訳あり物件の買取業者の選び方|「売った後の責任」で決める8判定と契約不適合責任の免責【2026年版】
訳あり物件の買取業者の選び方で最後に効くのは、査定額でも対応スピードでもありません。売った後に責任がどちらに残るかです。
査定額が30万円高い業者を選んでも、決済の3か月後に「雨漏りが見つかった」と代金減額を求められれば、手残りは簡単に逆転します。反対に、契約書で契約不適合責任を免責してもらっていれば、同じ雨漏りが見つかっても売主に請求は戻りません。
そしてこの「免責してもらえるかどうか」は、買取という取引の形だからこそ成立します。宅地建物取引業法40条は、宅地建物取引業者が「自ら売主となる」売買にしか適用されないためです。買取では業者は買主なので、この規制はかかりません。つまり売主にとって、買取は責任を降ろせる数少ない出口です。
ただし、降ろせるのは「知らなかったこと」だけです。民法572条により、知りながら告げなかった事実は、免責特約があっても免責されません。
この記事では、訳あり物件の買取業者の選び方を「売った後の責任」という一本の軸で整理し、査定時に確認する8項目、契約書で読む場所、告知書の書き方までをまとめます。根拠はすべて条文と国土交通省のガイドラインに当たって確認しています。

結論:訳あり物件の買取業者の選び方は「責任の残り方」で決まる
先に結論を表にします。同じ物件を同じ金額で売っても、責任の処理が違えば最終的な手残りは変わります。
| 判断軸 | よくある選び方 | 責任で選ぶ場合 |
|---|---|---|
| 見る数字 | 査定額の高さ | 査定額 −(決済後に戻り得る金額) |
| 見る書類 | 査定書 | 売買契約書の契約不適合責任条項 |
| 確認するタイミング | 契約直前 | 査定の申込み時点 |
| 確定する時点 | 決済日 | 免責の範囲と期間を合意した時点 |
| リスクが残る期間 | 引渡しから最長10年(消滅時効まで) | 免責を受けた範囲では引渡し時に終了 |
訳あり物件は、そもそも「何が出てくるかわからない」から訳ありです。再建築不可・事故物件・共有持分・長年放置された空き家・相続したまま一度も入っていない実家。こうした物件では、売主自身が建物の状態を把握していないことが普通です。
だからこそ、把握できていないものの責任を負い続ける契約にしてはいけません。買取業者を選ぶというのは、実務上は「どの契約書で売るかを選ぶ」こととほぼ同じ意味を持ちます。
免責の有無で手残りがどう変わるか(試算)
築45年の空き家を売るケースで、査定額だけを見た場合と、責任まで含めて見た場合を比べます。以下は考え方を示すための仮の数字であり、実際の金額は物件ごとに異なります。
| A社(免責条項なし) | B社(免責条項あり) | |
|---|---|---|
| 提示された買取価格 | 780万円 | 750万円 |
| 契約不適合責任 | 引渡しから1年間、売主が負う | 種類・品質について全部免責 |
| 決済時の入金 | 780万円 | 750万円 |
| 決済4か月後、床下の基礎に亀裂が判明 | 代金減額請求を受け得る | 請求は成り立たない |
| 減額に応じた場合の負担(例:修補費相当) | −120万円 | 0円 |
| 最終的な手残り | 660万円 | 750万円 |
提示額ではA社が30万円高いのに、最終手残りではB社が90万円上回りました。この逆転は珍しいことではありません。訳あり物件では、売主も業者も把握していない不具合が後から出てくる確率がそもそも高いからです。
さらに、A社のケースでは「決済から4か月後」という時期に問題があります。すでに代金を受け取り、相続人どうしで分割済み、あるいは別の用途に使ってしまっていることが多いタイミングです。手元に現金がない状態で返還を求められるため、金額以上に負担が重くなります。
比較するときは、提示額の欄の隣に「決済後に戻り得る金額」の欄を作ってください。その欄が空になっている業者が、責任の観点でもっとも安全な選択肢です。
なぜ「売った後の責任」が業者選びの分岐点になるのか|宅地建物取引業法40条が買取では効かない
ここが、この記事でいちばん重要な部分です。
宅地建物取引業法40条は次のように定めています。
宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約において、その目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任に関し、民法(明治二十九年法律第八十九号)第五百六十六条に規定する期間についてその目的物の引渡しの日から二年以上となる特約をする場合を除き、同条に規定するものより買主に不利となる特約をしてはならない。 (2 前項の規定に反する特約は、無効とする。)
条文の主語は「自ら売主となる」宅地建物取引業者です。この規制は、プロである業者が素人の買主に不利な特約を押しつけることを防ぐためのものです。
したがって、取引の形によって規制のかかり方が真逆になります。
| 取引の形 | 売主 | 買主 | 宅建業法40条 | 売主の契約不適合責任を免責する特約 |
|---|---|---|---|---|
| 仲介で個人の買主に売る | 個人 | 個人 | 適用なし | 有効(実務では3か月程度に短縮することが多い) |
| 建売・買取再販を買う | 宅建業者 | 個人 | 適用あり | 引渡しから2年未満に短縮する特約は無効 |
| 買取で業者に売る | 個人 | 宅建業者 | 適用なし | 全部免責も有効に結べる |
買取では、売主が個人で買主が宅地建物取引業者です。40条の主語に当てはまらないため、この規制は働きません。プロの買主が自分の判断でリスクを引き受ける取引なので、当事者が合意すれば免責特約は有効です。
つまり買取は、売主が責任を降ろすことが法律上できる取引です。ただし「できる」だけであって、自動的にそうなるわけではありません。契約書に免責条項を入れなければ、民法の原則どおり責任は売主に残ります。
ここが業者選びの分岐点です。同じ「買取」でも、免責条項を標準で入れている業者と、入れずに決済後の請求余地を残す業者があります。査定額の比較表には、この差は一切表れません。
免責がないと、具体的に何が起きるのか
民法は、引き渡された物が契約内容に適合しない場合、買主に4つの手段を与えています。
| 買主の権利 | 根拠条文 | 売主に起きること |
|---|---|---|
| 追完請求(修補・代替物・不足分の引渡し) | 民法562条 | 修理費用の負担を求められる |
| 代金減額請求 | 民法563条 | 受け取った代金の一部返還を求められる |
| 損害賠償請求 | 民法564条・415条 | 損害額の支払いを求められる |
| 契約の解除 | 民法564条・541条・542条 | 売買そのものが巻き戻る |
代金減額請求は、相当の期間を定めて追完を催告し、その期間内に追完がないときにできるのが原則です(民法563条1項)。ただし追完が不能なとき、売主が追完を拒絶する意思を明確に示したときなどは、催告なしに直ちに請求できます(同条2項)。
期間の制限は民法566条です。買主が不適合を知った時から1年以内に売主へ通知しなければ、これらの請求はできなくなります。ただし売主が引渡しの時に不適合を知っていた、または重大な過失によって知らなかったときは、この1年の制限は適用されません(同条ただし書)。
「1年経てば安心」ではないことに注意してください。起算点は引渡し日ではなく買主が不適合を知った時です。5年後に発覚すれば、そこから1年間は請求できます。
訳あり物件の買取業者の責任と、売主の責任はどこで入れ替わるのか
訳あり物件の買取業者の責任と、売主である個人の責任は、決済日を境に自動で入れ替わるわけではありません。入れ替わる範囲を決めているのは契約書です。
実務では、責任は次の3つの層に分かれます。
| 層 | 内容 | 免責特約で降ろせるか |
|---|---|---|
| ① 売主が知らなかった不具合 | 床下の腐朽、壁内の配管漏れ、地中障害物など | 降ろせる(免責特約が有効に働く) |
| ② 売主が知っていて告げた事実 | 告知書に記載した雨漏り・事故・境界の争いなど | 降ろせる(告げているので隠していない) |
| ③ 売主が知っていて告げなかった事実 | 知っていたのに告知書に書かなかったもの | 降ろせない(民法572条) |
民法572条の条文はこうです。
売主は、第五百六十二条第一項本文又は第五百六十五条に規定する場合における担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実及び自ら第三者のために設定し又は第三者に譲り渡した権利については、その責任を免れることができない。
