相続した土地を売ったら国保・介護保険料が上がる理由|大阪市の実額で解説【2026年版】
相続した土地を売却したら国民健康保険料・介護保険料が上がるのは、土地の売却益(譲渡所得)が保険料の算定に使う「前年中の総所得金額等」に含まれるためです。所得税では分離課税でも、保険料の計算では他の所得と合算されます。
そして土地の売却は、家の売却より保険料が上がりやすい構造になっています。理由は2つです。更地には3,000万円の特別控除が使えないことが多いこと、そして親が買った値段の資料が残っておらず、売却価格の95%が所得として扱われてしまうことです。
この記事では、大阪市の令和8年度の実際の料率を使って増加額を試算し、保険料以外に連鎖する医療費の窓口負担、そして通知が届いてしまった後にできることまでをお伝えします。
なお、保険料が上がる基本的な仕組みと家屋を含む相続不動産全般については、相続した不動産を売ったら国保・介護保険料が急増した方へで詳しく整理しています。本記事は「土地」に絞った落とし穴を扱います。
目次
- 分離課税なのに保険料に入る仕組み
- 土地の売却が保険料を押し上げる2つの理由
- 大阪市の令和8年度料率で試算するといくら増えるか
- 保険料以外にも連鎖する「医療費の窓口負担」
- 売却前にできること
- 通知が届いてしまった後にできること
- よくあるご質問
分離課税なのに保険料に入る仕組み
土地・建物の譲渡所得は、所得税では給与や年金と分けて計算する「分離課税」です。このため「他の所得とは別扱いだから保険料には関係ない」と思われている方が少なくありません。
しかし国民健康保険料の算定は別のルールで動いています。大阪市の令和8年度の保険料の決め方では、所得割の算定基礎について次のように定めています。
算定基礎所得金額=前年中総所得金額等-43万円
この「総所得金額等」に、土地等譲渡所得(=譲渡所得金額-特別控除)が含まれます。分離課税であるかどうかは、保険料の算定と関係がないということです。
介護保険料も同じ考え方です。65歳以上の第1号被保険者の保険料段階は「前年の合計所得金額」で決まり、この合計所得金額にも土地の譲渡所得が入ります。ただし租税特別措置法の長期譲渡所得・短期譲渡所得の特別控除額の適用がある場合は、その控除額を差し引いた額が使われます。
宅建業者の視点: ご相談の中で最も多い誤解が「税理士さんに税金の計算はしてもらったので大丈夫」というものです。譲渡所得税の試算は正しくても、その所得が翌年の保険料に跳ね返る話は、確定申告の場面では話題に上がらないことがあります。税金と保険料は別の窓口が別のタイミングで通知してくるため、初めて金額を知るのが翌年6月ということが起こります。
土地の売却が保険料を押し上げる2つの理由
家屋つきの相続不動産と比べて、土地だけの売却は保険料への影響が大きくなりがちです。
理由1: 更地には3,000万円特別控除が使えないことが多い
相続した不動産の売却で最も効果が大きい特例が、相続空き家の3,000万円特別控除(国税庁タックスアンサーNo.3306)です。これが使えれば譲渡所得から3,000万円が引かれ、その控除後の金額が保険料の算定基礎になります。
ところがこの特例の対象は「被相続人が住んでいた家屋とその敷地」です。家屋を取り壊して敷地を売る場合も対象になり得ますが、次のような土地は原則として対象外です。
- もともと更地だった土地
- 農地・山林
- 月極駐車場やコインパーキングとして貸していた土地
- 借地人に貸していた底地
- 被相続人が住んでいなかった土地
つまり相続した土地の多くは、譲渡所得がまるごと保険料の算定基礎に乗ります。ご自宅を売る場合の3,000万円特別控除(国税庁タックスアンサーNo.1440)も、ご自身が住んでいた家が対象なので相続した土地には使えません。
農地を相続された方は農地を相続したら売れない?農地法の壁と宅地転用なしで手放す方法、駐車場や更地を相続された方は相続した駐車場・更地の処分方法もあわせてご覧ください。
理由2: 取得費が不明だと売却価格の95%が所得になる
譲渡所得は「売却価格-取得費-譲渡費用」で計算します。取得費とは、その土地を買ったときの価格などです。
相続した土地では、この取得費を証明する資料(売買契約書・領収書)が残っていないケースが非常に多くあります。祖父母の代から所有している土地であればなおさらです。
取得費が不明な場合は概算取得費として売却価格の5%を使うことが認められています(国税庁タックスアンサーNo.3258)。一見すると救済措置ですが、実質的には売却価格の95%が譲渡所得になるということです。
