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取得費加算の特例|相続税の一部が経費になる3年10か月の期限と計算式【2026年版】

空き家のミカタ編集部|宅地建物取引業者(大阪府知事(1)第65646号)
相続した不動産の売却で、取得費加算の特例を使ったときの譲渡所得税を電卓と書類で計算している様子

取得費加算の特例とは、相続税を払った人が相続した不動産を一定期間内に売ったとき、その相続税の一部を譲渡所得の「取得費」に足せる制度です(租税特別措置法39条)。取得費が増えれば譲渡所得が減りますので、その分だけ譲渡所得税と住民税が下がります。

そして使える期限は、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで。相続開始からおよそ3年10か月です。1日でも過ぎると、この特例は使えません。

「相続税を払ったばかりなのに、売ったらまた税金がかかるのか」と感じる方は多くいらっしゃいます。取得費加算は、まさにその二重の負担をやわらげるために設けられた制度です。ただし、相続税を1円も払っていない方は使えません。空き家の3,000万円特別控除とは、同じ不動産について両方使うことはできません。そして何より、期限に間に合わせるには「売ると決めた日」ではなく「引渡しが終わる日」から逆算する必要があります。

この記事では、国税庁が公表している要件と算式をそのまま示したうえで、実際に手取りがいくら変わるのか、どの特例と比べて選ぶのか、そして私たちが大阪市24区でご相談を受けるなかで「間に合わなかった」ケースに共通していた理由までをまとめました。

なお、この記事は不動産を売る側の実務の話です。相続税・譲渡所得税の具体的な計算と申告は税理士、相続登記は司法書士、相続人間の話し合いがまとまらない場合は弁護士の分野になります。

結論:取得費加算の特例は「相続税を払った人」が「約3年10か月以内」に売ったときだけ使えます

先に結論を4つにまとめます。

  1. 取得費加算の特例は、払った相続税のうち、売った不動産に対応する分を取得費に足せる制度です。税金が戻ってくるのではなく、譲渡所得の計算のもとになる金額が小さくなる形で効きます
  2. 期限は「相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日」です。相続税の申告期限が死亡を知った日の翌日から10か月ですので、合わせておよそ3年10か月になります
  3. 相続税が課税されていない人は使えません。基礎控除の範囲内で申告も納税も不要だった方、配偶者の税額軽減で納税額がゼロになった方は、加算できる相続税額がありません
  4. 空き家の3,000万円特別控除とは、同じ不動産について選択制です。国税庁の空き家特例のページに、取得費加算の適用を受けていないことが要件として名指しで書かれています

ここから、それぞれを順に見ていきます。

取得費加算の特例とは|相続税を譲渡所得の取得費に足せる制度です

不動産を売ったときの税金は、売った金額そのものにかかるのではありません。次の式で計算した「譲渡所得」にかかります。

譲渡所得=譲渡価額(売った金額)-(取得費+譲渡費用)-特別控除額

取得費は、その不動産を買ったときの購入代金や購入手数料などです。建物については、所有期間中の減価償却費相当額を差し引いて計算します。譲渡費用は、売るために直接かかった費用で、仲介手数料・測量費・売買契約書の印紙代・借家人に支払った立退料・建物を取り壊して土地を売るときの取壊し費用などが含まれます。

取得費加算の特例は、この「取得費」の欄に、相続税の一部を上乗せできるという制度です。国税庁の説明では「相続または遺贈により取得した土地、建物、株式などの財産を、一定期間内に譲渡した場合に、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算することができます」とされています。

なぜこの制度があるかというと、相続で不動産を受け取った方は、まず相続税を払い、その不動産を売るとさらに譲渡所得税を払うことになるためです。同じ財産に短期間で二度課税される形になりますので、その調整として、払った相続税の一部を売却時の経費として扱えるようにしています。

