親の死後にかかった費用は相続税から引ける?特殊清掃・遺品整理・解体費を国税庁の基準で仕分ける【2026年版】
TL;DR — 親の死後にかかった費用と相続税 相続税から差し引けるのは、①亡くなった時点で現に存在した被相続人の債務と、②範囲が決まっている葬式費用の2つだけです。特殊清掃費・遺品整理費は、亡くなったあとに相続人が発生させた費用のため、原則としてどちらにも入りません。土地を売るための建物取壊し費用は、相続税ではなく売却時の譲渡費用として扱われます。控除に入らない費用を先に自己負担で払う前に、現況のままの査定額を確認してください。
Q: 特殊清掃の費用は相続税から引けますか? A: 原則として引けません。国税庁の基準では、債務控除の対象は「被相続人が死亡したときに現に存在した被相続人の債務で確実と認められるもの」に限られており、死後に相続人が発注した特殊清掃はこれにあたらないためです。葬式費用として控除できる範囲(通夜・火葬・埋葬・納骨・読経料・遺体や遺骨の捜索と運搬)にも、特殊清掃は挙げられていません。
(出典: 国税庁タックスアンサー No.4126「相続財産から控除できる債務」/No.4129「相続財産から控除できる葬式費用」)
親の死後に出ていくお金は、国税庁の基準では3つの箱に分かれます。箱①相続税の債務控除(死亡時に存在した債務)、箱②相続税の葬式費用(範囲が限定列挙)、箱③売却時の譲渡費用・取得費。特殊清掃費と遺品整理費は、どの箱にも入りにくい費用です。だからこそ「先に払うか、買主に持ってもらうか」の判断が手残り額を左右します。
親が亡くなったあと、実家に関して出ていくお金は、思っていたより多いはずです。葬儀の費用、病院への未払い分、清掃の費用、片付けの費用、それから毎年の固定資産税。
そのうえで、多くの方がこう考えます。「これだけ払ったのだから、相続税からは引けるはずだ」と。
ところが、引ける費用と引けない費用は、かなりはっきり分かれています。 しかも分かれ目は「金額の大きさ」でも「必要だったかどうか」でもありません。この記事では、その分かれ目を国税庁の基準に沿って整理し、どの箱にも入らなかった費用をどう扱えばよいかまでお伝えします。
親の死後に払った費用は、国税庁の基準では3つの箱に分かれます
まず全体像です。相続に関わるお金の話は、実は「相続税の話」と「売ったときの税金(譲渡所得)の話」が別々で、そこが混ざると混乱します。
| 箱 | 何から差し引くか | 判定の基準 | 代表例 |
|---|---|---|---|
| 箱① 債務控除 | 相続税(遺産総額) | 亡くなった時点で現に存在した債務か | 借入金、未払医療費、未払いの固定資産税・住民税 |
| 箱② 葬式費用 | 相続税(遺産総額) | 葬式・葬送に関わる費用か(範囲は限定) | 通夜・火葬・埋葬・納骨、読経料、遺体や遺骨の運搬 |
| 箱③ 譲渡費用・取得費 | 譲渡所得(売った利益) | 売るために直接かかった費用か | 仲介手数料、売主負担の印紙税、土地を売るための取壊し費用 |
| 箱外 | どこからも引けない | 上のいずれにも当たらない | 保有中の修繕費・固定資産税、特殊清掃費、遺品整理費 |
判定の順番は単純です。「亡くなった時点で、すでに存在していた債務かどうか」を最初に見ます。ここで「はい」なら箱①。「いいえ」なら、葬式・葬送に関わるかどうかで箱②へ進み、そこも違えば売却の経費として箱③を検討する、という流れになります。
箱①に入るのは「死亡したときに現に存在した債務」だけです
国税庁は、相続税の計算で遺産総額から差し引ける債務について、「被相続人が死亡したときに現に存在した被相続人の債務(借入金や未払金など)で確実と認められるもの」としています。
つまり、亡くなった瞬間にすでに存在していたかどうかが分かれ目です。金額の大小や、支払いがやむを得なかったかどうかは関係ありません。
箱①に入る可能性が高いもの
- 親名義の借入金(住宅ローンの残債、事業性の借入など)
- 亡くなる前に受けた診療の未払医療費や入院費
- 未払いになっていた固定資産税・住民税
- 電気・ガス・水道・通信の未払分
- 亡くなったあとに確定する所得税など(延滞税・加算税を除く)
最後の項目は見落とされがちです。準確定申告で納めることになる所得税は、亡くなったあとに金額が確定しますが、控除の対象になり得るとされています。
箱①に入らないもの
- お墓など非課税財産に関する債務(墓地の未払代金など)
- 相続人の責任にもとづいて生じた延滞税・加算税(申告が遅れたことによるものなど)
