底地売却と相続の整理|争族を防ぐ順番とデメリットを宅建業者が解説【2026年版】
親の土地を相続したら、その上に建っている家が他人の持ち物だった——底地(そこち)の相続は、たいていこの一文から始まります。底地売却と相続の整理は、「何をやるか」より「どの順番でやるか」で手残りが変わります。先に売り先を探して失敗するのではなく、先に権利の中身を確定させ、次に相続人の間で分け方を決め、最後に売り先を選ぶ。この順番が逆になると、後から取り返しにくい形で条件が決まってしまいます。
底地は、地代がほとんど入らないのに固定資産税は毎年かかり、売ろうとしても買い手がつかず、放っておくと次の代でさらに人数が増える資産です。しかも整理には借地人という相手がいるため、こちらの都合だけでは進みません。この記事では、持ち続けるデメリット、争族の引き金、相続税評価額と実勢価格の差、固定資産税の扱い、整理の5つの方法を、借地借家法と国税庁の資料の条文・算式に当てながら順に整理します。
目次

- 底地売却と相続の整理は、着手する順番で手残りが変わります
- 底地とは|相続してはじめて登記簿で知る人がほとんどです
- 相続した底地を持ち続ける5つのデメリット
- 底地の相続で「争族」が起きる3つの引き金
- 底地の相続税評価額の出し方と、実際に売れる金額との差
- 底地の固定資産税は空き家より軽い|住宅用地特例という見落とし
- 底地を整理する5つの方法(メリット・デメリット比較)
- 現場から|大阪・滋賀の底地相談で最初に確認している5点
- 現場から|「借地人に売れた案件」と「売れなかった案件」を分けたもの
- 底地整理の進め方(6ステップ)
- よくあるご質問
- まとめ|底地売却・相続の整理でやることの順番
底地売却と相続の整理は、着手する順番で手残りが変わります
底地売却では、相続した権利の中身を確定させることが最初の作業です。底地の価格は、面積と路線価だけでは決まりません。借地契約が旧法か新法か、存続期間があと何年か、地代がいくらで最後に改定したのはいつか、建物の登記名義が誰か——この5点で、同じ面積の底地でも提示できる金額が何倍も変わります。
順番を間違えると、次のような形で損が確定します。
- 契約書を探さないまま業者に打診し、「地代が相場の10分の1」という事実が査定の後から出てきて、価格が下がる
- 借地人に売却を打診してから相続人の間で意見が割れ、話を止める。一度断った相手には二度目が通りにくくなる
- 相続登記を後回しにしたまま交渉を進め、いざ契約という段で登記が済んでおらず決済できない
やるべき順番は、権利の確定 → 相続人の間での分け方の決定 → 売り先の選択、の3段です。この記事もその順に進みます。なお、相続した底地そのものの処分方法を先に俯瞰したい方は、相続した底地を手放したい|処分・売却の4つの方法もあわせてご覧ください。
底地とは|相続してはじめて登記簿で知る人がほとんどです
底地とは、借地権が設定されている土地を、地主の側から見た呼び方です。土地は自分のもの、建物は借地人のもの、という状態を指します。国税庁の用語では「貸宅地」と呼ばれ、借地権など宅地の上に存する権利の目的となっている宅地と定義されています(国税庁 No.4613 貸宅地の評価)。
底地を理解するうえで押さえておくべき借地借家法の規定は、次のとおりです。
| 条文 | 内容 |
|---|---|
| 第3条 | 借地権の存続期間は30年。契約でこれより長い期間を定めたときはその期間 |
| 第4条 | 更新後の期間は、最初の更新が20年、以後は10年。より長い定めがあればその期間 |
| 第5条 | 期間満了時に借地権者が更新を請求したときは、建物がある場合に限り、従前と同一の条件で更新したものとみなす(地主が遅滞なく異議を述べたときを除く) |
| 第6条 | 第5条の異議は、双方が土地の使用を必要とする事情、従前の経過、土地の利用状況、立退料などの財産上の給付の申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ述べられない |
| 第9条 | この節の規定に反する特約で借地権者に不利なものは無効(強行規定) |
| 第10条 | 借地権は、その登記がなくても、借地権者が登記されている建物を所有していれば第三者に対抗できる |
| 第11条 | 公課の増減・土地価格の変動・近傍類似の地代等との比較で地代が不相当になったときは、当事者は将来に向かって地代等の増減を請求できる。ただし一定の期間増額しない旨の特約があるときはその定めに従う |
| 第13条 | 借地権の存続期間が満了した場合において、契約の更新がないときは、借地権者は地主に対し、建物などを時価で買い取るよう請求できる |
