片付けないでご相談ください|実家7つの状態別・手残り比較
「この状態で不動産屋を呼んだら、呆れられるのではないか」「値段がつかないと言われて、恥をかくのではないか」。そう思って何年も止まっている——このご相談を、私たちは毎月お受けしています。
先に結論をお伝えします。片付けないでご相談ください。汚れているかどうかは、私たちが金額を出すうえでの前提であって、判断の材料ではありません。
そして、これは気づかいの言葉ではなく、費用の話です。片付けを先に済ませると、同じ費目を二度払うことになりやすい。この記事では、残置物・ゴミ・動物臭・害虫・雨漏り・シロアリ・庭木の越境という7つの状態について、先に片付けた場合とそのままご相談いただいた場合で、手元に残る金額がどう変わるかを並べて整理します。
片付けが手残りを減らすのは、費用を払う順番が理由です
買取の金額は、再販できる見込みの金額から、その物件を商品に戻すためにかかる原価を差し引いて組み立てます。残置物の処分費は、その原価の一項目です。
ここで数字を2つ並べます。解体工事の見積りに残置物処分費として計上される金額は、戸建て一軒あたり10〜30万円が目安です。一方、相続人ご自身が遺品整理業者へ発注した場合は、1LDKで15〜30万円、3LDKで40〜80万円という帯になります。
同じ「家の中を空にする」作業なのに金額が違うのは、解体を前提とする現場では、家財を分別して運び出すのではなく、建物と一緒に壊して混合廃棄物として処分するためです。作業の中身がそもそも違います。
つまり、先に片付けをしていただいても、買取価格に上乗せできるのは私たちの側で消えた原価、つまり10〜30万円のほうです。40〜80万円を払ってから10〜30万円が戻る形になり、差額は持ち出しになります。
なお、片付けが金額を押し上げる物件もあります。そのまま住宅として再販できる建物の場合です。ご自身の物件がどちらのタイプかは、外から見ただけでは判断が難しいところですので、片付けの見積りを取る前に一度お尋ねいただくのが確実です。
7つの状態別|先に片付けた場合と、そのままご相談いただいた場合
| 状態 | 先に手を打つと出ていくお金 | そのままご相談いただいた場合 |
|---|---|---|
| ① 残置物(家具・家電・仏壇) | 遺品整理 1LDK 15〜30万円/3LDK 40〜80万円 | 解体同時処分として10〜30万円を価格に反映 |
| ② ゴミの堆積 | 量に応じて上振れ。搬出人工が加算されやすい | 量を見て処分費を積算。金額は下がるが取引はできる |
| ③ 動物臭(多頭飼い・糞尿) | 消臭・床下地交換の費用が読みにくい | 解体前提なら価格への影響は限定的 |
| ④ 害虫の発生 | 駆除費に加え、再発すれば二度目の発注 | 解体・改修と同時に処理するため単独では計上しない |
| ⑤ 雨漏り | 屋根の修繕は足場を伴い高額化しやすい | 告知いただければ織り込んで査定。減額の蒸し返しなし |
| ⑥ シロアリ | 駆除は軽度で15〜30万円、重度は100万円超 | 建物価値をゼロとみなす査定なら価格差は小さい |
| ⑦ 庭木の越境・雑草 | 伐採後も数か月で再び伸びる | 隣地との関係を含めて引き受ける前提で査定 |
① 残置物(家具・家電・仏壇)
もっとも多いご相談です。家財に片付けの法的義務はなく、残ったまま引き渡す契約が可能です。仏壇についても、閉眼供養だけご自身で済ませていただき、あとは物として処分する形をとれます。詳しくは相続した家に残る車・骨董品・家電はどうする?で整理しています。
② ゴミの堆積
ゴミの量は査定に効きます。ただし効くのは処分費の実額であって、「こんな家は扱えない」という判断にはなりません。堆積が進み、周囲に臭気や害虫が及んでいる場合、空家等対策の推進に関する特別措置法2条2項が定める特定空家等(著しく衛生上有害となるおそれのある状態など)に近づいていきます。放置している時間のほうが、片付けていないことよりも損失を生みます。
③ 動物臭
