空き家のミカタ

相続した空き家に不法占拠者がいる|強制退去と現況買取どちらが早いか

空き家のミカタ編集部|宅地建物取引業者(大阪府知事(1)第65646号)
相続したものの誰も住まず放置され、傷んだ空き家の外観

結論:相続した空き家に不法占拠者(権利なく住んでいる人)がいても、所有者が勝手に鍵を替えたり荷物を出したりする「自力救済」は法律で禁止されており、実行すると逆に責任を問われます。合法的な退去には、占有移転禁止の仮処分→明渡訴訟→強制執行という手続きが必要で、判決から執行完了まで半年〜1年以上、費用は強制執行の予納金(大阪地裁で1件6万円が目安)+断行費用(数十万円〜100万円超)+弁護士費用がかかります。一方、占拠者がいるまま「現況買取」で手放せば、裁判をせずに数週間で現金化できます(価格は下がります)。「時間と費用をかけて自分で退去させてから売る」か「価格が下がっても今すぐ手放す」か、が判断の分かれ目です。

相続した実家や親名義のアパートを見に行ったら、知らない人が住んでいた——。あるいは、契約が終わったはずの元借主が居座って出ていかない。相続をきっかけにこうした「不法占拠」の問題が表面化することは珍しくありません。特に、遠方で長く様子を見に行っていなかった空き家ほど、気づいたときには他人が入り込んでいた、というケースがあります。

このとき絶対にやってはいけないのが、感情に任せて自分で追い出そうとすることです。この記事では、相続した空き家に不法占拠者がいる場合の正しい対処の順番と、「合法的に強制退去させる」ルートと「占拠者がいるまま現況買取で手放す」ルートを、期間・費用の具体的な数字で比較します。

まず整理:あなたの物件にいるのは「不法占拠者」か「賃借人」か

相続不動産の明渡しや売買に関する書類に署名する様子

対処法を決める前に、住んでいる人の「立場」を見極める必要があります。同じ「出ていってくれない人」でも、権利があるかどうかで手続きの重さが変わるからです。

不法占拠者とは

不法占拠者とは、その建物に住む法的な権利がまったくない人のことです。相続がらみでは、次のようなパターンがあります。

  • 契約が終わった元借主が居座っている:親が結んだ賃貸借契約が解除・終了したのに退去せず住み続けている
  • まったくの第三者が勝手に住み着いた:長く空き家にしていた実家に、見知らぬ人が入り込んで生活している
  • 親族が無断で使っている:相続人の合意なく、一部の親族が住んだり物置代わりにしたりしている

不法占拠者には賃貸借契約がないため、退去を求めるのに借地借家法の「正当事由」や立退料は基本的に必要ありません。所有者は所有権にもとづいて建物の明渡し(返還)を求めることができます。

賃借人(正規に借りている人)との違い

一方、賃借人は賃貸借契約という正式な権利を持っています。相続したアパートに入居者がいる場合の多くはこちらです。賃借人に退去してもらうには借地借家法の「正当事由」が必要で、立退料が発生することも多く、ハードルは不法占拠者より高くなります。入居者がいるアパートの手放し方は入居者がいる相続アパートは売れる?立退きとオーナーチェンジ買取の比較で詳しく解説しています。

ここで大事なのは、「不法占拠者だから権利がない=すぐに追い出せる」わけではないという点です。権利がなくても、実際に退去させるには次に説明する裁判所を通じた手続きが必要になります。

やってはいけないこと:自力救済(自分で追い出す行為)は法律で禁止

相手に権利がないと分かると、「それなら鍵を替えて締め出せばいい」「荷物を運び出してしまえばいい」と考えたくなります。しかし、これは「自力救済」として法律で禁止されており、日本では認められていません。

具体的に、所有者であっても次の行為は違法になり得ます。

  • 勝手に鍵を交換して締め出す
  • 占拠者の荷物を無断で運び出す・処分する
  • ライフライン(電気・水道)を勝手に止める
  • 実力で追い出す・脅す

これらをやってしまうと、たとえ相手が不法占拠者であっても、所有者側が器物損壊・住居侵入・不法行為などの責任を問われ、損害賠償を請求されるおそれがあります。「自分の家なのに」と理不尽に感じても、退去させる権利があるかどうかと、実力で追い出してよいかは別問題です。退去は必ず、裁判所を通じた正式な手続きで進めなければなりません。

【選択肢A】合法的に強制退去させる手順・期間・費用

正式に退去させるルートは、大きく次の流れで進みます。相手が任意に出ていかない場合、最終的には強制執行まで必要です。

手順1:占有移転禁止の仮処分

不法占拠のケースでまず検討されるのが占有移転禁止の仮処分です。これは、訴訟の途中で占拠者が別の人に入れ替わってしまうと、せっかく勝訴しても判決の効力がその新しい占拠者に及ばず、また一からやり直しになってしまうのを防ぐための手続きです。占拠者が誰か特定しづらい・入れ替わる恐れがあるケースで有効な備えになります。

手順2:明渡訴訟(建物明渡請求)

任意の交渉で退去に応じない場合、裁判所に建物明渡請求訴訟を起こします。所有権にもとづいて「建物を返してください」と求める裁判です。相手が争えば争うほど期間は延び、提訴から判決までで数ヶ月〜1年以上かかることもあります。

手順3:強制執行(催告→断行)