この条文が意味するのは、免責特約と告知はセットで初めて機能するということです。免責条項があるから何も言わなくていい、ではありません。むしろ逆で、免責を有効に効かせたいなら、知っていることを全部出しておく必要があります。
国土交通省のガイドラインも、媒介を行う宅地建物取引業者に対して、売主へ「事案の存在について故意に告知しなかった場合等には、民事上の責任を問われる可能性がある旨をあらかじめ伝えることが望ましい」としています。プロの側にも、売主へこの構造を説明する役割が期待されているということです。
業者選びの観点:査定の段階で「知っていることは全部教えてください、そのうえで免責します」と説明する業者と、「訳ありでも気にしません」としか言わない業者では、後者のほうが決済後に揉める余地を残しています。前者は売主を守る方向に説明しており、後者は説明を省いているだけです。

契約不適合責任とは|訳あり物件・中古住宅の買取で売主が負う責任の中身
2020年4月1日施行の改正民法で、それまでの「瑕疵担保責任」は契約不適合責任に置き換わりました。訳あり物件・中古住宅の買取における契約不適合責任は、次の考え方で判断されます。
基準は「契約の内容に適合しているか」です。物が古いかどうか、傷んでいるかどうかそのものが問題なのではありません。契約でどう合意したかと、引き渡された物が食い違っているかどうかが問われます。
これは訳あり物件にとって、非常に有利に働きます。
| 契約書の書き方 | 雨漏りが見つかったときの評価 |
|---|---|
| 「建物は良好な状態である」と記載 | 契約内容に適合しない → 責任が生じ得る |
| 「築50年の現況有姿。雨漏り・傾きの可能性を前提とする」と記載 | 契約内容どおり → 不適合にならない |
つまり「現況有姿」で売り、状態を契約書と告知書に正しく書き込むことが、それ自体で防御になります。良く見せようとするほど、契約内容とのギャップが広がり、責任のリスクが増えるという逆説的な構造です。
不適合の種類は4つに分けて考えます。
| 種類 | 例 | 民法566条の1年制限 |
|---|---|---|
| 種類に関する不適合 | 契約と異なる物が引き渡された | かかる |
| 品質に関する不適合 | 雨漏り、傾き、シロアリ、給排水の故障 | かかる |
| 数量に関する不適合 | 実測面積が登記面積を大きく下回る | かからない |
| 権利に関する不適合 | 他人の権利が付いている、越境されている | かからない |
民法566条の期間制限は種類・品質の不適合にだけかかります。数量不足や権利の不適合には適用されず、一般の消滅時効の枠組みで処理されます。「1年で終わる」と単純化しないでください。
なお、共有持分の売買では権利関係が本体になるため、この「権利に関する不適合」の比重が大きくなります。持分割合の相違、他の共有者との使用に関する合意の存在などが論点になり得ます。
訳あり物件の売買で告知すべきこと|告知書(物件状況等報告書)の書き方
訳あり物件の売買における告知は、法律上「これを書けば足りる」というリストが決まっているわけではありません。基準は民法572条の「知りながら告げなかった事実」に当たらないようにすることです。
実務では、不動産関係団体が提供する告知書(物件状況等報告書)に記載します。国土交通省のガイドラインも、売買契約については「主要な不動産関係団体の提供する告知書(物件状況等報告書)において、既に、事件・事故等の事案に係る項目が含まれている」と述べています。
記載すべき項目のチェックリスト
| 分類 | 具体的に書く内容 |
|---|---|
| 建物の状態 | 雨漏り、シロアリ被害、木部の腐食、傾き、給排水管の故障、過去の修繕履歴 |
| 敷地・境界 | 境界確定の有無、越境(する/される)、私道の負担、通行や掘削の承諾の有無 |
| 法規制 | 再建築の可否、建蔽率・容積率の超過、未登記の増築部分、検査済証の有無 |
| 過去の事象 | 火災、浸水、地盤沈下、土壌汚染の可能性、地中障害物の可能性 |
| 人の死に関する事案 | 自然死・事故死・自殺・他殺の別、特殊清掃や大規模リフォームの有無、発生時期 |
