相続不動産を勝手に売却された時の対抗策|名義人以外の親族が売れる4つの場面
「兄が実家を勝手に売ろうとしている」「母が亡くなってから、弟が一人で不動産屋と話を進めているらしい」——こうしたご相談を、当社は毎月お受けしています。
先に結論をお伝えします。
相続不動産を勝手に売却されるかどうかは、名義がどうなっているかだけで決まります。単独名義であれば、名義人以外の親族が売って名義を移すことは原則としてできません。危険なのは「共有名義の持分」と「相続が起きたあと遺産分割が終わっていない状態」の2つで、この2つに限っては、他の親族の同意も通知もないまま売られることが実際に起こります。
この記事では、なぜ単独名義なら守られるのかという仕組みを登記の手続きから説明したうえで、共有持分の無断処分がなぜ止められないのか、そして今日から打てる予防策と、すでに売られてしまった後の対抗策を、条文と手数料の実額を挙げて整理します。ご自身に不利な結論も含めて先に書きます。そのほうが、動くべきかどうかの判断が早くなるからです。
結論:単独名義なら親族でも売れません。危ないのは共有と相続後の2つです

まず全体像を1枚の表にします。ご自身の不動産がどの行に当たるかを確認してください。
| 名義の状態 | 名義人以外の親族が売れるか | 危険度 | 打つべき手 |
|---|---|---|---|
| 単独名義(本人が健在・判断力あり) | 原則として売れない | 低 | 実印・印鑑証明書の管理 |
| 単独名義(本人が認知症・判断力が低下) | 本人も売れず、家族が代理を装っても無効 | 中 | 成年後見の検討 |
| 共有名義 | 自分の持分は同意なく売れる | 高 | 分割請求か先に現金化 |
| 相続後・遺産分割前 | 法定相続分の持分を単独で売れる | 最高 | 早期の遺産分割と相続登記 |
| 権利証を紛失・盗み見された疑い | 添付書類が揃わないと売れない | 中 | 不正登記防止申出・失効の申出 |
危険度が最も高いのは、いちばん下から2番目の相続後・遺産分割前です。ここだけは、あなたが「実家は自分が継ぐ」と話し合いで決めていたとしても、登記の順番次第でその話し合いが無力になります。理由は後の見出しで説明します。
名義人以外が売れない理由|登記には本人確認の関門が3つあります

不動産を売ったという事実を法律上の効力として確定させるには、法務局で所有権の移転登記をする必要があります。この登記には、売主側(登記義務者)に3つの関門が用意されています。
関門1:登記識別情報(権利証にあたる12けたの英数字)
法務局の案内によれば、登記識別情報とは、登記が完了した際に登記所から登記名義人に通知される12けたの英数字の組合せからなる情報です。所有権の移転登記を申請するときは、これを提出することとされています(不動産登記法22条)。
関門2:実印と印鑑証明書
登記の申請には、登記識別情報のほかに印鑑証明書などの添付書類が必要になります。法務局はこの点について、「実印や印鑑証明書の管理をしっかり行っていれば、勝手に登記されるということはありません」と明記しています。逆に言えば、この2つを親族に預けたままにしていることが最大の穴になります。
関門3:登記識別情報が出せないときの事前通知
権利証を紛失していて登記識別情報を出せない場合でも、抜け道にはなりません。この場合、登記官が名義人の住所地に本人限定受取郵便で「登記の申請があった」旨を通知し、内容が真実であれば2週間以内に申し出るよう求めます(不動産登記法23条1項)。この申し出がない限り、登記官はその登記をすることができません。
さらに、申請人となるべき者以外の者が申請していると疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、登記官が出頭を求めて調査しなければならないという規定もあります(不動産登記法24条)。
法務局はこうも書いています。登記名義人ではない者が他人の登記識別情報を用いて不正な登記を行うことは一般的には容易なことではなく、仮になりすまして不正な登記をしたとしても、その登記は無効であり、その行為は犯罪となります。単独名義であれば、制度としては守られていると考えていただいて構いません。
それでも勝手に売られる4つの場面|共有持分の無断処分がいちばん多い

制度が守っているにもかかわらず、当社に持ち込まれる相談は途切れません。実際に起きているのは、次の4つの場面です。
