不動産の断り文句6つを逆引き|「扱えません」の本当の意味
TL;DR — 不動産会社の断り文句 逆引き 「うちでは扱えません」と言われた理由の多くは、物件の欠陥ではなく仲介という仕組みの制約です。仲介会社の報酬は成約したときにだけ発生し(宅地建物取引業法第46条)、金額にも上限があります。だから「次の買主にローンが付かない」「片付け費用を報酬に乗せられない」「300万円の売買では報酬が税込15万4,000円にしかならない」という理由で、着手前に断るのが合理的な判断になります。買主が自社になる買取では、これらの多くが判断材料から外れます。空き家のミカタ(宅建業者・大阪府知事(1)第65646号)が大阪市24区を中心に、断られた理由をそのままお聞きして「同じ理由で断るかどうか」からお答えします。
Q: 不動産会社に断られたのは、私の物件に売る価値がないからですか?
A: いいえ。断り文句のほとんどは、物件の評価ではなく、仲介という商売の成り立ちを説明した言葉です。仲介会社は売買が成約したときにだけ報酬を受け取れます(宅地建物取引業法第46条第1項および同条第3項の告示)。そのため「売れる見込みが立つか」で着手を決めます。買主が自社になる買取では、この物差し自体が変わります。

断り文句は、物件の採点結果ではありません
ご相談をお受けしていて、いちばん多く出てくる言葉が「もう、うちのは価値がないんだと思います」です。3社に断られた、4社目に電話するのが怖くなった、という方もいらっしゃいます。
ただ、断られた理由を1つずつ聞かせていただくと、物件の状態を理由にした断り方はほとんどありません。出てくるのは「ローンが付かない」「同意が必要」「片付けてから」といった、手続きと採算の話です。
理由がはっきりしています。仲介会社が受け取れる報酬は、国土交通大臣の告示で上限が決まっており、しかも成約したときにしか発生しません。宅地建物取引業法第46条は次のように定めています。
宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買、交換又は貸借の代理又は媒介に関して受けることのできる報酬の額は、国土交通大臣の定めるところによる。(宅地建物取引業法 第46条第1項)
つまり、広告費も現地調査も交通費も、成約するまでは全部持ち出しです。売れる確率が読めない物件は、動けば動くほど赤字になります。だから着手する前に断るのが、その会社にとっては正しい判断になります。
その判断を、断られた側は「自分の物件には価値がない」と受け取ってしまいます。ここがずれているだけです。
宅建業者としてお伝えしたいこと: 断り文句を、言われたとおりに書き留めておいてください。「再建築不可なので当社では扱えません」を「なんか無理みたいでした」と要約してしまうと、どの制約に当たったのかが消えます。次に相談するとき、この一言があるだけで確認の順番がまるで変わります。
断り文句の逆引き表
言われた言葉から、その裏にある制約と、買取では何が変わるかを引ける形にしました。
6つの断り文句を、1つずつ取り上げます。
①「再建築不可なので当社では扱えません」
指しているのは、建て替えができないことではなく、買主の資金調達の問題です。
建築基準法第43条第1項は「建築物の敷地は、道路に二メートル以上接しなければならない」と定めています。ここでいう道路は、第42条により原則として幅員4メートル以上のものを指します。この条件を満たさない敷地では、いま建っている家を壊すと新しく建てられません。
問題はその先です。住宅金融支援機構のフラット35は、中古住宅の技術基準として「住宅の敷地は、原則として一般の交通の用に供する道に2m以上接することとします」としています。接道が取れていない物件はこの基準に適合せず、適合証明書が出ません。民間の金融機関も担保として評価しにくいため、買主は現金で買える人に限られます。
仲介会社の立場で見ると、広告を出しても内覧に来る人がほとんどいない、という状態です。だから断ります。
買取では、この論点が消えます。買主は業者自身なので、住宅ローンが付くかどうかは判断材料になりません。見るのは、その土地を隣地の方に買っていただけるか、接道を取り直せるか、現金で買う投資家に流せるか、という別の話になります。

②「共有者全員の同意がないと進められません」
