相続したアパートの家賃収入にかかる税金と確定申告|準確定申告・不動産所得・手放す判断【2026年版】
Q: 相続したアパートの家賃収入には、どんな税金がかかりますか? A: 家賃収入は「不動産所得」として毎年の確定申告が必要です。さらに、亡くなった方の生前の家賃分は相続人が代わりに申告する「準確定申告」を4か月以内に行います。物件そのものには相続税、家賃には所得税・住民税がかかる二段構えになります。申告と管理が負担な場合は、入居者がいるまま売却して手放す選択肢もあります。
「親のアパートを相続したものの、家賃の税金や確定申告のことがまったくわからない」というご相談を、相続直後の方からよくいただきます。家賃収入は入ってくるものの、いつ・何を・どこまで申告すればよいのかが見えず、不安を抱えたまま数か月が過ぎてしまうケースが少なくありません。
この記事では、相続したアパートの家賃収入にかかる税金と確定申告の全体像を、順を追ってお伝えします。あわせて、「申告や管理の負担が重い」と感じたときの手放す判断についても解説します。
相続したアパートには2種類の税金がかかる
まず全体像を押さえておきましょう。相続したアパートには、性質のちがう2つの税金がかかります。
| 税金の種類 | 何にかかるか | いつ | 誰が |
|---|---|---|---|
| 相続税 | アパート(土地・建物)という財産そのもの | 相続開始を知った日の翌日から10か月以内に申告 | 相続人(基礎控除を超える場合) |
| 所得税・住民税 | アパートから生まれる家賃収入(不動産所得) | 準確定申告は4か月以内/その後は毎年 | 家賃を受け取る相続人 |
物件そのものにかかる相続税は「一度きり」ですが、家賃収入にかかる所得税・住民税は保有し続ける限り毎年発生します。この記事で扱うのは、後者の「家賃収入にかかる税金」です。相続税の期限や納税資金については「相続税の10ヶ月期限が迫っている|不動産を急いで現金化する方法と納税猶予」もあわせてご覧ください。
まず4か月以内——被相続人の「準確定申告」を忘れずに
準確定申告とは
準確定申告とは、亡くなった方(被相続人)のその年の所得を、相続人が代わりに申告する手続きです。アパートを経営していた方が亡くなった場合、その年の1月1日から死亡日までに確定した家賃収入について申告が必要です。
期限は相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内と定められています(国税庁「No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)」)。通常の確定申告(翌年3月15日)よりずっと早いため、うっかり見落としやすい手続きです。
前年分が未申告なら合わせて申告
亡くなった時期によっては、前年分の確定申告がまだ済んでいないこともあります。たとえば2月に亡くなり、前年分の申告(3月15日期限)がまだだった場合は、前年分と本年分の両方を4か月以内に準確定申告します。
現場からのひとこと: 高齢のオーナーが亡くなったケースでは、「そもそも親が確定申告をしていたのか」がわからないご遺族も多いです。まずは郵便物のなかに税務署からの通知や、税理士からの書類がないかを確認してみてください。過去の確定申告書の控えが見つかれば、経費の内訳や減価償却の状況を把握する手がかりになります。
相続後の家賃は誰のもの?——遺産分割の前と後
相続人が複数いる場合、「家賃を誰が受け取り、誰が申告するのか」で迷いがちです。ポイントは遺産分割が終わっているかどうかです。
遺産分割前の家賃は法定相続分で分ける
遺産分割協議がまとまるまでの間にアパートから生じた家賃は、各相続人が法定相続分に応じてそれぞれ取得します。これは最高裁の判例(最判平成17年9月8日)で示された考え方で、この家賃は遺産とは別個の財産とされ、後から遺産分割で誰がアパートを相続するか決まっても、分割前に発生した家賃の帰属はさかのぼって変わりません。
つまり、遺産分割前の家賃については、各相続人が自分の相続分に応じて確定申告することになります。たとえば相続人が兄弟2人(相続分2分の1ずつ)なら、その期間の家賃は半分ずつが各自の不動産所得です。
遺産分割後はアパートを相続した人が申告
