相続アパートの買取|収益計算・管理リスク・売却方法を宅建業者が解説
相続したアパートを「持ち続けるか、手放すか」で悩んでいる方は少なくありません。築古アパートは、表面利回りだけでは見えない管理コスト・修繕リスク・空室リスクが積み重なり、収支がマイナスになるケースが多くあります。
この記事では、相続アパートの収益性を正しく把握する方法から、管理にかかる費用とリスク、仲介・買取それぞれの売却方法の比較、そして実際の買取の流れまでを、宅建業者の立場から解説します。
相続アパートの収益性を正しく計算する
「家賃収入があるから持っておいた方がいい」と思われがちですが、築古アパートの実質利回りは想像より低いことが多いです。
表面利回りと実質利回りの違い
| 項目 | 計算方法 | 注意点 |
|---|---|---|
| 表面利回り | 年間家賃収入 ÷ 物件価格 × 100 | 空室や経費を含まない数字 |
| 実質利回り | (年間家賃収入 − 年間経費)÷ 物件価格 × 100 | 実際の手残りに近い数字 |
築30年・6室アパートの収支シミュレーション
具体的な数字で見てみます。築30年・6室・家賃4万円/戸のアパートを想定します。
| 項目 | 年間金額 |
|---|---|
| 家賃収入(満室時) | 288万円 |
| 空室損失(入居率80%と仮定) | −57.6万円 |
| 管理委託費(家賃の5%) | −11.5万円 |
| 固定資産税・都市計画税 | −25万円 |
| 火災保険・地震保険 | −8万円 |
| 修繕積立金(年平均) | −30万円 |
| 原状回復費(退去1回/年想定) | −15万円 |
| 手残り(税引前) | 約141万円 |
表面利回りが8%に見えても、実質利回りは3〜4%程度まで下がるのが一般的です。さらに、ここから所得税・住民税が差し引かれます。
見落としがちな「突発コスト」
上記のシミュレーションには含まれていない突発的な費用もあります。
- 給排水管の交換:築30年前後で必要になることが多く、1棟あたり100〜300万円
- 外壁・屋根の大規模修繕:200〜500万円
- 入居者トラブルへの対応費用:家賃滞納・孤独死等のリスク
- 耐震補強:旧耐震基準(1981年以前)の場合、数百万円規模
突発コストが1回発生するだけで、数年分の家賃収入が吹き飛ぶことがあります。
相続アパートを持ち続けるリスク
「とりあえず持っておこう」と判断した場合に発生するリスクを整理します。
① 空室リスク
築古アパートは新築・築浅物件と比べて入居者募集で不利です。特に以下の条件が重なると、空室が長期化しやすくなります。
- 最寄り駅から徒歩15分以上
- 3点ユニットバス(トイレ・洗面・浴槽が一体)
- エアコン・温水洗浄便座等の設備が古い
- インターネット無料設備がない
- 人口減少が進んでいるエリア
② 管理の手間
遠方に住んでいる場合、管理会社に委託するのが一般的ですが、それでもオーナーとしての判断が必要な場面は多くあります。
- 入居審査の最終判断
- 修繕工事の発注・費用負担の判断
- 家賃滞納者への対応方針
- 退去時の原状回復費用の負担割合の決定
- 隣人トラブルへの対応
③ 相続人間でのトラブル
アパートを複数の相続人で共有名義にした場合、売却・建替え・大規模修繕には共有者全員の同意が必要です。意見が合わないまま放置されるケースが少なくありません。
共有持分の問題については共有持分の売却方法で詳しく解説しています。
④ 建物の老朽化と資産価値の下落
建物は年月とともに劣化し、資産価値は下がり続けます。「もう少し待てば高く売れる」ということは、築古アパートではほとんどありません。待つほど建物価値は下がり、修繕費用は増えていきます。
相続アパートの売却方法:仲介 vs 買取
相続アパートを売却する方法は、大きく分けて「仲介」と「買取」の2つです。
| 比較項目 | 仲介 | 買取 |
|---|---|---|
| 買主 | 投資家・個人 | 不動産業者 |
| 売却価格 | 相場通り(ただし築古は買い手がつきにくい) | 相場の70〜80%程度 |
| 売却期間 | 3〜12ヶ月(築古は長期化しやすい) | 2〜4週間 |
| 仲介手数料 | 売却価格×3%+6万円+消費税 | なし(業者が直接買取) |
| 契約不適合責任 | あり(売主が負担) | なし(免責が一般的) |
| 残置物 | 撤去が必要 | そのままでも対応可能な場合が多い |
| リフォーム | 必要な場合あり | 不要 |
買取がおすすめのケース
以下に当てはまる場合は、買取の方が合っている可能性があります。
- 築30年以上で大規模修繕が近い:修繕費をかける前に手放した方がトータルでプラスになることが多い
- 空室率が30%以上:仲介で売り出しても、収益性が低いため買い手がつきにくい
- 相続人が遠方に住んでいる:管理の手間・交通費を考えると早期売却が合理的
- 共有名義でまとまらない:持分だけの買取にも対応できる業者がある
- 旧耐震基準で耐震補強が必要:補強費用をかけずに現況のまま売却できる
- 入居者がいる状態で売りたい:オーナーチェンジ(入居者つきのまま売却)に対応している
