事故物件の売却費用は誰が払う?特殊清掃・原状回復の相場と負担者【2026年版】
結論:事故物件の売却で発生する特殊清掃・残置物処理・原状回復の費用は、「誰の物件か」ではなく「自分がどの立場で請求を受けているか」で負担者が決まります。自分が所有する家なら所有者(相続人)の負担、賃貸の入居者が亡くなったなら一次的にはその方の相続人か連帯保証人の負担です。金額の目安は、原状回復が平均49万4,344円、遺品整理(残置物処理)が平均29万4,131円。そして見落とされやすいのが、先に特殊清掃をすると告知が必要な事案になるという点です。費用を払ったうえに売りにくくなる順番を避けるため、清掃の発注前に現況のままの査定額を確認しておくことをおすすめします。
事故物件の売却で出てくる費用は4種類。多くは売る前に請求が来ます
「事故物件は費用がかかる」と言われますが、中身は次の4つに分かれます。どれを誰が払うのかは項目ごとに違うため、まず分解して考えます。
| 費用の種類 | 内容 | 目安の金額 | 請求のタイミング |
|---|---|---|---|
| 特殊清掃・原状回復 | 汚損した床・壁・設備の消臭、消毒、解体や張り替え | 平均49万4,344円 | 発見の直後 |
| 遺品整理(残置物処理) | 家財・家電・衣類などの搬出と処分 | 平均29万4,131円 | 発見から数週間以内 |
| 家賃・保有コスト | 空室期間の家賃損失、固定資産税、管理費、修繕積立金 | 平均33万7,035円(家賃保証の支払額) | 売れるまで毎月・毎年 |
| 心理的瑕疵による値引き | 告知が必要になることで下がる売却価格 | 相場の1〜5割程度 | 売却時 |
上3つは売る前に現金で出ていく費用です。一方、いちばん金額が大きくなりやすい4つ目は、売却価格から差し引かれる形で効いてきます。心理的瑕疵(買い手が心理的に受け入れにくい事情)という言葉自体は難しいのですが、要するに「告知が必要になった分だけ価格が下がる」ということです。
実際の相談では、上3つを自費で払い切ったあとに「それでも価格は下がると言われた」と落胆される方が少なくありません。順番を間違えると負担が二重になります。
特殊清掃・原状回復の相場は平均49万4,344円。2024年度単年では61万円台に上がっています
金額の根拠として使えるのは、日本少額短期保険協会が公表している「第10回孤独死現状レポート」です。少額短期保険会社の保険金支払いデータをまとめたもので、2015年4月から2025年3月までの累積データと、2024年度単年のデータが載っています。
| 費用項目 | 平均損害額(累積) | 平均損害額(2024年度単年) | 最大損害額 |
|---|---|---|---|
| 原状回復費用 | 49万4,344円 | 61万507円 | 756万4,673円 |
| 遺品整理(残置物処理)費用 | 29万4,131円 | 26万6,265円 | 425万3,473円 |
| 家賃保証(平均支払額) | 33万7,035円 | 38万9,706円 | ー |
出典:日本少額短期保険協会「第10回孤独死現状レポート」(2025年公表)
注目したいのは、原状回復費用が単年で61万507円まで上がっている点です。レポート自体が「物価高騰による材料・工費等の影響が考えられる」と説明しています。数年前の相場感で予算を立てていると足りません。
同じレポートでは、発見までの平均日数が19日、3日以内に発見された方の割合は4割に満たないと報告されています。費用の幅がこれだけ大きいのは、発見までの日数で汚損の範囲がまったく変わるからです。
なお、この数値は孤独死保険に加入していた物件の支払い実績です。保険に入っていない物件も含めた全事案の平均ではない点にご注意ください。
費用を誰が払うかは「自分の立場」で決まります——4つのパターン
同じ「事故物件の清掃費用」でも、負担者は次のように分かれます。
パターン1:自分が所有する実家・自宅で家族が亡くなった
所有者、つまり相続した人が負担します。請求先が他にいないため、この場合はシンプルです。清掃業者への支払いも、その後の売却判断も相続人が決めます。
パターン2:相続したアパート・貸家で入居者が亡くなった
賃貸借契約にもとづく原状回復義務は借主にあります。したがって一次的には、亡くなった入居者の相続人、または連帯保証人に請求するのが一般的な流れです。家賃債務保証会社を使っていた場合は、その保証範囲も確認します。
