任意売却してもローンは消えません|残債の行方と自己破産・買取の判断【2026年版】
任意売却について調べていると、「これで借金が終わる」と読める説明に出会うことがあります。実際にご相談を受けていても、売却の話より先に「売ったあとはどうなるのか」を確かめたい、という方が多い印象です。
先に結論をお伝えします。
任意売却で消えるのは抵当権だけです。売却代金で返しきれなかった住宅ローン(残債)は、借金としてそのまま残ります。
残債の請求元は、保証会社の代位弁済、そしてサービサー(債権回収会社)への譲渡を経て変わっていきます。金額そのものが勝手に増えるわけではありません。
残債をなくす方法は、分割弁済・自己破産・個人再生・時効の4つに整理できます。家を手放すかどうかで、選べる手続きが変わります。
この記事では、任意売却のあとに残債がどこへ向かうのかを追いかけます。そのうえで、費用と期間の目安をつけて4つの出口を比べます。

任意売却で消えるのは抵当権だけ。残債は借金として残ります
住宅ローンを組むとき、金融機関は不動産に抵当権を設定します。返済が滞ったときに、その不動産を競売にかけて回収するための担保です。
任意売却とは、売却代金でローンを完済できない状態でも、金融機関に抵当権を外してもらったうえで売る方法です。ここで外れるのは、あくまで不動産に付いている担保です。借りたお金を返す義務そのものは、担保とは別の話として残ります。
たとえば残債2,400万円の家が1,700万円で売れた場合、諸費用を差し引いた手取りが1,600万円なら、差額の800万円が残債として残ります。この800万円は、家を引き渡したあとも返済義務が続きます。
では、任意売却に意味がないのかというと、そうではありません。競売と比べたときの違いは次の3点です。
| 比べる点 | 任意売却 | 競売 |
|---|---|---|
| 売却価格 | 市場価格に近い水準で売れる可能性がある | 市場価格を下回る水準になりやすい |
| 残債の大きさ | 高く売れた分だけ小さくなる | 売却額が低い分だけ大きくなりやすい |
| 売却後の返済 | 分割弁済の話し合いに入りやすい | 一括請求のまま強制執行へ進みやすい |
任意売却は「借金を消す手続き」ではなく、「残債を小さくして、話し合いの余地を作る手続き」です。ここを取り違えると、売却後に想定外の請求書が届いて慌てることになります。
任意売却そのものの流れは任意売却とは?住宅ローンが払えないときの売却方法と競売との違いにまとめています。
残債はどこへ行くのか。請求元が変わる3つの段階
売却が終わったあと、残債は静かに持ち主を変えていきます。順番を知っておくと、届いた書面に驚かずに済みます。

段階1:保証会社が代位弁済し、請求相手が銀行から保証会社に変わります
住宅ローンを借りるとき、多くの方は保証会社の保証を付けています。返済が長期間止まると、保証会社が残りの債務を金融機関へ一括で立て替え払いします。これが代位弁済です。
このとき、保証会社は立て替えた金額をあなたに請求する権利(求償権)を取得します。弁済をした保証会社は、債権者が持っていた権利を引き継ぐことにもなります(民法499条・501条)。
つまり、あなたの借入先は銀行から保証会社へ移ります。金額が増えるわけではありませんが、この時点で分割返済の約束は失われ、残額は一括で請求される建前になります。代位弁済の通知が届いたら、放置せずに現状を整理してください。
段階2:保証会社がサービサーへ債権を譲渡します
その後、保証会社が回収を続けずに債権を第三者へ売ることがあります。譲り受けるのがサービサー(債権回収会社)です。
サービサーは、債権管理回収業に関する特別措置法(サービサー法)に基づき、法務大臣の許可を受けた株式会社だけが営むことのできる業種です(同法3条・営業の許可)。同法は業務に関する規制を定めており、人を威迫したり、私生活や業務の平穏を害するような言動で困惑させることを禁じています(同法17条1項)。暴力団員等を業務に従事させることも禁止されています(同条3項)。
「聞いたことのない会社から請求書が届いた」というご相談を受けることがありますが、多くはこの譲渡が原因です。まず確認するのは、その会社が法務大臣の許可を受けた債権回収会社かどうかです。許可業者の一覧は法務省が公表しています。名前がなければ、支払う前に消費生活センターや弁護士へ相談してください。
段階3:分割弁済の合意ができると、月々の返済額が決まります
サービサーは、額面どおりの一括回収より現実的な回収を優先することが多く、分割の相談に応じる例があります。実務では月々数千円から数万円に落ち着くこともあります。
ただし、次の2点は押さえておいてください。
- 分割弁済は合意であって、権利ではありません。支払いが止まれば一括請求に戻り、給与や預金の差押えに進む可能性があります
