親族間売買のリスクと対策|住宅ローン否決・税務調査を回避する方法【2026年版】
親族間売買とは、親子・兄弟・配偶者など親族の間で不動産を売買することです。住宅ローンが組みにくい・税務調査を受けやすいという2つのリスクがあり、適切な対策を講じないと思わぬトラブルになります。
この記事では、親族間売買を検討している方が事前に知っておくべきリスクと、それを回避するための具体的な手順をお伝えします。

親族間売買が通常の不動産売買と違う理由
親族間売買は、法律上は通常の不動産売買と同じ手続きです。売主・買主が合意した価格で売買契約を結び、所有権移転登記を行います。しかし、「価格操作・税金逃れ」のリスクがある取引として、金融機関・税務署の双方から厳しい目で見られます。
主なリスクは2点です。
| リスク | 内容 | 結果 |
|---|---|---|
| 住宅ローン否決 | 金融機関が親族間の価格操作を懸念 | 買主がローンを組めない |
| みなし贈与 | 時価より著しく低い価格で売買 | 差額に贈与税(最高55%)が課税 |
これらを事前に理解して対策を立てることが、親族間売買を成功させる鍵です。
住宅ローンが否決されやすい理由と対策
なぜ金融機関は親族間売買を嫌がるのか
金融機関が親族間売買を敬遠する主な理由は、「資金の社内循環(見せかけの売買)」や「実態のない価格での取引」が発生しやすいという懸念です。
たとえば、親が子に3,000万円で家を「売った」形にして、実は代金を受け取らないケース(実質的な贈与)が過去に問題になっています。住宅ローンの融資金が事実上、贈与資金として流れることを金融機関は避けたいのです。
また、フラット35(住宅金融支援機構)は親族間売買への利用を明確に禁止しています。同一生計親族間の売買はフラット35の利用対象外です。
住宅ローンを通すための対策
親族間売買で住宅ローンを検討する場合、以下の対策が有効です。
① 不動産鑑定評価書を取得する 公認不動産鑑定士が発行する鑑定評価書があれば、「適正な市場価格で取引している」ことを金融機関に証明できます。費用は物件規模・立地によって異なりますが、戸建て・マンションで30〜50万円程度が相場です。
② 対応可能な金融機関を探す すべての金融機関が一律に断るわけではありません。地方銀行・信用金庫の中には、条件付きで親族間売買に対応するところもあります。「証書貸付」という形で融資する金融機関もあります。複数の金融機関に事前相談することをお勧めします。
③ 住宅ローン以外の資金調達を検討する 親族間売買では買主側が自己資金で購入するケースも少なくありません。または不動産担保ローン(ノンバンク系)で対応できる場合もあります。
宅建業者の視点:当社には「親に自分が育った家を売ってほしい」と相談してくる方がいます。感情的には理解できますが、住宅ローンが組めないとわかって初めて困るケースがほとんどです。先に金融機関に相談してから売買条件を決めることが重要です。
税務調査リスク(みなし贈与)の仕組みと対策
親族間売買で最も注意が必要なのが、「みなし贈与」による追徴課税です。
みなし贈与とは
相続税法第7条に規定があります。「著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合には、その財産の譲渡があった時において、その財産の譲渡を受けた者が、その対価と時価との差額に相当する金額を、その財産の譲渡をした者から贈与により取得したものとみなす」
わかりやすく言うと、時価1,000万円の不動産を親族に500万円で売った場合、差額の500万円は「贈与」とみなされ、贈与税が課税されるということです。
「著しく低い価額」の目安
国税庁は「著しく低い価額」の明確な基準を公表していません。しかし実務上は時価の概ね80%未満がリスクラインの目安とされています。
たとえば、時価2,000万円の不動産を1,600万円(時価の80%)以下で売った場合、税務署から「みなし贈与」として調査を受けるリスクが高まります。
贈与税の税率は基礎控除110万円を超える部分に対して、最高55%(一般贈与財産の場合、3,000万円超の部分)。追徴される金額は非常に大きくなります。

みなし贈与を回避する3つの対策
対策1: 時価に近い価格で売買する 最も確実な対策は、市場価値に近い価格で取引することです。不動産鑑定士の評価額、または複数の不動産業者の査定書を取得し、その価格を根拠に売買価格を決定します。
対策2: 不動産鑑定評価書を取得・保管する 税務調査が入った際に「鑑定評価書に基づいて価格を設定した」と説明できれば、みなし贈与の認定を避けやすくなります。鑑定書は売買後も保管してください。
対策3: 税理士に事前相談する 親族間売買を行う前に税理士に相談し、売買価格・方法・税務上の影響を試算してもらうことをお勧めします。売買後の対策より、事前の対策の方がはるかに効果的です。
親族間売買の適正価格の決め方
適正価格の算定には主に以下の方法があります。
不動産鑑定評価(最も確実)
公認不動産鑑定士が行う不動産鑑定は、法律に基づいた公的な評価です。税務署への説明材料として最も有力です。費用目安は30〜50万円程度。鑑定には通常2〜4週間かかります。
路線価・公示地価を参考にする
国税庁が毎年公表する路線価は、公示地価の概ね80%水準です。土地の場合は路線価÷0.8で公示地価の近似値を算出できます。ただし路線価はあくまで参考値であり、建物の状態・接道条件・間取りなどは反映されません。
複数の不動産業者から査定書を取得する
宅建業者3社程度から査定書を取得し、その平均値を参考にする方法です。鑑定評価書ほどの法的効力はありませんが、「市場価格を把握しようとした努力」の証跡になります。
親族間売買を進める正しい手順

