共有持分は兄弟に内緒で査定できる?知られるのは登記のあと|話がつかないときの法的3ルート【2026年版】
共有名義の不動産を持っていて、「自分の持分だけ手放したい。でも兄弟には知られたくない」と考えている方は少なくありません。ご相談のなかでも、法律の話より先に「家族に連絡がいってしまうのか」を心配される方が多い印象です。
結論から書きます。
査定と相談の段階では、他の共有者に連絡はいきません。知られるのは、実際に売却して持分移転登記が終わったあとです。
自分の持分だけなら、他の共有者の同意なく売れます(民法206条)。同意が必要なのは、不動産全体を売るときです。
話し合いがまとまらない場合は、裁判所を使う3つのルートがあります。2023年4月の民法改正で、行方不明の共有者がいても進められる制度ができました。
この記事では、「どこまでなら知られずに動けるのか」という線引きを整理します。そのうえで、話がつかないときの法的な選択肢を、費用と期間の目安つきで解説します。

査定と相談の段階では、他の共有者に連絡はいきません
査定に必要な情報は、次の3つです。
- 物件の所在地(住所)
- あなたの持分割合(1/2・1/3など)
- 建物と土地のおおよその状況
このどれも、他の共有者の協力なしに確認できます。持分割合がわからない場合も、住所がわかれば登記事項証明書を取り寄せて調べられます。共有者に「売却を検討している」と伝える必要はありません。
不動産会社が他の共有者に連絡する義務も、法律上ありません。買い取る側にとっても、話がまとまる前に共有者へ接触するのは、単に取引を壊すだけの行為です。
ただし、現地調査(物件を実際に見に行くこと)だけは注意が必要です。共有者の誰かがその家に住んでいる場合、外を歩いている人がいれば気づかれる可能性はあります。ここは事前に「外観だけにしてほしい」「立ち入りはしないでほしい」と伝えておけば調整できます。
知られるのは持分移転登記のあと。登記事項証明書は誰でも600円で取れます
売却が完了すると、法務局で持分移転登記(所有者の名義を書き換える手続き)を行います。この登記が終わると、登記簿の共有者欄があなたから買主に変わります。
登記事項証明書は、その不動産と無関係な第三者でも取得できます。他の共有者が法務局の窓口やインターネットで請求すれば、名義が変わったことは確認できてしまいます。
手数料は次のとおりです(2025年4月1日改定・法務省)。
| 請求方法 | 手数料(1通) |
|---|---|
| 法務局の窓口・郵送での書面請求 | 600円 |
| オンライン請求・郵送で受け取り | 520円 |
| オンライン請求・窓口で受け取り | 490円 |
つまり、隠し通すことはできません。ただし、他の共有者に自動で通知が届く仕組みはありません。相手が自分で調べに行かない限り、すぐには気づかれないのが実際のところです。

現実的な線引きは、こうなります。
- 知られない:相談、査定、価格の提示、売るかどうかの検討
- 調べれば知られる:売買契約後の持分移転登記
- ほぼ確実に知られる:買主(買取業者)が共有者と交渉を始めた段階
「家族に連絡しないでほしい」は、査定を依頼するときに先に伝えます
後から言うより、最初に条件として出しておくほうが確実です。相談の入口で、次の3点を伝えてください。
1. 連絡手段を限定する 「電話は避けたい」「LINEだけにしてほしい」「平日の日中は連絡不可」といった希望を、最初に伝えます。同居のご家族に知られたくない場合は、これが一番効きます。
2. 書面の郵送可否を決める 査定書や契約書類を自宅に送ると、同居の家族の目に触れることがあります。郵送を止めてデータで受け取る、局留めにする、といった方法があります。
3. 現地調査の範囲を決める 外観のみとするか、内部も見るか。共有者が住んでいる場合は外観のみが基本です。
こうした配慮は特別なことではなく、共有持分の相談では標準的な進め方です。遠慮せず、最初に言っていただくほうが助かります。
自分の持分だけなら同意はいりません(民法206条・249条・251条)
なぜ内緒で進められるのか。根拠は民法にあります。共有不動産では、やることによって必要な同意の範囲が変わります。