| 周辺環境 | 近隣との紛争、騒音・臭気、暴力団関係者の居住、嫌悪施設の有無 |
| 権利関係 | 賃借人の有無と条件、使用貸借の有無、抵当権など担保権、共有者の状況 |
書き方の3原則
原則1:わからない項目は空欄にせず「不明」と書き、理由を添える
相続で取得して一度も住んでいない実家では、雨漏りの有無を売主が知らないのは当然です。空欄のままだと「無し」と読まれる余地が残ります。「不明(相続取得後、居住・立入なし)」と書けば、知らないことが記録に残ります。これは民法572条の「知りながら告げなかった」に当たらないことを示す材料になります。
原則2:断定できないことは断定しない
「シロアリはいません」ではなく「シロアリの調査は行っていない。床の一部に沈みがある」と書きます。確認していない事実を断定して書くと、それ自体が契約内容の一部になってしまいます。
原則3:迷ったら書く
書きすぎて損をすることは、買取ではほとんどありません。買主は宅地建物取引業者であり、リスクを織り込んで買うのが前提です。むしろ書かなかったものが後で出てきたときに、免責が崩れます。
国土交通省のガイドラインは、後日訴訟等に発展した場合でも告知書等が証拠資料になり得ると明記しています。告知書は買主のための書類であると同時に、売主自身のための記録でもあります。
人の死の告知は「概ね3年」で消えるのか|売買取引に3年の目安は無い
ここは誤解が非常に多い論点です。
国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」(令和3年10月)で、「概ね3年」の経過により告げなくてもよいとされているのは、賃貸借取引の対象不動産についてです。ガイドラインの該当箇所の見出しは次のとおりです。
②賃貸借取引の対象不動産において①以外の死が発生又は特殊清掃等が行われることとなった①の死が発覚して、その後概ね3年が経過した場合
主語が「賃貸借取引の対象不動産において」と限定されています。売買取引はこの類型に含まれていません。したがって、売買では「3年経ったから告知不要」という整理はガイドライン上できません。
ガイドラインの整理を売買・賃貸で並べると、こうなります。
| 事案 | 賃貸借取引 | 売買取引 |
|---|---|---|
| 自然死・日常生活の中での不慮の死(老衰、病死、転倒、誤嚥など) | 原則として告げなくてよい | 原則として告げなくてよい |
| 上記の死でも特殊清掃等が行われた場合 | 発覚から概ね3年経過後は原則不要 | 3年の目安の適用対象外 |
| 自然死・日常生活の中での不慮の死以外の死 | 発生から概ね3年経過後は原則不要 | 3年の目安の適用対象外 |
| 隣接住戸、日常的に使用しない共用部分での事案 | 原則として告げなくてよい | 原則として告げなくてよい |
なお、自然死や日常生活の中での不慮の死であっても、発見が遅れて特殊清掃や大規模リフォームが行われた場合は、告げなくてよい類型から外れます。「自然死だから告知不要」も単純化しすぎです。
売主の立場では、この論点はシンプルに処理してください。知っている事実は時期を問わず告知書に書く。民法572条で問われるのは「知りながら告げなかったか」であり、ガイドラインの年数とは別の物差しだからです。
「3年経っているので書かなくて大丈夫ですよ」と売主に説明する買取業者がいたら、それが賃貸借取引の基準であることを確認してください。売主のリスクを軽く見せて契約を急がせる説明になっている可能性があります。
心理的瑕疵の告知範囲と価格への影響については、心理的瑕疵とは?事故物件の告知義務の範囲・売却時期・価格への影響と事故物件を高く売るタイミング|「3年待てば」が損になる理由で詳しく整理しています。

訳あり物件の査定でチェックすべき8項目|責任の所在を確認する質問リスト
訳あり物件の査定を受けるとき、金額以外にこの8つを確認してください。すべて査定の段階で聞ける内容です。契約直前まで待つ必要はありません。
| # | 確認すること | 望ましい回答 | 危ない回答 |
|---|---|---|---|
| 1 | 契約不適合責任を免責する条項は契約書にありますか | 「あります。条文をお見せします」 | 「うちは請求しませんので大丈夫です」(口頭のみ) |
