共有持分を売った後どうなる?共有物分割請求の流れ・期間・費用【2026年版】
共有持分を売った後どうなる?共有物分割請求の流れ・期間・費用【2026年版】

この記事でわかること 共有持分を売った後、あるいは他の共有者に売られた後に何が起きるのかを、手続きの順番・期間・実額の費用で整理しています。
共有物分割請求とは、共有関係を終わらせるための手続きのことです。共有者の一人が「もうこの共有状態をやめたい」と求めると、協議 → 調停 → 訴訟という順番で進み、最終的には裁判所が分割方法を決めます。
持分を売ると、買主はこの請求権をそのまま引き継ぎます。つまり「持分を売る」という判断は、共有関係の解消を次の当事者に引き渡すということでもあります。
不安に感じられるかもしれません。ただ、実際に起きることは法律で手順が決まっていて、想像しているほど不透明ではありません。順番に見ていきます。
1. 持分が売られた後の3段階|協議・調停・訴訟

第1段階:協議(話し合い)
新しく共有者になった買主から、他の共有者へ連絡が入ります。内容はおおむね次のどれかです。
- 買主が他の共有者の持分も買い取りたい
- 他の共有者に、買主の持分を買い取ってもらいたい
- 不動産全体を売って代金を持分割合で分けたい
この段階で合意できれば、裁判所は一切関係ありません。実務上、ここでまとまる案件は珍しくありません。合意内容は共有物分割協議書にまとめ、登記まで進めます。
第2段階:調停(民事調停)
協議がまとまらないとき、簡易裁判所の民事調停を使うことがあります。調停委員が間に入り、双方の言い分を聞いて解決案を探る手続きです。調停期間の目安は3〜6か月程度とされています。
なお、共有物分割は調停を先に経なければならない手続き(調停前置)ではありません。調停を飛ばして訴訟を起こすこともできます。
第3段階:共有物分割請求訴訟
民法第258条第1項は「共有物の分割について共有者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、その分割を裁判所に請求することができる」と定めています。「協議をすることができないとき」という文言は、令和5年4月1日施行の改正で明文化されました。連絡が取れない共有者がいる場合でも手続きを進められることが、条文上はっきりしたわけです。
訴訟になると、裁判所は必ず何らかの分割方法を命じます。「請求を認めない」という結論にはならないのがこの訴訟の特徴です。
宅建業者の視点: 共有者の方から「訴えられたらどうしよう」というご相談をよくいただきます。共有物分割請求は、誰かが悪いことをしたと責める訴訟ではありません。共有という状態を法的に終わらせるための手続きです。話し合いの入り口として届くことのほうが多いとご理解いただければと思います。
2. 判決の3類型|なぜ全面的価格賠償が中心になるのか
民法第258条第2項・第3項は、裁判所が命じられる分割方法を次のように定めています。
| 類型 | 内容 | 根拠条文 | 選ばれやすさ |
|---|---|---|---|
| 現物分割 | 土地を切り分けて各共有者の単独所有にする | 258条2項1号 | 広い土地に限られる |
| 賠償分割(全面的価格賠償) | 1人が取得し、他の共有者へ持分相当額を金銭で支払う | 258条2項2号 | 建物・狭小地では中心 |
| 競売分割 | 競売にかけて代金を持分割合で分ける | 258条3項 | 最後の手段 |
現物分割が選ばれにくい理由
1棟の建物を物理的に切り分けることはできません。土地についても、大阪市内の住宅地でよくある30〜40坪の敷地を2つに割れば、それぞれが接道条件を満たさなくなったり、建てられる建物が小さくなったりします。分割によって価値が大きく下がる場合、裁判所は現物分割を選びません。
全面的価格賠償が中心になる理由
全面的価格賠償は、共有者の1人が不動産をまるごと取得し、他の共有者には持分に相当する金銭を支払う方法です。最高裁判所は平成8年10月31日の判決でこの方法を認めました。認められる条件として、その共有者が取得することが相当であること、価格が適正に評価されていること、取得する共有者に支払能力があること、他の共有者が受け取る金額が実質的な公平を害しないことが挙げられています。
改正前は判例で認められていたにとどまりましたが、令和3年の改正で条文にも位置づけられました。不動産の価値を落とさずに共有関係だけを解消できるため、実務上もっとも使われる着地点です。
競売分割は最後に回される
民法第258条第3項は、現物分割・賠償分割のいずれもできないとき、または分割によって価格を著しく減少させるおそれがあるときに競売を命ずることができる、という順序で書かれています。競売では通常の売却より2〜3割程度価格が下がるとされており、全員の手取りが減ります。裁判所も当事者も避けたい選択肢であるため、実際に競売まで進む案件は限られます。
なお同条第4項により、裁判所は当事者に対して金銭の支払・物の引渡し・登記義務の履行その他の給付を命ずることができます。賠償金の支払いと登記手続きをまとめて命じられる仕組みです。
3. 訴訟になった場合の費用と期間

費用の実額レンジ