ただし請求できるかどうかと、実際に回収できるかどうかは別問題です。相続人が全員放棄し、連帯保証人もいない場合、費用はオーナーの持ち出しになります。
パターン3:自分が亡くなった入居者の相続人になった
相続すると賃貸借契約上の地位も引き継ぐため、原状回復義務も承継します。ここで注意したいのが死因による違いです。病死や老衰などの自然死は本人に落ち度がないと評価されやすく、どこまでを借主側の負担とするかは裁判例でも判断が分かれています。請求額が高額な場合は、そのまま支払う前に弁護士へ相談する価値があります。
パターン4:払える人が誰もいない
相続人が不存在で連帯保証人もいないケースです。この場合、最終的には貸主が負担して原状回復を行い、その後の再募集か売却を判断することになります。
相続放棄で費用は免れますが、連帯保証人の署名があると話は別です
「相続放棄すれば清掃代を払わなくて済む」と考えて手続きを急ぐ方がいます。半分は正しく、半分は危険です。
相続放棄で外れるのは、相続人としての支払い義務だけです。賃貸借契約の連帯保証人になっている場合、保証は相続とは別に自分が結んだ契約なので、責任はそのまま残ります。まず賃貸借契約書を探し、連帯保証人欄に自分の名前があるかどうかを確認してください。
もう1つ、2023年4月1日施行の改正民法940条があります。条文は次のとおりです。
相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。
改正前は「管理義務」の範囲や終わりが不明確でしたが、改正で「現に占有しているとき」に限定され、引き渡すまでという終期も明確になりました。放棄したから翌日から一切無関係、とはならない場面があるということです。
そして最も見落とされやすいのが、相続放棄をすると物件そのものも相続できないという点です。清掃費の請求からは逃れられても、売って現金化する道は同時に閉じます。負債より不動産の価値が上回る見込みがあるなら、放棄する前に売却時の見込み額を把握しておくべきです。
孤独死保険に入っていても、平均で約17万8,000円は自己負担になります
賃貸オーナーの備えとして孤独死保険(少額短期保険)があります。ただし「入っていれば全部戻る」ではありません。
同じ第10回レポートの数字を並べると、差がはっきりします。
| 費用項目 | 平均損害額 | 平均支払保険金 | 差額 |
|---|---|---|---|
| 原状回復費用 | 49万4,344円 | 31万5,510円 | 約17万8,000円 |
| 遺品整理(残置物処理)費用 | 29万4,131円 | 29万3,360円 | 約800円 |
遺品整理はほぼ全額がまかなわれている一方、原状回復では平均で約17万8,000円が自己負担として残っています。補償の上限額が損害額に届かないケースがあるためです。加入中の証券で、補償項目ごとの上限額を一度確認しておくことをおすすめします。
先に特殊清掃をすると、告知が必要な事案になることがあります
ここが、費用の話でいちばん見落とされているポイントです。
国土交通省が2021年10月8日に公表した「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」では、取引対象の不動産で発生した自然死・日常生活の中での不慮の死は、原則として告げなくてもよいと整理されています。ところが同じガイドラインでは、そうした死であっても長期間放置されたことに伴い特殊清掃や大規模リフォーム等が行われた場合は、告げる必要があるとされています。買主の判断に重要な影響を及ぼす可能性があるため、という理由です。
つまり順番によっては、次のようなことが起こります。
- 早期に発見され、通常の清掃で済んだ → 原則として告知不要の範囲
- 発見が遅れ、特殊清掃を行った → 費用も発生し、告知も必要になる
特殊清掃をするかどうかは汚損の程度で決まるため、選べる場面ばかりではありません。それでも「きれいにしてから売れば高く売れるはず」と考えて自費で工事を進めると、費用を負担したうえに告知事項が増える、という結果になり得ます。清掃・リフォームを発注する前に、現況のままの査定額を取っておく意味はここにあります。
「先に払って売る」と「現況のまま渡す」を、手残り額で比べます
判断材料になるのは提示額そのものではなく、費用を引いたあとに手元に残る金額です。大阪市内の区分マンションを例に、試算してみます(金額はすべて例示です)。