猫や犬の多頭飼いによる糞尿の臭いは、床材の下地や土台まで染みるため、清掃だけでは戻らないことがあります。裏を返せば、先に消臭を発注しても解決しきらない項目です。解体を前提とする物件であれば、臭いは価格を大きく左右しません。
④ 害虫
住む人がいなくなった家で発生しやすい項目です。駆除を先に発注しても、原因である堆積物や湿気が残っていれば再発します。先に駆除するより、出口を決めてから一度で処理するほうが費用は少なくて済みます。
⑤ 雨漏り
修繕は屋根足場を伴い、金額が読みにくい工事です。そして、雨漏りは告知が必要な不具合にあたります。売主が知っている不適合を告げないまま売ると、民法562条により買主から修補や代金減額を求められることがあります。宅地建物取引業法47条1号も、重要な事項について故意に事実を告げない行為を禁じています。買取では雨漏りを織り込んで金額を出しますので、先に申告いただいたことが後から減額の理由になることはありません。
⑥ シロアリ
駆除費は軽度で15〜30万円、被害が構造まで及ぶと100万円を超えることもあります。ただし築年数の経った木造では、建物の価値をゼロとして土地の価格で評価する査定になることが多く、その場合シロアリの有無で金額はあまり動きません。駆除の見積りを取る前に、その物件が建物込みの評価なのか土地評価なのかをご確認ください。
⑦ 庭木の越境・雑草
隣家から「枝が越えている」と言われて動けなくなっている方が多い項目です。ここは法律が変わっています。民法233条3項により、竹木の所有者に切除するよう催告したにもかかわらず相当の期間内に切除しないときなどは、隣地の所有者が自分で枝を切り取れるようになりました(所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直しによる改正)。
また、枝や幹が倒れて損害が出た場合は、民法717条2項により竹木の栽植または支持の瑕疵として所有者が賠償責任を負う可能性があります。さらに空家等対策の推進に関する特別措置法13条は、そのまま放置すれば特定空家等になるおそれのある空家等を「管理不全空家等」として、市町村長が立木竹の伐採を含む措置を指導・勧告できると定めています。勧告を受けると、地方税法349条の3の2により住宅用地の課税標準の特例から除かれ、固定資産税の負担が上がります。
伐採しても数か月で伸び戻ることを考えると、切るより手放すほうが早いケースは少なくありません。越境の実務は越境している不動産の売却方法にまとめています。
写真も掃除も不要です。外観と登記情報だけで一次判断ができます
「まず室内の写真を送ってください」と言われて、そこで止まってしまう方がいらっしゃいます。撮りに行く時間がない、撮った写真を見せるのが気が重い、どちらの理由でも構いません。写真がなくても、金額の幅はお出しできます。
一次判断に使うのは、次の情報です。
- 物件の所在地(住居表示か、固定資産税の課税明細に載っている地番)
- 土地の形と接道の状況(公図・地図で確認できます)
- 登記事項証明書の内容(面積・構造・築年・抵当権の有無)
- 固定資産税の課税明細または名寄帳の評価額
いずれも室内に入らずに確認できるものばかりです。建物の傷み具合は、外観からある程度読み取れます。室内の状態は、この一次金額から処分費や修繕費を差し引く段階で使う情報であって、相談を始めるために必要な情報ではありません。
課税明細が見つからない場合でも、名寄帳(固定資産課税台帳)を相続人の立場で取得できます。大阪市であれば市税事務所が窓口です。書類が揃うのを待つ必要もありません。
片付けないでください。ただし「捨てないでほしいもの」があります
ここまでとは逆向きのお願いが1つだけあります。次のものは捨てずに残しておいてください。
- 権利証(登記識別情報通知)
- 購入したときの売買契約書・領収書(譲渡所得の取得費の根拠になります)
- 建築確認済証・検査済証・確定測量図
- 火災保険の証券
- 通帳・印鑑
- ご家族の写真、形見にしたいもの
売買契約では、残置物の所有権を放棄して引き渡す旨の特約を入れます。引き渡し後に取り戻すことは実務上できませんので、持ち出すものは契約前に決めていただくことが大切です。中をご一緒に見て回りながら決める形でも進められます。