| 項目 | 目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 弁護士費用(着手金+報酬金) | 50万〜150万円程度 | 事案の複雑さ・不動産価格で変動 |
| 不動産鑑定費用 | 30万〜60万円程度 | 実施されない案件もある |
| 収入印紙(訴額500万円) | 約3万円 | 訴額に応じて変動 |
| 収入印紙(訴額1,000万円) | 約5万円 | 同上 |
| 予納郵券(切手代) | 5,000円程度 | 裁判所により異なる |
訴額は不動産の価格そのものではなく、共有物分割訴訟用の計算式で算出されます。おおむね土地は固定資産税評価額×持分割合×2分の1×3分の1、建物は固定資産税評価額×持分割合×3分の1という考え方です。3,000万円の建物の3分の1の持分であれば、訴額は約333万円となり、印紙代はその金額に対応した額になります。
鑑定は、当事者双方が評価額におおむね合意している場合や、競売による解決が見込まれる場合には実施されないこともあります。逆に評価額で争いになると、鑑定だけで2〜4か月が加わります。
期間の目安
裁判所は共有物分割訴訟だけを取り出した平均審理期間を公表していません。大阪地方裁判所についても同様です。参考になる数字として、「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」(第10回・令和5年7月公表)では、地方裁判所の民事第一審訴訟事件の平均審理期間は令和4年で10.5か月とされています。
実務の肌感覚としては、調停から判決確定まで1年〜3年程度かかる案件が多いと言われます。鑑定が入る、共有者の人数が多い、判決後に控訴されるといった要素が重なると、長いほうに寄ります。
ここで見落とされがちなのが期間そのもののコストです。訴訟の間も固定資産税は毎年かかり、建物があれば劣化も進みます。空き家であれば管理の手間も続きます。仮に3年かかった場合、この間のコストは弁護士費用と同じくらいの規模になることもあります。
4. 他の共有者に持分譲渡が伝わるタイミング

持分の売却に、他の共有者の同意も事前通知も必要ありません。ただし「一生知られない」わけではありません。伝わるタイミングは次の2つです。
タイミング1:持分移転登記の完了時
売買が成立すると持分移転登記を行います。登記簿の所有者欄が書き換わるため、登記事項証明書を取得すれば誰でも確認できる状態になります。他の共有者に通知が自動で届く仕組みはありませんが、固定資産税の課税明細を見て気づく、金融機関から指摘されるといった形で判明することもあります。
タイミング2:買主からの連絡
実務上もっとも多いのがこちらです。登記完了後、新しい共有者となった買主から他の共有者へ連絡が入ります。前述の協議の申し入れです。
つまり、査定・相談の段階では他の共有者に一切伝わりません。伝わるのは売買が成立して登記が終わった後です。この点は、話し合いを避けたい方にとって重要な違いです。詳しくは共有持分は兄弟に内緒で査定できる?知られるのは登記のあとで整理しています。
知らされた側に残る選択肢
他の共有者から見て、持分が第三者に渡ったことを知った後の選択肢は3つです。
- 買主の持分を買い取る:不動産を自分の単独所有にする。資金の用意が必要です
- 自分の持分も売る:買主に売る、あるいは別の買取業者に売る
- 不動産全体を売って分ける:買主と協力して市場で売り、代金を持分割合で分ける
3つ目がもっとも手取りが大きくなりやすい方法です。共有者全員の足並みがそろえば、競売より高い価格で売れます。
なお、共有物を1人で使っている共有者がいる場合、民法第249条第2項により、その共有者は別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対して自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負います。これも令和5年4月1日施行の改正で新設された規定です。実家に1人だけ住み続けている、というケースでは金銭の精算が論点になります。
5. 5年放置するとどうなるか|数次相続による共有者倍増
「兄弟で話がつかないから、しばらく置いておこう」という判断は、時間が経つほど不利に働きます。理由は数次相続です。
シミュレーション:兄弟3人の実家
出発点として、兄弟A・B・Cが実家を各3分の1で共有しているとします。
| 時点 | 出来事 | 共有者の数 | 持分の内訳 |
|---|---|---|---|
| 0年目 | 相続で兄弟3人の共有に | 3人 | A・B・C 各1/3 |
| 5年目 | Aが死亡(配偶者と子2人) | 5人 | A配偶者1/6、A子 各1/12、B・C 各1/3 |
| 10年目 | Bが死亡(子3人) | 7人 | 上記+B子 各1/9 |
10年で共有者は3人から7人に増えます。不動産全体を売るには共有者全員の同意が必要ですから、集めるべき署名は3人分から7人分になります。しかも増えた共有者は甥・姪の世代で、実家への思い入れも事情も異なります。