この表から読み取っていただきたいのは、地主の側から借地契約を終わらせるのは、法律上きわめて難しいという一点です。期間が満了しても建物があれば更新され、更新を拒むには正当の事由が要り、そのうえ更新がないなら建物を時価で買い取れと請求される可能性があります。「期間が切れたら返してもらえる」という前提で相続の計画を立てると、まず崩れます。
さらに注意が要るのが、借地借家法の附則第6条です。同法の施行前に設定された借地権に係る契約の更新については、なお従前の例によると定められています。つまり旧借地法の時代に始まった借地契約は、更新に関して今も旧法のルールで動きます。相続で引き継ぐ底地は、親や祖父母の代に契約が始まったものが大半ですから、契約書の日付を見ずに新法の感覚で判断するのは危険です。
相続した底地を持ち続ける5つのデメリット
底地を持ち続けることには、はっきりしたデメリットがあります。しかもそのほとんどが、時間が経つほど重くなる種類のものです。
1つ目は、収益性が固定資産税に追いつかないことです。昭和の時代に決まった地代がそのまま続いている底地では、年間の地代が固定資産税と都市計画税の合計を下回っていることがあります。この状態は、資産というより毎年出ていく費用です。
2つ目は、地代の値上げがすぐには効かないことです。借地借家法第11条は、租税その他の公課の増減、土地価格の上昇や低下その他の経済事情の変動、近傍類似の土地の地代等との比較で地代が不相当になったときに、契約の条件にかかわらず将来に向かって増減を請求できると定めています。ただし同条は続けて、増額について協議が調わないときは、請求を受けた側は増額を正当とする裁判が確定するまで「相当と認める額」を支払えば足りる、としています。裁判が確定したときに既払額に不足があれば年1割の利息を付けて支払う定めはありますが、そこに至るまでの期間、入金額は借地人が決めた額のままです。さらに同条第1項にはただし書きがあり、一定の期間地代等を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従うとされています。古い借地契約にこの不増額特約が入っていることがあるため、値上げを検討する前に契約書の条項を確認してください。
3つ目は、自分の判断だけでは動かせないことです。借地人が建物を建て替えたい、第三者に売りたい、といった場面で地主の承諾が問題になりますが、承諾しなければ止まる、というものでもありません。借地借家法第19条により、借地権者の申立てで裁判所が承諾に代わる許可を出す道があり、第20条では、競売や公売で建物を取得した第三者も、代金を支払った後2か月以内に限って同じ申立てができます。地主が持っているのは拒否権ではなく、条件を交渉する立場だと考えたほうが実態に近いです。
4つ目は、売却先が限られることです。底地は、自由に使えない土地です。買った人がすぐに建物を建てられるわけでも、更地にして転売できるわけでもありません。一般の不動産市場では買い手がつきにくく、扱える業者も限られます。
5つ目は、次の相続で人数が増えることです。底地を共有のまま次の代に渡すと、地代の受け取り、値上げ交渉、売却のすべてに共有者全員の関与が必要になります。人数が増えるほど、全員の合意で動かすことが難しくなります。共有になった不動産をどう解くかについては、共有持分の買取・売却方法で別に整理しています。
底地の相続で「争族」が起きる3つの引き金
底地は、相続人の間で争族が起きやすい資産です。理由は、価値がはっきりせず、しかも分けにくいからです。
引き金の1つ目は、相続税評価額と実際の価値の差です。後で詳しく書きますが、貸宅地の相続税評価額は「自用地としての価額−自用地としての価額×借地権割合」で算出します。借地権割合が60%の地域なら、評価額は自用地価額の40%です。ところがこの評価額は、税金を計算するための金額であって、その値段で買う人がいるという意味ではありません。「相続税では4,000万円と評価された土地」を引き継いだ相続人と、現金や上場株を受け取った相続人が同じテーブルにいるとき、片方は4,000万円もらったと思い、片方は売っても半分にならない土地を押し付けられたと思う。この認識のずれが、話し合いを止めます。
引き金の2つ目は、共有での相続です。「とりあえず全員で法定相続分どおりに」という分け方は、その場は収まりますが、問題を先送りするだけです。事故物件を相続して分割するときと同じで、扱いづらい不動産こそ、単独取得と代償金の組み合わせで決着させておくほうが後が楽になります(事故物件の扱いは事故物件 完全ハブにまとめています)。