注意していただきたいのは、これは「税額控除」ではなく「取得費への加算」だという点です。加算した金額がそのまま税額から引かれるわけではありません。加算額に税率をかけた分だけ税金が下がる、という効き方になります。長期譲渡所得(譲渡した年の1月1日現在で所有期間が5年超)の場合、所得税15パーセント・住民税5パーセントに復興特別所得税を加えた税率ですので、加算額の約2割が減税額の目安です。

3年10か月はどこから数えるのか|相続開始日ではなく申告期限が起点です

3年10か月はどこから数えるのか|相続開始日ではなく申告期限が起点ですのイラスト - 空き家のミカタ

ここを勘違いされている方がとても多い部分です。

国税庁が挙げている要件は「その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること」です。つまり、3年の起点は相続開始日ではなく、相続税の申告期限です。

相続税の申告期限は、被相続人が死亡したことを知った日(通常は死亡の日)の翌日から10か月以内です。ですので、

相続開始 → 10か月(申告期限) → さらに3年 = およそ3年10か月

という順序になります。

相続開始から取得費加算の特例の期限(約3年10か月)までのタイムライン図。相続開始・相続税の申告期限10か月・空き家特例の期限・取得費加算の期限の4つを時系列で示している

具体例で数えてみます。

出来事 日付
相続開始(死亡した日) 2026年1月6日
相続税の申告期限(翌日から10か月) 2026年11月6日
その翌日 2026年11月7日
取得費加算の期限(3年を経過する日) 2029年11月6日

「3年10か月」というのは、あくまで説明のための丸めた言い方です。ご自身のケースでは、相続税の申告書に書かれている申告期限の日付から3年を数えてください。申告期限が土曜日・日曜日・祝日などに当たるときはその翌日が期限とみなされますので、数日ずれることもあります。

もうひとつ大事なのが、「譲渡した日」がいつを指すかです。国税庁の説明では、資産を譲渡した日は原則として買主に引き渡した日ですが、売買契約などの効力発生の日(一般的には契約締結の日)に譲渡があったものとして確定申告することもできる、とされています。

これは実務上とても大きな意味を持ちます。期限まで残りわずかで、契約はできるが引渡しが翌月になってしまう、という場面で、契約日を譲渡の日として申告する選択肢が残っている場合があるからです。ただし、これは申告時の選択であって、期限を過ぎてから後付けで動かせるものではありません。期限が近い場合は、契約を結ぶ前に税理士に相談し、どちらの日で申告するかを決めてから契約日と決済日を組んでください。

取得費に加算できる相続税額の計算式(国税庁の算式)

加算できる金額は、払った相続税の全額ではありません。売った不動産に対応する部分だけです。国税庁の算式は次の考え方になっています。

取得費に加算する相続税額 = その人の相続税額 × その人の相続税の課税価格の計算の基礎とされた「譲渡した財産」の価額 ÷(その人の相続税の課税価格 + 債務控除額)

分子が「売った不動産の相続税評価額」、分母が「その人が相続した財産の課税価格に債務控除額を足したもの」です。要するに、自分が払った相続税を、相続した財産の内訳で按分して、売った不動産の分だけを取り出すという計算になります。

この算式には、押さえておくべき制限が3つあります。

  1. 譲渡益が上限です。計算した加算額が、この特例を適用しないで計算した譲渡益(売った金額から取得費・譲渡費用を差し引いた金額)を超える場合は、その譲渡益相当額が加算の限度になります。つまり、この特例で譲渡所得をマイナスにして他の所得と相殺する、といった使い方はできません
  2. 譲渡した財産ごとに計算します。複数の不動産を相続して、そのうち1つだけを売った場合、加算できるのはその1つに対応する相続税額だけです
  3. 「その人」の相続税額で計算します。相続人が複数いる場合、他の相続人が払った相続税は関係ありません。自分の納付税額と自分の課税価格で計算します

分母に「債務控除額」が入っている点も見落とされがちです。被相続人の借入金や未払いの医療費、葬式費用などを債務控除として差し引いて相続税を計算した方は、その控除した金額を分母に足し戻して按分します。相続税の申告書の控えを見ながら計算することになりますので、取得費加算を使うつもりであれば、相続税の申告書の控え一式を必ず保管しておいてください。