場面1:共有持分の無断処分(相談としていちばん多い)
共有者は自分の持分を単独で売却できます。これが最も誤解されている点です。
民法251条は「各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない」と定めていますが、ここでいう変更とは共有物そのものの形や使い道を大きく変える行為を指します。持分そのものを誰かに売る行為は、この「変更」には当たりません。民法206条が定めるとおり、所有者は法令の制限内において自由にその所有物を処分できる権利を持っており、その考え方は持分にも及びます。
つまり共有持分の無断処分は違法ではなく、他の共有者に事前に知らせる義務もありません。これは制度の欠陥ではなく、共有という状態がもともと持っている性質です。
場面2:遺産分割前に、相続人の一人が法定相続分の持分を売る
相続人が数人いるとき、相続財産はその共有に属します(民法898条)。この共有持分も場面1と同じ理屈で、各相続人が単独で売却できます。詳しくは次の見出しで扱います。
場面3:実印と印鑑証明書を預けたまま、書類を作られる
親御さんが「面倒だから」と実印と印鑑登録カードを同居のご家族に預けている、というケースです。印鑑証明書は代理人でも取得できますから、揃ってしまえば書類は作れます。これは制度の穴ではなく、管理の問題です。
場面4:親の判断力が落ちた後に、家族が代理人として動く
「もう本人には判断できないから」と、お子さんが親御さんの代理人として売買契約を進めてしまう例です。代理権がない者が本人の代理人としてした契約は、本人が追認しなければ本人に対して効力を生じません(民法113条)。判断力を欠く状態の本人が有効に追認することもできないため、この売買は宙に浮きます。決済直前に司法書士の本人確認で止まるのが通常ですが、そこまでの費用と時間はすべて無駄になります。
相続不動産を勝手に売却される典型は「法定相続分の持分」です
ここが本記事のいちばん重要な部分です。
お母様が亡くなり、相続人がご兄弟3人だとします。遺産分割の話し合いはまだ終わっていません。この状態で、弟さんが単独でできてしまうことが2つあります。
ひとつ目は、法定相続分での相続登記です。これは共有物の保存行為にあたるため、相続人の一人が単独で申請できます。申請すると、実家の登記簿は「兄・弟・妹が各3分の1」という共有状態になります。ここに他の相続人の同意は要りません。
ふたつ目は、その3分の1の持分を第三者に売ることです。持分は単独で処分できますから、買い取る業者さえいれば売買は成立します。あなたのところに連絡は来ません。
つまり相続不動産 勝手に売却という言葉で実際に起きているのは、家全体が売られることではなく、相続人の一人が自分の法定相続分だけを切り離して現金に換え、残された相続人が見知らぬ第三者と共有関係になるという事態です。
なお相続登記は2024年(令和6年)4月1日から義務化されており、不動産の取得を知った日から3年以内に申請しなければ10万円以下の過料の対象になります(不動産登記法76条の2・164条)。この義務化によって法定相続分での単独登記の件数が増えたことは、持分売買が広がる下地にもなっています。
遺産分割で自分のものと決めても、登記が遅れると買主に勝てません
「でも、兄弟で話し合って実家は私が継ぐと決めてあります」——このお言葉を、当社は何度も聞いてきました。ここで効いてくるのが民法899条の2です。
相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、法定相続分を超える部分については、登記その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。
条文をかみ砕くと、こうなります。
| 状況 | 結果 |
|---|---|
| 遺産分割の後、あなたが先に相続登記をした | 買主に対して全部あなたのものだと主張できる |
| 遺産分割の後、弟が先に法定相続分で登記して持分を売り、買主が登記した | 法定相続分を超える部分(3分の2)は買主に主張できない |
| 遺産分割はまだ、弟が持分を売り、買主が登記した | 同上。買主が3分の1の共有者になる |
民法909条は「遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる」としながら、ただし書で「第三者の権利を害することはできない」と定めています。話し合いは相続人の間だけの取り決めであり、外から来た買主には登記でしか対抗できないということです。