| 2 | 免責の範囲と期間はどう特定されていますか | 「種類・品質は全部免責、権利は◯か月」など具体的 | 「一般的な内容です」 |
| 3 | 告知書(物件状況等報告書)は使いますか | 「使います。書き方も一緒に確認します」 | 「訳ありなので不要です」 |
| 4 | 決済後に売主へ請求が戻る条項はありますか | 「ありません。該当条項を確認しましょう」 | 「まず契約してから」 |
| 5 | 宅地建物取引業の免許番号を教えてください | 即答+検索方法の案内 | 提示を渋る、番号が検索でヒットしない |
| 6 | 契約書を持ち帰って読んでよいですか | 「もちろんです」 | 「今日決めていただかないと価格が変わります」 |
| 7 | 誰に、いつ、何を伝えますか(共有者・親族・近隣) | 連絡範囲を具体的に説明 | 「必要に応じて」 |
| 8 | 買い取った後、どう出口を作りますか | 再販・賃貸・解体など具体的な方針 | 説明できない |
8項目の使い方
この8つは順番に意味があります。1〜4が「売った後の責任」そのもの、5〜6が業者の適格性、7がプライバシー、8が査定額の裏付けです。
特に4番は見落とされやすい項目です。免責条項があっても、別の条項で打ち消されていることがあります。たとえば「引渡し後の再調査により追加の費用が判明した場合は、売買代金から精算する」という条項が別の場所に入っていれば、免責条項の意味は大きく削られます。免責条項があるかだけでなく、それを打ち消す条項がないかを逆から探してください。
8番は責任の話とは別に見えますが、つながっています。買った後の出口を説明できない業者は、買取価格の根拠も曖昧です。根拠が曖昧な価格は、後から「想定と違った」として減額交渉の材料にされやすくなります。査定額の根拠の見方は訳あり物件の買取価格はどう決まる?査定の根拠と現地調査の8チェックポイントにまとめています。
免許の確認は、国土交通省「建設業者・宅地建物取引業者等企業情報検索システム」で無料でできます。商号または免許番号を入力すれば、免許の有効性と行政処分歴が確認できます。宅地建物取引業法3条の免許を持たない相手との売買では、業法上の規律そのものが及びません。
契約書のどこを読むか|免責条項の5つの型
契約書を渡されたとき、全文を読み込む必要はありません。「契約不適合責任」または「担保責任」という見出しの条項を探し、そこがどの型に当たるかを判定してください。
| 型 | 書きぶりの例 | 売主にとっての評価 |
|---|---|---|
| A:全部免責型 | 「売主は、本物件の種類、品質及び数量に関する契約不適合について一切の責任を負わない」 | もっとも明快。買取の標準形 |
| B:範囲限定型 | 「売主は、種類及び品質に関する契約不適合について責任を負わない。ただし権利に関する不適合はこの限りでない」 | 許容範囲。何が残るか把握できる |
| C:期間限定型 | 「引渡しの日から3か月に限り責任を負う」 | 期間中は残る。訳あり物件では避けたい |
| D:現況有姿のみ型 | 「現況有姿にて引き渡す」とだけ記載 | 要注意。免責の明示にならない可能性がある |
| E:協議型 | 「本契約に定めのない事項は甲乙協議のうえ定める」しかない | 危険。何も決まっていないのと同じ |
D型は特に紛らわしい書き方です。「現況有姿」は引渡しの状態についての取り決めであって、それだけで契約不適合責任を免責する合意になるとは限りません。現況有姿の記載と、免責条項は別に必要と考えてください。
E型は、責任の所在を先送りしているだけです。訳あり物件では「定めのない事項」が後から必ず出てきます。
なお、A型であっても民法572条は動きません。知っていて告げなかった事実は、A型の契約書でも免責されません。免責条項の型を良くすることと、告知書を丁寧に書くことは、両方やって初めて意味を持ちます。
契約書の持ち帰りを断る業者とは取引しないことをおすすめします。悪質な業者の手口については訳あり不動産買取の悪質業者5つの手口|騙されない見分け方にまとめています。
共有持分の買取相談とプライバシー|他の共有者に知られずに進められるか
共有持分の買取相談では、責任の話に加えてプライバシーが大きな判断材料になります。「相談したことが兄弟や親族に伝わってしまわないか」という不安は、共有持分の相談でもっとも多く受ける質問のひとつです。