とくに購入時の売買契約書は、売却益の計算に直結します。取得費が分からないと売却代金の5%で計算せざるを得ず、税負担が増えることがあります。段ボール1箱でかまいませんので、書類だけは避難させてください。
先に手を打ったほうがいい例外は2つだけです
片付けを止めていただく話をしてきましたが、例外もお伝えしておきます。
1つ目は、崩落や飛散が起きそうな部分がある場合です。屋根材や外壁が今にも落ちそう、ブロック塀が傾いている、といった状態は、通行人や隣家に実害が出る可能性があります。ここは費用の損得の話ではありませんので、応急の措置を優先してください。市町村から指導・勧告を受けている場合も同じです。管理不全空き家に指定されたら?固定資産税の変化と売却で解決する3ステップにまとめています。
2つ目は、そのまま住宅として再販できる状態の建物である場合です。この場合は室内の印象が価格に反映されますので、片付けやハウスクリーニングが金額に効くことがあります。ただし、これも先に金額を確認してから判断していただく順番は変わりません。
よくあるご質問
Q. 相談したら、必ず売らないといけませんか。
いいえ。金額をお伝えするところまでで終わっていただいて構いません。査定は無料で、売却を強制することはありません。
Q. 遠方に住んでいて、現地に行けません。
現地に来ていただかなくても進められます。私たちが外観を確認し、登記情報と合わせて金額をお出しします。
Q. 兄弟の同意がまだ取れていません。
その段階でのご相談も承っています。金額が分からないまま話し合うと結論が出にくいため、先に数字をご覧いただくほうが進みやすいです。詳しくは相続した家、まだ相談していい?7つの状態別チェックをご覧ください。
Q. 近所に知られたくありません。
看板の設置や近隣への聞き込みは行いません。外観の確認も、通常の通行と変わらない形で行います。
まとめ
- 片付けないでご相談ください。解体前提の物件では、片付けの費用が買取価格にほとんど残りません
- 個人発注の遺品整理(3LDKで40〜80万円)と、解体同時処分(一軒10〜30万円)では単価が違います。先に払うと差額が持ち出しになります
- 写真も掃除も不要です。所在地・接道・登記事項証明書・課税明細だけで一次金額をお出しできます
- 捨てないでいただきたいのは、権利証・購入時の売買契約書・測量図・保険証券・通帳・形見です
無料でご相談・査定を承ります
「家の中がひどい状態で、人に見せられない」——その状態のままで結構です。私たちは訳あり不動産を専門に扱っており、片付いていない物件を見慣れています。金額だけ知りたいという段階のご相談を歓迎しています。
大阪市24区を中心に、空き家・再建築不可・長屋・共有持分などの訳あり不動産を扱っています。家財が残ったまま・現況のままで査定にお応えします。秘密厳守で対応し、遠方にお住まいの相続人の方からのご相談も承ります。なお、相続放棄の手続きは司法書士または弁護士へ、相続税の申告は税理士へご相談ください。当社は不動産の売買を担当します。
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出典:民法233条・562条・717条(e-Gov法令検索)/宅地建物取引業法47条(e-Gov法令検索)/空家等対策の推進に関する特別措置法2条・13条・22条(e-Gov法令検索)/地方税法349条の3の2(e-Gov法令検索)/法務省「所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し」。費用の金額は当社が大阪市内でお受けした相談での目安であり、物件・業者により異なります。制度の内容は2026年8月時点のものです。個別の判断は各専門家にご確認ください。
画像クレジット: 冒頭「ギンザヤ隣家」by m-louis(CC BY-SA 2.0)/本文「Garbagehouse」by ウィキシー(パブリックドメイン)/本文「Akiya in Tabuse 2026」(CC BY 4.0)。いずれもWikimedia Commonsより。