ここから導かれる実務上の結論はひとつです。遺産分割が決まったら、その日のうちに相続登記の手配を始めてください。「いずれやる」で先送りされている間が、いちばん危険な時間帯です。
売られてしまった場合の内部精算:民法906条の2
もう手遅れという場合でも、相続人の間での計算をやり直す道は残っています。民法906条の2は、遺産分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共同相続人全員の同意により、処分された財産が遺産分割時に遺産として存在するものとみなすことができると定めています。
そして同条2項が重要です。処分をしたのが共同相続人の一人または数人であるときは、その相続人については同意を得ることを要しません。勝手に売った本人が「同意しない」と言っても、他の相続人だけの同意で、売られた不動産を遺産として計算に入れ直せるということです。
買主から不動産そのものを取り戻せるわけではありませんが、売った相続人の取り分をその分減らして精算する形で公平を回復できます。
予防策①:法務局の不正登記防止申出と登記識別情報の失効の申出
ここからは、今日から打てる手を順に挙げます。まず法務局でできる2つの手続きです。
不正登記防止申出(3か月間の見張り)
不正登記防止申出は、不正な登記がされる差し迫った危険がある場合に、申出から3か月以内に不正な登記がされることを防止するための制度です。申出をしておくと、その3か月の間に登記の申請があった場合に、申出をした人へその旨が通知されます。
ただし法務局は、この制度は権利の移動を禁止する趣旨の制度ではないとはっきり書いています。登記を止めるものではなく、動きを知らせてもらうための制度だと理解してください。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 効果が続く期間 | 申出から3か月 |
| 継続したい場合 | 3か月ごとに手続きを繰り返す |
| 出頭 | 申出人本人の出頭が原則(やむを得ない事情があると認められる場合は委任による代理人の出頭も可) |
| 申出先 | 不動産を管轄する法務局(登記所) |
なお、この制度は「差し迫った危険」があることが前提です。共有者と折り合いが悪いという理由だけでは対象になりにくいため、事前に申出先の登記所へご相談ください。
登記識別情報の失効の申出(権利証を無効にする)
権利証(登記識別情報)を紛失した、あるいは誰かに盗み見られた可能性がある——そうした場合には、登記名義人またはその相続人その他の一般承継人の申出により、登記識別情報を失効させる制度があります(不動産登記規則65条)。オンラインでも書面でも申し出ることができます。
ただし前提として、法務局は登記識別情報を紛失しただけでは、登記記録上の権利には何らの影響もありませんと説明しています。あわてて何かを買ったり契約したりする必要はありません。
自分の登記識別情報が生きているか確かめる(300円)
不動産登記規則68条に基づき、登記識別情報に関する証明を請求すれば、その登記識別情報が有効か、失効しているかを確認できます。手数料は書面請求・オンライン請求とも300円です(令和7年4月1日現在)。
予防策②:実印と印鑑証明書の管理|大阪市の窓口で今日できる手続き
登記の3つの関門のうち、名義人自身が完全にコントロールできるのは実印と印鑑証明書です。ここを締めるのが、費用ゼロで効果が最も大きい対策になります。
具体的には、次の3つを確認してください。
- 実印そのものを、他の家族が持ち出せる場所に置いていないか
- 印鑑登録証(カード)を誰かに預けたままになっていないか。カードがあれば代理人でも印鑑証明書を取得できます
- マイナンバーカードを暗証番号ごと家族に渡していないか。コンビニ交付で印鑑証明書が取れます
心当たりがある場合、大阪市にお住まいであれば区役所の窓口サービス担当課または区役所出張所で、その日のうちに手を打てます。
| 手続き | 使う場面 | 手続きできる人 |
|---|---|---|
| 登録印鑑の亡失の届 | 登録している印章を紛失・盗難・焼失などでなくした場合 | 印鑑を登録している方、または本人から委任を受けた代理人 |
| 印鑑登録の廃止の申請 | 登録そのものをやめて、印鑑証明書を出せない状態にする場合 | ご本人、または本人から委任を受けた代理人 |
