疎遠な親族の相続人になったと通知が来たら|対応3ステップと3か月の期限【2026年版】
「叔父の相続人になっていると、司法書士から手紙が来た」「何十年も会っていない父方のいとこの件で、家庭裁判所から封筒が届いた」。こうしたご相談は、私たちのもとにも毎月のように寄せられます。
先に結論をお伝えします。この通知でまず確かめるべきなのは、誰から届いたかと、3か月の期限がいつから始まっているかの2つだけです。民法915条1項は、相続の承認か放棄かを決める期間を「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」と定めています。疎遠だった方の相続では、この起算日が亡くなった日ではなく、通知を受け取った日になることがほとんどです。つまり、手元にはまだ時間が残っています。
そして、何もしないという選択だけは避けてください。3か月が過ぎると、民法921条2号により単純承認をしたものとみなされ、故人の借金も自動的に引き継ぐことになります。
この記事では、届いた通知を差出人で見分ける方法と、そこから先の対応3ステップ、そして相続すると決めた場合に残された不動産をどう扱うかまでを、条文と裁判所の案内にもとづいて整理します。
届いた通知は5種類のどれか|差出人でやることが決まります
同じ「相続人になりました」という趣旨の通知でも、差出人によって急ぎ度も次の一手もまったく違います。封筒を開ける前に、まず差出人欄を見てください。
司法書士・弁護士から届いた場合
もっとも多いのがこの類型です。「相続人調査の件」「遺産分割協議へのご協力のお願い」といった件名で、戸籍を辿ってあなたを見つけた、という説明が添えられています。
ここで誤解しやすいのが、この専門家はあなたの代理人ではないという点です。他の相続人から依頼を受けて動いている立場ですので、提示される遺産分割協議書の内容が、あなたにとって有利とは限りません。最初の返信では、署名や押印を約束せず、財産目録(プラスの財産とマイナスの負債の一覧)を送ってほしいとだけ伝えれば十分です。
家庭裁判所から届いた場合
遺産分割調停の期日呼出状や、相続放棄の申述に関する照会書などです。これは、すでに法的な手続きが動き出しているという合図で、5類型のなかでもっとも期限が厳格です。
回答書に期限が書かれていれば、そこが最優先になります。欠席しても手続きは進行しますので、内容がわからないまま放置するのは避けてください。
債権者・サービサーから届いた場合
「相続人各位」宛の請求書や、債権を譲り受けたという通知です。この封筒が来たということは、故人に返済されていない借金が残っている可能性が高いと考えてください。
この類型でもっとも危険なのは、良かれと思って支払ってしまうことです。相続財産から支払えば民法921条1号の「相続財産の処分」にあたり、単純承認とみなされるおそれがあります。1円も払わず、故人の物にも手をつけないまま、まず調査に進んでください。
市区町村から届いた場合
「相続人代表者指定届」や、故人名義の固定資産税の納税通知書です。自治体が課税先を探している状態で、裏を返せば故人名義の土地や家屋が確実に残っているという手がかりでもあります。
この届出に応じること自体は、納税通知の宛先を決める手続きにすぎず、相続を承認したことにはなりません。ただし提出前に、後述する名寄帳を取り寄せて、物件が何件あるのかを先に把握しておくことをおすすめします。
親族本人から届いた場合
「私たちは相続放棄をしたので、次はあなたの順番です」という趣旨の手紙や電話です。民法889条により、被相続人に子がいなければ直系尊属、それもいなければ兄弟姉妹へと相続人の順位が移り、兄弟姉妹が亡くなっていれば甥や姪が代襲相続します。
先順位の方が放棄を選ぶ理由の多くは、借金があるか、売れそうにない不動産が残っているかのどちらかです。感情的な話に踏み込む前に、なぜ放棄したのかを事実として聞き取ってください。そして、この通知を受け取った日が、あなたの3か月の起算日になります。
ステップ1|起算日を確定し、封筒ごと保存する
3か月がいつから始まるかを紙に書く
民法915条1項の起算点は「自己のために相続の開始があったことを知った時」です。疎遠な親族の相続では、次のように整理できます。
- 死亡も相続人になったことも通知で初めて知った → 通知を受け取った日
- 死亡は知っていたが、先順位者の放棄で順位が回ってきた → その事実を知った日
- 相続人だった方が承認も放棄もしないまま亡くなり、その相続人になった → 民法916条により、自分が相続の開始を知った日
- 相続人が未成年者や成年被後見人 → 民法917条により、法定代理人が知った日
この日付から3か月後の同じ日が、判断のリミットです。カレンダーに書き込んで、家族にも共有してください。
封筒・消印・書留の受領証を捨てない
起算日は自己申告では決まりません。あとから「もっと早く知っていたはずだ」と争われたときに証拠になるのは、消印のある封筒と、書留の受領記録です。中身の書面だけを残して封筒を捨ててしまう方が多いので、封筒ごとクリアファイルに入れて保管してください。