なお、令和6年1月1日以後に被相続人から暦年課税による贈与で財産を取得したことがある場合や、相続時精算課税を使っている場合には、算式に入れる価額の扱いに調整が入ります。該当する方は税理士にご確認ください。

いくら手取りが変わるのか|取得費が分かる場合と分からない場合の試算

取得費加算の特例を使ったときと使わなかったときの譲渡所得税を、電卓と数表で計算しているところ

数字を入れて見たほうが早いと思いますので、簡単な例で並べます。以下は制度の効き方を示すための単純化した試算であり、実際の税額は各種の控除や他の所得によって変わります。

前提

  • 相続した実家(土地・建物)を3,000万円で売却
  • 取得費は不明のため、概算取得費として売った金額の5パーセント=150万円を使用
  • 譲渡費用(仲介手数料など)=110万円
  • その人が納めた相続税額=600万円
  • その人の相続税の課税価格=1億円(債務控除なし)
  • 売った実家の相続税評価額=2,500万円
  • 譲渡した年の1月1日現在で所有期間5年超(長期譲渡所得)

取得費加算を使わない場合

譲渡所得=3,000万円-(150万円+110万円)=2,740万円

長期譲渡所得の税額は、所得税15パーセント・住民税5パーセント、これに復興特別所得税として所得税額の2.1パーセントが加わります。

  • 所得税:2,740万円×15%=411万円
  • 復興特別所得税:411万円×2.1%=約8.6万円
  • 住民税:2,740万円×5%=137万円
  • 合計:約556.6万円

取得費加算を使う場合

加算額=600万円×2,500万円÷1億円=150万円

譲渡所得=3,000万円-(150万円+150万円+110万円)=2,590万円

  • 所得税:2,590万円×15%=388.5万円
  • 復興特別所得税:388.5万円×2.1%=約8.2万円
  • 住民税:2,590万円×5%=129.5万円
  • 合計:約526.2万円

差額はおよそ30万円です。加算額150万円のおよそ2割が減税額になっている、という関係が確認できます。

ここから分かることが2つあります。

ひとつは、相続税の納税額が大きい方ほど、この特例の効果が大きくなるということです。算式の頭にあるのは「その人の相続税額」ですので、納税額が2,000万円だった方であれば、同じ按分割合でも加算額は500万円になり、減税額は100万円前後になります。

もうひとつは、取得費が分かる資料を探すほうが、効果が大きい場合があるということです。この例で、被相続人が2,000万円で買った証拠(売買契約書など)が見つかれば、取得費は150万円ではなく2,000万円前後になり、譲渡所得は一気に小さくなります。取得費加算で30万円下げるより、契約書1枚のほうが効くケースは珍しくありません。まず探すのは、押し入れの奥にある古い売買契約書と領収証です。

なお、取得費が分からない場合に売った金額の5パーセント相当額を取得費とできることは国税庁が明記しています。実際の取得費が5パーセント相当額を下回る場合も、5パーセント相当額を使えます。ただし、概算取得費を使うときは、相続人が支払った登記費用などを取得費に含めることはできません。

使えるのは3つの要件を満たす人だけ|相続税を払っていないと使えません

国税庁が挙げている適用要件は、次の3つです。

  1. 相続や遺贈により財産を取得した者であること
  2. その財産を取得した人に相続税が課税されていること
  3. その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること

このうち、実際に相談の場で「使えません」となるのが圧倒的に多いのが2番目です。

日本で相続税がかかるのは、遺産に係る基礎控除額を超える場合だけです。基礎控除の範囲内であれば、申告も納税も必要ありません。相続税を1円も納めていない方には、取得費に加算する相続税額そのものが存在しないため、この特例は成り立ちません。

