介護で貢献した相続人は多く取れる?寄与分の現実と、遺産が不動産だけのときの分け方
介護をした相続人が多く取れる制度は確かにあります(寄与分・民法904条の2)。ただし「特別の寄与」というハードルがあり、同居して世話をしていたというだけでは認められにくいのが実情です。さらに、認められても遺産の中の取り分が増えるだけなので、遺産が実家の不動産だけなら現金は1円も増えません。実務で最後に効いてくるのは「その不動産をどう分けるか」です。空き家のミカタ(宅建業者・合同会社アルシェ)が大阪市24区を中心に無料で査定します。
Q: 親を10年介護した長男は、相続で弟より多く取れますか?
A: 協議または家庭裁判所で「寄与分」が認められれば取り分は増えます。ただし増えるのは遺産の中での取り分であって、遺産が実家の不動産1件だけなら、取り分が増えても手元の現金は増えません。多くの家庭で実際に争点になるのは寄与分の額ではなく、「不動産を売るのか、誰かが取得して代償金を払うのか」という出口の選び方です。
親の介護を長年ひとりで背負ってきた。仕事も減らし、通院にも付き添った。それなのに相続の話し合いになると、何もしなかったきょうだいと同じ取り分だと言われる——。そういうご相談は珍しくありません。
この記事では、介護の貢献が法律上どう評価されるのか(寄与分・特別寄与料)、どこにハードルがあるのか、そして遺産が実家の不動産しかないときにどう分けるのかまでを、不動産を実際に買い取っている立場から順に整理します。
寄与分とは:介護の貢献を相続分に反映させる制度(民法904条の2)
寄与分とは、被相続人(亡くなった方)の財産の維持または増加に特別の貢献をした相続人について、法定相続分に上乗せを認める制度です。民法904条の2第1項は、次のように定めています。
共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。 (出典:e-Gov法令検索・民法)
条文に出てくる貢献のかたちは、次の4つに整理できます。
| 寄与の種類 | 具体例 | 財産との関係 |
|---|---|---|
| 療養看護型 | 親の介護を担い、施設費用やヘルパー費用の支出を抑えた | 支出を抑えた分だけ財産が減らずに済んだ |
| 家業従事型 | 親の事業を無給または低賃金で手伝った | 人件費が浮いた分、財産が維持された |
| 金銭等出資型 | 親の医療費・自宅の修繕費・借金の返済を肩代わりした | 財産の減少を防いだ/増加させた |
| 扶養型・財産管理型 | 生活費を負担した/賃貸物件の管理を無償で行った | 支出を抑えた/賃料収入を維持した |
介護のご相談で関係するのは主に療養看護型です。ここで見落とされがちなのが、寄与分は「大変だったこと」ではなく「その結果、親の財産が減らずに済んだ・増えた」ことを評価する制度だという点です。心情ではなく金額の話に翻訳できるかどうかが分かれ目になります。
寄与分が認められるための3つのハードル
① 相続人であること
寄与分を主張できるのは共同相続人だけです。長男の妻、内縁の配偶者、相続放棄をした人は、どれだけ介護をしていても寄与分の対象外です。このうち長男の妻のように被相続人の親族にあたる人には、後述する特別寄与料の道が残されています。一方、内縁の配偶者は民法上の親族にあたらないため、特別寄与料も請求できません。
② 「特別の」寄与といえること
条文にあるとおり、必要なのは「特別の寄与」です。夫婦・親子・きょうだいには民法上の扶養義務があるため、通常期待される範囲の世話は寄与分になりません。実務では、同居して身の回りの世話をしていた程度では認められにくく、次のような事情があるかどうかが問われます。
- 要介護度が高く、常時に近い介護が必要だった
- 介護のために仕事を辞めた、勤務日数を大きく減らした
- 本来ならヘルパーや施設に払うはずだった費用が、その介護によって浮いた
- 期間が長期にわたっている(数か月ではなく年単位)
③ 無償またはそれに近いこと
親から生活費や「お礼」を継続的に受け取っていた場合、その分は差し引かれます。親の預金から自分の生活費を出していたケースでは、逆に他の相続人から使い込みを疑われ、話し合いがこじれる原因にもなります。