引き金の3つ目は、期限が二重に走ることです。相続税の申告と納税は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内です(国税庁 No.4205)。相続登記は、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に申請する義務があり、遺産分割で取得した場合は遺産分割の日から3年以内に別途申請が必要です。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります。義務化は2024年4月1日からで、施行前に相続を知った不動産については2027年3月31日までが期限です(法務省「相続登記の申請義務化についてのよくある質問」)。借地人との交渉に半年かけているうちに、この期限が近づいてきます。
話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所の調停という道があります。裁判所は相続に関する調停として、遺産分割調停のほか、遺産の有無・範囲・権利関係に争いがある場合の遺産に関する紛争調整調停を用意しています。ただし調停は月に1回程度の期日を重ねる手続きで、時間はかかります。使わずに済むなら、そのほうがよい。遺産分割協議書の作り方は遺産分割協議書の書き方をご覧ください。
底地の相続税評価額の出し方と、実際に売れる金額との差
借地権の目的となっている宅地の相続税評価額は、次の算式で求めます。
自用地としての価額 − 自用地としての価額 × 借地権割合
これが国税庁 No.4613「貸宅地の評価」に示された算式です。同ページには、借地権の取引慣行がないと認められる地域にある貸宅地を評価する場合には、借地権割合を20パーセントとして計算する、という注記もあります。
借地権割合は、国税庁の路線価図で確認します。路線価図の説明によれば、路線価の右隣に付されたA〜Gの記号がそのまま借地権割合を表し、A:90%、B:80%、C:70%、D:60%、E:50%、F:40%、G:30%です。路線価は1平方メートル当たりの価額を千円単位で表示しているので、たとえば「215D」と記載されていれば、路線価が215,000円/平方メートル、借地権割合が60%という意味になります。
150平方メートルの底地で、路線価が「215D」の場所にあると仮定します(奥行価格補正などは考慮しない単純計算です)。
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 自用地としての価額 | 215,000円 × 150平方メートル | 32,250,000円 |
| 借地権の価額 | 32,250,000円 × 60% | 19,350,000円 |
| 貸宅地(底地)の評価額 | 32,250,000円 − 19,350,000円 | 12,900,000円 |
相続税では約1,290万円と評価されます。では1,290万円で売れるのかというと、そうはなりません。底地の実勢価格は「誰に売るか」で階段状に変わります。
| 売り先 | 価格の傾向 | 理由 |
|---|---|---|
| 借地人 | 高くなりやすい | 底地と借地権が一つになり、制約のない完全な所有権に戻る。借地人にとっての値打ちが最も大きい |
| 借地権者と共同で第三者へ(同時売却) | 更地に近い価格を全体で得て、割合で配分 | 買主は制約のない土地を買えるため、市場価格に近づく |
| 第三者(投資家・買取業者) | 相続税評価額を下回ることが多い | 地代収入が薄く、交渉と時間のリスクを買主が負う |
つまり相続税評価額は、遺産分割の話し合いで使う「参考値の一つ」であって、手残りの予測ではありません。分け方を決める前に、想定売却価格帯を別に出しておく。これをやるかどうかで、話し合いの荒れ方が変わります。
なお、定期借地権等の目的となっている宅地は評価方法が異なります。国税庁 No.4613 によれば、原則としてその宅地の自用地としての価額から定期借地権等の価額を控除した金額で評価し、そうして評価した金額が「自用地としての価額−自用地としての価額×残存期間に応じた割合」を上回る場合に限って、後者の算式で求めた金額を評価額とします。残存期間に応じた割合は、5年以下が5%、5年超10年以下が10%、10年超15年以下が15%、15年超が20%です。あくまで評価額の上限を画す従たる算式であって、原則の計算方法ではありません。
ここでいう定期借地権等は、借地借家法第22条から第25条までに定める借地権を指します。存続期間を50年以上として設定するのは第22条の定期借地権で、更新も建物買取請求もない形にできると同条が定めており、公正証書による等書面によることが要件です。同じ「定期借地権等」でも、第23条の事業用定期借地権等や第24条の建物譲渡特約付借地権は年数の要件が異なります。いずれにせよ、親や祖父母の代に結ばれた古い借地契約とは性質がまったく違います。