同じ理由で、次のような方も対象外です。

  • 配偶者の税額軽減を使った結果、納付税額がゼロになった方
  • 小規模宅地等の特例を使った結果、課税価格が基礎控除以下になり納税が不要になった方
  • 相続放棄をした方(その相続では財産を取得しないため。ただし遺贈で財産を受け取った場合は、その財産について別途判断します)

「相続税の申告はしたが、納税額はゼロだった」という方は、特に注意が必要です。申告したかどうかではなく、その人に相続税が課税されているかどうかで判定します。

相続税を払っていない方は、取得費加算ではなく、被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの3,000万円特別控除が使えないかを検討する順序になります。詳しくは相続した空き家を売るときの3,000万円特別控除にまとめています。

また、この特例は譲渡所得のみに適用される特例です。株式等の譲渡による事業所得および雑所得については適用できません。

空き家の3,000万円特別控除とは選択制です|どちらを選ぶかの分かれ目

同じ不動産について、取得費加算と空き家の3,000万円特別控除の両方を使うことはできません。

これは推測ではなく、国税庁の「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」のページに、適用要件のひとつとしてはっきり書かれています。

売った家屋や敷地等について、相続財産を譲渡した場合の取得費の特例や収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと

「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」というのが、この記事で説明している取得費加算のことです。どちらか一方を選ぶ、という関係になります。

2つの制度は、期限も要件も違います。並べると次のようになります。

取得費加算の特例 空き家の3,000万円特別控除
効果 相続税額の一部を取得費に加算 譲渡所得から最高3,000万円を控除(相続人が3人以上の場合は2,000万円)
期限 相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日(約3年10か月) 相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日
相続税の納税 必要(課税されていること) 不要
建物の築年数 問わない 昭和56年5月31日以前の建築であること
建物の種類 問わない 区分所有建物登記がされていないこと(後述)
同居人 問わない 相続開始の直前に被相続人以外に居住者がいないこと
売却代金 制限なし 1億円以下であること
相続後の利用 問わない 相続の時から譲渡の時まで事業・貸付け・居住の用に供していないこと

表のなかの「区分所有建物登記」は、分譲マンションのように1棟の建物を部屋ごとに分けて登記する形式のことです。この登記がされている建物は空き家特例の対象外になりますので、相続したのが分譲マンションの一室であれば、空き家特例は使えず、取得費加算のほうを検討することになります。一戸建てや長屋は、通常この登記に当たりません。

選ぶときの目安は、「相続税をいくら払ったか」と「譲渡益がいくらか」の2つです。

  • 相続税の納税額が大きく、算式で計算した加算額が3,000万円(または2,000万円)を上回るなら、取得費加算のほうが有利になります
  • 譲渡益が3,000万円以下に収まるなら、空き家特例を使えば譲渡所得税がゼロになる可能性があり、こちらが有利になりやすくなります
  • 空き家特例は要件が細かく、耐震基準を満たすか取り壊すことなどが求められます。要件を満たせない物件では、そもそも選択肢に入りません

なお、マイホームを売ったときの特例(3,000万円特別控除)のページには、取得費加算の名前は要件として挙がっていません。相続した家に相続人自身が住んでいた場合など、事情によって適用関係が変わりますので、個別の可否は必ず税理士にご確認ください。

生前に売るか相続後に売るかで手取りがどう変わるかは、生前売却と相続後売却はどちらが手取りが多いかで4つの型に分けて整理しています。

相続した不動産は「被相続人が買った日」から所有期間を数えます

相続した不動産は「被相続人が買った日」から所有期間を数えますのイラスト - 空き家のミカタ

取得費加算とあわせて知っておくと得をするのが、所有期間の数え方です。

譲渡所得税の税率は、譲渡した年の1月1日現在で所有期間が5年を超えるかどうかで大きく変わります。

  • 長期譲渡所得(5年超):所得税15パーセント+住民税5パーセント
  • 短期譲渡所得(5年以下):所得税30パーセント+住民税9パーセント

税率が倍近く違いますので、ここを間違えると試算が大きく狂います。

そして、相続や贈与によって取得したときは、被相続人や贈与者の取得の時期がそのまま引き継がれます。国税庁は「被相続人や贈与者が取得した時から、相続や贈与で取得した相続人や受贈者が譲渡した年の1月1日までの所有期間で長期譲渡所得か短期譲渡所得かを判定することになります」と説明しています。

