相続した空き家に占有者・賃借人がいる場合の売却方法|明渡し手続きと現況買取を解説
相続した空き家を確認したら、誰かが住んでいた。相続前から住み着いていた人が退去してくれない。そんな状況に困っている方に向けて、占有者・賃借人の種類別の対処法と、占有者がいる物件の売却方法をお伝えします。
この記事のポイント — まずここだけ読んでください
- 占有者には「不法占有者」「正規の賃借人」「親族の無断使用」の3パターンがある
- 不法占有者には内容証明→占有移転禁止の仮処分→明渡し請求訴訟の手順が必要
- 正規の賃借人には「正当事由」が必要。立退き料(家賃6か月〜2年分程度)を支払って合意退去が現実的
- 正規の賃借人がいる物件は「オーナーチェンジ」として買取可能な場合あり
- 不法占有者がいる場合でも、状況によっては現況で買取できるケースがある
相続した空き家に占有者がいる3つのパターン
対処法は「占有者がどんな立場にいるか」によって大きく異なります。まず、自分の状況がどのパターンに当てはまるかを確認してください。
パターン1:不法占有者(賃貸借契約なし)
有効な賃貸借契約がないのに建物を使用している状態です。代表的なケースは以下のとおりです。
- 被相続人が亡くなった後、知人や元内縁者が勝手に住み着いた
- 賃貸借契約が終了しているのに退去しない元入居者
- 不法侵入者が長期にわたって占拠している
不法占有者には賃貸借契約上の保護がないため、法的手続きを取れば退去させることができます。ただし、手続きには時間(3〜6か月程度)と費用(弁護士費用込みで50〜100万円程度)がかかります。
パターン2:正規の賃借人(有効な賃貸借契約がある)
被相続人が生前に結んだ賃貸借契約が有効な状態で、入居者が継続して居住しているケースです。賃貸借契約はオーナーが変わっても自動的に引き継がれます(民法第605条の2)。
相続人は新たなオーナーとして賃料を受け取る権利を持つ一方、「売りたいから退去してほしい」という理由だけでは立退きを求めることができません。借地借家法第28条の「正当事由」がなければ、賃借人の意思に反して契約を解除することは難しい状況です。
パターン3:親族の無断使用
被相続人の兄弟・子どもの一人・元配偶者などが、権限なく(または黙認のもと)居住しているケースです。法的には不法占有と同様の扱いになりますが、親族間のトラブルになりやすいため、弁護士を介した対応が特に重要です。
不法占有者への対処法(法的手続きの流れ)
不法占有者を退去させるには、以下の手順で進めるのが一般的です。いきなり鍵を交換したり、荷物を搬出したりすることは自力救済として違法になるため、必ず法的手続きを踏んでください。
STEP 1:内容証明郵便で退去を求める
まず、内容証明郵便(配達証明付き)で退去を求めます。「〇〇年〇〇月〇〇日までに退去してください」と期限を明示します。これは後の裁判手続きでも「退去を求めた事実」として証拠になります。
内容証明の作成は弁護士に依頼することをおすすめします(3〜5万円程度)。
STEP 2:占有移転禁止の仮処分(重要・忘れずに)
明渡し請求の訴訟中に占有者が第三者に占有を移転すると、判決が出ても執行できなくなります。そのため、訴訟提起前または提起と同時に「占有移転禁止の仮処分」を裁判所に申立てることが実務上の定石です。
申立てには担保金(数十万円)が必要ですが、手続き完了後に戻ってきます。
STEP 3:建物明渡し請求訴訟
相手が退去に応じない場合、地方裁判所(物件評価額が140万円以下なら簡易裁判所)に建物明渡し請求訴訟を提起します。弁護士に依頼した場合の着手金・報酬は合わせて30〜70万円程度が目安です。
審理期間は3〜6か月程度ですが、相手が争う場合はさらに長くなることがあります。
STEP 4:強制執行
判決が確定したら、強制執行(執行官による明渡し断行)を申立てます。執行官が現場に赴いて占有者の荷物を搬出し、建物を取り戻します。執行費用(荷物の保管・処分費用など)は15〜30万円程度になることがあります。
| 手続き | 目安期間 | 目安費用 |
|---|---|---|
| 内容証明送付 | 〜2週間 | 3〜5万円 |
| 占有移転禁止の仮処分 | 2〜4週間 | 担保金+手数料 |
| 建物明渡し請求訴訟 | 3〜6か月 | 着手金・報酬30〜70万円 |
| 強制執行 | 1〜2か月 | 15〜30万円 |
| 合計 | 5〜10か月 | 50〜100万円+ |
正規の賃借人への対処法(立退き交渉)
有効な賃貸借契約がある場合、相手方には借地借家法の強力な保護があります。「売りたいから」「自分で使いたいから」という理由だけでは解約できません。正当事由が必要です。
借地借家法第28条の「正当事由」とは
借地借家法第28条では、建物の賃貸借契約を更新拒絶または解約するには「正当事由」が必要と定められています。正当事由として認められやすい例は以下のとおりです。
- 建物が著しく老朽化しており、安全上の問題がある
- 賃料の長期滞納や用途違反などの債務不履行がある
- 建物を取り壊して新たに建て替える合理的な必要性がある
一方、「相続したので売却したい」「管理できない」という理由は、それだけでは正当事由として認められないことが多いです。