そして、ここが本題です。特殊清掃費・遺品整理費・解体費は、いずれも亡くなったあとに相続人が発注して初めて発生する費用です。亡くなった時点では存在していなかったため、原則として箱①には入りません。
「亡くなったから必要になった費用なのに」と感じられるかもしれません。ただ、基準が見ているのは必要性ではなく、あくまで亡くなった時点で存在していたかどうかです。
箱②の葬式費用は、範囲が具体的に決まっています
葬式費用は債務ではありませんが、相続税を計算するときは遺産総額から差し引けます。範囲は次のとおり具体的に示されています。
葬式費用となるもの
- 葬式や葬送に際し、またはこれらの前において、火葬や埋葬、納骨をするためにかかった費用
- 遺体や遺骨の回送にかかった費用
- 葬式の前後に生じた費用で通常葬式にかかせない費用(お通夜などにかかった費用)
- 葬式に当たりお寺などに対して読経料などのお礼をした費用
- 死体の捜索または死体や遺骨の運搬にかかった費用
葬式費用に含まれないもの
- 香典返しのためにかかった費用
- 墓石や墓地の買入れのためにかかった費用や墓地を借りるためにかかった費用
- 初七日など法事のためにかかった費用
見落とされやすいのが5番の「死体の捜索または死体や遺骨の運搬にかかった費用」です。ひとり暮らしの親が亡くなり、発見までに時間が経ってしまったようなケースでは、この項目に該当する支出が出ることがあります。慌ただしい時期のため領収書が行方不明になりがちですが、捨てずに残しておいてください。
一方で、特殊清掃は「通常葬式にかかせない費用」として挙げられていません。 部屋の原状回復は葬送そのものではなく、建物の状態を戻す作業だからです。
ご相談の場で「清掃に何十万も払ったのに、これは引けないんですか」と聞かれることがあります。正直、申し訳ない気持ちになります。ただ、引けないとわかっているなら、払う前に選択肢を並べておくことはできます。順番の問題です。
箱③は「相続税」ではなく「売ったときの税金」から引くものです
ここが最も混同されやすいところです。箱③は相続税とは別の税金、つまり売却して利益が出たときの譲渡所得の計算で差し引くものです。
譲渡費用となるもの(国税庁が挙げている例)
- 土地や建物を売るために支払った仲介手数料
- 印紙税で売主が負担したもの
- 貸家を売るため、借家人に家屋を明け渡してもらうときに支払う立退料
- 土地などを売るためにその上の建物を取り壊したときの取壊し費用とその建物の損失額
- すでに売買契約を締結している資産をさらに有利な条件で売るために支払った違約金
- 借地権を売るときに地主の承諾をもらうために支払った名義書換料など
譲渡費用にならないもの
- 修繕費や固定資産税など、その資産の維持や管理のためにかかった費用
- 売った代金の取立てのための費用
実家を解体してから土地を売る場合、その取壊し費用は譲渡費用として扱えます。ただし繰り返しになりますが、これは相続税から引くものではありません。売却して利益が出た場合の計算に使うものですので、時期も申告先も別だとお考えください。
なお、取得費のほうにも建物の取壊し費用が出てきますが、こちらは「土地を利用する目的で建物を取得し、取り壊した場合」の話で、状況が異なります。
特殊清掃費・遺品整理費はどう扱われるのか
国税庁が挙げている譲渡費用の例に、特殊清掃も遺品整理も含まれていません。一方で「維持や管理のためにかかった費用」は譲渡費用にならないと明記されています。
したがって、売却のために直接必要だったといえるかどうかで判断が分かれる領域になります。同じ清掃でも、売買契約の条件として売主が引渡しまでに行うことになっていた場合と、相続直後に自分の判断で片付けた場合とでは、説明のしやすさが違ってきます。
金額が大きくなりやすい費目ですので、申告の前に税理士へご確認いただくのが確実です。 この記事は一般的な整理であり、個別の申告判断を保証するものではありません。
先に特殊清掃を済ませると、税で戻らないうえ告知が必要な事案になります
もうひとつ、税とは別に押さえておいていただきたい点があります。
国土交通省の「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」では、老衰や持病による病死などの自然死、および入浴中の転倒事故や食事中の誤嚥といった日常生活の中での不慮の死は、賃貸・売買のいずれについても原則として告げなくてよいとされています。
ただし、続きがあります。