- 完済まで何年かかるかを先に計算してください。残債800万円を月1万円で返す計画は、67年近くかかる計算になります。数字にしてみて現実的でないなら、次章の債務整理を検討する場面です
差押えがすでに入っている場合の売却は差押え・仮差押えが付いた不動産を売る方法で扱っています。
残債を終わらせる4つの方法を、費用と期間で比べます
残債の出口は、大きく4つです。それぞれ向いている状況が違います。
| 方法 | 残債はどうなるか | 期間の目安 | 主な費用 | 向いている状況 |
|---|---|---|---|---|
| 分割弁済の合意 | 減らない(返し切る) | 完済まで数年〜数十年 | なし(返済額のみ) | 残債が小さく、収入で返し切れる |
| 自己破産 | 免責許可決定で責任を免れる | 申立てから半年前後 | 裁判所へ2万円程度+管財の予納金+弁護士費用 | 返し切る見込みが立たない |
| 個人再生 | 一定割合まで減額し3年で返す | 申立てから半年〜1年 | 裁判所へ2万円程度+個人再生委員費用+弁護士費用 | 収入が続き、家を残したい場合など |
| 消滅時効の援用 | 条件を満たせば請求を止められる | 最終返済から5年以上 | 内容証明の実費+専門家費用 | 長期間、請求も返済もない状態が続いている |
期間はいずれも目安で、事案によって変わります。裁判所に納める金額は大阪地方裁判所の案内に基づく数字です。
判断の分かれ目はシンプルです。今の収入で完済まで見通せるなら分割弁済、見通せないなら債務整理です。「なんとかなるかもしれない」で数年を過ごすのが、いちばん選択肢を減らします。
消滅時効の援用は、狙って使うものではありません
債権には時効があります。権利を行使できることを知った時から5年、または行使できる時から10年で、時効が完成します(民法166条1項)。時効の利益を受けるには、援用(時効を主張すること)が必要です(民法145条)。
ただし、次の事情があると時効は簡単に振り出しに戻ります。
- 債務の承認:「少しだけ払います」と一部でも支払うと、その時点で時効が更新されます(民法152条)
- 裁判上の請求:訴訟を起こされて判決が確定すると、そこから10年に延びます(民法169条)
サービサーは時効の管理をしています。時効を待つつもりで請求を放置していると、訴訟を起こされて振り出しに戻る、という結果になりがちです。時効を検討する場合は、書面に返事をする前に弁護士・司法書士へご相談ください。
自己破産を選ぶ前に確認したい4点
残債の額が大きいとき、現実的な出口は自己破産です。ただし「全部きれいになる」という理解のまま進むと、想定外のことが起きます。確認しておきたいのは次の4点です。

1. 免責されない債権があります
免責許可決定が確定すると、破産債権について責任を免れます(破産法253条1項)。住宅ローンの残債は、通常この破産債権に含まれます。
一方、同じ条文の但書には免責されない債権が並びます。主なものは次のとおりです。
- 租税等の請求権(固定資産税・住民税などの滞納分)
- 悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
- 故意または重大な過失により加えた、人の生命・身体を害する不法行為の損害賠償請求権
- 養育費や婚姻費用など、扶養義務等に係る請求権
- 雇っていた人の給料など
- 知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権
固定資産税の滞納は、自己破産をしても残ります。空き家や相続物件を抱えている方は、ここを見落とさないでください。
2. 連帯保証人には効きません
免責許可決定は、債権者が保証人その他の共に債務を負担する者に対して有する権利には影響しません(破産法253条2項)。
つまり、あなたが免責を受けても、連帯保証人になっている親族への請求は止まりません。ペアローンや親子リレー返済の場合、配偶者やお子さまが同じ債務を負っています。ご自身だけが手続きを進めると、家族に一括請求が向かうことになります。誰が保証人になっているかは、契約書で必ず確認してください。
3. 信用情報には7年間残ります
全国銀行個人信用情報センターの登録期間は次のとおりです。
| 登録される情報 | 登録期間 |
|---|---|
| 官報情報(破産手続開始決定・民事再生手続開始決定) | 当該決定日から7年を超えない期間 |
| 取引情報(延滞・代位弁済・強制回収手続等の事実を含む) | 契約期間中および契約終了日から5年を超えない期間 |
| 本人申告情報 | 5年を超えない期間 |
官報情報の登録期間は、以前の10年から7年へ短縮されています。この期間は住宅ローンやクレジットカードの新規契約が難しくなります。ただし永久に残るものではなく、期間の経過後は自動的に削除されます。
4. 裁判所に納めるお金がかかります
大阪地方裁判所の案内では、費用の目安が次のように示されています。
