買取価格はなぜ仲介より安いのか|買う側が負担する原価を項目別に公開【2026年版】
「査定額が思っていたより低かった」「足元を見られているのではないか」。買取の相談をされた方から、最も多くいただくお気持ちです。
結論から書きます。買取価格は、買う側が「再販できる状態にしたときの想定売却価格」から、自社が負担する費用と利益を差し引いて逆算した金額です。
当社の実務では、負担する費用が再販想定価格の25〜35%、利益が10〜15%になることが多く、買取価格は再販想定価格の6〜7割に着地します。
この記事では、その差し引いている中身を項目別の実額で公開します。大阪市の築45年木造戸建を例に買取価格を逆算し、同じ物件を仲介で売った場合の手残りとも並べて比べます。読み終えたときに、提示された金額が妥当かどうかをご自身で検算できる状態を目指しています。
買取価格は「再販できる価格」から逆算されています
仲介と買取の一番の違いは、お金を払う人が誰かです。
仲介では、買主は一般の個人です。その方が住むために、リフォーム済みで境界も確定した状態の家を、住宅ローンを使って買います。売主が受け取るのは、その方が払う金額です。
買取では、買う側が宅地建物取引業者です。業者はその家に住みません。直した上で次の方に売ることを前提に買います。ですので、買取価格は次の式で決まります。
買取価格 = 再販できる状態にしたときの想定売却価格 − 買う側が負担する費用 − 利益
つまり買取価格が低く見えるとき、その差額は誰かの懐に消えているのではなく、これから発生する工事費・税金・期間のコスト・引渡し後の責任に割り当てられています。逆に言えば、その割り当ての内訳を出せない業者の金額は、高くても安くても信用する根拠がありません。
宅建業者の視点:査定額をお伝えするとき、当社は必ず「再販価格をいくらと見たか」から説明しています。ここを伏せたまま結論の金額だけを出すと、お客様には検算のしようがありません。金額の妥当性は、引き算の中身が見えて初めて判断できるものだと考えています。
買う側が負担する費用を項目別に公開します
大阪市内の訳あり物件を買い取る場合に、当社が実際に見込んでいる費用です。金額は物件の状態で上下しますので、レンジで示します。
| 費用項目 | 実額の目安 | 内容 |
|---|---|---|
| 残置物の撤去・室内清掃 | 10〜30万円 | 家財・仏壇・生活用品の処分。量が多いと30万円を超えます |
| 原状回復・最低限のリフォーム | 100〜300万円 | 水回り・内装・給排水。次の方が住める状態にするための工事 |
| 解体(更地で売る場合) | 120〜360万円 | 木造30坪。前面道路が4m未満で重機が入らないと上振れします |
| 境界確定測量 | 35〜100万円 | 隣地の数と古い図面の有無で変わります |
| 取得時の登記費用 | 15〜30万円 | 登録免許税(本則は評価額の2%)+司法書士報酬 |
| 不動産取得税 | 評価額に応じて数万〜数十万円 | 土地・住宅は3%。宅地は課税標準が価格の2分の1(いずれも令和9年3月31日まで) |
| 保有期間中の固定資産税・都市計画税・火災保険 | 年10〜20万円 | 工事と販売にかかる期間ぶんを負担します |
| 投下資金の金利・資金コスト | 年3〜5%相当 | 買取代金と工事費を先に支払うための資金にかかるコスト |
| 再販時の仲介手数料 | 売価×3%+6万円+消費税 | 次の買主を探すために支払います |
| 契約不適合責任への引当 | 売価の1〜3% | 引渡し後に見つかった不具合の補修に備える金額 |
| 印紙税・広告費・現地管理 | 10〜20万円 | 契約書の印紙、販売広告、草刈りや見回り |
このうち、見落とされがちで金額が大きいのが最後の2つです。
宅地建物取引業者が自ら売主になる売買契約では、目的物が種類または品質に関して契約の内容に適合しない場合の責任について、引渡しの日から2年以上とする特約を除き、民法566条の定めより買主に不利となる特約はできません(宅地建物取引業法40条)。これに反する特約は無効です。つまり業者は、売ったあと最低2年間、雨漏りやシロアリなどの補修責任を負い続けます。その引当を先に価格から差し引いています。