ただし、自然死や日常生活の中での不慮の死が発生した場合であっても、取引の対象となる不動産において、過去に人が死亡し、長期間にわたって人知れず放置されたこと等に伴い、いわゆる特殊清掃や大規模リフォーム等が行われた場合においては、買主・借主が契約を締結するか否かの判断に重要な影響を及ぼす可能性があるものと考えられる
つまり特殊清掃等が行われたことによって、告知の対象として扱われるという構造になっています。費用を自己負担で先に出したうえで、告知が必要な事案になる、ということです。
「3年経てば大丈夫」は、実家の売却には当てはまりません
よく聞く「3年」についても、正確に押さえておいたほうがよい点が2つあります。
1つめは、起算日です。 ガイドラインは「特殊清掃等が行われることとなった死が発覚してから概ね3年間」という書き方をしています。亡くなった日ではなく、発覚した日から数えます。発見までに時間が経っていた場合、その分だけ後ろにずれます。
2つめは、対象となる取引です。 この「概ね3年」は賃貸借取引について述べられたものです。売買取引には、経過期間の基準が示されていません。 ご実家を売るのは売買ですので、「3年待てば告知しなくてよくなる」という前提で待つのは、根拠のない待機になってしまいます。
加えて、期間や死因にかかわらず、買主から事案の有無について問われた場合には告げる必要があるともされています。
なお告知の際も、亡くなった方やご遺族の名誉と生活の平穏に配慮する必要があるため、氏名・年齢・住所・家族構成や具体的な死の態様、発見状況までを告げる必要はないとされています。この点はご安心ください。
売却時期の考え方については、事故物件を高く売るタイミング|「3年待てば」が損になる理由と5つの期限で期限ごとに整理しています。
「先に払って売る」と「現況のまま渡す」を手残りで比べます
税で戻らない費用が確定したところで、では実際にどちらが得なのかを数字で並べてみます。以下は大阪市内の築45年・木造戸建て(土地約20坪)を想定した一例で、実際の金額は物件ごとに変わります。
| A:清掃・片付けをしてから仲介に出す | B:現況のまま買取に出す | |
|---|---|---|
| 売買価格の目安 | 980万円 | 830万円 |
| 特殊清掃・原状回復 | ▲50万円(自己負担) | 0円(買主側で手配) |
| 遺品整理・残置物処理 | ▲30万円(自己負担) | 0円(買主側で手配) |
| 仲介手数料(税込) | ▲38.9万円 | 0円 |
| 売れるまでの保有コスト | ▲12万円(固定資産税・管理を1年分) | ▲1万円 |
| 手残りの目安 | 849.1万円 | 829万円 |
| 現金化までの期間 | 数か月〜1年以上(売れ残るリスクあり) | 2〜4週間 |
| 立て替えの必要 | 80万円を先に自分で用意する | なし |
差は約20万円です。ここで見ていただきたいのは、金額の差そのものよりもAは80万円を先に自分で用意しなければならないという点、そしてAの980万円は「その値段で売れたら」の話だという点です。
そして先ほどのとおり、Aで特殊清掃を行った場合はその事実が告知の対象になります。費用を先に出したのに、告知が必要な物件として売り出すことになる——この組み合わせが、いちばん報われにくい形です。
売れ残って値下げをすれば、差はすぐに逆転します。相続人が複数いて、いったん誰かが立て替えるという話になっているのであれば、なおさら先に両方の数字を出しておいたほうが揉めません。
現況のまま売る方法については、相続した家を現状渡しで売る方法|片付け・修繕なしで買取できる理由もあわせてご覧ください。
大阪市で相続した実家の場合
空き家のミカタは大阪市生野区を拠点とする宅建業者です。大阪市内でご相談をお受けしていて、特に多いのが次の3つの状況です。
1. 遠方にお住まいで、現地に行けない
親御さんは大阪市内、相続人であるお子さんは首都圏や地方、というケースです。何度も往復すると交通費だけで数万円かかりますので、写真と間取り図をお送りいただく形で査定を進めています。
2. 密集した地域で、清掃業者の出入りが目立つ
生野区・西成区・東成区のように住宅が密集した地域では、作業車の出入りが近隣に伝わりやすくなります。現況のままお引き渡しいただく場合、清掃は引渡し後の作業になりますので、売主様側で業者を手配する必要はありません。看板も広告も出しません。
3. 相続登記が済んでいない
2024年4月から相続登記が義務化されています。登記が済んでいない段階でも査定はできますので、先に金額を知ってから登記の段取りを決めていただいて構いません。詳しくは相続登記の義務化|3年期限・10万円過料・手続き費用と3つの対策をご覧ください。