| 印鑑登録証の亡失の届 | 印鑑登録証(カード)を紛失・盗難などでなくした場合 | ご本人、または本人から委任を受けた代理人 |
いずれも本人確認書類が必要です。登録を廃止して新しい印章で登録し直せば、以前の実印で作られた書類は印鑑証明書と合致しなくなります。大阪市以外にお住まいの場合も、同じ趣旨の手続きが各市区町村に用意されています。
実際の相談では、「10年前に長男に実印を渡したまま、どこにあるかわからない」という状態が珍しくありません。この場合、探すより先に登録を廃止して登録し直すほうが早く、費用もほとんどかかりません。
予防策③:登記事項証明書で監視する|書面600円・オンラインなら490円
登記事項証明書は誰でも請求できます。不動産登記法119条1項は「何人も、登記官に対し、手数料を納付して、登記事項証明書の交付を請求することができる」と定めています。共有者であるかどうかは関係ありません。他人名義の物件でも取れます。
これを定期的に取ることで、いつの間にか持分が第三者に移っていないかを自分で確認できます。手数料は次のとおりです(令和7年4月1日現在)。
| 請求方法 | 手数料 |
|---|---|
| 書面請求(法務局の窓口・郵送) | 600円 |
| オンライン請求・送付 | 520円 |
| オンライン請求・窓口交付 | 490円 |
揉めごとを抱えているご家庭には、年1回、もしくは相続の話し合いに動きがあったタイミングで取得することをおすすめしています。年に1回なら600円です。持分が売られていた場合、登記簿には買主の氏名または名称と、いつ・どんな原因で移ったのかが記録されていますので、そこから相手を特定できます。
予防策④:親の判断力が落ちる前後で、打てる手が変わります
親御さんが認知症などで判断力を失うと、本人が売ることもできなくなります。成年被後見人の法律行為は取り消すことができるとされているためです(民法9条)。同時に、ご家族が代理人として売ることもできません(前述の民法113条)。
この状態で不動産を売る必要があるなら、家庭裁判所に後見開始の審判を申し立て、成年後見人を選任してもらう必要があります(民法7条)。後見人は被後見人の財産を管理し、財産に関する法律行為について本人を代表します(民法859条)。
裁判所の案内によれば、申立てから審判までにはおおむね1か月から2か月を要し、鑑定が必要な場合はさらに時間がかかります。
なお、判断力の低下が中程度の場合は保佐の類型になりますが、この場合も不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為には保佐人の同意が必要です(民法13条1項3号)。いずれにしても、家族の一存で進められる場面ではありません。
すでに売られた後の対抗策|3つのルートと、時間の制約
登記事項証明書を取ったら知らない名義が入っていた。この段階でも打つ手はありますが、ルートによって難易度がまったく違います。
ルート1:完全な偽造だった場合 → 登記の抹消を求める
委任状も売買契約書も偽造で、名義人がまったく関与していない場合、その登記は無効です。法務局も「仮に、登記名義人でない者が他人になりすまして不正な登記をしたとしても、その登記は無効」と説明しています。この場合は、買主を相手に所有権移転登記の抹消登記手続を求める訴訟を起こすことになります。
訴訟の間に買主がさらに転売してしまうと話が複雑になるため、あわせて処分禁止の仮処分を申し立てるのが実務です。不動産の登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分は処分禁止の登記をする方法により行い(民事保全法53条1項)、その登記より後にされた登記に係る権利の取得は、仮処分の債権者に対抗することができません(同法58条1項)。ただし保全命令には担保を立てることが求められるのが通常です(同法14条)。
この判断と申立ては弁護士の領域です。登記簿に見覚えのない名義を見つけたら、その日のうちに弁護士へご相談ください。
ルート2:共有持分が適法に売られた場合 → 取り戻せません
いちばん多いのがこのルートで、そして登記を取り消す方法はありません。売った共有者には売る権利があったからです。ここからできるのは、買主から持分を買い戻す交渉か、共有物分割請求(民法258条)です。
ルート3:遺産分割前に相続人が売った場合 → 内部で精算する