STEP 1: 税理士・司法書士に相談
売買契約を結ぶ前に、まず税理士に相談して課税シミュレーションを行います。売主の譲渡所得税・買主のみなし贈与リスク・その他のコストを含めた試算が必要です。
STEP 2: 不動産鑑定または複数査定の取得
税務上のリスクを下げるために、適正価格の根拠資料を取得します。鑑定費用を惜しんで後から追徴課税を受けるよりも、先行投資として考えてください。
STEP 3: 売買契約書の作成
個人間でも売買契約書の作成は可能ですが、宅建業者または司法書士・弁護士に依頼することをお勧めします。個人作成の契約書は記載漏れ・条件の曖昧さからトラブルになるケースが多いです。
契約書に記載すべき主な事項:
- 売買代金と支払方法
- 引渡日・引渡し条件(現況か)
- 契約不適合責任の有無・範囲
- 瑕疵担保免責の合意(あれば)
STEP 4: 所有権移転登記
売買代金の決済と同日に、司法書士が所有権移転登記を行います。登記費用(登録免許税)は固定資産税評価額の2%です。
STEP 5: 確定申告(売主)
売主に譲渡益(売却価格-取得費-譲渡費用)が発生した場合、翌年の確定申告が必要です。所有期間5年以内(短期)は39.63%、5年超(長期)は20.315%の譲渡所得税が課されます。
かかる主な費用一覧
| 費用項目 | 負担者 | 目安 |
|---|---|---|
| 不動産鑑定費用 | 双方で協議 | 30〜50万円 |
| 登録免許税(所有権移転) | 買主 | 固定資産税評価額の2% |
| 不動産取得税 | 買主 | 固定資産税評価額の3%(軽減あり) |
| 司法書士費用 | 双方で協議 | 5〜15万円 |
| 仲介手数料(業者介入時) | 双方 | 売買価格の3%+6万円×1.1 |
| 確定申告(税理士依頼) | 売主 | 5〜10万円 |
親族間売買と相続・贈与の比較
不動産を親族間で移転する方法は、売買のほかに相続・贈与があります。
| 方法 | 発生する税金 | 主なメリット | 主なデメリット |
|---|---|---|---|
| 相続 | 相続税(基礎控除あり) | 基礎控除が大きい | 死亡後でないと発動しない |
| 贈与 | 贈与税(暦年110万円控除) | 生前に移転できる | 税率が高い(最高55%) |
| 売買 | 譲渡所得税(売主)+不動産取得税(買主) | 売主が資金を受け取れる | 費用が多い・ローン不可が多い |
親族間売買が有効なのは、「売主が現金を受け取る必要がある場合」や「相続より先に名義を移したい事情がある場合」です。単に節税目的での親族間売買は、税務リスクが高くかえって費用が増える可能性があります。
共有持分の親族間売買
相続で不動産を複数の親族で共有している場合、ある共有者が自分の持分を他の共有者に売買することがあります。これも親族間売買の一種です。
共有持分の売買では同様にみなし贈与のリスクがあります。持分の価値は「物件全体の時価×持分割合」ではなく、市場での流通性(共有持分は通常の買主には売りにくい)を考慮した価値になります。適正価格の算定が難しいため、税理士・不動産鑑定士への相談が特に重要です。
当社では共有持分の直接買取にも対応しています。「共有者との話し合いが面倒」「全員の合意が取れない」というお悩みをお持ちの方は、まずご相談ください。
よくある質問
Q. 親子間で家を売買するとき親は贈与税を払うのですか?
贈与税は財産を「もらった側(買主)」に課税されます。売主(親)には課税されません。ただし、売主(親)には売却益(譲渡所得)が発生した場合、譲渡所得税の申告が必要です。
Q. 親族間売買の「親族」の範囲はどこまでですか?
税務上・金融機関の判断上で「親族」とみなされる範囲は、配偶者・6親等内の血族・3親等内の姻族です(民法第725条)。実務上は、同一生計の家族・親子・兄弟姉妹での取引が特に厳しく見られます。
Q. 親族間売買で不動産取得税の軽減措置は受けられますか?
一定の条件を満たせば適用されます。新築・一定築年数以内の住宅を買主が主たる居住用として取得する場合、不動産取得税の軽減(固定資産税評価額から1,200万円控除等)を受けられる可能性があります。詳細は都道府県の税務課または税理士にご確認ください。
Q. 親族間売買の前に知っておくべきことは何ですか?
3点あります。①住宅ローンは多くの金融機関で使えないため資金調達を事前に確認する、②適正価格の根拠(不動産鑑定書または複数査定)を用意する、③税理士に課税シミュレーションを依頼する——この3つを先行させることで、大半のトラブルを防げます。
まとめ
親族間売買は、適切な準備なしに進めると住宅ローン否決・みなし贈与による追徴課税という2つの大きなリスクにさらされます。
ポイントをまとめます。
- 住宅ローンはフラット35を含む多くの金融機関で利用不可。事前相談が必須
- みなし贈与を避けるには時価の概ね80%以上の価格設定と、不動産鑑定書の取得が有効
- 売買前に税理士・司法書士に相談し、課税シミュレーションを行う
- 共有持分の整理目的の場合は、直接買取も選択肢のひとつ
当社では、親族間での不動産問題(共有持分・相続後の名義整理・訳あり物件の処分)についての無料相談を受け付けています。「売買か相続か贈与か、どうするのが一番良いかわからない」という段階からご相談いただけます。
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