つまり、相続してから1年で売っても、親が30年前に買った家であれば長期譲渡所得です。「相続したばかりだから短期で税率が高いのでは」と心配される方がよくいらっしゃいますが、その心配は要りません。取得費についても同じで、被相続人が買い入れたときの購入代金や購入手数料などを基に計算します。

所有期間の起算日と取得費が不明なときの扱いは、相続不動産の譲渡所得税|5年の起算日と取得費不明の対処で詳しく整理しています。

共有持分・事故物件・再建築不可など、訳あり物件のときの注意点

私たちが扱っている物件では、次のような事情が絡むことがよくあります。制度の使い方に影響する部分を挙げておきます。

共有で相続した場合

取得費加算は、相続人それぞれが自分の相続税額で、自分が売った持分について計算します。持分2分の1を相続して2分の1を売った方は、その持分に対応する部分だけが対象です。

ここで実務上の問題になるのが、共有者の足並みです。1人が期限内に売れても、他の共有者が「まだ決められない」と待たせると、遅れた方は期限を過ぎて特例を使えないまま譲渡することになります。共有持分の売却は、プライバシーの問題から他の共有者に相談しづらいという声も多いのですが、期限のある特例が絡む場合は、少なくとも「いつまでに決めるか」だけは早い段階で共有しておくことをおすすめします。共有持分の買取のご相談は、他の共有者に知られない形での進め方も含めてお受けしています。

事故物件(心理的瑕疵のある物件)を相続した場合

事故物件であっても、取得費加算の要件に変わりはありません。相続税が課税されていて、期限内に譲渡すれば使えます。ただし、事故物件は仲介での買主探しに時間がかかりやすく、期限に間に合わなくなるリスクが他の物件より高いという点は認識しておいてください。現状のまま引渡し日を先に決められる買取のほうが、期限管理という意味では読みやすくなります。事故物件の買取では、告知の範囲や残置物の扱いを先に決めてから金額を出す流れになります。

再建築不可・借地・未接道などの特殊物件

これらの物件は、相続税評価額は付いているのに、市場で売ろうとすると買主が見つからない、という状況になりがちです。相続税は払ったのに売れない、という一番つらい形です。取得費加算の期限は待ってくれませんので、「価格を下げれば売れるか」ではなく「そもそも買える相手がいるか」から確認する必要があります。

賃貸中のアパートを相続した場合

入居者がいる状態でも売却は可能です。ただし、期限が近い場合、退去を待ってから売る判断は間に合わなくなりやすいので注意が必要です。相続したアパートの買取もあわせてご覧ください。

3年10か月に間に合わなかったご相談に共通していた3つの理由

ここからは、私たちが実際にご相談を受けるなかで見えてきたことです。「取得費加算を使うつもりだったのに間に合わなかった」という方には、共通するパターンがありました。

理由1:期限を「売ると決める期限」だと思っていた

一番多いのがこれです。期限は譲渡(原則として引渡し)が完了している期限であって、売却活動を始める期限でも、契約を結ぶ期限でもありません。仲介で買主を探す場合、売り出しから引渡しまでには、買主探し・住宅ローンの審査・契約・決済という工程が入ります。物件によっては半年以上かかることも普通にあります。期限の1年前には動き出すくらいの余裕が要ります。

理由2:相続登記が終わっていなかった

売るためには、まず相続登記で名義を相続人に移す必要があります。遺産分割協議がまとまっていない、相続人の1人と連絡が取れない、被相続人名義のさらに前の名義(祖父の代)が残っている、といった事情があると、登記だけで数か月から1年以上かかります。2024年4月1日から相続登記は義務化され、原則として不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請することとされています。取得費加算の期限と、相続登記の期限は、走り出しがほぼ同じです。登記が止まっている状態は、そのまま特例を失うリスクだと考えてください。