前述の民法906条の2で遺産分割の計算に入れ直します。あわせて、相続権を侵害された場合の相続回復請求権には、侵害の事実を知った時から5年、相続開始の時から20年という期間の制限がある点に注意が必要です(民法884条)。「そのうち話し合おう」で放置できる問題ではありません。
刑事告訴は効くのか|親族間では詐欺・横領の刑が免除されます
「訴えてやりたい」というお気持ちは当然だと思います。ただし、期待どおりに動かない構造があることは先にお伝えしておきます。
刑法244条1項は、配偶者、直系血族または同居の親族との間で窃盗の罪を犯した者は、その刑を免除すると定めています。そしてこの規定は、刑法251条により詐欺・恐喝の罪に、255条により横領の罪に準用されています。つまり親子や同居のきょうだいの間では、財産を勝手に処分されても、詐欺や横領としての刑事責任が免除される構造になっています(同居していない親族の場合は、告訴がなければ公訴を提起できないという扱いになります)。
一方で、この特例が及ばない罪もあります。
| 罪名 | 条文 | 法定刑 | 親族間の特例 |
|---|---|---|---|
| 私文書偽造(委任状・契約書の偽造) | 刑法159条1項 | 3月以上5年以下の拘禁刑 | 及ばない |
| 偽造私文書等行使 | 刑法161条1項 | 偽造した者と同一の刑 | 及ばない |
| 公正証書原本不実記載等(虚偽の申立てで登記簿に不実の記載をさせる) | 刑法157条1項 | 5年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 | 及ばない |
| 詐欺 | 刑法246条1項 | 10年以下の拘禁刑 | 及ぶ(刑法251条) |
| 横領 | 刑法252条1項 | 5年以下の拘禁刑 | 及ぶ(刑法255条) |
偽造や不実記載を罰する規定は、家族の財産を守るためではなく、文書や登記簿への社会の信頼を守るために置かれています。だからこそ親族間の特例が及びません。刑事の道を検討されるのであれば、「財産を取られた」ではなく「書類を偽造されて登記簿に嘘を書かせた」という組み立てになります。告訴の可否も含め、弁護士にご相談ください。
現場の視点:共有持分の買主から手紙が届いたときに、まずやること
当社は買い取る側の立場ですが、買われた側からのご相談も同じくらいお受けしています。突然「あなたと共有関係になりました」という手紙が届いたときに、順番を間違えないでいただきたい点を3つ挙げます。
1. その日のうちに登記事項証明書を取る。手紙の内容ではなく登記簿で事実を確認してください。誰が、いつ、どの割合を、どんな原因で取得したのかがわかります。600円です。
2. 相手の言い値で即決しない。買い取った側が「あなたの持分も売ってほしい」「うちの持分を買い取ってほしい」と提案してくるのは通常の流れです。ただし最初に出てくる金額は、その後の交渉を織り込んだものであることがほとんどです。
3. 出ていけと言われても、応じる義務はありません。各共有者は共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができます(民法249条1項)。ただし持分を超える使用については、他の共有者に対価を償還する義務を負うと定められている点(同条2項)は知っておいてください。
実際にあった相談では、持分を買った業者から届いた通知に「速やかに明け渡してください」とだけ書かれていた例がありました。登記簿を取り、こちらの持分と使用の権利を整理して回答したところ、話は明け渡しではなく持分の売買価格の交渉に切り替わりました。相手の書面のトーンと、法律上できることは別です。
売られる前に自分から動く選択肢|共有名義の買取と共有物分割請求
「いつ売られるかわからない状態で待つのがつらい」という段階まで来ている場合、選択肢は2つに絞られます。
選択肢A:共有物分割請求(時間はかかるが、共有そのものを終わらせる)
共有物の分割について共有者間に協議が調わないとき、または協議をすることができないときは、その分割を裁判所に請求することができます(民法258条1項)。裁判所は、現物を分割する方法か、共有者に債務を負担させて他の共有者の持分を取得させる方法(全面的価格賠償)で分割を命じることができ、それができない場合や価格を著しく減少させるおそれがある場合には競売を命じることができます(同条2項・3項)。
決着はしますが、弁護士費用と時間がかかります。手続きの流れと期間の目安は共有持分を売った後どうなる?共有物分割請求の流れ・期間・費用にまとめています。