再販時の仲介手数料も、買主を自社で見つけられなければ必ず発生します。売買の媒介で受け取れる報酬の上限は、代金の200万円以下の部分が5.5%、200万円超400万円以下の部分が4.4%、400万円を超える部分が3.3%(いずれも消費税等相当額を含む)と告示で定められており、これが業者側の販売コストになります。
大阪市は狭い道路に面した密集市街地が多く、前面道路が4m未満で重機が入らない現場が珍しくありません。木造30坪の解体費用は、標準条件なら120〜180万円ですが、手壊しになると240〜360万円まで上がります。同じ広さの土地でも査定額に100万円以上の差が出るのは、この現場条件が理由です。詳しい単価は大阪市の解体費用の相場【2026年】にまとめています。
大阪市の木造戸建(築45年)で買取価格を逆算します
具体的な数字で追いかけます。次の条件を想定します。
- 大阪市内・築45年の木造戸建(土地30坪・延べ床25坪)
- 相続で取得。残置物あり、境界未確定、直近5年は空き家
- 固定資産税評価額:土地650万円・建物50万円
- 内装と水回りを直し、境界を確定し、契約不適合責任つきで一般の方に売れる状態にしたときの想定売却価格:1,500万円
ここから差し引いていきます。
| 差し引く項目 | 金額 |
|---|---|
| 残置物の撤去・室内清掃 | 20万円 |
| 原状回復・リフォーム | 180万円 |
| 境界確定測量 | 50万円 |
| 取得時の登記費用(登録免許税+司法書士報酬) | 25万円 |
| 不動産取得税(宅地は課税標準1/2・税率3%) | 11万円 |
| 保有中の固定資産税・都市計画税・火災保険(8か月) | 10万円 |
| 投下資金の金利(約1,100万円・年4%・8か月) | 30万円 |
| 再販時の仲介手数料(1,500万円×3%+6万円+消費税) | 56万円 |
| 契約不適合責任への引当・引渡し後の補修対応 | 30万円 |
| 印紙税・販売広告・現地管理 | 13万円 |
| 費用合計 | 425万円 |
| 利益(再販想定価格の10%) | 150万円 |
買取価格 = 1,500万円 − 425万円 − 150万円 = 925万円
再販想定価格の約62%です。「6〜7割」という数字は、この引き算の結果であって、最初から決めている割合ではありません。
登記費用の内訳も開きます。売買による所有権移転登記の登録免許税は、本則で評価額の1,000分の20(2%)です。土地には期限つきの軽減税率が設けられてきましたが、適用期限は税制改正のたびに変わるため、当社は本則で見込んでいます。この例では土地13万円・建物1万円に司法書士報酬11万円を加えて25万円としました。個人が自己の居住用に買う場合の軽減(移転登記1,000分の3)は、再販目的で取得する業者には適用されません。
仲介で売った場合の手残りと比べます
同じ物件を、リフォームせず現況のまま仲介で売った場合を並べます。
築45年の木造は住宅ローンの審査が通りにくく、買主は現金で購入する層が中心になります。そのぶん値引き交渉は強くなり、境界未確定・残置物ありの状態では、買主から測量と撤去を売主負担で求められるのが通常です。
| 項目 | 仲介(現況のまま) | 買取 |
|---|---|---|
| 売出価格 | 1,380万円 | — |
| 成約価格 | 1,150万円(値引き交渉後) | 925万円 |
| 仲介手数料 | −44.6万円 | 0円 |
| 残置物の撤去 | −20万円 | 0円 |
| 境界確定測量 | −50万円 | 0円 |
| 売却までの保有コスト(10か月) | −13万円 | 0円 |
| 印紙税 | −1万円 | −1万円 |
| 手残り | 約1,021万円 | 約924万円 |
| 期間 | 10か月(売れない可能性あり) | 2〜3週間 |