立退き料の目安
正当事由が弱い場合でも、立退き料(移転補償費)を支払うことで合意退去を取り付けることが現実的な方法です。立退き料の金額は状況によって大きく異なりますが、実務上の目安は以下のとおりです。
- 居住用(家屋):家賃の6か月〜1年分程度
- 長期居住・生活の根拠が深い場合:家賃の1〜2年分以上になることも
- 転居費用・新居の敷金礼金などの実費も加算されることがある
立退き料の交渉は弁護士に依頼することをおすすめします。不動産会社が賃借人の代理で交渉することは弁護士法第72条に違反するため、法的代理が必要な交渉は弁護士のみが行えます。
占有者がいる空き家の売却・買取の選択肢
占有者がいる状態の物件を売却する場合、大きく3つの選択肢があります。
選択肢1:退去後に仲介で売却
不法占有者や賃借人を退去させてから通常の仲介で売却する方法です。売却価格が最も高くなりやすいですが、退去までの時間・費用が大きくかかります。明渡し手続きに5〜10か月以上かかることも多く、その間の固定資産税・管理費なども負担が続きます。
選択肢2:正規の賃借人がいる状態でオーナーチェンジ買取
有効な賃貸借契約がある場合、賃借人が住んでいる状態のまま「オーナーチェンジ」として買取業者に売却できる場合があります。家賃収入が見込める物件として評価されます。退去を待つ時間・立退き料のコストなしに手放せるため、賃借人との交渉に行き詰まっている場合の現実的な選択肢です。
選択肢3:不法占有者がいる状態での現況買取
不法占有者がいる物件を「現況のまま」買取業者に売却する方法です。買取業者が法的手続きを引き受けてくれるケースがあります。売却価格は下がりますが、自分で弁護士費用・手続き費用を負担せずに手放せるメリットがあります。
| 比較項目 | 退去後→仲介売却 | オーナーチェンジ買取 | 現況(占有あり)買取 |
|---|---|---|---|
| 売却価格 | 最も高い | やや低め | 低め |
| 売却期間 | 1年以上になることも | 最短2〜4週間 | 最短数週間〜 |
| 立退き費用 | 自分で負担 | 不要 | 不要(買取業者が対応) |
| 弁護士費用 | 自分で負担 | 不要 | 不要(業者が対応) |
| 手続きの手間 | 大きい | 小さい | 小さい |
よくある状況と対処の考え方
親が生前に誰かに「タダで住んでいい」と言っていた
口頭での使用許諾(使用貸借)があった可能性があります。使用貸借(民法593条)は、賃貸借と違って強い法的保護はありませんが、「いつまで住んでいいか」という合意の有無によって判断が変わります。証拠が残っていない場合は、弁護士に状況を説明して対応策を相談することをおすすめします。
賃料を長期間もらっていない(無償だった)
被相続人が賃料を受け取っていなかった場合でも、書面上の賃貸借契約があれば法的には有効な賃借権が存続している可能性があります。また、無償使用の場合は使用貸借(民法593条)として扱われることがあり、その場合は借地借家法の保護を受けません。いずれも証拠と経緯によって判断が変わるため、弁護士への相談が必要です。
相続登記が終わっていない
相続登記が完了していない段階でも相談・査定は可能です。ただし、売買契約の前に相続登記を完了させる必要があります。提携の司法書士をご紹介できますので、あわせてご相談ください。なお、2024年4月施行の改正不動産登記法により、相続を知った日から3年以内の相続登記が義務化されています(義務に違反した場合は10万円以下の過料)。
空き家のミカタへご相談ください
空き家のミカタは、占有者・賃借人がいる訳あり不動産の買取にも対応している宅建業者(大阪府知事(1)第65646号)です。「どのパターンに当てはまるかわからない」という段階でも、まずはご相談ください。
- 正規の賃借人(オーナーチェンジ):入居者がいる状態のまま買取に対応
- 不法占有者・占有問題あり:状況を伺った上で対応策をご提案
- 相続登記が未了:提携司法書士をご紹介し、登記と売却を並行して進行
- 最短2〜4週間で現金化(査定は当日〜3営業日以内)
- 仲介手数料ゼロ(直接買取のため)
- 全国対応(拠点:大阪府)
「価格だけ知りたい」「まだ迷っている」という段階でも、ご相談いただけます。
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まとめ
相続した空き家に占有者がいる場合、まず「誰がどんな立場で住んでいるか」を確認することが最初のステップです。
- 不法占有者:内容証明→占有移転禁止の仮処分→明渡し請求訴訟→強制執行の流れ。5〜10か月・50〜100万円以上かかることも
- 正規の賃借人:借地借家法の保護があり「正当事由」が必要。立退き料(家賃6か月〜2年分程度)を支払って合意退去が現実的
- オーナーチェンジ買取:賃借人がいる状態のまま手放す選択肢。立退き費用・弁護士費用を負担せずに売却できる
- 現況買取:状況次第では占有者がいる状態のまま買取できるケースあり
「自分ではどうしようもない」と感じている状況でも、解決策はあります。まずは一度、ご相談ください。
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