選択肢B:自分の持分を先に現金化する
もうひとつは、ご自身の持分を売却する方法です。他の共有者の同意は不要で、通知の義務もありません。これは場面1で説明したとおり、あなたの側にも等しく認められている権利です。
共有名義 買取のご相談は、当社が大阪市24区を中心にお受けしています。買取であれば買主は当社ですので、訳あり物件の買取業者に支払う仲介手数料は発生しません(宅地建物取引業者が受け取れる報酬は媒介や代理をした場合のものであり、当社が直接の買主となる取引には媒介の報酬という概念がないためです)。
ただし、正直にお伝えしておきたいことが2つあります。
ひとつ目は、持分の買取価格は持分割合どおりにはならないという点です。3分の1の持分だからといって、家全体の価格の3分の1にはなりません。買った側は他の共有者との交渉や分割請求というコストと不確実性を引き受けることになるためです。
ふたつ目は、共有者全員がまとまって売れるなら、そちらのほうが手残りは多くなるという点です。関係を修復できる余地があるなら、まず全員での売却を検討してください。当社にご相談いただいた場合も、その可能性がある方にはそのようにお伝えしています。持分だけの買取が向いているのは、話し合いのテーブルに全員が着けないことがはっきりしている場合です。
よくある質問
名義人以外の親族が、勝手に不動産を売却することはできますか?
単独名義の不動産であれば、名義人本人の関与なしに売却して名義を移すことは原則としてできません。危ないのは共有名義の持分と、相続後に遺産分割が終わっていない状態の2つです。
共有持分は、他の共有者に黙って売られてしまうのですか?
売られます。共有者は自分の持分については単独で処分できるという扱いが確立しており、事前に知らせる義務もありません。他の共有者が気づくのは、買い取った業者から手紙が届いたときか、登記事項証明書を取ったときです。
不正登記防止申出をすれば、勝手な売却を止められますか?
止められるのは3か月間だけで、しかも登記を禁止する制度ではありません。申出から3か月以内に登記の申請があった場合に通知を受けられる制度です。効果を続けたい場合は3か月ごとに手続きを繰り返します。
権利証をなくしました。悪用されますか?
登記識別情報を紛失しただけでは、登記記録上の権利には何の影響もありません。心配であれば失効の申出ができますし、有効かどうかは300円の証明請求で確認できます。
勝手に売った親族を警察に訴えれば解決しますか?
親族間では詐欺・横領の刑が免除される規定があるため、財産犯としては動きにくいのが実情です。一方で私文書偽造や公正証書原本不実記載にはこの特例が及びません。組み立て方を弁護士にご相談ください。
遺産分割で私が全部相続すると決まったのに、兄が持分を売ってしまいました
登記の先後で結論が変わります。買主の登記が先だと法定相続分を超える部分は主張できませんが、民法906条の2により遺産分割の計算に入れ直して精算する道は残っています。
共有者と揉めていて、いつ持分を売られるかわかりません
共有物分割請求で共有そのものを終わらせるか、ご自身の持分を先に現金化するかの2択になります。まず金額を確かめてから判断していただくのが安全です。
まとめ
相続不動産を勝手に売却されるリスクは、名義の状態で決まります。
| やること | いつまでに | 費用の目安 |
|---|---|---|
| 名義がどうなっているか登記事項証明書で確認する | 今週中 | 600円(オンラインなら490円) |
| 実印・印鑑登録証・マイナンバーカードの所在を確認する | 今週中 | 0円 |
| 心当たりがあれば印鑑登録の廃止・亡失の届を出す | 今月中 | 窓口で確認 |
| 遺産分割が決まっているなら相続登記を申請する | 取得を知った日から3年以内 | 登録免許税+司法書士報酬 |
| 差し迫った危険があるなら不正登記防止申出 | 危険を感じた時点 | 3か月ごとに更新 |
| すでに知らない名義が入っていた | その日のうちに弁護士へ | — |
そして、共有持分の無断処分だけは、法律上止める方法がありません。共有という状態を続ける限りリスクは消えないため、共有を終わらせる(分割請求)か、共有から抜ける(持分の売却)かのどちらかを選ぶことになります。
いちばん危険なのは、遺産分割が決まったのに相続登記を先送りしている期間です。ここだけは、今日動く価値があります。