| 項目 | A:清掃してから仲介で売る | B:現況のまま買取 |
|---|---|---|
| 売却価格 | 900万円 | 850万円 |
| 特殊清掃・残置物処理 | −80万円(自己負担) | 0円(買主が手配) |
| 仲介手数料 | −36万3,000円 | 0円 |
| 売却までの期間 | 数か月〜1年以上 | 2週間〜1か月程度 |
| 手残り | 約783万7,000円 | 850万円 |
このケースでは、提示額が50万円低いBのほうが手残りは約66万円多くなります。仲介手数料がかからず、清掃費も買主側の手配になるためです。加えてAは売れるまでの固定資産税・管理費・修繕積立金が積み上がります。
もちろん、清掃を済ませたほうが結果的に有利になる物件もあります。大切なのは、両方の手残り額を数字で並べてから決めることです。
なお税金面では、清掃費用が譲渡費用として認められない可能性があります。国税庁のタックスアンサーでは、譲渡費用となるものとして仲介手数料・売主負担の印紙税・立退料・建物取壊し費用などが挙げられる一方、「修繕費や固定資産税などその資産の維持や管理のためにかかった費用」は譲渡費用にならないと明記されています。自費で払った清掃代がそのまま経費になるとは限らないため、確定申告の前に税理士か所轄の税務署にご確認ください。
よくある質問
Q. まだ清掃業者から見積もりが出ていない段階でも相談できますか
できます。見積もりが出る前でも、部屋の状況と発見までのおおよその日数がわかれば査定は可能です。むしろ発注前のほうが選べる選択肢は多くなります。
Q. すでに特殊清掃の代金を払ってしまいました。取り戻せませんか
支払った相手が業者である以上、返金は難しいのが実情です。ただし賃貸で入居者が亡くなったケースなら、相続人・連帯保証人・家賃債務保証会社への請求が残っている場合があります。契約書を確認してみてください。
Q. 遠方に住んでいて、大阪の物件を見に行けません
現地に行かずに進められます。写真と間取り図、わかる範囲の状況をお送りいただければ査定は可能です。実際に、遠方の相続人の方からのご相談を数多くお受けしています。
Q. 近所に知られたくないのですが、清掃業者の車で気づかれませんか
清掃をどのタイミングで、誰の手配で行うかによって変わります。現況のまま買い取る場合は引渡し後の作業になるため、売主側で業者を手配する必要はありません。看板も広告も出しません。
Q. 大阪市外の物件でも相談できますか
大阪府全域の物件を対象にしています。上記の対応地域外の物件は買取・査定の対象外です。
まとめ
- 事故物件の費用は特殊清掃・原状回復/遺品整理/保有コスト/告知による値引きの4種類。前の3つは売る前に現金で出ていきます
- 相場は原状回復が平均49万4,344円(2024年度単年は61万507円)、遺品整理が平均29万4,131円。物価高で上昇傾向にあります
- 負担者は立場で決まります。賃貸なら一次的に入居者の相続人・連帯保証人、取れなければオーナー。相続放棄をしても連帯保証人の責任は残ります
- 保険に入っていても、原状回復では平均で約17万8,000円の自己負担が残っています
- 特殊清掃を行うと告知が必要な事案になります。清掃を発注する前に、現況のままの査定額を確認してください
費用の請求書が先に届き、売却の話は後回しになりがちです。ただ、順番を変えるだけで手残りが数十万円変わることがあります。
無料査定・ご相談はこちらから
「清掃を頼む前に金額だけ知りたい」「請求書が届いて困っている」——その段階のご相談を歓迎しています。査定は無料で、売却を強制することはありません。
事故物件・訳あり物件を専門に扱っており、特殊清掃前・残置物そのまま・現況のままで査定にお応えできます。秘密厳守で対応し、遠方にお住まいの相続人の方からのご相談も承っています。
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出典
- 日本少額短期保険協会「第10回孤独死現状レポート」https://www.shougakutanki.jp/general/info/kodokushi/index.html
- 国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」(令和3年10月8日公表)
- 国税庁 タックスアンサー No.3255「譲渡費用となるもの」
- 民法第940条(令和5年4月1日施行)