たとえば1,800万円で売れた土地の取得費が不明なら、取得費は90万円。譲渡費用を60万円とすると譲渡所得は1,650万円です。実際にはご先祖が高い価格で買った土地かもしれませんが、証明できなければこの計算になります。
この2つが重なると、売却価格に近い金額がそのまま保険料の算定基礎に乗るという状態になります。これが「土地を売ったら保険料が跳ね上がった」の正体です。
大阪市の令和8年度料率で試算するといくら増えるか
大阪市の令和8年度の国民健康保険料は、次の料率で決まります。
| 区分 | 所得割率 | 均等割(1人あたり) | 平等割(1世帯あたり) | 賦課限度額 |
|---|---|---|---|---|
| 医療分 | 9.50% | 34,990円 | 33,908円 | 660,000円 |
| 後期高齢者支援金分 | 3.06% | 11,191円 | 10,845円 | 260,000円 |
| 介護分(40〜64歳のみ) | 2.60% | 18,682円 | — | 170,000円 |
| 子ども・子育て支援金分 | 0.28% | 1,745円(+18歳以上96円) | — | 30,000円 |
4区分の賦課限度額を合計すると年間1,120,000円です。65歳以上の方は介護分(17万円)を国保では負担しないため、国保の上限は年間950,000円になります。
試算例: 大阪市在住・68歳・年金収入のみの方
前提を次のように置きます。
- 公的年金等の雑所得: 60万円
- 相続した土地を1,800万円で売却(取得費不明・概算取得費5%=90万円、譲渡費用60万円)
- 譲渡所得: 1,650万円(特別控除の適用なし)
- 国民健康保険に単身世帯で加入
前年中総所得金額等は 60万円+1,650万円=1,710万円。算定基礎所得金額は 1,710万円-43万円=1,667万円です。
所得割を計算すると、医療分が1,667万円×9.50%=約158万円、後期高齢者支援金分が約51万円となり、いずれも賦課限度額を大きく超えます。したがって国民健康保険料は上限の950,000円です。
売却がなかった場合はどうでしょうか。年金所得60万円では所得割はほぼ発生せず、均等割と平等割の合計(医療分68,898円+支援金分22,036円+子ども・子育て分1,841円=92,775円)が基本になります。所得が低い世帯には軽減制度があるため、実際にはこれより下がります。
介護保険料も見てみます。大阪市の第1号被保険者の保険料は令和6年度〜令和8年度で基準額が年額110,988円、所得に応じて15段階に分かれています。合計所得金額が1,710万円になれば最上位の段階に移り、基準額の約3倍にあたる年33万円前後になります。売却前が第4段階(年額76,582円)だった方なら、差額は年25万円ほどです。
合計すると、国保で約86万円、介護保険料で約25万円、あわせて年110万円前後の増加という計算になります。1,800万円で売れた土地から、保険料だけで110万円が出ていく形です。ここに譲渡所得税・住民税(長期譲渡所得なら20.315%)が別に加わります。
75歳以上の方は後期高齢者医療保険料に影響します
75歳以上の方は国民健康保険を抜けて後期高齢者医療制度に移ります。大阪府の令和8・9年度の保険料は、均等割額64,931円・所得割率11.51%で、賦課限度額は85万円です(このほか子ども・子育て支援納付金分として均等割1,373円・所得割0.24%・限度額2.1万円)。賦課のもととなる所得金額は「前年の総所得金額等から基礎控除43万円を引いた額」で、ここにも土地の譲渡所得が含まれます。
保険料以外にも連鎖する「医療費の窓口負担」
見落とされやすいのが、保険料そのもの以外への影響です。所得が上がると医療機関の窓口で払う金額の割合まで変わります。
後期高齢者医療制度の窓口負担割合は、住民税の課税所得145万円未満なら1割です。しかし課税所得145万円以上の「現役並み所得者」に該当すると3割負担になります。土地の売却益が乗った年の翌年度は、この判定にかかる可能性が高くなります。
さらに、高額療養費制度の自己負担限度額の区分も上がります。70歳以上で課税所得690万円以上の区分では、ひと月の自己負担限度額が252,600円+(医療費-842,000円)×1%となり、1割負担で数万円だった方とは負担の桁が変わります。