寄与分には上限がある
民法904条の2第3項は、寄与分は「相続開始の時に被相続人が持っていた財産の価額から遺贈の価額を引いた残額」を超えられないと定めています。遺言で財産の大半を誰かに遺贈していた場合、寄与分として取れる枠そのものが小さくなります。
「介護した分を返してほしい」というご相談を受けると、私たちはまず「その介護で、お母さんの通帳はいくら減らずに済みましたか」と伺うようにしています。冷たい質問に聞こえるかもしれません。ただ、家庭裁判所が見るのはそこなんです。感謝の気持ちは調停では数字になりません。逆に、施設の見積書とヘルパーの料金表が残っていれば、それはそのまま主張の材料になります。
相続人ではない人が介護した場合:特別寄与料(民法1050条)
長男の妻が義父母を介護した、というケースは今も非常に多いのですが、妻は相続人ではないため寄与分は主張できません。この不公平を埋めるために2019年7月1日から施行されたのが特別寄与料の制度です(民法1050条)。
被相続人に対して無償で療養看護その他の労務を提供し、財産の維持・増加に特別の寄与をした被相続人の親族は、相続人に対して金銭の支払いを請求できます(相続人・相続放棄をした人・相続欠格や廃除で相続権を失った人は除かれます)。
寄与分と特別寄与料のちがい
| 寄与分(904条の2) | 特別寄与料(1050条) | |
|---|---|---|
| 請求できる人 | 共同相続人 | 相続人以外の親族(長男の妻など) |
| 請求先 | 遺産分割の中で調整 | 相続人に対して金銭を請求 |
| 貢献の種類 | 労務提供・財産給付・療養看護など幅広い | 無償の療養看護その他の労務の提供 |
| 期限 | 遺産分割の中で主張(10年の壁あり・後述) | 相続開始と相続人を知った時から6か月/相続開始から1年 |
| 手続き | 協議 → 寄与分を定める処分調停・審判 | 協議 → 特別の寄与に関する処分調停・審判 |
| 上限 | 遺産の価額から遺贈の価額を引いた残額まで | 同左(1050条4項) |
| 対象となる相続 | 制限なし | 2019年7月1日以降に開始した相続のみ |
期限の短さが最大の注意点です。裁判所の案内でも、特別寄与者が相続の開始と相続人を知った時から6か月を経過したとき、または相続開始から1年を経過したときは申立てができないと明記されています(裁判所「特別の寄与に関する処分調停」)。四十九日や一周忌を終えて落ち着いてから、では間に合わないことがあります。
なお、特別寄与料が確定すると相続税の対象になります。相続税法4条2項により被相続人から遺贈で取得したものとみなされ、申告期限はその事由が生じたことを知った日の翌日から10か月です(同法29条1項)。さらに、特別寄与者は被相続人の配偶者・父母・子ではないことがほとんどなので、相続税額の2割加算の対象になります。
最大の落とし穴:寄与分が認められても、遺産が不動産だけなら現金は増えない
ここが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。
寄与分は遺産の中での取り分を増やす制度であって、遺産の外からお金が振り込まれる制度ではありません。遺産が実家の不動産1件と少額の預貯金という、私たちがもっとも多く見る構成の場合、寄与分が認められても手元の現金は増えないどころか、払うお金が発生することさえあります。
具体的に見てみます。
- 遺産:大阪市内の実家(相続開始時の評価1,800万円)+預貯金200万円=2,000万円
- 相続人:長男(10年間介護)・次男の2人
- 長男の寄与分として300万円が認められたとする
計算は次の順番です。
- みなし相続財産=2,000万円 − 300万円 = 1,700万円
- 法定相続分(各2分の1)= 850万円ずつ
- 長男の相続分=850万円 + 300万円 = 1,150万円/次男=850万円