この期間にやってはいけない4つのこと
民法921条は、次の行為があった場合に単純承認とみなすと定めています。相続放棄の可能性を残したいなら、3か月が過ぎるまでは避けてください。
- 故人の預金を引き出す・解約する(1号の処分にあたるおそれ)
- 故人宛の請求書を相続財産から支払う(同上)
- 家財や車を売却する・自分のものにする(同上/3号の隠匿・消費にあたるおそれ)
- 不動産の相続登記を自分名義で入れる(同上)
一方で、民法921条1号のただし書は保存行為を除外しています。雨漏りの応急処置や、倒れそうな塀の一時的な補強といった、財産の価値を保つだけの行為は処分にあたらないと解されています。ただし線引きは事実関係によりますので、費用が発生する対応を取る前に専門家へ確認してください。
ステップ2|3週間で財産と負債を洗い出す
3か月のうち、判断に使えるのは実質1か月ほどです。戸籍の取り寄せや金融機関の回答に時間がかかるため、最初の3週間で調査を終えるつもりで動いてください。民法915条2項は、承認や放棄をする前に相続財産の調査ができることを明記しています。
| 調べるもの | 問い合わせ先 | 手に入るもの |
|---|---|---|
| 不動産の全件 | 故人の最後の住所地・物件所在地の市区町村(資産税課) | 名寄帳(固定資産課税台帳の写し)。その自治体にある故人名義の物件が一覧で出ます |
| 不動産の権利関係 | 法務局(オンライン請求可) | 登記事項証明書。抵当権・差押えの登記がここでわかります |
| 預貯金 | 各金融機関 | 残高証明書・取引履歴 |
| 借金・カード債務 | JICC・CIC・全国銀行個人信用情報センター | 信用情報の開示報告書 |
| 相続人の範囲 | 本籍地の市区町村 | 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本 |
名寄帳は、市区町村ごとに請求する点に注意してください。故人が大阪市内と別の市に物件を持っていた場合、大阪市の名寄帳には大阪市内の分しか載りません。固定資産税の納税通知書が届いた自治体は、必ず請求先に加えてください。
借金がなくても、不動産があれば計算が変わります
信用情報に何も出てこなかった場合でも、そこで安心はできません。残されたのが老朽化した空き家や再建築不可の土地だと、相続した後に固定資産税・草木の管理費・解体費用が継続して発生します。
とくに空家等対策の推進に関する特別措置法にもとづき、管理不全空家等として市区町村から勧告を受けると、地方税法349条の3の2の住宅用地特例が外れ、土地の固定資産税の課税標準が上がります。もらって困る不動産という類型は実在しますので、プラスの財産として単純に足し算しないでください。
判断材料として現実的なのは、その不動産が今の状態でいくらで売れるかを先に知ることです。売却できる見込みがあれば承認して現金化する道が開けますし、値段がつかず費用だけがかかるなら、放棄を検討する材料になります。
ステップ3|承認・限定承認・放棄の3択を決める
| 選択肢 | 内容 | 向いているケース | 手続き |
|---|---|---|---|
| 単純承認 | プラスもマイナスもすべて引き継ぐ | 財産が負債を明らかに上回る/売れる不動産がある | 手続き不要。3か月経過でも自動的にこうなります |
| 限定承認 | 引き継いだ財産の限度でのみ負債を返済する(民法922条) | 負債の全容が最後までつかめない | 家庭裁判所へ申述。相続人全員が共同で行う必要があります |
| 相続放棄 | 初めから相続人でなかったものとみなされる(民法939条) | 負債が上回る/管理費用だけがかかる不動産しかない | 家庭裁判所へ単独で申述できます |
相続放棄の申述先と費用
裁判所の案内によると、相続放棄の申述は被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。あなたの住所地の家庭裁判所ではない点に注意してください。
費用は申述人1人につき収入印紙800円分と、連絡用の郵便切手です。郵便切手の金額は裁判所ごとに異なるため、申述先の家庭裁判所に確認してください。共通して必要な書類は、被相続人の住民票除票または戸籍附票と、申述人の戸籍謄本です。ここに相続順位に応じた戸籍謄本が加わります。
なお、あなたが兄弟姉妹や甥・姪という第三順位にあたる場合、被相続人の出生から死亡までの全戸籍に加えて、直系尊属が亡くなっていることを示す戸籍まで必要になります。転籍を重ねていると取り寄せに1か月近くかかることもありますので、放棄する方向で考えているなら、戸籍の請求だけは先に始めてください。
3か月に間に合いそうにないとき