宅建業者の視点: 通院や入院が続いている方にとっては、保険料の増加より窓口負担の変化のほうが生活に響くことがあります。実際、「保険料は覚悟していたが、いつもの薬代が3倍になって驚いた」というお話をうかがったことがあります。ご家族に持病のある方がいる場合は、売却の時期を決める前にこの点も含めて考えていただくと安心です。
売却前にできること
保険料の増加そのものをゼロにする方法はありませんが、算定基礎になる譲渡所得を圧縮できれば負担は下がります。
1. 取得費の資料を徹底的に探す
概算取得費5%を避けられるかどうかが、最も金額の大きい分かれ目です。売買契約書、登記簿の乙区(抵当権の設定額から購入価格を推測できることがあります)、当時の通帳、古い確定申告書控えなどを探してみてください。取得費が証明できれば譲渡所得が大きく下がり、税金と保険料の両方が下がります。
2. 相続税を納めているなら取得費加算の特例を確認する
相続税を支払った方が相続開始から3年10か月以内に売却する場合、納めた相続税の一部を取得費に加算できます(国税庁タックスアンサーNo.3267)。これも譲渡所得を下げるため、保険料の算定基礎が下がります。
3. 家屋を残したまま売れないか検討する
被相続人が住んでいた家が建っている場合、取り壊してから売るか家屋つきで売るかで、3,000万円特別控除の適用可否が変わることがあります。解体を急ぐ前に、特例の要件を税務署または税理士に確認していただくことをおすすめします。
4. 売却代金から保険料分を取り置く
対策として一番確実なのがこれです。翌年6月に通知が届いた時点で手元に資金がないという事態を避けるため、売却代金のうち3割程度を税金・保険料用に別口座に分けておくことをおすすめしています。先ほどの試算例では、保険料が約110万円、譲渡所得税・住民税が約335万円で、合計445万円ほど。売却代金1,800万円の2割から3割にあたります。
売却にかかる税金全般については不動産売却にかかる税金の完全ガイド、売却のタイミングと特例の関係については小規模宅地等の特例と売却タイミングもご参照ください。
通知が届いてしまった後にできること
すでに決定通知書が届いている方に、まずお伝えしたいことがあります。
この負担は1年間で終わります。 保険料は前年の所得で決まるため、影響が出るのは売却した年の翌年度だけです。翌々年度には売却益のない所得水準に戻ります。
そのうえで、次の3つをご検討ください。
1. 減免制度に該当しないか区役所で確認する
売却益による増加そのものは、原則として減免の対象になりません。大阪市の介護保険料の減免は、災害により3割以上の損害を受けた場合(前年中の合計所得金額1,000万円以下が要件)や、死亡・重大な障がい・長期入院・事業の休廃止・失業などで収入が著しく減少した場合が対象です。ただし該当するかどうかの判断は個別事情によります。心当たりがあれば区役所の窓口でご確認ください。減免の申請は年度ごとに必要です。
2. 分割納付を相談する
一括での納付が難しい場合、分割納付の相談に応じてもらえることがあります。大切なのは納期限を過ぎる前に相談することです。滞納してから連絡するのと、期限前に事情を説明するのとでは対応が変わります。延滞金の発生も抑えられます。
3. 翌年度の資金計画に組み込む
売却代金が手元に残っている段階であれば、保険料分を別に確保しておけば問題は起こりません。すでに他の相続人へ代償金として渡してしまった、リフォームに使ってしまったという場合は、早めに区役所と納付方法を相談してください。
まだ売却していない土地をお持ちの方へ
保険料の増加は、売る前であれば計画に織り込むことができます。
私たちは大阪市24区を中心に、相続した土地・空き家・訳あり物件の直接買取を行っています。仲介と違って買主を探す期間がないため、売却の時期をご自身で決められるという特徴があります。「今年に入れるか、来年に回すか」を所得の状況に合わせて選べることは、保険料や医療費の負担を考えるうえで意味を持ちます。
再建築不可の土地、境界が確定していない土地、隣地とのトラブルがある土地、農地や山林、長年放置していて現況がわからない土地なども、現況のままお引き受けしています。
保険料の具体的な金額の判定は市区町村、税額の判定は税務署・税理士の領域ですが、「いくらで売れそうか」「いつ売るのが現実的か」という前提部分は私たちがお手伝いできます。査定だけのご相談も承っています。
ご相談はお気軽に
相続した土地の売却で、国保・介護保険料の増加も含めて全体像を知っておきたい方は、まずはLINEまたはフォームよりご連絡ください。ご相談は無料です。
空き家のミカタへのご相談(無料)