数字の上では長男の取り分は300万円増えました。ところが、遺産の中身は1,800万円の不動産と200万円の預貯金です。長男が実家に住み続けるために不動産を取得すると、長男は取り分1,150万円に対して1,800万円分を受け取ることになるため、差額650万円を次男に代償金として現金で支払う必要が出てきます(次男は預貯金200万円+代償金650万円=850万円)。
介護のために仕事を減らしてきた人に、650万円の現金があるでしょうか。ここで多くのご家庭が止まります。寄与分の争いに勝っても、代償金が払えなければ遺産分割は終わらないのです。
※ 上の金額は説明のための仮の例です。実際の寄与分の額は協議または家庭裁判所の判断で決まります。
実家しか遺産がないときの4つの出口
行き先は大きく4つです。介護をした側・していない側のどちらにとっても、早い段階でこの4択を家族に見せてしまうほうが話は前に進みます。
| 分け方 | 内容 | 向いているケース | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 換価分割 | 不動産を売り、現金にして分ける | 誰も住まない・住めない実家 | 売却まで時間がかかる/譲渡所得税がかかる場合がある |
| 代償分割 | ひとりが取得し、他の相続人へ代償金を払う | 取得する人に資金がある・住み続けたい | 代償金の原資が要る。払えないと成立しない |
| 現物分割 | 土地を分筆して分ける | 敷地が広く、分けても使える土地 | 大阪市内の狭小地では建物が建てられなくなることが多い |
| 共有 | 持分割合で共有名義にする | (原則おすすめしません) | 売却・賃貸・解体に全員の同意が必要。次の相続で権利者が増える |
実務で最も多い着地は換価分割です。売った代金を分けるのであれば、寄与分の分だけ配分を変えることも協議で合意できます。「実家を売るのは忍びない」という気持ちは当然ありますが、共有のまま放置した実家は、固定資産税と管理の負担だけが毎年発生し、次の相続で権利者がさらに増えます。
「とりあえず共有にしておこう」で終わった遺産分割協議書を、後から何度も見てきました。10年後、その持分を売りたいと相談に来られる頃には、共有者が5人・6人に増えていて、そのうち何人かは連絡先すらわからない。当時いちばん介護をがんばった方が、いちばん動けなくなっているんです。分けにくいから共有にする、ではなく、分けにくいからこそ換価分割で一度現金に変える。私たちが現場で見てきた限り、その方が家族の関係も残ります。
詳しい進め方は代償分割で相続した不動産を解決する方法|代償金が払えないときの対処法と遺産分割協議書の書き方と4ステップ手順もあわせてご覧ください。
話し合いがまとまらないときの手続きと費用
協議で決まらない場合は家庭裁判所の手続きに移ります。介護の寄与が争点になるときは、次の3つを使い分けます。費用はいずれも収入印紙と連絡用の郵便切手だけで、郵便料は裁判所ごとに異なります。
| 手続き | 申立てできる人 | 収入印紙 |
|---|---|---|
| 遺産分割調停 | 共同相続人・包括受遺者・相続分譲受人 | 被相続人1人につき1,200円 |
| 寄与分を定める処分調停 | 特別の寄与をした相続人 | 申立人1人につき1,200円 |
| 特別の寄与に関する処分調停 | 相続人以外の親族(特別寄与者) | 申立人1人につき1,200円(相手方・被相続人が複数の場合は人数分) |
見落としやすい注意点:寄与分だけを申し立てても却下される
寄与分を定める処分の請求は、遺産分割の請求とセットでなければできません。民法904条の2第4項がそう定めており、裁判所の案内も「話合いがまとまらず調停が不成立になった場合には審判手続が開始されますが、遺産分割審判の申立てをしないと不適法として却下される」と明記しています。「まず寄与分だけ決めてから遺産分割の話をしよう」という順番は成り立ちません。
なお、遺産分割調停が不成立になった場合は自動的に審判手続が開始され、裁判官が判断します。調停の実際の流れは遺産分割調停とは?不動産で揉めた場合の流れ・費用・解決策で解説しています。
【期限】2023年の改正で、寄与分に「10年の壁」ができました
見落とされがちですが、これは古い相続を抱えている方にとって最も重要な変更です。