仲介と買取の詳しい比較は買取と仲介どっちが得?でシミュレーション付きで解説しています。
相続アパートの買取の流れ
相続アパートを買取で売却する場合の一般的な流れは以下のとおりです。
ステップ①:相続登記を済ませる
相続した不動産は、亡くなった方の名義のままでは売却できません。まず相続登記(名義変更)を完了させます。
2024年4月から相続登記は義務化されており、相続を知った日から3年以内に登記しないと10万円以下の過料が科される可能性があります。詳しくは相続登記の義務化ガイドをご覧ください。
ステップ②:買取業者に査定を依頼する
買取業者に連絡して、査定を依頼します。査定に必要な情報は以下のとおりです。
- 物件の所在地・構造・築年数
- 間取り・部屋数
- 現在の入居状況(空室数)
- 家賃設定・管理費
- レントロール(各部屋の賃料一覧)
- 修繕履歴
- 固定資産税の納税通知書
複数の業者に査定を依頼して比較することが大切です。業者によって得意な物件タイプが異なるため、買取価格に差が出ます。
ステップ③:買取価格の提示・条件交渉
査定後、業者から買取価格が提示されます。確認すべきポイントは以下です。
- 買取価格:手取り額はいくらになるか
- 引渡し時期:希望する時期に合わせてもらえるか
- 残置物の処分:家具・設備はそのままで良いか
- 契約不適合責任の免責:売却後のリスクがないか
- 入居者への対応:オーナーチェンジの場合、入居者への通知は業者がやるか
ステップ④:売買契約・決済・引渡し
条件に合意したら売買契約を締結します。買取の場合、契約から決済まで2〜4週間で完了するのが一般的です。
決済日に残代金を受け取り、物件の引渡し(鍵・書類の受け渡し)を行います。
相続アパート売却時の税金
相続アパートを売却した場合にかかる主な税金は以下のとおりです。
| 税金 | 内容 | 税率・金額の目安 |
|---|---|---|
| 譲渡所得税・住民税 | 売却益に対して課税 | 長期(5年超):20.315%、短期(5年以下):39.63% |
| 印紙税 | 売買契約書に貼付 | 1千円〜6万円(売買価格による) |
| 登録免許税 | 抵当権抹消等 | 不動産1個につき1,000円 |
取得費の計算に注意
相続で取得した不動産は、被相続人(亡くなった方)が購入した時の価格と取得時期を引き継ぎます。購入時の売買契約書が見つからない場合、取得費は売却価格の5%とみなされ、譲渡所得税が高額になることがあります。
売買契約書がない場合でも、以下の資料で取得費を証明できる可能性があります。
- 当時の不動産業者の販売資料
- 住宅ローンの借入記録
- 登記簿の抵当権設定額
- 固定資産税の課税明細書の推移
税金の計算方法や節税対策の詳細は不動産売却の税金ガイドで解説しています。
よくある質問
Q. 入居者がいるアパートでもそのまま買取してもらえますか?
はい、可能です。オーナーチェンジ(入居者がいる状態のまま所有権を移転する方法)で売却できます。入居者の退去を待つ必要はありません。
Q. 旧耐震基準のアパートでも買取できますか?
買取対応している業者は多くあります。旧耐震基準(1981年5月以前に建築確認を受けた建物)のアパートは仲介での売却が難しい一方、買取業者は建替えや用途変更を前提に購入するため、現況のまま売却できます。
Q. 相続人が複数いる場合の手続きは?
相続人全員で遺産分割協議を行い、アパートの帰属先を決めます。全員の合意が得られない場合でも、自分の持分だけを売却する方法もあります。ただし、持分のみの売却は価格が大幅に下がるため、できるだけ全員で合意して一括売却することをおすすめします。
Q. 建物を解体してから売った方が高く売れますか?
ケースバイケースです。解体費用(木造6室アパートで200〜400万円程度)をかけても、更地にした方が高く売れるとは限りません。特に買取の場合、業者は自社で解体・建替えのノウハウを持っているため、現況のまま売却した方が手残りが多くなることがあります。
Q. 相続放棄とどちらが良いですか?
アパートに資産価値がある場合は、売却した方が手残りが得られます。相続放棄はすべての遺産を放棄する手続きのため、アパートだけを放棄することはできません。他の遺産(預貯金等)も含めて総合的に判断する必要があります。相続放棄については相続放棄の判断基準で解説しています。
まとめ
相続アパートは「家賃収入がある」という理由だけで保有し続けると、管理コスト・修繕費・空室リスクが積み重なり、結果的にマイナスになるケースが少なくありません。
判断のポイントは以下のとおりです。
- 実質利回りが3%を下回っている → 売却を検討する価値がある
- 大規模修繕が迫っている → 修繕前に売却した方がトータルでプラスになりやすい
- 空室率が30%以上 → 今後さらに悪化する可能性が高い
- 管理の手間やストレスが大きい → 手放すことで時間と精神的な余裕が生まれる
大切なのは、正確な収支を把握した上で、持ち続けるか・手放すかを冷静に判断することです。
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