これは「物件全体を売る場合の話」です。あなたの持分だけなら、話が別になります。
民法第251条第1項は、各共有者は他の共有者の同意を得なければ共有物に変更を加えることができないと定めています。共有物全体の売却は、その形状又は効用の著しい変更を伴う行為として全員の同意が必要と解されています。仲介会社が求めているのはこれです。
一方で、民法第206条は「所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する」と定めています。自分の持分は、他の共有者の同意がなくても単独で売れます。
価格は下がります。持分だけを買った側は、その物件を自由に使えるわけではないためです。ただし、兄弟の誰かが連絡に応じない、話し合いが3年止まっている、その間ずっと固定資産税だけ払っている、という状態からは抜けられます。
なお、共有者の所在がわからない場合には、裁判所が他の共有者の同意だけで変更を加えられる旨の裁判をする制度もあります(民法第251条第2項)。「連絡が取れない人がいるから何もできない」とは限りません。
③「残置物を片付けてから来てください」
片付けが売却の条件なのではなく、仲介会社が片付け費用を回収できない仕組みだからです。
報酬告示(昭和45年建設省告示第1552号)第十一①は、次のように定めています。
宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買、交換又は貸借の代理又は媒介に関し、第二から第十までの規定によるほか、報酬を受けることができない。ただし、依頼者の依頼によって行う広告の料金に相当する額については、この限りでない。
例外として認められているのは、依頼者から頼まれた広告費だけです。残置物の撤去費用を報酬に上乗せすることはできません。業者が自腹で片付けるか、売主に片付けてもらうかの二択になり、後者を頼むことになります。
買取ではこの制約がありません。撤去費用を査定額から差し引く形で、価格の中に織り込めるためです。家財も仏壇も、押し入れの中身も、そのままの状態で見ることができます。
ただし、差し引かれる金額は実費です。ご自身で処分できるものを先に出しておけば、その分だけ査定額は上がります。「業者に頼むと安くなるから、無理をしてでも自分で全部片付ける」必要はありませんが、負担にならない範囲で減らすのは意味があります。
④「旧耐震で融資が付きません」
耐震改修をしてから売るか、改修せずに売るかは、費用を先に払えるかどうかで決まります。
フラット35の中古住宅の技術基準では、「建築確認日が昭和56年5月31日(建築確認日が確認できない場合にあっては、新築年月日が昭和58年3月31日)以前の住宅は、耐震評価基準等に適合する必要があります」とされています。
この適合を取るには、まず調査をして、必要な補強工事をして、適合証明書の交付を受けるという順番になります。費用は全部、売れる前に出ていきます。しかも、補強すれば必ず適合するとは限らず、調査の結果として工事費が想定を超えることもあります。
仲介会社が「融資が付きません」と言うとき、実際には「売主側でここまでやってもらえないと、買主を集められません」という意味であることが多いです。
買取では、買主が現金で購入するため、この適合証明を売主側で用意する必要がありません。改修が必要かどうかは買った側が判断します。比べるのは売却価格ではなく、改修費を払ってから売った場合の手取りと、現況のまま売った場合の手取りです。
宅建業者としてお伝えしたいこと: 「あと〇〇万円かければ売れる」と言われて、その工事を済ませてから改めて相談に来られる方がいらっしゃいます。工事後の査定額が、工事前の査定額に工事費をそのまま足した金額になるとは限りません。工事に着手する前に、現況のままの金額を一度だけでも聞いておいていただければと思います。
⑤「遠方なので対応外です」
免許で営業地域が決まっているわけではありません。
宅地建物取引業法第3条第1項は、2以上の都道府県に事務所を置く場合は国土交通大臣の免許、1つの都道府県内にのみ置く場合はその都道府県知事の免許を受けなければならない、と定めています。これは事務所をどこに置いているかの区分であって、扱える物件の所在地を区切る制度ではありません。大阪府知事免許の業者が、他府県の物件を扱うことに制度上の問題はありません。