2023年(令和5年)4月1日に施行された改正民法904条の3は、相続開始の時から10年を経過した後にする遺産分割については、寄与分(904条の2)も特別受益(903条・904条)も適用しないと定めました。10年を過ぎると、介護の貢献は主張できず、単純な法定相続分で分けることになります(10年を経過する前に家庭裁判所へ遺産分割を請求していた場合などの例外はあります)。
この規定は改正前に開始した相続にも適用されます。ただし経過措置があり、「相続開始の時から10年を経過する時」と「改正法の施行の時から5年を経過する時」のいずれか遅い時まではまだ主張できます。施行日が2023年4月1日ですので、古い相続の実務上の下限は2028年3月31日ということになります。
- 2020年に親が亡くなった → 2030年まで(相続開始から10年)
- 2005年に親が亡くなり、実家が未分割のまま → 2028年3月31日まで
「実家の名義が祖父のままで、誰も手をつけていない」というご相談は大阪市内でも多く、その多くがこの期限に該当します。相続登記も2024年4月1日から義務化されており、放置の負担は増える一方です(相続登記義務化から2年の実態)。
介護の貢献を主張するために、今から残せる記録
寄与分・特別寄与料のどちらでも、話し合いの場で効くのは記憶ではなく記録です。介護がまだ続いている方も、すでに相続が始まっている方も、次のものを集めておいてください。
- 介護保険の認定通知書・要介護度の記録(介護の必要度を客観的に示せる)
- ケアマネジャーが作成したケアプラン、サービス利用票(誰が何を担っていたかが残る)
- 使わなかったサービスの見積書・料金表(本来かかるはずだった費用=浮いた金額の根拠)
- 立て替えた医療費・おむつ代・修繕費の領収書、振込明細
- 介護のために退職・時短勤務にした証明(離職票、勤務条件変更の記録)
- 介護日誌・通院の付き添い記録(日付と内容がわかるメモで十分)
- 親の預金通帳(出金の説明がつくようにしておく。使い込みの疑いを避けるため)
親の預金から介護費用を出していた場合は、何にいくら使ったかを都度メモしておくだけで、後の疑いを大きく減らせます。きょうだい間の争いは、金額そのものよりも「説明がつかない出金」から始まることが多いためです。
大阪市の実家が遺産に含まれているとき、私たちができること
寄与分の交渉そのものは弁護士や司法書士の領域です。私たちが力になれるのは、その手前と後ろにある「その不動産はいくらになるのか」「本当に売れるのか」という部分です。
- 分ける前提の金額がわからない:代償金の額も換価分割の配分も、不動産の値段が決まらないと計算できません。無料で査定してお伝えします
- 仲介では買い手がつかない実家:築古・狭小・再建築不可・接道が不十分といった大阪市内に多い物件でも、当社は直接買取で対応します
- 共有名義になってしまった:他の共有者の同意が得られない場合、ご自身の持分だけを売る方法があります
- 相続人が遠方・多数で話が進まない:現況のまま(残置物あり・空き家のまま)での買取が可能です
当社は仲介ではなく直接買取のため、仲介手数料はかかりません。査定・ご相談は無料で、査定額をお伝えしたうえでお断りいただいて構いません。
まとめ
- 介護をしても自動的に取り分は増えません。寄与分(民法904条の2)は「特別の寄与」が必要で、扶養義務の範囲内と見られると認められません。相続人以外の親族は特別寄与料(1050条)ですが、6か月・1年という短い期限があります
- 認められても現金は増えません。遺産が実家だけなら、取り分が増えた側がむしろ代償金を払う立場になることもあります。実務の分かれ目は寄与分の額ではなく、換価分割・代償分割・現物分割・共有のどれを選ぶかです
- 10年の壁があります。相続開始から10年を過ぎると寄与分は主張できません。古い未分割の相続は2028年3月31日が実務上の下限です
介護の話も相続の話も、後回しにするほど選択肢が減ります。まずは実家がいくらになるのかを知るところからで構いません。
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