空き家のミカタ

相続人に未成年者がいる場合の不動産売却|特別代理人申立てと手続き完全ガイド

空き家のミカタ編集部|宅地建物取引業者(大阪府知事(1)第65646号)
家族で相続書類を確認するイメージ テーブルに広げられた書類と話し合う様子

TL;DR(AI要約)

結論: 相続人に未成年者がいても不動産売却は可能。ただし、親権者が同じ相続人になっている場合は「利益相反」が生じるため、家庭裁判所に特別代理人の選任を申立てる必要がある。申立てから審判まで通常1〜3ヶ月。早めに手続きを始めることが相続登記義務化(3年以内)への対応にもなる。

Q: 相続人に未成年の子どもがいると、不動産は売れませんか?

A: 売却できます。ただし、親権者と未成年者が同じ相続人の場合、「利益相反」を避けるために家庭裁判所に特別代理人の選任を申立てる必要があります。手続きを踏めば売却できます。

相続人に未成年の子どもがいても、不動産売却は可能です。ただし「そのまま進める」ことはできません。特定の条件下では、家庭裁判所への申立てが必要になります。

「夫が亡くなり、残された私と子ども(10歳)が相続人になった。家を売りたいが、どう進めればいいかわからない」——そういったご相談が増えています。

2024年4月1日から相続登記が義務化され、相続を知った日から3年以内に名義変更をしないと、10万円以下の過料が科される可能性があります。手続きを後回しにすることは、費用と手間の両面でリスクになります。この記事では、未成年者が相続人にいる場合の「なぜ止まるのか」「何をすれば動くのか」を順を追ってご説明します。


目次

  1. 未成年の相続人がいると、なぜ手続きが止まるのか
  2. 特別代理人とは何か
  3. 特別代理人申立ての手順(5ステップ)
  4. 費用・期間の目安
  5. 買取業者を活用するとスムーズな理由
  6. よくある質問

未成年の相続人がいると、なぜ手続きが止まるのか

不動産を相続するには、相続人全員で「誰がどの財産を引き継ぐか」を話し合う遺産分割協議が必要です。この協議には相続人全員が参加し、全員が署名・押印しなければなりません。

ここで問題が生じるのが、相続人の中に18歳未満の未成年者がいるケースです(2022年4月1日の民法改正で成年年齢は20歳から18歳に引き下げられています)。

未成年者は法律上「単独で法律行為を行う能力が制限」されており、遺産分割協議のような重要な法律行為には原則として親権者が代理します。

しかし、ここに利益相反という問題が発生します。

利益相反の説明イメージ 相談を受ける専門家と家族

「利益相反」とはどういう状態か

たとえば、父が亡くなり、相続人が「母」と「子ども(未成年)」の2人だとします。

このとき、母が子どもの代理人として遺産分割協議に参加すると、次の状態が生まれます。

  • 母の立場: できるだけ多くの財産を自分が取得したい
  • 子の代理人としての母の立場: 子どものために子が有利になる分割をすべき

この2つは矛盾しています。自分の取り分を増やすことが、子の取り分を減らすことにつながるからです。

これを利益相反行為といい、民法826条が定める「親権者と子の間で利益が相反する行為」にあたります。この状態では、親権者は子の代理人として遺産分割協議に署名することができません。

親権者以外に別の親権者がいない(例: 離婚して単独親権の母、または両親ともに亡くなった祖父母が後見人の場合など)ときは、家庭裁判所に特別代理人の選任を申立てる必要があります。