この構造が全国規模で積み上がった結果が、所有者不明土地の問題です。平成28年の地籍調査では調査対象土地の24%で登記簿上の所有者の所在が確認できないという結果が出ており、その発生原因の63%が相続時に登記の名義変更が行われないこととされています。
放置の判断が持つ意味
- 共有者が増えるほど、全体売却に必要な同意は集まりにくくなる
- 持分が細分化されるほど、1人あたりの取り分は小さくなる
- その間も固定資産税と管理コストは発生し続ける
- 相続開始から10年を過ぎると、遺産共有の持分についても共有物分割の裁判で分割できるようになる(民法第258条の2第2項。相続人からの異議の申出があった場合を除きます)
宅建業者の視点: ご相談の中で一番多いのが「10年以上前に相続したけれど、名義がそのままになっている」という状態です。当時は兄弟2人だった話が、今は7人の話になっていることがあります。判断を先送りするほど選択肢が減っていく、というのがこの分野の実情です。
6. 訴訟を避けたい場合の現実的な選択肢
共有物分割請求訴訟は、時間も費用もかかります。避けたい場合の選択肢を整理します。
選択肢1:共有者全員で市場に売る
もっとも手取りが大きくなりやすい方法です。ただし全員の同意が前提になります。1人でも反対すれば成立しません。
選択肢2:他の共有者の持分を買い取る
自分が不動産を残したい場合の方法です。買取資金と、価格の合意が必要になります。
選択肢3:自分の持分だけを買取業者に売る
他の共有者の同意なく実行できる唯一の方法です。持分だけの売却になるため、価格は不動産全体の評価額×持分割合をそのまま受け取れるわけではありません。おおむね持分相当額の6〜7割程度が目安になります。金額は下がりますが、共有者との交渉や訴訟の当事者になることを避けられます。買取価格の考え方は共有持分の買取相場はいくら?持分割合・物件種別・地域別の計算式と実例で詳しく整理しています。
どれを選ぶかの判断軸
- 手取りを最大化したい → 全員での市場売却。ただし同意が集まる見込みがあることが前提
- 時間と精神的な負担を減らしたい → 持分の直接買取
- 不動産を残したい → 他の共有者の持分を買い取る
正解は状況によって変わります。共有者の人数、関係性、資金の有無、そして「いつまでに終わらせたいか」で結論が変わります。
よくある質問
Q. 持分を売ると、他の共有者に迷惑がかかりますか?
法律上、持分の売却は各共有者に認められた権利です。ただし、新しい共有者が加わることで話し合いの相手が変わるのは事実です。ご心配な場合は、事前に他の共有者へ売却の意向を伝え、買い取りの希望があるかを確認する方法もあります。
Q. 共有物分割請求をされたら、必ず不動産を失いますか?
いいえ。全面的価格賠償で自分が取得する側になれば、不動産は手元に残ります。その場合は他の共有者へ持分相当額を支払うことになるため、支払能力が判断材料になります。
Q. 買主が反社会的勢力だったらどうすればいいですか?
宅地建物取引業の免許を受けた業者かどうかは、国土交通省の「建設業者・宅地建物取引業者等企業情報検索システム」で確認できます。ご自身が持分を売る場合も、免許番号を公開している業者を選ぶことをおすすめします。当社の免許番号は大阪府知事(1)第65646号です。
Q. 共有者の中に行方不明の人がいます。手続きはできますか?
進められます。令和5年4月1日施行の改正民法で、所在等不明共有者の持分を取得したり第三者へ譲渡したりする裁判の制度が設けられました。詳しくは共有者が行方不明・連絡不能の場合に不動産を売る3つの方法をご覧ください。
Q. 弁護士に頼まず自分で訴訟をすることはできますか?
制度上は本人訴訟も可能です。ただし共有物分割訴訟は不動産の評価や分割方法の主張が必要になるため、実務では弁護士に依頼される方が多くなっています。
まとめ
- 持分が売られた後は協議 → 調停 → 訴訟の順に進み、いきなり訴訟にはなりにくい
- 判決では全面的価格賠償が中心。競売は現物分割も賠償分割もできない場合の最後の手段
- 訴訟になると弁護士費用50万〜150万円・鑑定費用30万〜60万円・期間1〜3年が目安
- 放置すると数次相続で共有者が増え、10年で3人が7人になることもある
まずはお気軽にご相談ください
共有持分のことでお悩みの方は、まずはLINEでご相談ください。
「他の共有者に知られたくない」「訴訟にはしたくない」といったご事情も含めて、状況を整理するところからお手伝いします。査定だけのご利用でも問題ありません。他の共有者へ連絡することはありません。
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出典
- 民法第249条第2項・第258条・第258条の2(令和3年改正、令和5年4月1日施行)
- 最高裁判所平成8年10月31日判決(全面的価格賠償)
- 最高裁判所「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」(第10回・令和5年7月公表)
- 国土交通省「所有者不明土地ガイドブック」(令和4年3月)/平成28年度地籍調査
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