底地の固定資産税は空き家より軽い|住宅用地特例という見落とし
意外に知られていないのですが、底地の固定資産税は、同じ広さの空き家の敷地より軽くなることがよくあります。
地方税法第349条の3の2は、専ら人の居住の用に供する家屋の敷地の用に供されている土地(住宅用地)について、固定資産税の課税標準を価格の3分の1とし、そのうち小規模住宅用地に当たる部分については6分の1とすると定めています。ここで判定の基準になっているのは「敷地の用に供されているか」であって、その家屋を誰が所有しているかではありません。借地人が自分の家を建てて住んでいる底地は、地主から見れば他人の家が建っている土地ですが、固定資産税の上では住宅用地です。
小規模住宅用地の範囲は、住居の数で変わります。同条第2項は、面積200平方メートル以下の住宅用地はその全部を小規模住宅用地とし、200平方メートルを超える住宅用地については、面積をその土地の上に存する住居の数で割った面積が200平方メートル以下ならその全部を、超えるなら200平方メートルに住居の数を掛けた面積までを小規模住宅用地とすると定めています。戸建てが1戸なら200平方メートルまでが6分の1ですが、長屋やアパートが建つ底地では、200平方メートル×戸数までが6分の1の対象になります。相続した底地に長屋が建っている場合、この戸数の数え方を確認せずに税額を見積もると、負担を過大に見積もることになります。
一方で、空き家を相続して固定資産税の減免制度を探している方は多いのですが、空き家の敷地には逆の話が待っています。同じ条文の括弧書きは、空家等対策の推進に関する特別措置法第13条第2項により所有者等に勧告がされた管理不全空家等と、同法第22条第2項により勧告がされた特定空家等の敷地を、住宅用地から除くと定めています。勧告を受けた時点で6分の1の特例が外れ、課税標準が一気に上がります。空き家を相続したときの固定資産税の負担が「6倍になる」と言われるのは、この仕組みによるものです(詳しくは空き家の固定資産税6倍を比較、空き家の固定資産税が払えないときをご覧ください)。
ですから、底地と空き家を両方相続した方が「どちらを先に手放すか」で迷ったとき、税負担だけを基準にするなら、多くの場合は空き家のほうが先です。ただし底地は、整理に必要な交渉期間が長いという別の問題を抱えています。税負担で急ぐのは空き家、時間で急ぐのは底地——この整理をしておくと、順番が決めやすくなります。
底地を整理する5つの方法(メリット・デメリット比較)
底地の整理には、大きく5つの方法があります。それぞれのメリットとデメリットを並べます。
| 方法 | メリット | デメリット | 向いている状況 |
|---|---|---|---|
| ①借地人へ売却 | 価格が最も高くなりやすい。交渉相手が1人で済む | 借地人に資金と意思が必要。断られると次が難しい | 借地人が高齢で、子が家を建て替えたい意向を持っている |
| ②借地権を買い取る(底地に統合) | 完全な所有権になり、更地としての価格で売れる | まとまった資金が要る。借地人が手放す意思を持っていることが前提 | 手元資金があり、更地の需要が強い立地 |
| ③等価交換(一部借地権と一部底地の交換) | 双方が制約のない土地を手にできる。現金の移動が小さい | 分筆と測量が必要。土地が狭いと成立しない | 一定の広さがあり、分けても双方が使える形になる |
| ④借地人と共同で第三者へ同時売却 | 全体を市場価格に近い金額で売れる | 借地人の合意が必須。配分の話し合いが要る | 借地人も建物の維持に困っており、双方が出口を求めている |
| ⑤買取業者へ売却 | 借地人の合意なしで進められる。時期を自分で決められる | 価格は他の方法より低くなる | 相続税の納税期限が迫っている、相続人の間で早期の決着が必要 |
この5つは、上から順に「高く売れるが相手の合意が要る」順に並んでいます。①②③④は借地人という相手の同意が前提で、⑤だけがこちら側で決められます。ですから現実の進め方は、①から④のどれかを一定の期限を切って試し、動かなければ⑤に切り替える、という形になります。期限を切らずに交渉を続けると、相続税の申告期限も相続登記の期限も過ぎていきます。
なお、底地ではなく借地権(建物側)を相続した方は、借地権付き建物の売却方法、地主から建物買取請求を受けた・したい方は借地の返還と建物買取請求に、それぞれ別に整理してあります。
現場から|大阪・滋賀の底地相談で最初に確認している5点
当社が大阪市24区を中心に底地のご相談をお受けするとき、また滋賀方面の物件についてお問い合わせをいただいたとき、査定より先に確認しているのは次の5点です。上位に出てくる解説記事にはあまり書かれていない、実務側の順番です。