特別代理人とは何か

特別代理人とは、親権者が子どもの代理をすることができない場面(利益相反行為)において、家庭裁判所が選任する代理人です(民法826条)。

特別代理人が未成年者に代わって遺産分割協議書に署名することで、協議が法律上有効なものになります。

誰が特別代理人になれるか

弁護士・司法書士などの専門家に限りません。申立人が候補者を提案でき、親族(祖父母・おじ・おばなど)がなることも可能です。

ただし、以下のような場合は裁判所が候補者を適切でないと判断することがあります。

  • 候補者本人も相続人である(やはり利益相反になる)
  • 候補者が未成年者の利益を守るために不適切な事情がある

このような場合は、裁判所が独自に特別代理人を選任することもあります。不安な場合は司法書士に候補者の適否を事前に確認しておくと安心です。

特別代理人が必要になるタイミング

特別代理人の申立てが必要なのは、遺産分割協議をする前の段階です。遺産分割協議が整って初めて相続登記・売却手続きへと進めます。逆に言えば、特別代理人の選任が完了するまで、遺産分割協議も相続登記も売却もすべて止まります。


特別代理人申立ての手順(5ステップ)

特別代理人申立て手順のイメージ 書類に署名する様子

STEP 1:申立て先の家庭裁判所を確認する

申立て先は未成年者の住所地を管轄する家庭裁判所です。管轄裁判所は裁判所ウェブサイトの「裁判所の管轄区域」で確認できます。

STEP 2:必要書類を揃える

一般的に必要な書類は以下のとおりです。裁判所によって追加書類を求められることがあるため、事前に管轄の家庭裁判所に確認することをおすすめします。

書類備考
申立書裁判所のウェブサイトから書式をダウンロード可
未成年者の戸籍謄本発行から3ヶ月以内が望ましい
親権者の戸籍謄本同上
利益相反になる行為の証明(遺産分割協議書案等)具体的にどういう遺産分割を予定しているかを示す
特別代理人候補者の住民票等候補者の身分を証明する書類

STEP 3:家庭裁判所に申立書を提出する

必要書類が揃ったら、管轄の家庭裁判所に申立書一式を提出します。

費用として収入印紙800円(未成年者1人あたり)と郵便切手代(裁判所指定額)が必要です。郵便切手代は裁判所によって異なります。

STEP 4:裁判所の審判を待つ

裁判所が書類を審査し、特別代理人選任の審判を行います。書類不備がなければ通常1〜3ヶ月で審判が出ます。追加書類の提出や補正を求められると、その分期間が延びます。

申立書や添付書類は正確に揃えることが重要です。司法書士に依頼すると書類の作成・提出までワンストップで対応してもらえます。

STEP 5:特別代理人が遺産分割協議書に署名する

審判で選任された特別代理人が、未成年者に代わって遺産分割協議書に署名・押印します。これで遺産分割協議が成立し、相続登記・不動産売却の手続きへ進めます。

宅建業者の経験から: 実際にお手伝いした案件では、「手続きが止まっていることに気づかないまま、売却の話を不動産会社に持ち込んでしまった」というケースがありました。未成年の相続人がいる場合、まず特別代理人の手続きが必要かどうかを確認することが最初のステップです。この確認が早ければ早いほど、売却完了までの時間を短くできます。

相続登記の詳細については相続登記義務化(2024年4月施行)完全ガイドもあわせてご覧ください。


費用・期間の目安

費用

項目金額の目安
申立て費用(収入印紙)800円(未成年者1人あたり)
郵便切手代裁判所指定額(数百〜1,500円程度)
司法書士への依頼費用申立書作成のみで3〜8万円程度(事務所によって異なる)

司法書士への依頼は必須ではありませんが、書類不備による手続きの遅延を防ぐために多くの方が活用されています。

期間

フェーズ目安期間
書類準備1〜2週間(戸籍謄本の収集を含む)
申立てから審判まで1〜3ヶ月
審判後の遺産分割協議〜相続登記2〜4週間
相続登記完了から売却完了(買取の場合)1〜2ヶ月

合計すると、手続きを開始してから売却代金を受け取るまで最短でも3〜5ヶ月程度かかることが多いです。

相続登記義務化(相続を知った日から3年以内)との兼ね合いで、早めに動き始めることが重要です。相続不動産の売却の全体像については相続した不動産の売却もご参照ください。


