法的には誤りです。
親族であっても、法的な代理権(成年後見人等の権限)がなければ、他人の不動産を売却することはできません。勝手に売却した場合は無権代理行為として無効になります。
解決策:成年後見制度を活用した不動産売却
認知症の親の不動産を合法的に売却するための手段が、成年後見制度です。
成年後見制度とは
成年後見制度は、認知症・知的障害・精神障害等によって判断能力が不十分な方を法的に保護・支援するための制度です。家庭裁判所が選任した「成年後見人」が、本人(被後見人)に代わって財産管理・契約行為を行います。
不動産の売却については以下のルールがあります:
- 居住用不動産の売却:家庭裁判所の許可が必要(民法第859条の3)
- 非居住用不動産の売却:家裁許可なしに後見人の判断で売却可能
Eさんの父の自宅は「居住用不動産」に該当したため、家裁許可が必要でした。
成年後見を使った不動産売却の流れ
| ステップ | 内容 | 目安期間 |
|---|---|---|
| ①医師の診断書取得 | 主治医に「後見相当」の診断書作成を依頼 | 1〜2週間 |
| ②家裁への申立て | 申立書・診断書・戸籍・財産目録等を準備して申立て | 1〜2週間 |
| ③後見人選任審判 | 家裁が審判し、後見人を選任(親族または専門家) | 1〜2か月 |
| ④売却業者の選定・査定 | 訳あり専門業者に相談・査定(並行して進める) | 2〜3週間 |
| ⑤家裁への売却許可申立て | 「居住用不動産処分許可申立て」を家裁に提出 | 1〜2か月 |
| ⑥家裁から許可取得 | 審判が確定し、売却許可が下りる | ⑤に含む |
| ⑦売買契約・決済 | 後見人名義で売買契約を締結・決済 | 1〜2週間 |
重要なのは、④の業者選定と査定を①〜⑥と並行して進めることです。業者選定を後回しにすると、家裁許可が下りても買取業者との交渉でさらに数週間かかります。
Eさんの相談〜決済までの60日記録
実際にEさんが経験した60日間のタイムラインです。
| 日程 | 内容 |
|---|---|
| 1日目 | LINEで空き家のミカタに相談。状況を伝え、司法書士との連携を提案される |
| 5日目 | 提携司法書士と面談。成年後見申立ての書類準備を開始 |
| 8日目 | 主治医から診断書(後見相当)取得 |
| 15日目 | 家庭裁判所(福岡家裁)へ成年後見申立て。同日、並行して現地調査を実施 |
| 18日目 | 簡易査定の提示「700〜750万円の範囲」との連絡 |
| 32日目 | 家裁から後見人選任の審判(Eさんが親族後見人として選任) |
| 35日目 | 正式査定額730万円の提示。売却許可申立て書類の準備を開始 |
| 38日目 | 家裁へ「居住用不動産処分許可申立て」を提出 |
| 52日目 | 家裁から売却許可の審判確定 |
| 55日目 | 売買契約締結(後見人・Eさん名義)。司法書士立会い |
| 60日目 | 決済・所有権移転登記完了。手取り730万円の振込を確認 |
「60日というのが最初は長いと感じましたが、振り返ると、専門家と買取業者が並行して動いてくれていたからこそ最短でできたんだと思います」とEさんはおっしゃっていました。
成年後見と不動産売却で注意すべき3つのポイント
①「親族が後見人になれるか」は事前に確認を
家裁への申立て時に「候補者」(なってほしい人)を記載できますが、最終決定は家裁です。他の親族と意見対立がある・財産額が大きい等の場合、専門家(弁護士・司法書士)が後見人に選任されることがあります。Eさんの場合は親族間に対立がなく、財産も自宅のみだったため、Eさん自身が後見人に選任されました。
②後見人になると「後見監督」が続く
成年後見人は、毎年家庭裁判所に財産管理の報告をする義務があります。父が生きている間は後見関係が続くため、不動産売却後も施設費用の管理・報告が必要です。専門家後見人の場合は月額2〜5万円程度の後見報酬が発生することもあります。
③売却許可の条件:「本人の利益になること」が必要
家裁が売却を許可するのは「被後見人(認知症の本人)の利益になる場合」に限られます。「施設費用の捻出のため」「維持管理費を節約するため」等の合理的な理由がある場合は許可が下りやすいです。Eさんのケースは施設費用の補填という明確な目的があったため、許可審査がスムーズでした。
よくある質問(FAQ)
Q. 認知症の親の不動産は、成年後見人がいれば売却できますか?
A. 成年後見人が選任されていれば、家庭裁判所の許可を得ることで居住用不動産を売却できます。非居住用不動産(すでに入居者が退去している等)であれば、家裁許可なしに後見人の判断で売却できる場合があります。ただし手続きは複雑なため、司法書士・訳あり専門の買取業者と連携して進めることをおすすめします。
Q. 成年後見人の申立てから不動産売却まで、どのくらいかかりますか?
A. 事案によって異なりますが、成年後見人選任の申立てから審判確定まで1〜3か月、居住用不動産の売却許可申立てから許可まで1〜2か月が目安です。本事例では合計60日(約2か月)で決済完了しました。並行して査定・業者選定を進めることで最短化できます。
Q. 親が認知症で銀行口座が凍結されています。施設費用も払えない状況です。
A. 認知症等で本人の意思確認が取れない場合、銀行は口座を実質的に凍結します。成年後見人が選任されると、後見人が本人の財産管理権限を持ち、銀行口座の管理・施設費用の支払いも行えます。不動産の売却代金で施設費用を賄いたい場合は、売却と口座管理を並行して進めることが有効です。
Q. 父がすでに施設に入居して空き家になっている家でも、家裁の許可が必要ですか?
A. 施設入居後に空き家になっていても、本人の生活の本拠として使用していた不動産は家裁許可が必要とされるケースがほとんどです。具体的な判断は担当家庭裁判所・司法書士にご確認ください。空き家のミカタでも提携司法書士を通じてご確認することが可能です。
Q. 親族が成年後見人になることはできますか?
A. 親族でも成年後見人になることは可能です(親族後見人)。ただし、財産額が高額・他の親族と意見対立がある・複雑な財産管理が必要等の場合、家庭裁判所が専門家(弁護士・司法書士等)を後見人として選任することがあります。申立て時に候補者を記載できますが、最終決定は家庭裁判所が行います。
まとめ:「手続きが複雑」は、専門家と並行して解決できる
Eさんの事例のポイントを整理します。
- 認知症の親の不動産は「売れない」のではなく「手続きが必要」。成年後見制度を活用すれば合法的に売却できます。
- 「並行して進める」ことが最短解決のカギ。司法書士による後見申立てと、買取業者への査定・選定を同時に動かすことで60日での決済が実現しました。
- 施設費用の確保という明確な目的があれば、家庭裁判所の売却許可審査もスムーズに進みます。
Eさんが最も後悔していたのは「もっと早く専門家に相談すればよかった。1年以上、自分で補填し続けたことを無駄だったとは言いたくないが、父の財産を守るためにも早く動けばよかった」という点でした。
認知症の親の不動産について「どうすればいいかわからない」という段階からでも、ご相談いただければ状況を整理してご案内します。
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