理由3:相続人が遠方に住んでいて、動き出しが遅れた

大阪の実家を相続した方が、ご自身は滋賀や兵庫、あるいはもっと遠方に住んでいる、というケースはとても多くあります。現地を見に行くだけで1日仕事になりますので、「次の連休に見に行こう」が積み重なって半年、1年と過ぎていきます。遠方の方ほど、現地調査・査定・書類のやり取りをどこまで郵送とオンラインで済ませられるかを先に確認しておくと、時間の消え方が変わります。

いずれの理由にも共通しているのは、「まだ時間がある」と思っている間に、動かせない期間が積み上がっているという点です。3年10か月は、長いようで長くありません。

大阪市24区でこのご相談を受けるとき、私たちが最初に確認すること

相続した実家が建つ日本の住宅街。取得費加算の特例の期限内に売却できるかを判断する対象となる一戸建て

取得費加算が絡むご相談をいただいたとき、私たちが最初に伺うのは次の4点です。順番にも意味があります。

1.相続税の申告期限の日付

「いつ亡くなったか」ではなく「申告期限がいつか」を確認します。ここから3年を足した日が、実務上のデッドラインになります。この日付が決まらないと、仲介で時間をかけて売るか、引渡し日を先に確定できる買取にするかの判断ができません。

2.相続登記が済んでいるか

済んでいなければ、まずそこからです。誰が相続するかが決まっていない段階であれば、決まるまでの見込み期間も伺います。売却の実務よりも、こちらのほうが期間の読みにくい工程です。

3.相続税の申告書の控えが手元にあるか

取得費加算の計算には、その人の相続税額・相続税の課税価格・売る不動産の相続税評価額の3つが要ります。すべて相続税の申告書に書かれています。「税理士さんに任せて、控えはもらっていない」という方も多いので、早めに取り寄せをお願いしています。

4.被相続人が買ったときの資料が残っていないか

先に書いたとおり、取得費が分かる資料が1枚あるだけで、取得費加算より大きく税額が下がることがあります。古い売買契約書・領収証・通帳・登記済証を探していただくところから始めます。

そのうえで、期限までの残り日数に応じて、売り方を選びます。残り1年以上あれば、市場での売却を先に試して、間に合わなさそうなら買取に切り替える二段構えが取れます。残り半年を切っている場合や、事故物件・再建築不可・共有持分など買主が限られる物件の場合は、引渡し日を先に決められる買取を軸に組むほうが、期限は守りやすくなります。

空き家のミカタは大阪市24区に対応エリアを絞っています。現地を短時間で確認でき、期限のある案件でも日程を先に固定しやすいためです。金額の目安を知りたいだけの段階でもかまいません。

確定申告で必要な書類と手続きの流れ

取得費加算は、確定申告をしなければ適用されません。売っただけでは自動的に適用されない点にご注意ください。

提出先:所轄の税務署

申告時期:譲渡した日の属する年の翌年2月16日から3月15日まで

確定申告書に添えて提出する書類

  1. 相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書
  2. 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用]

1の計算明細書を使うと、取得費に加算される相続税額そのものを計算できます。国税庁も「(1)の計算明細書を利用すると、取得費に加算される相続税額を計算することができます」と案内しています。

手元に用意しておく資料

  • 相続税の申告書の控え一式(課税価格・納付税額・財産の明細が分かるもの)
  • 売却時の売買契約書、仲介手数料などの領収証
  • 被相続人が購入したときの売買契約書・領収証(取得費の根拠)
  • 相続登記後の登記事項証明書