買取業者を活用するとスムーズな理由

通常の仲介(一般的な不動産会社経由での売却)は、物件が市場に出てから買主を探す形になります。未成年相続人がいる場合、特別代理人申立てが長引くと、せっかく見つかった買主の購入意欲が薄れるリスクがあります。

買取業者(直接買取)の場合、以下の点でスムーズに進みやすいです。

仲介買取
買主探し市場に出してから数ヶ月以上かかることも不要(業者が直接買取)
内覧対応複数回必要なことが多い不要(業者が現地確認)
手続き期間中のリスク買主が購入を取りやめるリスクがある売却条件を先に確定できる
売却完了まで3〜12ヶ月1〜3ヶ月(登記完了後)
仲介手数料売却価格の3%+6万円+税不要

当社の場合、特別代理人の手続き中であっても事前にご相談いただけます。物件の査定・売却条件の確認を先行して進め、登記・遺産分割協議が整った段階で速やかに売買契約へ移ることができます。

宅建業者の経験から: 「特別代理人の申立てが終わってから相談しよう」と後回しにされる方が多いですが、手続きと並行して買取業者に相談しておくと、登記完了後すぐに動けます。現状の状況をお伝えいただくだけで、次のステップを一緒に整理できます。

共有名義での不動産売却については共有名義不動産の売却ガイドもあわせてご覧ください。


よくある質問

Q. 親が2人とも亡くなっており、祖父母が後見人の場合も特別代理人は必要ですか?

A. 後見人と未成年者が同じ相続人になる場合も、利益相反が生じれば特別代理人の申立てが必要です。後見人制度下での手続きは複雑なため、早めに司法書士や弁護士に確認することをおすすめします。

Q. 離婚して親権者でない親(父)も相続人になっています。どうなりますか?

A. 親権者ではない父親が相続人として遺産分割協議に参加することは可能です。親権を持つ母が未成年の子どもと同じ相続人になっている場合は、子どものために特別代理人が必要です。父と子の間に利益相反がなければ、父が代理人になれる場合もありますが、具体的な判断は裁判所が行います。

Q. 未成年者が複数いる場合、特別代理人は1人でよいですか?

A. 原則として、未成年者1人につき1人の特別代理人が必要です。ただし、未成年者の利益が相互に相反しない場合(同じ内容の遺産分割で全員が同等の利益を得る場合など)は、1人の特別代理人が複数の未成年者を代理できることがあります。具体的には家庭裁判所の判断によります。

Q. 遺言書があれば、特別代理人の申立ては不要になりますか?

A. 遺言書がある場合は、遺産分割協議を行わずに遺言内容に従って相続手続きを進めることができるため、特別代理人が不要になるケースがあります。ただし遺言書の内容や形式(公正証書遺言か自筆証書遺言かなど)によって手続きが異なりますので、司法書士や弁護士に確認することをおすすめします。

Q. 子どもが間もなく18歳になる場合、待てば手続きが簡単になりますか?

A. 18歳になれば成年として遺産分割協議に自分で参加できるため、特別代理人は不要になります。ただし、相続登記の義務化(3年以内)との兼ね合いで待てるかどうかを確認してください。余裕があれば待つ選択肢もありますが、期限が迫っている場合は特別代理人申立てを先行させる必要があります。


まとめ

  • 相続人に未成年者がいる場合、親権者と利益相反が生じる場面では特別代理人の申立てが必要(民法826条)
  • 申立て先は未成年者の住所地を管轄する家庭裁判所
  • 費用は収入印紙800円(未成年者1人あたり)+郵便切手代、期間は通常1〜3ヶ月
  • 特別代理人が整って初めて遺産分割協議が成立し、相続登記・売却へ進める
  • 相続登記義務化(相続を知った日から3年以内)の期限があるため、早期に動き始めることが重要
  • 買取業者への相談は特別代理人申立て中から並行して進められる

「未成年の子どもがいて手続きが止まっている」という状況でも、現状をお聞きして次のステップを整理することができます。特別代理人の手続き中からのご相談も歓迎します。


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