法律上の根拠は宅地建物取引業法45条です。
宅地建物取引業者は、正当な理由がある場合でなければ、その業務上取り扱つたことについて知り得た秘密を他に漏らしてはならない。宅地建物取引業を営まなくなつた後であつても、また同様とする。
守秘義務は廃業後も続くと条文に明記されています。相談した事実そのものが、正当な理由なく他へ漏らされることはありません。
ただし、法律上の義務があることと、実際の運用が明確であることは別です。相談の段階で次の3点を確認し、可能なら書面に残してください。
| 確認事項 | 具体的な聞き方 |
|---|---|
| 他の共有者への連絡の有無と時期 | 「他の共有者に連絡するのはどの段階ですか。私の同意なしに連絡しますか」 |
| 現地調査の方法 | 「近隣に聞き込みをしますか。社名の入った車で来ますか」 |
| 郵送物の差出人表記 | 「送られてくる書類の差出人はどう表記されますか」 |
自分の持分だけを売る場合、法律上は他の共有者の同意は不要です。持分は単独で処分できます。ただし現実には、買い取った業者がその後に他の共有者と交渉することになるため、「いつ」他の共有者が知ることになるかは業者の進め方で変わります。ここを事前に確認しておくかどうかが、後の家族関係に効いてきます。
共有持分の買取業者がどう利益を出しているのかという仕組みの話は共有持分の買取業者はどうやって利益を出す?に、近隣に知られずに売る方法は近所に知られずに家を売りたいにまとめています。
相談内容から業者を選ぶ|物件タイプ別の適合表
訳あり物件と一口に言っても、責任のリスクがどこに出るかはタイプによって違います。相談内容から業者を選ぶときは、自分の物件でいちばん出やすい不適合は何かを起点にしてください。
| 相談内容 | 出やすい不適合の種類 | 優先して確認すること |
|---|---|---|
| 相続した実家・空き家 | 品質(雨漏り・腐朽・シロアリ) | 「不明」を認める告知書運用があるか |
| 再建築不可 | 権利・法規制(接道、既存不適格) | 権利に関する不適合まで免責されるか |
| 事故物件 | 心理的瑕疵の告知範囲 | 3年の目安を売買に誤用していないか |
| 共有持分 | 権利(持分割合、他共有者との合意) | 守秘義務の運用と連絡範囲 |
| 相続アパート | 権利(賃貸借契約、敷金の承継、滞納) | 賃借人関係の引継ぎ範囲の明記 |
| 未登記の増築がある家 | 数量・権利(登記との不一致) | 数量不適合に1年の制限がないことの理解 |
| 境界未確定の土地 | 数量・権利(越境、面積相違) | 測量なしで買えるか、面積相違の扱い |
| 土壌汚染・地中障害物の可能性 | 品質(撤去費用) | 引渡し後の追加費用条項の有無 |
表の右列が、その物件タイプで最初に聞くべき一問です。8項目チェックの前に、まずここを聞くと業者の実力がすぐわかります。
自分の物件が買取の対象になるかどうかから確認したい場合は「私の物件、買取できる?」買取可否を判断する5つの条件チェックリスト、物件タイプごとの売却難易度は訳あり物件5種類の売却難易度を比較を参照してください。
都道府県・エリアから業者を選ぶ|大阪・滋賀など地域業者と全国業者の使い分け
都道府県から業者を探すとき、「全国対応」と書いてあるかどうかだけで判断しないでください。責任の観点では、現地を見て買うか、見ずに買うかのほうが重要です。
| 業者のタイプ | 現地調査 | 責任の観点での特徴 |
|---|---|---|
| 全国対応の大手専門買取 | 提携業者や写真で代替することがある | 見ずに買う分、決済後に「想定と違う」となる余地が残りやすい |
| 地域密着型(対応エリアが限定) | 自社で現地に行くことが多い | 見て買うため、免責を広く取りやすい |
現地を自分で見て買う業者は、リスクを自分の目で確認したうえで価格を決めます。だから売主に責任を残す必要が薄くなります。逆に、写真と資料だけで金額を出す業者は、確認できていない部分のリスクを契約条項で担保しようとする動機が働きます。
当社(空き家のミカタ/合同会社アルシェ・大阪府知事(1)第65646号)は大阪府全域で自社が現地に行ける範囲を主な対象としています。大阪府内の物件で「現地を見たうえで、責任を引き受けて買う」形を取れるのは、この距離だからです。