遺産分割協議でアパートを相続する人が決まった後は、その物件を取得した相続人が家賃を受け取り、不動産所得として申告します。兄弟間でもめて分割が長引くと、その間は各自が申告を続ける必要があり、手続きが煩雑になります。相続人同士の話し合いが難しいときは「相続不動産で家族ともめたときの解決策」も参考にしてください。
相続アパートの不動産所得——経費と減価償却の引き継ぎ
不動産所得の計算
家賃収入がそのまま課税されるわけではありません。不動産所得=家賃収入−必要経費で計算し、残った所得に他の所得と合算して所得税・住民税がかかります(総合課税)。
主な必要経費は次のとおりです。
| 経費の例 | 内容 |
|---|---|
| 固定資産税・都市計画税 | アパートの土地・建物にかかる税金 |
| 管理費・管理委託料 | 管理会社への委託費用・共用部の維持費 |
| 修繕費 | 原状回復・設備交換・外壁補修など |
| 減価償却費 | 建物の取得価額を耐用年数で配分した費用 |
| 借入金の利子 | アパートローンが残っている場合の利息部分 |
| 損害保険料 | 火災保険・地震保険の当該年分 |
減価償却は「引き継ぐもの」と「引き継がないもの」がある
相続でとくに間違えやすいのが減価償却です。相続した建物は、亡くなった方の取得価額・取得年月日・耐用年数・経過年数・未償却残高を引き継ぎます。「相続した年の時価で買い直した」とは扱いません。
一方で、償却方法は引き継がず、相続した日に取得したものとして判定します。建物は平成19年4月1日以後取得分と同じ扱いになるため、定額法で計算します(国税庁の質疑応答事例より)。取得価額がわかる資料(購入時の売買契約書・過去の確定申告書)が残っていないと計算が難しくなるので、早めに探しておくと安心です。
青色申告は自動では引き継げない
親が青色申告(最大65万円の特別控除などが受けられる制度)をしていても、その承認は相続人に自動では引き継がれません。相続人が青色申告をするには、自分の名前で「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。提出期限は死亡日によって次のように分かれます。
| 被相続人の死亡日 | 青色申告承認申請書の提出期限 |
|---|---|
| その年の1月1日〜8月31日 | 死亡の日から4か月以内 |
| その年の9月1日〜10月31日 | その年の12月31日まで |
| その年の11月1日〜12月31日 | 翌年の2月15日まで |
この期限を逃すと、その年は白色申告となり、控除のメリットを受けられません。手続きが不安な場合は税理士への相談をおすすめします。
「毎年の申告と管理が負担」なら手放す判断
ここまで見てきたとおり、相続したアパートを保有し続けると、毎年の確定申告・入居者対応・修繕・固定資産税がついて回ります。「家賃は入るが、手間とコストのほうが気が重い」という方は、手放す選択肢も現実的です。
売却したときにかかる税金
売却して利益(譲渡所得)が出た場合は譲渡所得税がかかります。税率は保有期間で変わり、相続した物件は亡くなった方の取得時期を引き継ぐため、親が長く所有していれば長期譲渡(5年超)になりやすいです。
| 区分 | 保有期間 | 税率(所得税+住民税+復興特別所得税) |
|---|---|---|
| 長期譲渡所得 | 5年超 | 20.315% |
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 39.63% |
相続税を納めた物件を売る場合は、一定の相続税額を取得費に加算できる取得費加算の特例(相続税の申告期限の翌日から3年以内=相続開始から約3年10か月以内の売却が対象)が使える可能性があります。詳しくは「相続した不動産を売るなら必ず確認|取得費加算の特例で譲渡税が大幅減」をご覧ください。
なお、マイホームを売ったときの3,000万円特別控除は、賃貸中のアパートには使えません。居住用財産が対象の制度のため、収益物件は適用外である点に注意してください。
保有し続ける vs 売却して手放す
| 比較項目 | 保有し続ける | 売却して手放す |
|---|---|---|
| 毎年の確定申告 | 必要(不動産所得) | 不要になる(売却翌年の譲渡申告のみ) |