では、なぜ断られるのか。現地調査に行き、買主候補を何組も案内し、境界の立ち会いに出向く、という往復の実費と時間が、成約したときの報酬に見合わないためです。近隣の相場観がないという事情もあります。
買取であれば、現地確認は基本的に1回で済みます。買主を探して案内する工程がないためです。売主が現地に行く必要もありません。
なお、相談先の業者が実在するかどうかは、国土交通省の建設業者・宅建業者等企業情報検索システムで免許番号から確認できます。名刺やサイトに書かれた免許番号を入れれば、商号と免許の有効期間が出てきます。
⑥「金額が小さすぎて手数料が出ません」
断り文句の中で、いちばん正直な言葉です。そして数字で確認できます。
報酬告示 第二は、売買の媒介で依頼者の一方から受け取れる報酬の上限を、代金の額を区分して次のように定めています。
| 代金の区分 | 割合(消費税等相当額を含む) |
|---|---|
| 200万円以下の金額 | 5.5% |
| 200万円を超え400万円以下の金額 | 4.4% |
| 400万円を超える金額 | 3.3% |
この表で計算すると、こうなります。
| 売買代金 | 媒介報酬の上限(税込) |
|---|---|
| 200万円 | 11万円 |
| 300万円 | 15万4,000円 |
| 500万円 | 23万1,000円 |
| 800万円 | 33万円 |
| 3,000万円 | 105万6,000円 |
300万円の物件を売るのに受け取れるのは、税込15万4,000円が上限です。現地調査も、登記の確認も、重要事項説明書の作成も、3,000万円の物件と手間はほとんど変わりません。それでも報酬は7分の1以下になります。
この構造への対応として、令和6年(2024年)7月1日施行の改正後の告示には、上限を引き上げる特例が置かれています。同告示 第七は、売買代金800万円以下の「低廉な空家等」について、通常の計算方法を超えて報酬を受け取れるとしたうえで、次のように上限を定めています。
この場合において、当該依頼者から受ける報酬の額は三十万円の一・一倍に相当する金額を超えてはならない。(報酬告示 第七)
つまり、依頼者1人あたり税込33万円までは受け取れるようになりました。300万円の物件でも、15万4,000円ではなく33万円まで請求できます。ただしこの金額が天井であることに変わりはなく、また媒介契約を結ぶ際にあらかじめこの金額を説明して合意しておく必要があります。
買取では、この上限そのものが関係ありません。業者は売買代金を払って物件を取得し、その後の運用や転売で回収するためです。価格が小さいことは、査定額が小さくなる理由にはなっても、話を聞かない理由にはなりません。
仲介と買取は、同じ物件の違うところを見ています
ここまでの6つを整理すると、断られる理由には共通した形があります。
仲介会社が見ているのは「次の買主が現れるか」です。買取業者が見ているのは「自分たちが引き取ったあと、いくらで処理できるか」です。
だから、ローンが付かない・片付いていない・遠い・安い、といった条件は、仲介では着手するかどうかの入口の判断になり、買取では価格をいくら引くかの計算になります。
これは買取のほうが優れているという話ではありません。買取価格は仲介での成約価格より低くなります。ただ、断られた経験を「売れない物件だ」と受け取る必要はない、ということです。当たった物差しが違っただけです。
よくある質問
Q: 3社に断られました。4社目に相談する意味はありますか?
A: 3社とも仲介会社であれば、意味があります。同じ仕組みで動いている会社に何社当たっても、同じ判断になりやすいためです。4社目は、買取をしている業者を選んでください。断られた理由が同じ言葉なら、それは仲介という仕組みの制約に当たっている証拠です。
Q: 断られた理由を正確に覚えていません。それでも相談できますか?
A: 相談できます。物件の所在地と、登記事項証明書があれば話を始められます。ただ、断られたときのメールやメモが残っていれば、それがいちばん早い手がかりになります。「接道」「共有」「耐震」のどの言葉が出たかだけでも構いません。
Q: 買取だと、どのくらい安くなりますか?