年内に売ると決めた場合の逆算スケジュールは、空き家を年内に売るなら|12月31日から逆算する相談期限にまとめています。

よくあるご質問

よくあるご質問のイラスト - 空き家のミカタ

Q. 取得費加算の特例とは、何がどう得になる制度ですか。

A. 相続や遺贈で取得した不動産を一定期間内に売ったとき、その人が払った相続税額のうち、売った不動産に対応する部分を取得費に加算できる制度です。譲渡所得は「売った金額-(取得費+譲渡費用)」で計算しますので、取得費が増えれば譲渡所得が減り、その分だけ譲渡所得税・住民税が下がります。税金が返ってくるのではなく、計算のもとになる金額が小さくなる形で効きます。加算額には上限があり、この特例を使わずに計算した譲渡益の金額が限度です。

Q. 期限の「3年10か月」は、いつから数えるのですか。

A. 起点は相続開始日ではなく、相続税の申告期限です。「相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで」に譲渡していることが要件です。相続税の申告期限は死亡を知った日の翌日から10か月ですので、合わせておよそ3年10か月になります。正確な日付は、ご自身の申告期限から3年を数えてください。

Q. 相続税を払っていない場合でも使えますか。

A. 使えません。「その財産を取得した人に相続税が課税されていること」が要件だからです。基礎控除の範囲内で申告も納税も不要だった方、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例で納税額がゼロになった方は、加算できる相続税額がありません。この場合は空き家の3,000万円特別控除など、別の特例を検討することになります。

Q. 空き家の3,000万円特別控除と両方使えますか。

A. 同じ不動産については選択制で、どちらか一方だけです。国税庁の空き家特例のページに「売った家屋や敷地等について、相続財産を譲渡した場合の取得費の特例や収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと」と要件が書かれています。相続税の納税額が大きい方は取得費加算、譲渡益が3,000万円以下に収まる方は空き家特例が有利になりやすい傾向がありますが、逆転もありますので両方で試算してください。

Q. 取得費が分からない古い家でも、取得費加算は使えますか。

A. 使えます。取得費が分からない場合は売った金額の5パーセント相当額を取得費とすることができ、取得費加算はその金額に加算する形になります。ただし概算取得費を使うときは、相続人が支払った登記費用などを取得費に含めることはできません。まずは被相続人が買ったときの契約書や領収証を探してください。実際の取得費のほうが大きければ、そちらを使えます。

Q. 期限は契約日と引渡し日のどちらで判定しますか。

A. 譲渡の日は原則として買主に引き渡した日ですが、売買契約などの効力発生の日(一般的には契約締結の日)に譲渡があったものとして確定申告することもできます。期限ぎりぎりの場合に選択肢が残ることがありますが、期限を過ぎてから後付けで動かせるものではありません。契約前に税理士へご相談ください。

Q. 共有で相続した不動産の場合、どう計算しますか。

A. 相続人それぞれが、自分の相続税額をもとに、自分が売った持分について計算します。譲渡した財産ごとに計算しますので、複数の不動産のうち1つだけ売った場合は、その1つに対応する分だけが加算対象です。共有者の1人だけが期限内に売り、他の共有者が遅れると、遅れた方は特例を使えません。

Q. 確定申告では何を出せばいいですか。

A. 確定申告書に「相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書」と「譲渡所得の内訳書[土地・建物用]」を添えて所轄の税務署へ提出します。相続税の申告書の控え一式、売買契約書、仲介手数料の領収証、被相続人が買ったときの契約書を手元に用意しておいてください。申告期間は譲渡した年の翌年2月16日から3月15日までです。

まとめ

  • 取得費加算の特例は、払った相続税のうち売った不動産に対応する分を取得費に足せる制度です。減税額の目安は、加算額の約2割(長期譲渡所得の場合)になります
  • 期限は相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日、およそ3年10か月です。起点は相続開始日ではなく申告期限で、判定されるのは原則として引渡しが終わった日です
  • 相続税が課税されていない人は使えません。その場合は空き家の3,000万円特別控除など別の特例を検討します。両方は使えず、選択制です
  • 間に合わなかった方に共通していたのは、期限を「売ると決める期限」だと思っていたこと、相続登記が止まっていたこと、遠方で動き出しが遅れたことの3つでした。期限の1年前から動き出せると余裕が生まれます