勝訴判決が確定しても、相手が自分から出ていかなければ、まだ住み続けられてしまいます。そこで強制執行を申し立て、裁判所の執行官が退去を実行します。流れは、まず「催告」(明渡しの期限を示す予告)を行い、そこから実際に立ち退かせる「断行」へと進みます。目安として、催告日までに約2週間、催告日から断行日までに約1ヶ月ほどを要します。

期間と費用の目安

強制退去にかかる主なコストは次のとおりです。

  • 強制執行の予納金:裁判所に納める費用で、大阪地方裁判所では1件6万円が目安です。
  • 断行費用(荷物の撤去・運搬・保管):残置物の量や物件の規模によりますが、数十万円から、多いと100万円を超えることもあります。
  • 弁護士費用:着手金・報酬金として別途かかり、事案により幅がありますが合計で数十万円規模になるケースが多いです。

期間は、明渡訴訟の提起から強制執行の完了まで、争いがなくても半年前後、争えば1年以上が現実的な見込みです。しかも、この間ずっと固定資産税・維持費はかかり続け、占拠者による建物の傷みも進みます。「合法的に追い出す」ルートは、確実ではあるものの時間・費用・精神的負担が大きいのが実情です。

【選択肢B】占拠者がいるまま手放す「現況買取」

長く放置されて傷みが進み、板でふさがれた空き家

もう一つの選択肢が、占拠者がいる「現況」のまま買取業者に売る方法です。買取業者が物件をそのまま買い取り、退去交渉や明渡訴訟・強制執行といった手続きは、買主である業者側が引き受けます

この方法のポイントは次のとおりです。

  • 裁判を自分でしなくてよい:占拠問題を抱えたまま売却でき、面倒な法的手続きから解放されます。
  • 早く現金化できる:退去が終わるのを待つ必要がなく、条件が整えば数週間で決済まで進むこともあります。
  • これ以上の維持費・税金の負担を止められる:手放した時点で固定資産税や管理の悩みから離れられます。

一方で、デメリットもはっきり書いておきます。占拠というリスクとその後の退去コストを買主が引き受ける分、買取価格は通常の相場より低くなります。「更地・空室にしてから売る」よりは手取りが減るのが一般的です。それでも、強制退去にかかる期間・費用・ストレスを自分で負わずに済むこと、その間の維持費が止まることを考えると、トータルで現況買取のほうが合理的になるケースは少なくありません。

強制退去と現況買取、どちらが早い?比較表

比較項目選択肢A:強制退去してから売る選択肢B:現況買取(占拠者ごと売る)
退去までの期間半年〜1年以上(争えば長期化)退去は買主が対応。売却自体は数週間も可
自分で払う費用予納金6万円+断行数十万〜100万円超+弁護士費用原則かからない(費用は価格に織り込み)
手続きの手間訴訟・執行の対応が必要業者に引き渡すだけ
手取り価格高くなりやすい(空室・更地で売れる)低くなる(占拠リスク分を差し引く)
精神的負担大きい(長期戦・相手との対立)小さい(早期に手離れ)

「どちらが早いか」という問いへの答えは明確で、自分の手離れの早さでは現況買取が圧倒的に早いです。一方、手取り額を最大化したいなら、時間と費用をかけて退去させてから売ることになります。「一日も早く関わりを終えたい」「これ以上お金も手間もかけたくない」なら現況買取、「時間はかかっても高く売りたい」なら強制退去ルート、という整理になります。

相続ならではの注意点

占拠問題に加えて、相続不動産だからこそ気をつけたい点があります。

相続登記を済ませないと動けない

明渡請求も売却も、その不動産の名義が相続人(自分)になっていることが前提です。2024年4月から相続登記は義務化され、取得を知った日から3年以内に申請しないと10万円以下の過料の対象になります。占拠対応と並行して、まず名義を整えておく必要があります。

共有名義だと一人では決められない

相続人が複数いて共有名義になっている場合、退去手続きや売却の方針は共有者の関与が必要になり、話がまとまらないと動けません。共有のまま塩漬けになっている物件は共有持分の買取という選択肢もあります。

放置している間もコストは出続ける

占拠問題を「どうしていいか分からない」と放置している間も、固定資産税・都市計画税・火災保険料は毎年出ていきます。占拠者によって建物の傷みが進めば資産価値も下がります。放置は「何もしていない」のではなく「毎年お金を払い続けながら価値を減らしている」状態だと考えてください。


相続した空き家の占拠問題、まずはご相談ください

「知らない人が住み着いている」「元借主が出ていかない」「裁判までする気力もお金もない」——そんな状態でも、占拠者がいる現況のまま買い取れる場合があります。退去交渉や法的手続きの負担を抱えたまま、まず手を離したい方はご相談ください。査定・相談は無料で、売却の義務はありません。

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こんな状態なら、まず無料相談を
  • 相続した空き家に知らない人が住んでいる
  • 契約が終わった元借主が居座っている
  • 裁判や強制執行の費用・時間をかけたくない
  • 遠方で自分では対応しきれない・関わりを早く終えたい

1つでも当てはまれば、占拠者がいる現況のままでの買取をご相談ください。断られやすい物件の扱いはどこに相談しても断られた訳あり物件の専門買取もご覧ください。

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執筆: 八木宏樹(合同会社アルシェ代表/宅建業免許: 大阪府知事(1)第65646号)|空き家のミカタ代表


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