1. 土地賃貸借契約書が現物であるか、ないか。これが最初です。契約書がある底地とない底地では、進め方がまったく違います。ないときは、通帳の地代入金記録を何年分さかのぼれるかを確認します。入金の事実が長期間続いていれば、契約書がなくても借地権の存在は動きません。
2. 地代の最終改定がいつか。10年以上据え置かれている底地は珍しくありません。ここが分かると、借地人との交渉で何を材料にできるかが見えます。
3. 建物の登記名義と、実際の居住者が一致しているか。契約書上の借地人がすでに亡くなっていて、相続登記もされていない、というケースが一定数あります。この場合、交渉相手を特定する作業から始まります。
4. 建物が現に使われているか。借地人側の建物が空き家になっている底地は、実は整理の好機であることが多いです。借地人にとっても維持費だけがかかる状態なので、同時売却や借地権の買い取りに応じてもらえる余地があります。
5. 相続人が何人で、全員と連絡が取れているか。ここが取れていない状態で査定額だけ出しても、意思決定に進めません。連絡が取れていない相続人がいる場合は、その解決を先に置きます。
この5点のうち3つ以上が「分からない」という状態でご相談いただくことも多く、それでまったく構いません。むしろ分からないまま業者に売却を打診すると、交渉の材料を持たないまま条件を決めることになりますので、調べる前の段階でお声がけいただくほうが動きやすくなります。
現場から|「借地人に売れた案件」と「売れなかった案件」を分けたもの
底地の整理でいちばん高く決着するのは借地人への売却ですが、成立するかどうかを分けているのは、価格の巧拙ではありません。実務で見ている限り、分かれ目は次の3つです。
第一に、借地人側に「建て替えたい」という具体的な事情があるかどうか。建物が古くなり、子が建て替えを考えている——このタイミングの借地人は、底地を買う動機がはっきりしています。建て替えには地主の承諾が要り、承諾料も発生しますから、いっそ底地ごと買って完全な所有権にしたい、という判断につながります。逆に、当面建て替える予定がない借地人に「買いませんか」と持ちかけても、動機がないので進みません。
第二に、最初の打診で価格の根拠を示せているかどうか。「うちの底地を買いませんか、○○万円で」とだけ伝えると、借地人には高いか安いか判断できません。路線価と借地権割合、その土地の自用地としての価額、底地と借地権が一つになったときの価値——この3点を紙にして渡すと、話が具体的になります。断られる場合も、理由がはっきり返ってきます。
第三に、断り文句の中身を確かめたかどうか。「今は買えない」には、資金がない・時期が悪い・相場が分からない、の3種類があります。資金がないなら分割や一部売却の余地がありますし、時期が悪いだけなら期限を切って待つ判断があり得ます。断られた時点で交渉を終わらせてしまい、その3か月後に買取業者へ安く売った——という順番は、確かめれば残っていたはずの選択肢を落としています。
相続したアパートの売却でも同じことが起きます。入居者や管理会社との関係を確かめる前に売り急ぐと、本来ついた価格がつきません(相続したアパートの買取)。
底地整理の進め方(6ステップ)
ここまでの内容を、実際に手を動かす順番に並べ直します。
ステップ1:登記事項証明書と公図で、底地の範囲と権利の中身を確定する。法務局で土地の登記事項証明書・公図・地積測量図を取得します。賃借権や地上権の登記があるかを見ますが、借地権は登記されていないほうが多数派です。借地借家法第10条により、借地権者が登記された建物を所有していれば、借地権の登記がなくても第三者に対抗できるためです。土地の登記に何も出てこないからといって、借地権がないとは判断できません。
ステップ2:契約書・地代の入金記録・納税通知書を集める。契約書の日付、存続期間、地代の額と改定履歴、更新料の定めを確認します。固定資産税の納税通知書では、その土地に住宅用地特例が適用されているかを見ます。
ステップ3:借地人が誰で、建物に誰が住んでいるかを現地で確認する。建物の登記事項証明書も取り、名義人と居住者を照合します。
ステップ4:相続税評価額と、想定売却価格帯を別々に出す。評価額は路線価図から計算し、売却価格帯は借地人・第三者・買取業者の3通りで見積もります。
ステップ5:相続人の間で「どう整理して分けるか」を決める。誰が単独で取得し、その代わりに他の相続人が何を受け取るかを遺産分割協議書に明記します。相続登記はここで完了させます(相続登記の進め方)。
ステップ6:借地人への打診と、並行して買取業者の査定を取る。下限が分かった状態で交渉に臨むと、判断が早くなります。全体の時間の目安は相続不動産の売却スケジュールもご参照ください。