大阪市24区の価格帯については大阪市24区の訳あり物件買取相場マップにまとめています。
よくある質問
Q. 特殊清掃の費用は相続税の債務控除になりますか?
原則としてなりません。債務控除の対象は「被相続人が死亡したときに現に存在した被相続人の債務で確実と認められるもの」とされており、死後に相続人が発注した特殊清掃はこれにあたらないためです。葬式費用として控除できる範囲にも挙げられていません。
Q. 遺体や遺骨の捜索・運搬にかかった費用は控除できますか?
葬式費用の範囲に「遺体や遺骨の回送にかかった費用」と「死体の捜索または死体や遺骨の運搬にかかった費用」が明記されています。発見が遅れたケースではこの項目に該当する支出が出ることがありますので、領収書を残しておいてください。
Q. 親の未払いだった固定資産税や医療費は引けますか?
亡くなった時点で支払いが済んでいない固定資産税・住民税・医療費などは、債務控除の対象になり得ます。亡くなったあとに確定する所得税等も、延滞税・加算税を除いて控除できるとされています。
Q. 実家を解体してから売った場合、解体費用は経費になりますか?
土地を売るためにその上の建物を取り壊した場合、その取壊し費用と建物の損失額は譲渡費用として挙げられています。ただし相続税ではなく、売却したときの譲渡所得の計算で差し引くものです。
Q. 遺品整理の費用はどこにも入らないのですか?
相続税の債務控除にも葬式費用にも入りません。譲渡費用については国税庁の例示に含まれておらず、一方で維持や管理のための費用は譲渡費用にならないとされているため、判断が分かれる部分です。税理士へご確認ください。片付けずに現況のまま売るという方法もあります。
Q. 相続放棄をすれば、これらの費用は払わずに済みますか?
相続放棄をすれば相続人ではなくなりますので、相続財産に関する費用の負担からは離れることになります。ただし相続放棄には「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」という期限があり、また放棄後も一定の管理に関する義務が残る場合があります。詳しくは相続放棄したら家はどうなる?手続きの流れと注意点をご覧ください。
Q. 大阪市の実家でも現況のまま査定してもらえますか?
はい。清掃前・残置物が残ったまま・相続登記が済んでいない段階でもご相談いただけます。査定は無料で、看板や広告は出しません。
まとめ
- 相続税から引けるのは①亡くなった時点で現に存在した債務と②範囲が決まっている葬式費用の2つだけです
- 特殊清掃費・遺品整理費は、死後に相続人が発生させた費用のため、原則としてどちらにも入りません
- 葬式費用には「死体の捜索または死体や遺骨の運搬にかかった費用」が含まれます。発見が遅れたケースでは領収書を必ず残してください
- 土地を売るための建物取壊し費用は譲渡費用です。相続税ではなく、売ったときの税金から引くものだと切り分けてください
- 特殊清掃を先に行うと税でも戻らず、告知が必要な事案にもなります。「概ね3年」は発覚日が起算日で、しかも賃貸借取引の話です
払ってしまってからでは選べません。清掃や解体を発注する前に、現況のままの査定額を知っておく——それだけで、判断できることが増えます。
無料査定・ご相談はこちらから
「清掃を頼む前に、金額だけ知りたい」「税理士に聞く前に全体像を整理したい」——その段階のご相談を歓迎しています。査定は無料で、売却を強制することはありません。
相続した訳あり物件を専門に扱っており、清掃前・残置物そのまま・現況のままで査定にお応えできます。秘密厳守で対応し、遠方にお住まいの相続人の方からのご相談も承っています。
なお、当社は税務の代理を行うことはできません。申告の判断が必要な場面では、提携の税理士をご紹介することもできます。
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出典
- 国税庁 タックスアンサー No.4126「相続財産から控除できる債務」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4126.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.4129「相続財産から控除できる葬式費用」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4129.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.3255「譲渡費用となるもの」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3255.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.3252「取得費となるもの」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3252.htm
- 国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」(令和3年10月)https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001727517.pdf
※本記事は一般的な情報の整理であり、個別の税務判断を保証するものではありません。申告にあたっては税理士にご確認ください。