| やりたいこと | 必要な同意 | 根拠 |
|---|---|---|
| 自分の持分を売る・贈与する | 不要(単独でできる) | 民法206条 |
| 共有物全体を使う(持分に応じた使用) | 不要 | 民法249条1項 |
| 賃貸に出す(短期)・修繕する | 持分価格の過半数 | 民法252条1項 |
| 建物を取り壊す・大規模に改造する | 共有者全員 | 民法251条1項 |
| 不動産全体を売る | 共有者全員 | 民法251条1項 |
表の1行目が答えです。持分(複数人で1つの不動産を分けて所有しているときの、各自の取り分)は、あなた個人の財産です。だから処分の判断も、あなた個人でできます。
一方で、全体を売るには全員の同意が要ります。だから「兄が売らないと言っている」という状況では、全体売却の道は事実上ふさがれます。そこで残る現実的な選択肢が、自分の持分だけの売却です。
なお、持分だけを売る場合の価格は、不動産全体の評価額に持分割合を掛けた金額の60〜70%程度が目安になります。単独では使えず売れない権利なので、その分が差し引かれます。詳しい計算は共有持分の買取相場にまとめています。
話がつかないときの法的3ルート
「持分を売る」以外に、裁判所を使って共有状態そのものを解消する方法があります。相手が反対している場合と、相手が行方不明の場合で、使える制度が違います。

ルート1:共有物分割請求訴訟 — 2023年の改正で「賠償分割」が条文に明記されました
各共有者は、いつでも共有物の分割を請求できます(民法256条1項)。話し合いで決まらなければ、裁判所に分割を求められます(民法258条1項)。
2023年4月1日施行の改正で、裁判所が命じられる分割方法が条文で整理されました。
- 現物分割:土地を物理的に分ける(民法258条2項1号)
- 賠償分割:共有者の一人が他の共有者に代金を払い、持分を取得する(民法258条2項2号)
- 競売分割:上の2つで分けられないときに、競売にかけて代金を分ける(民法258条3項)
改正前から実務では賠償分割が使われていましたが、条文に明記されたことで見通しが立てやすくなりました。「兄が住み続けたいが、自分は現金がほしい」という典型的な相続の場面では、この賠償分割が落としどころになります。
注意点は、時間と費用です。訴訟の前に協議や調停を経ることが多く、鑑定(不動産の価格を専門家に評価してもらう手続き)が入ると期間が延びます。協議の開始から判決まで1年以上かかることは珍しくありません。弁護士費用も別途かかります。
もう一つ、確認しておくことがあります。共有者の間で「一定期間は分割しない」という不分割特約を結んでいる場合です。この特約があると、その期間中は分割請求ができません(民法256条1項ただし書)。特約は最長5年で、更新もできます。登記されていることもあるので、登記事項証明書を確認してください。
ルート2:所在等不明共有者の持分取得(民法262条の2)— 供託して持分を自分のものにする
共有者の誰かが行方不明で連絡が取れない。この状態は、従来はとても厄介でした。ここに新しい制度ができたのが2023年4月1日です。裁判所の裁判により、行方不明の共有者の持分を他の共有者が取得できるようになりました(民法262条の2)。
流れはこうです。
- 不動産の所在地を管轄する地方裁判所に申し立てる(非訟事件手続法87条1項)
- 裁判所が官報などで公告し、異議の届出を受け付ける。この期間は3か月を下回らない期間で定められる
- 期間内に異議が出なければ、裁判所が定めた時価相当額を供託する
- 裁判が確定し、行方不明者の持分が申立人に移る
東京地方裁判所が公表している申立ての案内では、費用の目安が次のように示されています。
| 費目 | 金額 |
|---|---|
| 申立手数料(収入印紙) | 1,000円(持分の数×申立人の数) |
| 予納金(官報公告費用) | 7,134円〜 |
| 郵便切手 | 6,000円分(共有者が1名増えるごとに+2,178円) |