「まだ売ると決めたわけではないけれど、期限までに間に合うのか、いくらになるのかだけ知っておきたい」——その段階のご相談を歓迎しています。査定は無料で、その後のご連絡をこちらから重ねることもありません。

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空き家のミカタを運営しているのは、大阪市生野区に事務所を構える合同会社アルシェです(宅地建物取引業免許 大阪府知事(1)第65646号)。大阪市24区の空き家・長屋・再建築不可物件・事故物件・共有持分を専門に扱っており、相続登記が未了・残置物が残ったまま・共有名義のままの状態でも査定にお応えできます。なお、相続税・譲渡所得税の具体的な計算と申告は税理士、登記の代理申請は司法書士、相続人間の話し合いがまとまらない場合は弁護士へご確認ください。担当するのは、その家をいくらで、どういう順序で手放せるかの部分です。


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出典(一次情報)

  • 国税庁 No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例(適用要件3つ/取得費に加算する相続税額の算式/加算額は特例適用前の譲渡益が限度・譲渡した財産ごとに計算/提出書類=相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書・譲渡所得の内訳書/根拠法令 所法33・38、措法39、措令25の16、措規18の18、措通39-12。令和7年4月1日現在法令等。2026年9月6日アクセス)
  • 国税庁 No.4205 相続税の申告と納税(相続税の申告は被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内。期限が土日祝に当たるときはその翌日。2026年9月6日アクセス)
  • 国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(最高3,000万円・相続人3人以上は2,000万円/相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで/売却代金1億円以下/昭和56年5月31日以前の建築・区分所有建物登記でない・相続開始直前に被相続人以外の居住者がいない/適用要件(5)「売った家屋や敷地等について、相続財産を譲渡した場合の取得費の特例や収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと」。2026年9月6日アクセス)
  • 国税庁 No.3208 長期譲渡所得の税額の計算(譲渡した年の1月1日現在で所有期間5年超/税額=課税長期譲渡所得金額×15%(住民税5%)/復興特別所得税は基準所得税額の2.1%/課税長期譲渡所得金額=譲渡価額−(取得費+譲渡費用)−特別控除額。2026年9月6日アクセス)
  • 国税庁 No.3211 短期譲渡所得の税額の計算(譲渡した年の1月1日現在で所有期間5年以下/税額=課税短期譲渡所得金額×30%(住民税9%)。2026年9月6日アクセス)
  • 国税庁 No.3258 取得費が分からないとき(取得費が分からない場合・実際の取得費が売った金額の5%相当額を下回る場合は5%相当額を取得費にできる。2026年9月6日アクセス)
  • 国税庁 No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期(取得費は被相続人が買い入れたときの購入代金等を基に計算/取得の時期は被相続人から引き継ぐ/概算取得費を使う場合は相続人が支払った登記費用等を取得費に含められない。2026年9月6日アクセス)
  • 国税庁 No.3102 譲渡所得の申告期限(譲渡の日は原則として買主に引き渡した日/売買契約などの効力発生の日(一般的には契約締結の日)に譲渡があったものとして申告することもできる/申告は譲渡した日の属する年の翌年2月16日〜3月15日。2026年9月6日アクセス)
  • 国税庁 No.3252 取得費となるもの(購入代金・建築代金・購入手数料・設備費・改良費/建物は減価償却費相当額を控除/相続で取得したときに納めた登録免許税・登記費用・不動産取得税も取得費に含まれる。2026年9月6日アクセス)
  • 国税庁 No.3302 マイホームを売ったときの特例(居住用財産の3,000万円特別控除の適用要件。要件(4)は「収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと」で、取得費加算は名指しされていない。2026年9月6日アクセス)
  • 法務省 相続登記の申請義務化についてのよくある質問(Q1・Q3・Q4。相続登記の義務化は2024年(令和6年)4月1日から。不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に相続登記をする必要がある。2026年9月6日アクセス)
  • 法務省 所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し(民法・不動産登記法等の改正の全体像。2026年9月6日アクセス)

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