よくあるご質問
Q. 借地人と何十年も会っていません。急に連絡して大丈夫でしょうか。
A. 問題ありません。ただし最初の連絡で売却を切り出すより、相続で名義が変わった旨の通知から入るほうが、話が穏やかに進みます。地代の振込先変更の連絡は、いずれにせよ必要になります。
Q. 底地を相続放棄すれば、この問題から解放されますか。
A. 相続放棄は特定の財産だけを選んで放棄することができず、預貯金など他の財産もすべて放棄することになります。また放棄には原則として熟慮期間の制限があります。底地が負担であっても、他に価値のある財産があるなら、放棄ではなく整理で解くほうが現実的です。
Q. 相続人が複数いる場合、底地は共有にしないほうがよいのですか。
A. できるだけ避けることをおすすめします。共有にすると、地代の受け取りも値上げ交渉も売却も、共有者の関与が必要になります。単独取得と代償金の組み合わせで決着させるほうが、後の手間が小さくなります。
Q. 借地人が地代を滞納しています。契約を解除できますか。
A. 滞納の事実があっても、借地契約の解除には信頼関係が破壊されたと言えるだけの事情が必要とされており、1〜2か月の遅れで直ちに解除できるものではありません。滞納の記録を残したうえで、弁護士にご相談ください。
Q. 底地を売ったら税金はどうなりますか。
A. 譲渡所得として課税されます。取得費が分からない場合の扱いや、相続税の一部を取得費に加算できる特例の適用可否は、個別の事情で変わります。税額の判断は税理士にご確認ください。
まとめ|底地売却・相続の整理でやることの順番
最後に、この記事の要点を順番に並べます。
- 権利の中身を先に確定させる。契約書・地代の入金記録・建物の登記名義・借地人の所在。この4点が揃うまで、売却の打診はしない
- 相続税評価額と実勢価格を別々に出す。貸宅地の評価額は「自用地としての価額−自用地としての価額×借地権割合」であって、その額で売れる保証ではない
- 相続人の間では「共有」ではなく「単独取得+代償」で決着させる。共有は問題を次の代に送るだけ
- 期限から逆算する。相続税の申告は10か月、相続登記は3年。借地人との交渉には期限を切る
- ①借地人へ売却から④同時売却までを試し、動かなければ⑤買取に切り替える。断り文句の中身を確かめずに次へ進まない
- 固定資産税だけで急がない。底地には住宅用地特例が効いていることが多く、勧告を受けた空き家の敷地とは負担の構造が違う
底地は、放っておいても悪くなるだけの資産です。地代は上がらず、固定資産税は続き、相続人は増えます。いま動ける人が一人でもいるうちに整理する——底地について当社がお伝えしているのは、この一点です。
無料査定・ご相談はこちらから
「親から底地を相続したが、借地人が誰なのかも分からない」「契約書が見つからない」「相続人の間で分け方が決まらない」——その段階のご相談を歓迎しています。査定は無料で、査定を受けたからといって売却の義務は生じません。
空き家のミカタは、大阪市生野区に事務所を構える宅地建物取引業者です(大阪府知事(1)第65646号)。大阪市24区の空き家・長屋・再建築不可物件・共有持分・底地を専門に扱っており、契約書がない・借地人と連絡が取れていない・相続登記が終わっていないという状態でも査定にお応えできます。当社が買主として直接買い取る場合は、仲介手数料はいただきません(借地人の方への売却や第三者との同時売却を当社が媒介する形になる場合は、宅地建物取引業法に基づく報酬をいただくことがあります。ご相談の段階で費用の有無をお伝えします)。なお、地代の増額請求や契約解除など法律事務の代理は弁護士へ、登記の代理申請は司法書士へ、譲渡所得の申告と税額の判断は税理士へご確認ください。お手伝いできるのは、その底地をいくらで、どういう順序で手放せるかという部分です。
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出典(2026年9月7日確認)

- 借地借家法(存続期間=第3条/更新後の期間=第4条/更新請求=第5条/更新拒絶の要件=第6条/強行規定=第9条/対抗力=第10条/地代等増減請求権=第11条/建物買取請求権=第13条/賃借権の譲渡・転貸の許可=第19条/建物競売等の場合の許可=第20条/定期借地権=第22条/更新に関する経過措置=附則第6条)
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本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案についての法律・税務の判断を行うものではありません。具体的な手続きや税額については、弁護士・司法書士・税理士にご確認ください。