| 引渡し後の責任 | 売主に残る | 免責で引き受け |
仲介のほうが約97万円多く残ります。これが正直な計算結果です。売却期間を待てて、買主が見つかる見込みのある物件なら、仲介を選んでいただくほうが金額面では有利です。当社もそのようにお伝えしています。
ただし、この表には数字にならない差が2つあります。
1つは期間と不確実性です。10か月は「売れた場合」の期間で、売れなければ延びます。その間も固定資産税と火災保険は毎年かかり、草刈りや郵便物の確認も続きます。相続税の申告期限(相続開始を知った日の翌日から10か月)や、遺産分割協議の期限が迫っている場合、この期間は選べません。
もう1つは引渡し後の責任です。個人が売主の場合、契約不適合責任を負わない特約は有効です。ただし、売主が知りながら告げなかった事実については、その特約があっても責任を免れることができません(民法572条)。雨漏りや傾き、過去の水害を知っていて伝えなかった場合、引渡し後に争いになる余地が残ります。買取では、業者が現況を確認したうえで免責で引き受けます。
買取・仲介・放置の3択をスピードや手間も含めて比べたい方は、不動産売却は買取・仲介・放置どれが正解?4軸で徹底比較もあわせてご覧ください。
それでも買取を選んだほうがよい5つの場面
金額だけを見れば仲介が有利な場面が多いなかで、買取が合理的になるのは次のようなときです。
- 仲介で3か月以上動きがない。再建築不可・接道なし・連棟式など、そもそも仲介市場で買主が付きにくい物件です
- 先に出ていくお金を用意できない。測量50万円、残置物撤去20万円、リフォーム180万円を売却前に払えない場合、仲介の土俵に上がれません
- 期限がある。相続税の納税、遺産分割協議、離婚の財産分与など、決着の日が決まっている場合です
- 共有者が複数いる。全員の同意を取り続ける期間が長いほど、合意が崩れる可能性が上がります
- 引渡し後の責任を残したくない。築古の物件は、何が出てくるか売主にも分かりません
逆に、立地が良く現況でも買主が付きそうな物件、時間に余裕がある物件は、仲介を先に試していただくべきです。当社に相談された方にも、この場合は仲介をおすすめしています。
不当に安い査定を見分ける5つの質問
金額の妥当性は、次の5つを聞けば判断できます。
1. 再販想定価格をいくらと見ましたか
この数字が出発点です。答えられない、または「うちの基準で」としか言わない場合、以降の検算ができません。
2. そこから何を、いくら差し引きましたか
工事費・測量費・登記費用・保有コスト・再販時の手数料を、項目ごとに金額で出してもらってください。合計が再販価格の25〜35%に収まっているかが目安です。
3. 利益は再販価格の何%ですか
10〜15%が一般的な水準です。20%を超える場合は理由を聞いてください。工事の難易度、権利調整に要する年数、再販先の限定といった具体的な事情があれば妥当なこともあります。
4. 現地を見たうえでの金額ですか
前面道路の幅、重機の進入可否、隣地との境界、屋根と基礎の状態は、現地でしか分かりません。現地を見ずに出した金額を、契約直前に下げてくるのは避けたい対応です。
5. 契約書の解除条項と違約金を事前に見せてもらえますか
契約後の減額(指値)や、解除時の違約金の条件は、契約書を読めば分かります。事前に見せない業者は見送ってください。
そのうえで、2社以上に査定を出してください。当社は相見積もりを歓迎しています。他社の金額が当社より高いなら、そちらを選んでいただくのが正しい判断です。金額の根拠を開示しているのは、比べられても構わないからです。
査定の現場で何が見られているかは訳あり物件の買取価格はどう決まる?査定の根拠と現地調査の8チェックポイントに、避けるべき業者の手口は訳あり不動産買取の悪質業者5つの手口にまとめています。
よくあるご質問
Q. 査定額を他社と比べたいのですが、失礼になりませんか。
まったく問題ありません。不動産の売却は多くの方にとって一生に数回のことですので、比べていただくのが自然です。当社にお伝えいただければ、他社の金額と何が違うのかを項目ごとにご説明します。