このほかに、供託する時価相当額と、不動産鑑定の費用がかかります。行方不明であることを裏づける資料も必要です。住民票、戸籍謄本、返送された郵便物などを揃えます。手数料そのものは高くありませんが、供託金と調査の手間が実質的な負担になります。
ルート3:所在等不明共有者の持分譲渡権限付与(民法262条の3)— 全体を第三者に売る
ルート2は「行方不明者の持分を自分が買う」制度です。これに対し民法262条の3は、行方不明者の持分を第三者に売る権限を、裁判所が与える制度です。同じく2023年4月1日施行です。
使いどころは、共有者全員で不動産全体を売りたいが、一人だけ行方不明で全員の同意が揃わないケースです。この裁判を得れば、行方不明者の持分も含めて全体を売却できます。行方不明者には、売却代金のうち持分に応じた額が確保されます。
条件があります。裁判の効力が生じてから2か月以内に、実際に譲渡を完了しなければ効力を失います(非訟事件手続法88条3項。裁判所が期間を延ばすことはできます)。買主を先に決めてから申し立てる、という段取りが必要です。
遺産共有には「相続開始から10年」の壁があります
ここが見落とされやすい点です。相続した不動産がまだ遺産分割されていない状態を、遺産共有と呼びます。この遺産共有の持分には、上の制度がそのまま使えないことがあります。

民法262条の2による持分取得は、遺産共有の場合、相続開始から10年以上経過していることが必要です(民法262条の2第3項)。10年に満たない間は、家庭裁判所の遺産分割手続で解決することが原則になります。
10年という区切りは、他の場面にも影響します。
- 特別受益・寄与分が主張できなくなる:相続開始から10年を過ぎると、生前贈与を受けていた(特別受益)、介護に貢献した(寄与分)といった個別事情を主張できず、原則として法定相続分で分けることになります(民法904条の3・2023年4月1日施行)
- 共有物分割訴訟でまとめて分割できるようになる:10年経過後は、遺産共有の持分も共有物分割請求訴訟のなかで分割できます(民法258条の2第2項)。相続人が異議を述べた場合を除きます
つまり10年の経過は、有利にも不利にも働きます。介護をしてきた・生前に援助を受けていないという事情がある側にとっては、10年が過ぎると主張の機会を失います。「そのうち話し合おう」で放置するのが一番まずいのは、この理由からです。
どの方法を選ぶか:4つの選択肢の比較
| 方法 | 他の共有者の同意 | 期間の目安 | 主な費用 | 向いているケース |
|---|---|---|---|---|
| 自分の持分だけ売却 | 不要 | 2週間〜1か月 | 仲介手数料なし(直接買取の場合) | 話し合いが進まない・関わりたくない |
| 共有物分割請求訴訟 | 不要(訴える) | 1年以上 | 弁護士費用・鑑定費用・印紙代 | 全体の解決を望む・相手と争う覚悟がある |
| 所在等不明共有者の持分取得 | ー(相手が不明) | 半年〜1年 | 印紙1,000円・予納金7,134円〜・供託金 | 共有者が行方不明で、自分が持ち続けたい |
| 持分譲渡権限付与 | 他の共有者の合意は必要 | 半年〜1年+2か月以内に売却 | 同上 | 一人だけ行方不明で、全体を売りたい |
期間はいずれも目安です。物件の状況や相手方の対応によって変わります。
判断の軸はシンプルです。不動産そのものを手に入れたい・全体を解決したいなら裁判所を使うルート、自分だけ早く抜けたいなら持分売却です。ご相談で多いのは後者で、「もう関わりたくない」「兄弟と争うくらいなら安くていい」という動機がほとんどです。
実際の進み方は「兄が売らないと言っている」共有名義の実家を処分できた相談事例に記録しています。
よくある誤解を3つ整理します
誤解1:持分を売るには、まず他の共有者に声をかけないといけない
法律上の義務はありません。ただし他の共有者に買い取ってもらえるなら、業者に売るより高い金額になることが多いのは事実です。関係が悪くない相手なら、先に打診する価値はあります。関係が壊れている場合や、話を持ちかけること自体が負担な場合は、そのまま売却して構いません。
誤解2:売ったあと、共有者から損害賠償を請求される
適法な処分なので、持分を売ったこと自体を理由に責任を問われることはありません。感情的なトラブルになる可能性は残りますが、それは法的な責任とは別の話です。