無料査定・ご相談はこちらから
「兄弟が売りそうで不安」「持分を買った業者から手紙が来た」「自分の持分がいくらになるのかだけ知りたい」——その段階のご相談を歓迎しています。査定は無料で、査定を受けたからといって売却の義務は生じません。
空き家のミカタは、大阪市生野区に事務所を構える宅地建物取引業者です(大阪府知事(1)第65646号)。大阪市24区の空き家・長屋・再建築不可物件・共有持分を専門に扱っており、他の共有者と連絡が取れない・相続登記が未了・荷物が残ったままという状態でも査定にお応えできます。なお、登記の代理申請は司法書士へ、抹消登記請求や仮処分など裁判所を使う手続きは弁護士へ、譲渡所得税・相続税の判断は税理士へご確認ください。私どもがお手伝いできるのは、その不動産や持分をいくらで、どういう順序で手放せるかという部分です。
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出典(2026年8月27日確認)
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- e-Gov法令検索「民法」(第7条 後見開始の審判/第9条 成年被後見人の法律行為/第13条 保佐人の同意を要する行為等/第113条 無権代理/第206条 所有権の内容/第249条 共有物の使用/第251条 共有物の変更/第258条 裁判による共有物の分割/第859条 財産の管理及び代表/第884条 相続回復請求権/第898条 共同相続の効力/第899条の2 共同相続における権利の承継の対抗要件/第906条の2 遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲/第909条 遺産の分割の効力)
- e-Gov法令検索「不動産登記法」(第22条 登記識別情報の提供/第23条 事前通知等/第24条 登記官による本人確認/第60条 共同申請/第76条の2 相続等による所有権の移転の登記の申請/第119条 登記事項証明書の交付等/第164条 10万円以下の過料)
- e-Gov法令検索「不動産登記規則」(第65条 登記識別情報の失効の申出/第68条 登記識別情報に関する証明/第70条 事前通知/第72条 資格者代理人による本人確認情報の提供)
- e-Gov法令検索「刑法」(第157条 公正証書原本不実記載等=5年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金/第159条 私文書偽造等=3月以上5年以下の拘禁刑/第161条 偽造私文書等行使/第244条 親族間の犯罪に関する特例/第246条 詐欺=10年以下の拘禁刑/第251条 詐欺及び恐喝の罪への準用/第252条 横領=5年以下の拘禁刑/第255条 横領の罪への準用。2026年5月21日施行の現行条文)
- e-Gov法令検索「民事保全法」(第14条 保全命令の担保/第23条 仮処分命令の必要性等/第53条 不動産の登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行/第58条 その効力)
- 法務省「登記手数料について(令和7年4月1日~)」(登記事項証明書=書面請求600円・オンライン請求送付520円・オンライン請求窓口交付490円/登記識別情報に関する証明=書面請求300円・オンライン請求交付300円)
- 法務省「所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し」(相続登記の申請義務化 令和6年4月1日施行)
- 裁判所「成年後見制度(後見・保佐・補助)の概要を知りたい方へ」(申立てから審判までおおむね1か月から2か月・鑑定が必要な場合はさらに時間を要する)
- 裁判所「後見開始」(申立てに必要な書類・手続の流れ)
- 大阪市「登録印鑑の亡失の届」(登録している印鑑を紛失・盗難・焼失などでなくした場合の手続き。届出先=お住まいの各区役所窓口サービス担当課または区役所出張所)
- 大阪市「印鑑登録の廃止の申請」(手続きできる人=ご本人および代理人/必要なもの=印鑑登録廃止申請書・印鑑登録証・登録している印章・委任状・本人確認書類)
- 大阪市「印鑑登録証の亡失の届」(印鑑登録証を紛失・盗難・焼失などでなくした場合の手続き)
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