Q. 「今日決めてくれればあと50万円上げます」と言われました。
その場での即決を求める提案は、比べる機会を減らすためのものである可能性があります。50万円上げられるのであれば、翌日でも上げられるはずです。いったん持ち帰って、他社の査定と並べてからご判断ください。
Q. 空き家のまま置いておくと、査定額は下がりますか。
下がる方向に動きます。人が住まない家は傷みが早く、雨漏りやシロアリの被害が進むと原状回復費が増え、そのぶん買取価格から差し引かれます。また、放置が続くと管理不全空家等・特定空家等に指定される可能性があり、固定資産税の住宅用地特例が外れる場合があります。
Q. 更地にしてから売ったほうが高く売れますか。
土地として売れる価格が、解体費用を上回るかどうかで決まります。大阪市で木造30坪を解体すると120〜360万円かかり、1月1日時点で建物がないと、その年度から住宅用地の特例が外れて固定資産税が上がります。解体前に、現況のままの査定額と解体後の想定価格を両方確認してからご判断いただくのが安全です。
Q. 提示された金額に納得できない場合、断ってもいいですか。
もちろんです。査定は金額をお伝えするところまでで、売る義務は生じません。お断りいただいたあとに連絡を重ねることもありません。
Q. 大阪市以外の物件でも相談できますか。
ご相談はお受けします。大阪を中心に、兵庫・京都・奈良・滋賀・和歌山の物件のご相談に対応しています。買取の可否・条件は所在地と物件の状況を確認してご案内します。上記の対応地域外の物件は買取・査定の対象外です。対応地域外の物件は、物件所在地の不動産会社へご相談ください。
相見積もりを前提にご相談ください
買取価格に納得できるかどうかは、金額の大きさではなく引き算の中身が見えるかどうかで決まります。当社は査定額をお伝えする際に、再販想定価格をいくらと見たのか、そこから何をいくら差し引いたのかを項目ごとにお出ししています。
物件の所在地と築年数、現在の状態が分かれば、お名前を伏せたままでも価格帯をお答えできます。「まだ売ると決めていない」「仲介と比べるための数字がほしい」という段階で構いません。
仲介のほうが手残りが多くなると判断した場合は、その旨をお伝えします。他社の査定と並べていただいたうえでご判断ください。
対応しているのは、大阪府内の訳あり不動産です。
相談無料・秘密厳守。査定額の根拠は項目ごとに書面でお出しします。
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出典・参考
- e-Gov法令検索「宅地建物取引業法(昭和二十七年法律第百七十六号)」第40条(担保責任についての特約の制限)
- e-Gov法令検索「民法(明治二十九年法律第八十九号)」第566条・第572条
- 国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」(令和6年6月21日国土交通省告示第949号・令和6年7月1日施行。低廉な空家等の媒介の特例を含む)
- 国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」(売買による所有権移転登記の税率)
- 国税庁「No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置」(令和9年3月31日まで)
- 大阪府「不動産取得税」(土地・住宅の税率3%、宅地の課税標準2分の1。いずれも令和9年3月31日まで)
- 大阪市「狭あい道路沿道老朽住宅除却促進制度」(解体費用と補助の目安)
本記事の費用レンジ・シミュレーションは、当社が大阪市内で実際に取り扱った案件をもとにした2026年8月時点の目安であり、個別の物件で同じ金額になることを保証するものではありません。税額の判断は税理士に、権利関係の争いに関する判断は弁護士・司法書士にご相談いただくのが確実です。税率・特例の適用期限は改正されることがあるため、手続を検討される際は各機関の最新の案内をご確認ください。