誤解3:持分放棄すれば、面倒がなくてよい
持分放棄は、お金を受け取らずに権利を手放す行為です(民法255条)。放棄した持分は他の共有者のものになります。手放せますが、1円も受け取れません。しかも登記には他の共有者の協力が要るため、関係が悪いと手続きが進まないことがあります。売れるものを放棄する理由はありません。選択肢の整理は共有持分Q&Aハブをご覧ください。
よくあるご質問
Q. 査定を依頼したら、断ることはできますか。 できます。査定は価格をお伝えするところまでで、売る義務は生じません。金額を見てから考えていただいて構いません。査定後にお断りいただいても、その後に連絡を重ねることはありません。
Q. 相続登記が終わっていません。それでも査定できますか。 査定はできます。売却の際には相続登記が必要になりますが、司法書士が並行して進めます。相続登記は2024年4月1日から義務化されており、相続を知った日から3年以内の申請が求められています。まだの場合は、この機会に済ませておくのが安全です。
Q. 共有者が5人以上います。全員と話をしないと売れませんか。 自分の持分だけを売るのであれば、全員と話す必要はありません。共有者が多いほど全体売却の合意形成は難しくなるため、持分売却を選ばれる方が増えます。ただし共有者が多い物件は買取価格が下がりやすい傾向があります。
Q. 共有者に認知症の方がいます。全体を売ることはできますか。 そのままでは全体を売れません。判断能力がない方は有効な契約を結べないため、家庭裁判所に成年後見人の選任を申し立てる必要があります。時間がかかるため、自分の持分だけを先に売却する方も多くいます。
Q. 大阪市以外の物件でも相談できますか。 ご相談はお受けします。ただし大阪を中心に、兵庫・京都・奈良・滋賀・和歌山の物件のご相談に対応しています。買取の可否・条件は所在地と物件の状況を確認してご案内します。上記の対応地域外の物件は買取・査定の対象外です。対応地域外の物件は、物件所在地の不動産会社へご相談ください。ご自身で動く場合の手順もお伝えします。
Q. 相談したことが記録に残って、家族に見られませんか。 LINEでのご相談は、ご自身の端末の履歴以外に外へ出ることはありません。書面の郵送も止められます。共有者を含む第三者に、こちらから情報を渡すことはありません。
匿名のままでご相談いただけます
共有持分の相談は、物件の所在地と持分割合がわかれば、お名前を伏せたままでも価格帯をお伝えできます。「まだ売ると決めていない」「いくらになるかだけ知りたい」という段階で構いません。
ご家族に知られたくない事情がある場合は、最初にその旨をお伝えください。連絡手段を限定し、書面の郵送も止めます。査定後にお断りいただいても問題ありません。
対応しているのは、大阪府内の訳あり不動産です。
相談無料・秘密厳守。ご家族への連絡は一切いたしません。
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出典・参考
- e-Gov法令検索「民法(明治二十九年法律第八十九号)」第206条・第249条・第251条・第252条・第255条・第256条・第258条・第258条の2・第262条の2・第262条の3・第904条の3
- e-Gov法令検索「非訟事件手続法(平成二十三年法律第五十一号)」第87条・第88条
- 法務省「登記手数料について」(2025年4月1日改定の手数料額)
- 法務省「所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し」
- 東京地方裁判所「所在等不明共有者持分取得申立てについて」(申立先・費用・添付書類・10年要件)
共有制度の見直しに関する改正民法は、2023年(令和5年)4月1日に施行されています。制度は改正されることがあるため、申立てを検討される際は裁判所の最新の案内をご確認ください。訴訟・遺産分割・成年後見の判断は弁護士・司法書士に、税額の判断は税理士にご相談いただくのが確実です。本記事の期間・費用は目安であり、個別の結果を保証するものではありません。