| 手続 | 費目 | 金額 |
|---|---|---|
| 破産 | 手数料・郵便切手・官報公告費用 | 合計2万円程度 |
| 破産(管財事件) | 予納金(弁護士に依頼した場合) | 最低20万円 |
| 破産(管財事件) | 予納金(ご本人申立ての場合) | 最低50万円 |
| 個人再生 | 手数料・郵便切手・官報公告費用 | 約2万円 |
| 個人再生 | 個人再生委員の費用 | 最低30万円(弁護士に依頼した場合は選任されないことが多い) |
このほかに弁護士費用がかかります。ご本人で申し立てるほうが予納金が高くなる点は、意外に知られていません。費用を抑えるつもりで一人で進めると、かえって高くつくことがあります。
家を残したい場合は個人再生。ただし住宅ローン自体が払えないなら使えません
「家だけは手放したくない」というご希望は、よくうかがいます。制度としては、個人再生の住宅資金特別条項(住宅ローン特則)が該当します。
個人再生は、裁判所を通して債務を圧縮し、原則3年で分割返済する手続です。裁判所の案内では、次の要件が示されています。
- 小規模個人再生:将来において継続的に収入を得る見込みがあり、無担保債務の総額が5,000万円以下であること
- 給与所得者等再生:給与所得者など、将来の収入を確実かつ簡単に把握できること。加えて、返済総額が可処分所得額の2年分以上であること
- 返済総額は、財産を処分して返済に充てた場合の額(清算価値)を上回る必要があること
住宅資金特別条項を使うと、住宅ローンだけは約定どおり払い続け、その他の債務を圧縮できます(民事再生法198条)。自宅を残せるのが最大の利点です。なお、ここでいう住宅とは、ご自身が所有して居住する建物で、床面積の2分の1以上を居住用に使っているものを指します(同法196条1号)。
ただし、注意点が2つあります。
1つ目は、住宅ローン自体が払えない場合には使えないことです。この特則は「他の借金を減らして住宅ローンを払い切る」ための仕組みなので、ローンの支払いが続けられない状況では成り立ちません。
2つ目は、任意売却で家を手放したあとでは、そもそも使う対象がないことです。売却してから「家を残す方法があった」と気づいても戻れません。家を残す可能性を検討するなら、売る前に弁護士へ相談してください。順番が結果を変える、数少ない場面です。
相続した家にローンが残っているケースは相続した家に住宅ローンが残っていたら?団信確認・残債処理・売却の全手順で扱っています。団体信用生命保険で残債が消える場合があるため、相続の場面ではまずそこを確認します。
任意売却と直接買取の違いは「期間が読めるかどうか」です
家を手放すと決めた場合、売り方は大きく2つです。任意売却(仲介での売却)と、当社のような業者による直接買取です。

| 比べる点 | 任意売却(仲介) | 直接買取 |
|---|---|---|
| 売却価格 | 市場価格に近い水準を狙える | 仲介より低くなる |
| 買主 | 一般の購入希望者を探す | 当社が直接買い取る |
| 期間 | 買主が見つかるまで数か月かかることがある | 債権者の同意が得られれば期間が読める |
| 仲介手数料 | かかる | かからない |
| 内覧 | 購入希望者の内覧がある | 不要 |
| 競売が迫っている場合 | 間に合わない可能性がある | 期日から逆算して判断できる |
残債を小さくすることを最優先するなら、時間をかけて高く売る任意売却です。価格の差はそのまま残債の差になります。
一方で、競売の開札期日が迫っている、内覧に対応する余裕がない、いつ終わるか分からない状態が続くことがつらい。こうした事情があるなら、期間が読める直接買取が現実的です。
どちらが有利かは、残債の額と残された時間で決まります。当社では、買取価格をお伝えしたうえで「仲介で売ったほうが手取りが多くなる」と判断した場合は、そのようにお伝えしています。相続物件や訳ありの物件については空き家・訳あり不動産の買取もあわせてご覧ください。
実際に進めるときの順番
ご相談を受けたときにお伝えしている順番は、次のとおりです。
- 残債の正確な金額を確認する:返済予定表・残高証明書・代位弁済の通知書を集めます
- 売却の見込み額を出す:仲介の想定価格と買取価格の両方を確認します
- 差額(残る残債)を計算する:諸費用を差し引いた手取り額を残債から引きます
- 債務整理が必要かを弁護士に相談する:3の金額を持って相談すると話が早く進みます
- 売却方法を決めて実行する:期限があるかどうかで選び方が変わります
1と2は、売る決心がついていなくても進められます。金額が分からないままでは、返せるのか返せないのかの判断ができません。査定は無料で、お断りいただいても構いません。