| 管理の手間 | 入居者対応・修繕が続く | なくなる |
| 固定資産税 | 毎年かかる | かからなくなる |
| 収入 | 家賃が入る(空室リスクあり) | 売却代金がまとまって入る |
| 将来の大規模修繕 | 数百万円規模の負担リスク | 負担しなくてよい |
築年数が古く空室や修繕費がかさむアパートほど、「持ち続けるコスト」と「手放して得られる現金」のバランスが売却に傾きやすくなります。判断に迷う場合は「相続アパート管理できない|放置した場合の年間コスト実例3件と早期解決策」の試算も参考になります。
手放すなら仲介か買取か
入居者がいるアパートは、一般の買主には敬遠されやすく、仲介では買い手が見つかりにくいことがあります。入居者がいるまま(オーナーチェンジ)で売る場合は、収益物件や訳あり物件の取り扱いに慣れた専門業者への相談が現実的です。
| 売却方法 | 特徴 | 期間の目安 |
|---|---|---|
| 一般仲介 | 市場相場に近い価格を狙えるが買主探しに時間がかかる | 3〜12か月以上 |
| 専門買取業者への直接売却 | 入居者付き・現況のまま査定。手続きの負担が少ない | 最短2〜4週間 |
早く確実に手放したい方や、確定申告・管理の負担から解放されたい方には、直接買取が向いています。相続アパートの売却全体の流れは「相続アパートを手放したい方へ|売却の流れ・税金・失敗しない判断基準を宅建業者が完全解説」で確認できます。
よくある質問
Q: 相続したアパートの家賃が少額でも確定申告は必要ですか?
A: 給与所得者で、家賃などの不動産所得が年間20万円以下であれば、所得税の確定申告が不要になる場合があります。ただし住民税の申告は別途必要になることがあり、また準確定申告は金額にかかわらず要件を満たせば必要です。判断に迷う場合は税務署か税理士にご確認ください。
Q: 相続登記をしないと家賃の申告はできませんか?
A: 申告自体は登記前でも可能ですが、2024年4月から相続登記が義務化され、相続を知った日から3年以内の登記が必要です(不動産登記法)。期限を過ぎると10万円以下の過料が科される可能性があります。入居者への賃貸人変更通知や家賃振込口座の変更もあるため、早めに登記を済ませることをおすすめします。
Q: 空室が多くて赤字です。それでも申告する意味はありますか?
A: 不動産所得が赤字(損失)の場合、給与所得など他の所得と損益通算できることがあり、結果的に税負担が軽くなる場合があります。赤字だからと申告しないのは損になり得るため、状況を税理士に相談することをおすすめします。ただし赤字が続くようであれば、保有の継続自体を見直す時期かもしれません。
Q: サブリース(家賃保証)契約付きのアパートを相続しました。申告はどうなりますか?
A: サブリースの場合、相続人が受け取るのはサブリース業者からの保証賃料で、これが不動産所得になります。契約の引き継ぎや解約には別のルールがあるため、「相続したアパートにサブリース契約がついていたらどうする?」もあわせてご覧ください。
まとめ
相続したアパートの家賃収入にかかる税金と手続きのポイントは次の3つです。
- 相続した年は「準確定申告(4か月以内)」と「自分の確定申告」の両方が発生する
- 遺産分割前の家賃は各相続人が法定相続分で取得し、それぞれ申告する(最判平成17年9月8日)
- 減価償却は引き継ぐが青色申告は引き継げないなど、意外と複雑なルールがある
家賃は入ってくるものの、毎年の申告・入居者対応・修繕・固定資産税といった負担が続くのがアパート経営の実情です。「手間とコストのわりに気が重い」と感じたら、入居者がいるまま手放す選択肢もあります。まずは保有コストと売却時の手取りを具体的な数字で比べてみることをおすすめします。
- 毎年の確定申告や税金の手続きが負担に感じる
- 入居者がいるまま売れるのか分からない
- 築30年以上で大規模修繕が近い
- 遠方に住んでいて管理に手が回らない
1つでも当てはまれば、まずは無料査定でご相談ください。処分方法の全体像は相続アパートを手放したい方へ|売却の流れ・税金・失敗しない判断基準で確認できます。
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