エリア別の相場感は大阪市24区の訳あり物件買取相場マップ、大阪市内の事例は大阪市内の訳あり不動産買取事例集にまとめています。
遠方の物件で全国対応の業者に相談する場合は、8項目チェックの4番(決済後に売主へ請求が戻る条項の有無)を特に丁寧に確認してください。現地を見ていない業者ほど、この条項が残っている可能性が高くなります。

現場から見た「責任の押し付け」が起きる3場面
ここからは、条文の話ではなく実務で実際に起きている場面です。上位の解説記事にはあまり出てこない部分ですが、売主が損をするのはほぼこの3つのどれかです。
場面1:決済の後に「調査したら出てきました」と連絡が来る
決済から1〜3か月後、「解体に入ったら地中からコンクリートガラが出た」「床下を開けたら基礎に亀裂があった」といった連絡が入るパターンです。
免責条項があれば、この請求は成り立ちません。免責条項がなければ、民法563条の代金減額請求として処理を求められる可能性があります。
防ぎ方:契約書の免責条項と、それを打ち消す条項(再調査・精算・追加費用)の両方を契約前に確認する。査定の段階で「解体して何か出てきた場合の負担はどちらですか」と一問聞けば、その場でわかります。
場面2:告知書が空欄のまま契約に進む
「訳あり物件なので、細かいことは書かなくていいですよ」と言われ、告知書がほぼ空欄のまま進むパターンです。売主にとっては手間が省けて楽に見えますが、これは売主のリスクを増やす進め方です。
空欄は「無し」と読まれる余地があります。後から事実が出てきたとき、「知っていたのに書かなかった」と評価されれば民法572条により免責が効きません。
防ぎ方:わからない項目は「不明」と理由付きで書く。書きすぎて困ることは買取ではまずありません。
場面3:共有持分で、相談した翌週に他の共有者から電話が来る
共有持分の相談で、売主の同意を取らないまま業者が他の共有者へ接触してしまうパターンです。宅地建物取引業法45条の守秘義務の問題である以前に、家族関係が壊れます。
防ぎ方:相談の最初に「私の書面同意なしに他の共有者へ接触しない」ことを確認し、覚書に残す。断る業者であれば、その時点で選択肢から外せます。
この3場面に共通しているのは、どれも査定の段階で一問聞けば防げるということです。契約書を読み込む知識がなくても、質問はできます。8項目チェックはそのために作っています。
よくある質問|訳あり物件の買取業者に関する疑問
Q. 免責特約を結んでほしいと売主から言い出しても大丈夫ですか。
問題ありません。買取では買主が宅地建物取引業者であり、リスクを織り込んで価格を決めるのが前提です。「契約不適合責任は免責でお願いしたい」と伝えて難色を示す業者は、決済後の請求余地を残したいと考えている可能性があります。その反応自体が判断材料になります。
Q. 免責にすると買取価格は下がりますか。
多少下がることはあります。買主がリスクを引き受ける分、価格に織り込まれるためです。ただし、免責なしで50万円高く売って決済後に100万円の減額請求を受ければ、手残りは大きく減ります。比べるべきは提示額ではなく、想定される最終手残りです。
Q. 仲介で個人に売る場合も免責特約は結べますか。
結べます。個人間売買には宅地建物取引業法40条が適用されないため、免責特約は有効です。ただし買主が個人の場合、実務では3か月程度の期間制限にとどめる例が多く、全部免責は買主に受け入れられにくい傾向があります。訳あり物件で責任を完全に降ろしたい場合は、買取のほうが実現しやすいのが実情です。仲介と買取の比較は不動産売却は買取・仲介・放置どれが正解?4軸で徹底比較を参照してください。
Q. 相続した家で、親が何か隠していたかもしれません。どうすればよいですか。
売主自身が知らないことは、民法572条の「知りながら告げなかった事実」に当たりません。ただし空欄にせず、告知書に「相続により取得。被相続人の居住期間中の事情は不明」と記載してください。知らないことを知らないと記録するのが最も安全な処理です。
Q. 買取業者に売った後、その業者が第三者に転売して問題が起きたら、私に責任は来ますか。
売主と買取業者の間で有効な免責特約が結ばれていれば、その範囲では来ません。買取業者が第三者へ転売する際は、今度は業者が「自ら売主となる」立場になるため、宅地建物取引業法40条により、業者は買主に対して引渡しから2年以上の担保責任を負う必要があります。そのリスクは業者側で処理される構造です。これも買取が売主にとって責任を降ろせる出口である理由のひとつです。