民法915条1項ただし書は、利害関係人または検察官の請求により、家庭裁判所がこの期間を伸長できると定めています。財産の調査が終わらない見込みなら、3か月が過ぎる前に「相続の承認又は放棄の期間の伸長」を申し立ててください。期限が来てからでは受け付けられません。
相続放棄をしても、管理義務が残る場合があります
民法940条1項は、相続の放棄をした者が放棄の時に相続財産を現に占有しているときは、相続人または相続財産清算人に引き渡すまで、自己の財産と同一の注意をもって保存しなければならないと定めています。
疎遠で一度も物件に立ち入っていない方であれば、通常は占有にあたりません。ただし、鍵を預かった、荷物を運び出した、業者を入れたといった行為があると評価が変わります。放棄を予定しているなら、物件には近づかないのが確実です。
相続すると決めた場合に、すぐ次の期限が来ます
承認を選んだ場合、3か月の次には別の締切が並んでいます。
- 相続税の申告と納税:被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内(国税庁タックスアンサーNo.4205)。基礎控除以下なら申告不要ですが、判断には財産の評価が必要です
- 相続登記の申請:所有権を取得したことを知った日から3年以内(不動産登記法76条の2第1項)。正当な理由なく怠ると、同法164条1項により10万円以下の過料の対象になります
- 遺産分割がまとまらず登記できないときは、同法76条の3の相続人申告登記を3年以内に行えば、申請義務を履行したものとみなされます
疎遠な親族の相続では、他の相続人と連絡が取れず遺産分割協議が進まないことがよくあります。その場合でも、相続人申告登記であれば単独で申し出ができますので、過料のリスクだけは先に切り離せます。
大阪市内の不動産が残っていた場合
私たちは大阪市24区を中心に、訳あり不動産の直接買取を行っています。疎遠な親族から引き継ぐことになった物件では、次のような状態がよくあります。
- 何十年も空き家のまま、室内に家財が残っている
- 前面道路が2メートルに満たず、建て替えができない(再建築不可)
- 長屋の一戸で、隣家と壁を共有している
- 名義が祖父の代のまま、相続登記が数世代にわたって放置されている
こうした物件は、仲介では買い手が見つかりにくく、解体費用のほうが土地の値段を上回るケースもあります。直接買取であれば、家財が残ったままの現況でも、名義が整理されていない段階でも査定にお応えできます。仲介手数料はかかりません。
ただし、決済までには相続登記を済ませる必要がありますので、そこは司法書士の作業時間として見込んでおいてください。3か月の期限内に「売れるかどうか」だけ先に知るという使い方であれば、査定だけをお受けすることも可能です。
まとめ
- 疎遠な親族の相続人になったという通知は、まず差出人を見てください。司法書士・弁護士は相手方の代理人、家庭裁判所は期限が厳格、債権者は借金の合図、市区町村は不動産がある合図、親族本人は順位が回ってきた合図です
- 民法915条1項の3か月は、亡くなった日ではなくあなたが知った日から数えます。通知の封筒と消印は、その証拠として捨てずに保管してください
- この3か月のあいだに、故人の預金を動かす・請求書を払う・家財を処分する・相続登記を入れることは避けてください。民法921条の単純承認とみなされるおそれがあります
- 相続放棄は被相続人の最後の住所地の家庭裁判所へ、申述人1人につき収入印紙800円分と郵便切手で申述します。間に合わないなら、期限が来る前に期間伸長を申し立ててください
- 残されたのが不動産なら、今いくらで売れるかを先に確認することが、承認か放棄かの判断をもっとも早く固めます
判断の材料は、期限までにそろえられます。まずは通知を受け取った日を確定させて、そこから逆算してください。
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「相続するかどうかまだ決めていないが、その家に値段がつくのかだけ知りたい」——その段階のご相談を歓迎しています。査定は無料で、売却を強制することはありません。
空き家・再建築不可・長屋・共有持分などの訳あり不動産を専門に扱っており、家財が残ったまま・現況のままで査定にお応えできます。秘密厳守で対応し、遠方にお住まいの相続人の方からのご相談も承っています。なお、相続放棄・限定承認の手続きは司法書士または弁護士へ、相続税の申告は税理士へご相談ください。当社は不動産の売買を担当します。
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出典:民法915条・916条・917条・921条・922条・938条・939条・940条・889条(e-Gov法令検索)/不動産登記法76条の2・76条の3・164条(e-Gov法令検索)/裁判所「相続の放棄の申述」/国税庁タックスアンサーNo.4205「相続税の申告と納税」。制度の内容は2026年8月時点のものです。個別の判断は各専門家にご確認ください。