なお、債務整理の判断は弁護士・司法書士の領域です。当社は宅地建物取引業者であり、債務整理の代理はできません。物件の価格・売却期間・債権者との調整といった不動産側の情報をお出しして、弁護士への相談材料を揃えるところまでが役割です。
よくあるご質問
Q. 任意売却をすると、残債は少しは免除されますか。 売却したこと自体を理由に免除されることはありません。減るのは、売却代金が返済に充てられた分だけです。ただし競売より高く売れれば、その差額がそのまま残債の差になります。免除に近い結果を求める場合は、債務整理の手続が必要です。
Q. 代位弁済の通知が届きました。もう任意売却はできませんか。 できる場合があります。代位弁済のあとは保証会社が交渉相手になり、保証会社も回収額を最大化したい立場のため、競売より任意売却を選ぶことがあります。ただし競売の申立てが進むほど選べる幅は狭くなります。通知が届いた時点で動くのが安全です。
Q. 残債があるまま引っ越し費用は出せますか。 債権者の同意があれば、売却代金の中から引越し費用を確保できる場合があります。金額も可否も債権者の判断によるため、事前に確認が必要です。競売では原則としてこの調整ができません。
Q. 家族に知られずに手続きできますか。 連帯保証人になっている家族には、いずれ請求が向かうため知られます。保証人になっていない家族については、連絡方法を限定するなどの配慮ができます。ご相談の入口でその旨をお伝えください。
Q. 相続した家に親のローンが残っています。同じ話になりますか。 まず団体信用生命保険の加入を確認してください。加入していれば、死亡時に残債が保険金で完済されます。未加入の場合は、残債も相続の対象になるため、この記事と同じ整理になります。相続放棄という選択肢も含めて、期限内の判断が必要です。
Q. 大阪市以外の物件でも相談できますか。 ご相談はお受けします。ただし大阪を中心に、兵庫・京都・奈良・滋賀・和歌山の物件のご相談に対応しています。買取の可否・条件は所在地と物件の状況を確認してご案内します。上記の対応地域外の物件は買取・査定の対象外です。対応地域外の物件は、物件所在地の不動産会社へご相談ください。ご自身で動く場合の手順もお伝えします。
残債の見込み額を出すところから始めませんか
残債がいくら残るのかは、物件がいくらで売れるかが分からないと計算できません。売却の見込み額をお伝えするところまでは、無料で、お名前を伏せたままでも対応しています。
「まだ売ると決めていない」「弁護士に相談する前に数字だけ知りたい」という段階で構いません。金額をお持ちいただければ、弁護士への相談もそのぶん早く進みます。
対応しているのは、大阪府内の訳あり不動産です。
相談無料・秘密厳守。ご相談いただいたあとに、こちらから催促のご連絡を重ねることはありません。
関連するガイド記事
- 任意売却とは?住宅ローンが払えないときの売却方法と競売との違い
- 差押え・仮差押えが付いた不動産を売る方法|買取解決と任意売却の違い
- 相続した家に住宅ローンが残っていたら?団信確認・残債処理・売却の全手順
- 相続した親の家に住宅ローンが残っていた|団信・残債・売却の3つの対処法
- 根抵当権が付いた不動産を相続したら?抹消・売却・買取の手順
- 管理費・修繕積立金が滞納しているマンションは売れる?
- 空き家・訳あり不動産の買取|断られた物件のご相談
出典・参考
- e-Gov法令検索「破産法(平成十六年法律第七十五号)」第253条(免責許可の決定の効力等)
- e-Gov法令検索「民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)」第196条(定義)・第198条(住宅資金特別条項を定めることができる場合等)・第221条(手続開始の要件等)
- e-Gov法令検索「民法(明治二十九年法律第八十九号)」第145条(時効の援用)・第152条(承認による時効の更新)・第166条(債権等の消滅時効)・第169条(判決で確定した権利の消滅時効)・第499条(弁済による代位の要件)・第501条(弁済による代位の効果)
- e-Gov法令検索「債権管理回収業に関する特別措置法(平成十年法律第百二十六号)」第3条(営業の許可)・第17条(業務に関する規制)
- 裁判所「破産・再生」
- 裁判所「個人再生」(小規模個人再生・給与所得者等再生の要件、返済期間、清算価値)
- 大阪地方裁判所「倒産部(第6民事部)」(破産・個人再生の申立費用と予納金)
- 一般社団法人 全国銀行協会「全国銀行個人信用情報センター センターの概要」(登録情報と登録期間)
いずれも2026年8月10日にアクセスして確認しています。制度や運用は改正されることがあるため、実際に手続を検討される際は裁判所の最新の案内をご確認ください。債務整理(自己破産・個人再生・時効の援用)の判断と手続は弁護士・司法書士の業務であり、当社は代理を行いません。税額の判断は税理士にご相談ください。本記事の期間・費用は目安であり、個別の結果を保証するものではありません。