Q. 手数料はかかりますか。
直接買取では、宅地建物取引業者が自ら買主になるため、売主から仲介手数料を受け取ることはできません。ただし名目を変えた費用請求がないかは確認してください。費用の内訳は訳あり物件の買取業者に手数料はかかる?仲介手数料ゼロの根拠と実費7項目の内訳にまとめています。
Q. 免許番号はどこで確認できますか。
国土交通省「建設業者・宅地建物取引業者等企業情報検索システム」で無料検索できます。当社は大阪府知事(1)第65646号です。
まとめ|訳あり物件の買取業者の選び方は、契約書1条項に集約される
要点を整理します。
- 訳あり物件の買取業者の選び方の軸は「売った後の責任がどちらに残るか」。査定額の比較表には表れない差です。
- 宅地建物取引業法40条は、業者が「自ら売主となる」売買にしか適用されません。買取では業者が買主なので規制はかからず、売主の契約不適合責任を全部免責する特約も有効に結べます。
- 免責特約があっても、民法572条により「知りながら告げなかった事実」は免責されません。免責と告知はセットです。
- 告知書は空欄にせず、わからないことは「不明」と理由付きで書きます。告知書は後日の証拠資料になります。
- 人の死の告知における「概ね3年」は賃貸借取引の目安であり、売買取引には適用されません。
- 契約書では免責条項の型を確認し、それを打ち消す条項がないかを逆から探します。「現況有姿」だけでは免責の明示になりません。
- 共有持分の相談では、宅地建物取引業法45条の守秘義務に加えて、連絡範囲を書面で特定します。
- 査定の段階で8項目を聞けば、契約書を読み込む知識がなくても業者を判定できます。
訳あり物件は、売った後に何が出てくるかを売主自身が予測できません。だからこそ、予測できないものの責任を引き受けてくれる相手を選ぶ必要があります。それを確認する場所は、査定書ではなく契約書です。
当社は大阪市24区を中心に、現地を自分たちで見たうえで買い取っています。契約不適合責任の免責条項は標準で入れており、告知書の書き方も一緒に確認しています。査定の段階で契約書の該当条項をお見せしますので、比較検討の材料にしてください。
出典(一次情報)
- e-Gov法令検索「民法」(562条 追完請求/563条 代金減額請求/564条 損害賠償・解除/566条 期間の制限/572条 担保責任を負わない旨の特約) https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(3条 免許/40条 担保責任についての特約の制限/45条 秘密を守る義務/47条 業務に関する禁止事項) https://laws.e-gov.go.jp/law/327AC1000000176
- 国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」 https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/tochi_fudousan_kensetsugyo_const_tk3_000001_00061.html
- 国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」本文PDF(令和3年10月) https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001727517.pdf
- 国土交通省「建設業者・宅地建物取引業者等企業情報検索システム」 https://etsuran2.mlit.go.jp/TAKKEN/
画像出典: 契約書と署名(Blogtrepreneur, Wikimedia Commons, CC BY 2.0)/不動産取引の法務書類(Blogtrepreneur, Wikimedia Commons, CC BY 2.0)/空き家の外観2点(Kuroshio no Neko, Wikimedia Commons, CC BY 4.0)
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