A: 物件の種別と状態によって幅がありますが、仲介で成約した場合の想定価格に対して、目安として5割から8割程度になることが多いです。一方で、仲介手数料がかからず、売れるまでの固定資産税や管理費も発生しません。比べるのは提示価格ではなく、手元に残る金額と、そこまでにかかる期間です。
Q: 断られた理由を伝えると、足元を見られませんか?
A: 査定額は物件の条件から出るもので、断られた回数によって下がるものではありません。むしろ断られた理由がわかっているほど、確認すべき点が絞れるので判断が早くなります。接道が論点なら公図と建築計画概要書、共有が論点なら登記事項証明書、というように、必要な資料も限定できます。
Q: 相談したら、必ず売らないといけませんか?
A: そのようなことはありません。「同じ理由で断られるかどうか」だけを確認して、あとはご自身で判断していただいて構いません。金額を聞いてから、仲介でもう一度試す、という選択も当然あります。
まとめ
断られたときに押さえていただきたい点は3つです。
- 断り文句は、物件の採点結果ではありません。仲介会社の報酬は成約時にしか発生せず、金額にも上限があるため、売れる見込みが読めない物件は着手前に断るのが合理的な判断になります
- 6つの断り文句には、それぞれ対応する条文と数字があります。再建築不可なら建築基準法第43条、共有なら民法第251条、残置物なら報酬告示 第十一①、安さなら報酬の上限額。感覚で断られているわけではありません
- 買取では、この制約の多くが価格の計算に変わります。入口で断る理由ではなくなる、という意味です。価格は下がりますが、ゼロか否かの話ではなくなります
3社に断られたあとに4社目へ連絡するのは、正直しんどい作業だと思います。だからこそ、書類をそろえる前に「同じ理由で断られるのかどうか」だけ先に確認していただければと思います。
断り文句を、そのまま送ってください
「空き家のミカタ」では、他社に断られた理由をそのままお聞きして、同じ理由で当社も断ることになるかどうかだけを先にお答えしています。査定のご依頼でなくて構いませんし、書類をそろえていただく必要もありません。「再建築不可と言われました」「共有者と連絡が取れないと言われました」の一言で結構です。大阪市24区を中心に対応しています。
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出典(2026年8月19日確認)
- e-Gov法令検索「建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)」第42条・第43条: https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000201
- e-Gov法令検索「民法(明治二十九年法律第八十九号)」第206条・第251条・第252条: https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- e-Gov法令検索「宅地建物取引業法(昭和二十七年法律第百七十六号)」第3条・第46条: https://laws.e-gov.go.jp/law/327AC1000000176
- 国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額(昭和45年10月23日建設省告示第1552号・最終改正 令和6年6月21日)」第二・第七・第十一: https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001750229.pdf
- 国土交通省「不動産業による空き家対策推進プログラムについて」(報酬告示の改正・令和6年7月1日施行): https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/tochi_fudousan_kensetsugyo_const_tk3_000001_00066.html
- 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方(第46条第1項関係)」(媒介契約締結に際しての報酬額の説明・合意): https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001749923.pdf
- 住宅金融支援機構「【フラット35】中古住宅の技術基準の概要」(接道2m以上・昭和56年5月31日以前の建築確認と耐震評価基準): https://www.flat35.com/business/standard/used/index.html
- 国土交通省「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」(免許番号からの業者確認): https://etsuran2.mlit.go.jp/TAKKEN/
買取価格の水準(仲介での想定価格の5割から8割程度)は、法令や公的統計に基づく数値ではなく、当社が大阪市内の買取実務で見てきた範囲に基づく目安です。物件の種別・状態・立地によって変わります。
画像: 「中津陋巷」および「トネ美容室」by m-louis .®(Wikimedia Commons, CC BY-SA 2.0)/図版は空き家のミカタ編集部作成
執筆監修: 八木宏樹(合同会社アルシェ代表・宅建業免許: 大阪府知事(1)第65646号)|空き家のミカタ代表。専門分野: 他社に断られた訳あり不動産の直接買取。大阪市24区を中心に、再建築不可・共有持分・残置物ありの物件を現況のまま査定しています。