- 宅建業免許:大阪府知事(1)第65646号
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よくあるご質問
Q. 土地の売却益は分離課税なのに、なぜ国民健康保険料に影響するのですか?
所得税の計算では分離課税でも、国民健康保険料の算定に使う「総所得金額等」には土地・建物の譲渡所得が含まれるためです。大阪市も保険料の算定基礎に「土地等譲渡所得=譲渡所得金額-特別控除」を含めると明記しています。分離課税かどうかは保険料の算定と関係がありません。
Q. 建物のない土地だけの売却でも3,000万円特別控除は使えますか?
更地であれば原則として使えません。相続空き家の3,000万円特別控除は「被相続人が住んでいた家屋とその敷地」が対象で、家屋を取り壊して敷地を売る場合も一定の要件を満たす必要があります。もともと更地だった土地・農地・駐車場・貸地は対象外です。要件の判定は税務署または税理士にご確認ください。
Q. 親が買った時の値段がわからない土地はどうなりますか?
取得費が不明な場合は「概算取得費」として売却価格の5%を取得費とすることが認められています。裏を返すと売却価格の95%が譲渡所得になるということです。相続した土地は購入時の資料が残っていないことが多く、保険料が跳ね上がる最大の原因になっています。
Q. 上がった保険料は翌年も続きますか?
いいえ。保険料は前年の所得で決まるため、影響が出るのは売却した年の翌年度の1年間です。売却の翌々年度には売却益のない所得水準に戻ります。ただしその1年間の負担は現実に発生するので、売却代金から取り置いておく必要があります。
Q. 保険料が払えないときに減免してもらえますか?
売却益による増加は原則として減免の対象になりません。大阪市の介護保険料の減免は、災害による3割以上の損害や、失業・廃業・長期入院などで収入が著しく減少した場合が対象です。ただし納付が困難なときは分割納付の相談に応じてもらえることがあるため、必ず期限前に区役所へご相談ください。
Q. 会社員で健康保険に入っていますが、影響はありますか?
勤務先の健康保険(協会けんぽ・組合健保)にご加入中の方は、保険料が標準報酬月額で決まるため、土地の売却益による保険料の増加はありません。ただし65歳以上の方の介護保険料は加入する医療保険にかかわらず影響を受けます。また、退職して国民健康保険に切り替えた場合は前年の所得で保険料が決まるため、売却の翌年に退職されると影響が出ます。
まとめ
- 土地の売却益は分離課税でも保険料の算定に入り、大阪市では国保が上限950,000円(65歳以上・4区分合計の限度額は1,120,000円)に達することがあります
- 更地は3,000万円特別控除が使えないことが多く、取得費不明なら売却価格の95%が譲渡所得になります
- 影響は翌年度の1年間だけです。売却代金から3割程度を税金・保険料用に取り置いておけば慌てずに済みます
売る前であれば、時期も含めて選ぶことができます。ご不安な点があれば、判断される前にご相談いただければと思います。
参考にした一次情報(2026年8月17日確認)
- 大阪市「保険料の決め方(国民健康保険)」 https://www.city.osaka.lg.jp/fukushi/page/0000624098.html
- 大阪市「後期高齢者医療制度」 https://www.city.osaka.lg.jp/fukushi/page/0000495914.html
- 大阪市「介護保険料について」 https://www.city.osaka.lg.jp/fukushi/page/0000667192.html
- 大阪市「介護保険料の減免及び軽減について」 https://www.city.osaka.lg.jp/fukushi/page/0000651416.html
- 厚生労働省「介護保険の保険料(第1号被保険者)」 https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/zaisei/sikumi_03.html
- 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」 https://www.mhlw.go.jp/content/000333280.pdf
- 国税庁タックスアンサーNo.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
- 国税庁タックスアンサーNo.3258「取得費が分からないとき」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3258.htm
- 国税庁タックスアンサーNo.3267「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3267.htm
- 国税庁タックスアンサーNo.1440「マイホームを売ったときの特例」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/1440.htm
※保険料・医療費の負担割合の具体的な判定はお住まいの市区町村、税額の判定は税務署または税理士にご確認ください。本記事は制度の全体像をお伝えするものです。